ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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警視庁公安部外事3課資料流出その3

 外事3課の文書ですが、情報漏洩源が特定されないような工作がされていることから、流出事故ではなく、何者かが故意に流した可能性がきわめて高いようです。07~08年当時に外3にいた内部の人間でしょうか。実員百数十名。人事異動分も入れると、さらに対象人員数は若干増えるでしょうが、とりあえずはその全員が被疑者ですね。
 警察庁や他の外事課員にも、もしかしたらこのくらいの資料を入手できた人がいるかも。そういう人も被疑者となれば、現在警察で漏洩経路捜査を担当されている方のご苦労は察するに余りあります。

 さて、その内容ですが、前エントリーで書いたように、マスコミが様子見な感じで小出しにしていたのが、本日の読売新聞がどーんと書いていました。また、毎日新聞によると、流出資料は全114点。とすると、私がググッて見たのは全点ということになります。
 私は3回くらいの検索で簡単にたどり着き、GOOGLE DOCSにアップされていたのを見ました。他のサイトはどうか知りませんが、GOOGLE DOCは昨日には削除されていました。読売はサイト削除されたのでゴーとなったのかもしれませんが、わかりません。
 それにしても、この問題が大々的に報じられてから、GOOGLE DOCS削除まで数日もかかってます。海外でもウィキリークスが問題になってますが、なかなかこういうものへの対処は難しいのでしょう。
 
 ところで、今回の資料から垣間見えたテロ対策の実態ですが、どうもなんだか少し方向違いのような気がしてなりません。要するに「いない敵を一生懸命に追っかけている」感じですね。「風車を巨人と思って突進するドン・キホーテ」とまでは言いませんが、もう少し効率的にやったほうがいいのでは、と部外者として率直に思いました。ジョン・ル・カレの『パナマの仕立て屋』は、存在しないパナマ革命組織をめぐるイギリス情報部の物語でしたが、なんだかあれみたいです。
 要するに、公安部は大げさなのですね。リオネル・デュモンの件があったので、手を抜くと多方面からツッコまれるという事情はあるのでしょうが、過剰反応に感じられるのは、イスラム・テロのウォッチャーとして私がノー天気なだけでしょうか。
 たとえば、洞爺湖サミットの頃に2人の人物を「テロリストかもしれない」と追跡し、完全監視下においてますが、まずあれだけの根拠では、とてもテロリストとはいえません。口先だけの自称シンパなんてどこにでもいますが、そういう連中までいちいち摘発するつもりなのでしょうか。
 今回の資料流出について、メディアも「手の内がバレた!」とか「APECに影響!」とか、「FBIのネタ流出したのは信用失墜だ!」とか書いてますが、それも大げさですね。手の内がバレたのは事実ですが、それほどバレて困るような内容でもないです。日本の信用失墜というほどでもないでしょう。ネットでの情報漏洩は欧米ではそれこそもっと段違いに深刻なので、この程度ではそんなに気にすることでもないと思います。
 警察サイドとしては、実質的にいちばん困るのは、捜査員の個人情報が漏れた件でしょう。外国の情報源の個人情報が漏れたのも、ちょっとシャレになってませんね。公安部が思うほどのたいしたネタ元ではないでしょうが、個人が特定されるとその人はたしかにちょっと危険ですね。
 某国大使館の給与振込み状況を監視していたというのは、その程度のことは世界中のインテリジェンス機関がやっている常識ですが、公式に表面化すると外交上はマズいかもしれません。諸外国からすると、「通信傍受すれば簡単なのに、日本の警察はそんなことしかやってない!」ほうが新鮮な驚きかもしれませんが。
 ホテル、レンタカー、銀行などとの協力関係は、公式にオープンにされるとマズいのかもしれませんが、これらも公安記者などの間では以前から周知の話ですね。

 私はリベラル派の方々のように個人情報がどうのというよりは、どちらかというとインテリジェンス活動推進派なのですが、その視点からも、効率の面でかなり改善すべき点があるように感じます。なので、今回はイスラム・テロのウォッチャーの端くれとして、「日本のイスラム・テロ対策こうあるべし!」という私論(暴論)をちょっと書いてみます。
 まず、テロリスト容疑者としては根拠が希薄な外国人を監視してるような印象なので、もう少し対象を絞るべきではないかなと思います。在日イスラム外国人の根こそぎ調査なんていうのも、費用対効果の観点からすると、労力の無駄遣いではないでしょうか。特定施設や特定コミュニティに絞ったほうがいいでしょうね。
 こうした非効率な調査になってしまう理由のひとつは、世界の対テロ治安機関では常識になっている「通信傍受」が日本の場合、ちゃんと認められていないことも大きな原因です。通信傍受は人権の問題から、世界でも議論になっているのですが、対テロ捜査では、それなりに縛りをかけるにしても、もう少し捜査機関に権限を与えないと、税金が非効率に使われる結果になります。
 私自身の考えは、そんな大量調査に予算を割くより、通信傍受と翻訳作業に予算をかけたほうが、将来的にも役立つのではないかなというものです。前述したように、某国大使館の通常の金銭の動きを追って、内部事情を探ったりしていますが、そんな遠まわしなことより「ターゲットを絞って通信傍受」というのが、世界の常識です。
 まあ、脅威の評価も適切かなあと疑問なものがあります。たとえばヒズボラのテロを警戒したりもしていますが、日本でヒズボラがテロなんて、ヒズボラ・ウォッチャーの私からすると、かなり斬新な発想です。
 海外でテロ事件が発生した場合に現地投入されるチームも非効率的ですね。FBIじゃないのだから、警察機関が犯人を捜査なんて無理だと思います。外務省内にテロ対策専門機関を作り、現地派遣の警察スタッフが合流するかたちが、効率という点では良いのではないでしょうか。
 警察の方でも海外赴任経験者の方はもちろんご承知だとは思いますが、海外での情報収集活動というのは「慣れ」が大きくモノを言います。海外の協力者にわざわざ日本から行って面談したりするより、海外に情報要員を配置し、日常的にもっと広く情報収集すべきですね。そういう経験があると、カネの使い方の勘所もわかってきます。
 そもそもこういう世界では「相手との信頼関係を作る」なんていうのより、「うまくカネを使う」ほうがたぶん近道だと思います。もっと暴論と言うと、法執行機関が法律遵守というタテマエはわかるのですが、不法滞在者を協力者対象から排除するなんてのも、逆です。アウトロー度が高いほうが、情報屋としては価値があります。もちろんそんなことは重々承知のうえでのことなのでしょうが。
 ということで、私の結論としては、「公安部に在日イスラム外国人テロ専門の調査部門があるのは非効率的。外国人に対する捜査は専門職なので、外国人主体の麻薬密輸やカード詐欺なども捜査する国際犯罪捜査部(事実上の在日外国人犯罪捜査部門)を作り、そこがイスラム・ネットワークも監視するのが効率的。人員・予算は国際犯罪捜査部に振り分けよ」ということです。イスラム・テロの脅威に直面する欧米と、そうでない日本の違いですね。
 外事でも、外1や外2の対象は実在のものですが、外3の対象は「いないかもしれない」ものです。そこは捜査機関の組織体系も調査方法も別のものと考えるべきではないでしょうか。ホントは「海外で情報収集するインテリジェンス専門機関」を別に作り、そこと連携するかたちがいちばんいいと思うのですが。
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  1. 2010/11/03(水) 10:53:08|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

srt

http://uni.2ch.net/test/read.cgi/police/1349421787/
警視庁外事3課流出資料  国際テロリズム緊急展開班班員名簿
  1. URL |
  2. 2012/10/05(金) 17:37:58 |
  3. dfせ #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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