ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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戦場カメラマンのなり方

 理由は言うまでもありませんが、ここ数ヶ月というもの、「戦場カメラマン」というキーワード検索で当ブログを覗いてくださる方が非常に増えています(→該当エントリー)。「戦場カメラマン なり方」で検索している人もいます。本気で戦場カメラマンになりたい人なのでしょうか?
 また、当ブログで最近、過去の戦場取材の写真をアップしましたが、それで「戦場って、どうやって行くの?」などと聞かれたことが何度かありました。
 人の生きる道は人それぞれですし、当然危険もありますから、私から決して他人様にはお薦めしませんが、真面目にそうした道を志す若い人の気持ちもわからないではありません。私自身は、戦場カメラマンというのは他人の不幸でメシを食っている究極のパパラッチだという一面の真理も自覚すべきだと思っているのですが、それでも世界の現実を知りたいとか、伝えたいとかということが自然な欲求だということも否定はいたしません。
 そこで今回は、私自身、最初はどうやって戦場カメラマンになればいいのかわからなかったので、その手順だけ簡単にご説明します。ただし、こういうものにマニュアルはなく、すべては経験によって各人が学んでいくしかないので、あくまで一例にすぎないということはご理解ください。事情は日々変化しますので、くれぐれも以下内容をそのまま鵜呑みにしないように願います。

 さて、戦場取材するためにまず必要なことは、入国ビザの入手です。これがないと入国できない国もあります。国籍ごとに要件が違っていることもあるので、できれば東京の大使館で日本人の場合を確認したほうがベターです。ただ、陸路で国境を越えるとき、隣国で意外に簡単に入手できたりすることもあります。反政府側に入る場合、密入国という手もありますが、それは現地で充分に情報収集をしてからのほうが良いです。
 紛争地帯では、一般旅行者の立場では入国ビザが降りないケースもあります。その場合は報道従事者である旨を説明して報道業務用ビザ申請となるわけですが、これはメディア所属の記者でないとなかなか難しいかもしれません。後述するプレスカードの場合と同様に、自前でメディア特派員を名乗る裏技もありますが、ビザ発給の場合はわりあい審査が厳しいです。ケースバイケースなので、一概には言えませんが。
 NGOのスタッフとして入国する方法もあるようですが、私自身はその手を使ったことはありません。イラク戦争の際には、サダム・フセイン政権支持の立場で「人間の盾」というボランティア反米活動家の身分でイラクに入国した人が何人もいました。あの手この手を考えるわけですが、こういうことはよくあることです。反米義勇兵ビザで入国したツワモノすら実際にいます。

 さて、入国した後にまず必要になるのが、記者証(プレスカード)です。たいていの国では、大統領府(首相府)、外務省、内務省(警察本部)、国防省(軍)のどこかで、外国人記者のための記者証を発行しています。ひとつの国で、複数の省庁が発行していることもあります。国連平和維持軍や多国籍軍が展開していたら、そこの司令部でも発行していることが多いです。なるべくいろいろ取得しておいたほうがいいでしょう。
各省庁に報道担当のセクションがあるはずなので、そこに出向いて尋ねてみるのが定石です。
 面倒なときは、地元のマスコミや国際的マスコミの現地支局あたりに聞いても、親切な人なら教えてくれることもあります。地元の記者と顔なじみになっておくことは、後々なにかと役立ちます。
 記者証は、軍に従軍したり、検問を突破したりするのに必要ですし、取材相手にちゃんと応対してもらうためにも、あったほうがいいと思います。それと、国によっては悪徳警官・悪徳軍人が跋扈してますので、そういう連中に対する抑止力にも少しはなります。実際のところ、この記者証を取得するかしないかで、行動できる範囲に決定的な差が出ます。
 ですが、この記者証取得が、まず最初の関門になります。たいていの国ではフリーランスという立場に記者証は発行しないので、「どこかの報道機関の特派員であること」を証明する必要があります。ですが、そんな身分がない場合、どうすればいいのでしょうか? ここでみんな初めは悩みます。
今は結構さまざまな制作プロダクションやジャーナリスト・グループがありますが、そういうところにコネがある人は、そこに一時的に加えてもらうというのが、いちばん簡単です。そこから特派されたという形式にするのです。
 日本では大手メディアがフリーランスに身分保障を与えることはほとんどないので、実績のある戦場ジャーナリストでもたいていは、自前の会社名・事務所名で現地では取材しています。
 ちなみに、欧米のカメラマンの場合は、写真通信社のストリンガー(出来高払いの契約スタッフ)登録をする人が多かったです。有名な写真通信社だと、数千人規模でストリンガーがいます。また、欧米の場合は、聞いたこともないものすごく辺鄙な田舎の地方紙とかローカルラジオとかのストリンガーの身分で動いている人もいます。現地のメディアにボランティア・スタッフのようなかたちで入り込み、その身分で取材活動をしている人も稀にいます。

 しかし、それらもある程度は実績がないと難しいので、そういう場合に日本のフリーランスの人がよくやる手は、仲間内で形式的に通信社を作ってしまうことです。正規に法人登記するまでは要らないと思いますが、最低限それなりの自社紹介サイトくらいは作っておいたほうがいいかと思います。
 なんだかインチキっぽい話ですが、日本人でフリーランスで戦場取材をしている人のほとんどの人が経験してきた道です。ただし、そこまでする以上は、きちんと取材して、きちんとレポートを発表する道義的責任が生じますので、そこは軽く考えないでいただきたいと思います。実際、もともと仲間内の互助グループだったのが、今では立派なジャーナリスト集団としてマスコミで大活躍されている事務所もあります。
 最初は勝手がわからないと思いますが、現地をうろうろしていると各国のフリーランスの人ともいろいろ出会いますので、だんだんとやり方は学べます。
 記者証の申請のためには、所属報道機関からのレターが必要です。英文の自社名を刷り込んだ用紙に、関係各位宛に「この手紙を所持する×田×太郎は弊社の記者なので、便宜供与を要請します」みたいな文面を打ち込み、責任者のハンコとサインを付けるのが一般的です。ときおり架空会社の写真入り身分証を作っている人もいますが、今はそういうのが個人で簡単に作れることがバレてますから、実際にはそんなに効力はないと思います。
 また、たいていの国の広報担当者は日本のメディア事情など知らないので、この報道機関は実在のものかどうかを確認するため、稀にですが、現地の日本大使館のレターを要求するところもあります。実績のまったくない人は、その場合はなかなか難しいかもしれません。
 プレスカードは1枚取得できれば、それが公的機関による身分証明になりますので、次の取得がかなり有利になります。また、一度雑誌に掲載できれば、そのクレジットをローマ字にしておけば、その現物もプロの証明に使えます。もっとも、エロ写真満載の週刊誌ではダメですが。
 ただし、プレスカードだけでは軍の検問を突破できないこともよくあります。軍司令部や方面司令部の通行証、あるいは政府軍以外に民兵組織などがある場合はそこの通行証などが別途に必要なケースもありますので、その都度確認したほうがいいでしょう。

 ところで、戦場取材にいちばん必要なスキルは、私は英語力だと思います。現地語が出来ればもちろんベストですが、最低限の英語力がないと、どこでも取材活動は難しいと思います。
 概して、中東や南アジア、フィリピンやミャンマーなどでは、そこそこ英語のできる人がいますが、旧ソ連圏や中南米では、ロシア語やスペイン語ができないとかなり不便でしょう。アフリカは国によってはフランス語ができないと難しいようです。英語は実際の取材もそうなのですが、現地政府の報道担当部署と交渉したり、地元メディア記者や他の外国人記者と交流したりする際にも不可欠です。
 機材は大げさであればあるほどハッタリは効きます。ビデオ撮影などの場合、私はENGカメラマンだったことがあるので、小型ビデオカメラのほうが格段に操作が難しいことを知ってますが、観光客でも持っているような小型ビデオだと、現地ではあまり優先的には扱ってもらえないことがあります。
 また、昔のF2なんかでは、よく機材のメタル部分に反射避けの黒テープを張ったりしていました。今のスチールカメラの多くは黒ベースになっているので、そんなに神経質になることはないかもしれませんが。
 それより、遠目からは武器に見えてしまう望遠レンズ、それから何と言ってもストロボ・フラッシュは危険をともなうことを知っておきましょう。

 その他もろもろの準備でいえば、戦場取材では当然戦死(殉職)の可能性がありますが、一般の海外旅行保険では戦地は除外されています。ロイズなどに特殊な保険がありますが、保険料がバカ高いので、フリーランスでそんなのに加入している人を、私は聞いたことはありません。保険はあきらめましょう。
 密林での取材の場合、できればマラリア予防薬を服用したほうがいいですが、あれは継続して飲まないといけないので、たいていはだんだんサボる人がほとんどです。私もサボってマラリア発症したことがあります。あと、行く国によっては、任意で肝炎の予防注射をやる人はいます。
 アフリカのエイズ蔓延地域に行く場合、負傷したときのために、私は使い捨て注射器を持っていったことが何度かあります。ヤク中に誤解される恐れはありますが、感染するよりはマシかと思います。あと、パスポートなどに血液型を書いた紙を挟んでおいたほうがいいかもしれません。
 ガチの戦場従軍を希望する場合は、自前の防弾ベストもあったほうがいいです。欧米のミリタリーショップ、セキュリティ用品店などで購入できますが、ちゃんとしたものは結構高額になります。その他にあったほうがいいのは、携帯電話、モバイル・パソコンなどでしょうか。
 服装は、とりあえずは民間人の服装がいいでしょう。従軍の際に迷彩服などが必要なこともありますが、戦場に到達するまでは逆にトラブルの元になります。
 戦場での動き方は、とにかく危険情報に精通した現地の人から最新情報をよく聞くこと。できれば兵士に同行するのが良いでしょう。
 味方の兵士がロケット・ランチャーを発射するときなど、間違っても後方にいてはいけません。それから、そういうときは必ず耳を押さえて口を大きく開け、爆風から鼓膜を守ってください。

 戦場での心構えとしては、たとえばテロ集団に捕まったような場合は、当然ですが、自分が生き延びることを最優先して行動しましょう。「私は記者だ!」と言っていれば危険は及ばない、というのは大間違いです。とくに悪徳ゲリラ、悪徳警官、悪徳軍人からみれば、多額の外貨を持ち歩いているうえ、身代金も狙える外国人はカモだということをよく自覚すべきです。また、小悪党とトラブルになったときのために、賄賂用の小額紙幣やタバコなどを準備しておくと良いでしょう。
 戦場に限りませんが、相手を善良な人間と思っていたら、ある瞬間に悪人に大変身!などということもあり得ます。自分は良い人間を見極める自信があるなんて思っている人は、認識を改めたほうがよさそうです。
 また、戦場ではお金目当てにガイドや運転手の売り込みもよくありますが、いきなり最初の人に決めないで、何人かじっくり話を聞いてから考えましょう。ゲリラへの仲介者を自称する人も要注意です。
 どこまで危険を引き受けるかは個人の問題なので、あくまでも自由だと私は思っていますが、自分の意思を常に自問しておきましょう。そんなに深く考えないで調子にのっていたら、気づいたら激戦地で砲弾の雨の中にいた・・・なんてこともあり得ます。はい、私のことです(該当エントリー→写真館③ボスニア戦線)。
 あと、さらにひとつ重要な注意点を挙げておきたいのですが、どんな人でも群集心理の作用は受けます。戦場では戦死なんてそんなに珍しくないので、「人はどうせいつか死ぬんだし、行けるとこまで行ってみっか!」なんて気分になりがちですが、そういうときは、自分の心理が戦場の雰囲気の影響を受けているのだということを自覚しましょう。だんだん現地に慣れてくると、さまざまなことがわかったような気になってきますが、自分は間違っているかもしれないとときおり自問してみることは、危険回避に役立つかと思います。
 最後に、つまんないことですが、後でトラブルの原因になりがちな注意点をもうひとつ。紛争地帯ではよく記者同士がつるんで動くことがあります。危険回避、取材費のシェア、寂しいから、といろいろ理由はありますが、同じ日本人フリーカメラマン同士で同じ取材をするのはやめたほうがいいです。当然ながら同じような写真を撮影することになるので、後で雑誌などに発表する際に必ずモメます。戦場カメラマン業界は、嫉妬渦巻く競争の世界でもあるのです。
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  1. 2010/11/08(月) 14:23:38|
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  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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れスキューワールドマイセルフ

夏位に僕と同世代の女性ジャーナリストがシリアで、理想を掲げてなくなりました。僕らが青春を過ごしていたあのころから30年位経つけど、世界中の飢餓、紛争、暴力、貧富の差、文明の発展と極限の経済至上主義がもたらした精神病理も含む悪徳の蔓延る世界!ぼくも、それを己でみて感じてそれを世界中に伝える為に、現在本国で準備中です!殉職は覚悟している。
  1. URL |
  2. 2012/11/25(日) 15:28:12 |
  3. taro takahashi #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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