ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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肩書きについての悩み

 今回も雑談話で恐縮です。ここのところ昭和裏面史関連の仕事が続いているのですが、先日、とある仕事で自分の「肩書き」についてふと考えることがありました。肩書きのどこかに「インテリジェンス」という用語を入れたらどうかと、勧められたのです。
 しばらく軍事雑誌で仕事をさせていただいていたので、その延長でなんとなく便宜的に「軍事ジャーナリスト」を使っているのですが、自分でもしっくりきません。私はどちらかというとインテリジェンスとか旧軍特務機関などが得意分野で、兵器方面は専門外なので、他に適当な肩書きはないかなと考えてみたのですが、なかなか思い浮かびません。まあ世界各国のインテリジェンス機関というのは、もともとはほとんどが軍の一部門だったわけなので、「ミリタリー・インテリジェンス・ジャーナリスト」→「軍事情報ジャーナリスト」→略して「軍事ジャーナリスト」でも「まあいいや」という感じで今日に至っております。
 あるいは、もっと間口を広げる意味で、大雑把に「ジャーナリスト」というのはどうかなとも思ったのですが、なんだか田原総一朗氏とか立花隆氏とか故・筑紫哲也氏とかの大御所イメージがあって、なんとなく「エライ人」「正義の人」みたいな印象になるので、私ごときでは明らかに「上げ底」「誇大表示」になってしまいます(と感じます)。以前、ある国を取材中に、日本の各社特派員が勢ぞろいしているなか、知人に「ジャーナリストの黒井さんです」なんて紹介されてしまい、「知らねーなー」「誰よ?」的空気が流れたこともありましたし。
 不思議なんですが、「軍事ジャーナリスト」など「××ジャーナリスト」とすると、単なる「ジャーナリスト」よりも居心地がいいのはなぜなんでしょう? 「評論家」というのも、「××評論家」でないと座りが悪い肩書きですね。肩書きって独特の世界がありますよね。
 そういえば、「作家」という肩書きは結構人気があるようです。ジャーナリストや評論家的な人でもときおり見かけますが、「作家」というカテゴリーの幅広さもあるでしょうが、「ジャーナリスト」や「評論家」という肩書きが好きではないという場合も結構多いのではないかと邪推しています。もちろん麻生幾さんのように「フィクションを書いているので、今はジャーナリストではない」ときちんと線引きしている方もいらっしゃいますが、あまり最近は小説を書いていない方でも「作家」の方はいます。一方、逆にその語感の文化人臭が嫌いなのか、あえて「小説家」で通されている作家の方もいらっしゃいますが。
 話がずれますが、文化人枠では「映画監督」も大人気ですね。これも「映画監督が主業種」でないとホントは変ですよね。ずっと「宇宙飛行士」の方もいますが、あれはもちろんご本人の意思ではないでしょう。変わった肩書きといえば、「ライフスタイル・コーディネーター」とか「ハイパー・メディア・クリエイター」の方もいらっしゃいます。なんだかよくわかりません。

 で、自分の肩書きをいろいろ考えてみました。
▽軍事アナリスト
→ひたすらデータを分析し、将来を科学的に予測するプロフェッショナルという感じです。報告書をどこぞの機関に提出するというようなイメージですね。以前、主に海外のメディアや資料をひたすら集め、こねくり回して記事を書くということばかりしていた時期があったのですが、当時の著書には「軍事アナリスト」という肩書きを載せたことがあったと思います。いま思うと、なんか違いましたね。
▽軍事ライター
→軍事ジャーナリストよりいっきに庶民派です。「ライター」ってどうして軽いイメージなのでしょう? 例えば初対面の人に連絡するときなど、自分を「軍事ジャーナリストの黒井です」とはなかなか口に出して言えず、つい「軍事ライターの黒井です」と言ってしまう卑しい自分がいます。自分を「××ジャーナリスト」と呼ぶなんて、まるで「私は正しい人間です」「立派な人間です」と宣言しているような気がして、小心な私はどうしても「とてもとても私なんぞ」とビビってしまうのですね。「写真家」と「カメラマン」の違いも似てるかも。
 ただ、「フリーライター」となると、いかにも出版業界では最底辺な語感になります。私は営業形態からするとフリーライターそのものなのですが、なんかそれもちょっと勘弁してほしい感じです。
▽軍事リポーター→軍事ライターと似た感じですが、馴染みがないですね。日本で「リポーター」というと、どうしてもTVで事件現場から報告する人ってイメージです。

 ところで、リポーターもライターも和訳すれば「記者」でいいと思うのですが、日本で記者というと、なぜか特定メディア専属の人に限定されてます。フリー記者という肩書きを名乗っている人は、少なくとも私は聞いたことがありません。ちなみにフリーライターは税務署では「文筆家」に分類されます。10階級くらい特進ですね。
 
▽インテリジェンス・ジャーナリスト→インテリなジャーナリストって、凄すぎます。
▽インテリジェンス・ライター→インテリなライターになっちゃいますね。
▽インテリジェンス・リポーター→英米メディアの情報機関担当記者などはこう呼ばれることが多いですが、やっぱり日本では「何それ?」でしょうね。私の理想はこれに近いんですけれども。
▽インテリジェンス研究者→大学の専任講師あたりの感じですね。
▽インテリジェンス研究家→本業がしっかり別にある「趣味の人」の印象ですよね。
▽テロ研究家→危険人物ですね。
▽テロ・ライター→なんじゃそれ
▽テロ・アナリスト→インリンみたい。

 収入という観点からすると、私は「フリー編集者」と「フリーライター」が半々くらいなので、業種的には「(フリー)編集者兼ライター」といったところですが、万能対応職人型ではなく、守備範囲が狭いので、正しくは「インテリジェンス分野をメインに他にもちょこちょこ手を出している中途半端なフリーランスの編集者兼ライター」という肩書きになります。

 周囲の知人をみても、フリーの人は肩書きをいろいろ苦心している人が多いです。他に妥当な用語がなく、しかたなくて「ジャーナリスト」とか「××ジャーナリスト」という肩書きを使っていても、内心は「なんかやだなあ」と思っている人はけっこう多いと思います。実際、作家さんのように、名前だけで肩書き未記入の名刺を使っている人もいます。私は今はちょっとした工夫をしてなんとかごまかして凌いでいるのですが、以前は名刺にしっかりと「軍事ジャーナリスト」と入れていました。渡す相手は私の仕事関係ですからいいのですが、最初に印刷業者で名刺を作るとき、ちょっと恥ずかしかったです。
 結局ですね、日本では肩書きは所属組織がないとなかなか座りごこちが良くならないということかと思います。 
「××新聞記者」「××大学教授(非常勤講師だって可)」「週刊××編集長」「××研究所長」・・・あるいはせめて「××研究会副会長」「××調査会理事」「××フォーラム主任」くらいでも欲しいところです。
 思えば吹けば飛ぶような超零細メディアでしたが、それでも『ワールド・インテリジェンス編集長』をやらせていただいた時期は、肩書き的にはラクでした。現在、当ブログではタイトルに『ワールド・インテリジェンス元編集長』と便宜的にしていますが、あまりに無名の雑誌だったため、もちろん世間では通用しません。
 なので、現在はちらりとでも軍事と関係のあるネタの場合は「軍事ジャーナリスト」にしてもらっています。昭和裏面史関連などのように、まったく軍事に関係のないネタのときは、寄稿した雑誌の編集部のほうで自動的に「ジャーナリスト」にしてくれる場合が多いですね。大事なのは記事の中身であって、肩書きなどとるに足らない問題なのでしょうが、何かいいのがあればなあとは思います。

 あまり同業者のいない地元の呑み屋などでよくあるやりとり。
「おたく、仕事は何?」
「え・・・あの、ライターです」(突っ込まないでスルーしてくれ、と内心叫ぶ)
「ふーん、どんなの書いてんの?」
「ま、軍事関係とかいろいろ」
(相手の視線が、明らかに「変人」を見る目に変わる)
「へー、武器とかそういうの詳しいんだ?」
「いや、僕はちょっと違うほうなんですけど」
「ん? どういうこと?」
「あの・・・インテリジェンスとか」
「何それ?」
「つまりスパイとか国際テロとか・・・」
(ここで明らかに「ペテン師」を見る目に変わる)
「いや、だからCIAとかアルカイダとか」
(ますます胡散臭そうな視線に)
「ふーん・・・」
(なんとなくその視線に耐えられなくなる)
「いや、外交とか国際政治とかも少しは」(ああ俺はなんてダメなヤツだ、と内心うなだれる)
「ああ、そういうやつね」
(相手、納得してくれる)
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  1. 2010/04/09(金) 06:50:13|
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  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

 コメントさせていただきます。 
黒井さんのことは以前何かで「テロ・ウオッチャー」と書かれており、何者なんだと思った記憶があります。
それはさておき、一読者としては確かに「ジャーナリスト」というより「インテリジェンス専門家」のような専門性が付与されている肩書きがしっくりくる気がします。
とはいえ肩書きが何であろうと今後のご活動も応援しています。
  1. URL |
  2. 2010/04/10(土) 13:48:42 |
  3. コピィロフ #-
  4. [ 編集]

コンチワ、黒井先生。「仕事で自分の肩書きに『インテリジェンス』という語を入れたらどうかと勧められた」という事ですが賛成!是非「諜報ジャーナリスト」か「諜報問題専門記者」にして、カタカナは止めよう(笑)。参考になるか知れませんが、現在日本の「インテリジェンス・ブーム」と1940年代建国前後のイスラエルの状況は酷似してる。というのは、当時ヘブライ語に英語の『インテリジェンス』に相当する言葉がなかった。それで、関係者の間でいろいろな言葉が試され、例えばシオニスト武装組織ハガナーの情報局の「情報(イェディオット)」は今日のニュースの意に相当、イスラエル紙の『イェディオット・アハロノット』は最新ニュースという意です。モッサド創始者ルーヴェン・シロアッフの伝記にはシロアッフが「トゥヴナー」「ビナー」「ダアート」など知性・知恵という意を当てはめようとしたが定着せず、最終的に「ビユーン」という言葉が残りました。後、モッサドやアマーン、警察諜報局で組織名の一部に使われている「モディイーン」と言う言葉の2つが日本の諜報や情報に相当します。
  1. URL |
  2. 2010/04/13(火) 01:02:52 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

黒井先生と意見一致しますが、日本は『インテリジェンス』の定訳も無いほどの諜報後進国。例えばイスラエルの例ですと、大手新聞各紙にはそれぞれ諜報問題担当の記者がいます。まず、近年躍進中のヘブライ語無料紙『イスラエル・ハヨーム』には総参謀部諜報局アマーンの分析部長(准将級)であったヤアコーヴ・アミドゥロールが担当。アミドゥロールはモサッドやシャバックなどに諜報要員を育てているテル・アヴィヴの国防省内国防大学の元教員(学長だったか?)で国防省出版から諜報関係の入門書をも書いているくらいのエキスパート。
http://www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/136079
安全保障問題に造詣のある『マアリヴ』には自身が元モサッド要員で作家でもあるガッド・シムロンがいる。
http://www.israelispeakers.co.il/110277/Gad-Shimron
また、『イェディオット・アハロノット』にはイスラエルジャーナリズムが生み出した神童であるロネーン・ベルグマン博士(ケンブリッジ、国際関係)がイランやヒズバッラーに関する調査報道を週末版などに掲載。
http://en.wikipedia.org/wiki/Ronen_Bergman
『ハアレッツ』には数々の諜報に関する本を書いた大御所ヨッシー・メルマンがいる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Yossi_Melman

対して、日本の大手新聞社の状況は寒すぎるのでは?いくら国民の安全保障リテラシーのレベルが違うと言っても少数の好事家しか読まない軍事雑誌のみの、さらにマージナルのポジション....
  1. URL |
  2. 2010/04/13(火) 01:40:56 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

黒井先生利用論

あっ、上記は黒井先生のあり方を批判したり馬鹿にしたのでなく、産経新聞など主流が何故もっと黒井先生などの諜報専門家を活用しないのかという事でした。でも、結構テレビの世界ではアドバイザーとして入っているようですね。
  1. URL |
  2. 2010/04/15(木) 01:43:38 |
  3. 道楽Q #HfMzn2gY
  4. [ 編集]

コピィロフ様 コメントありがとうございました。
 テロ・ウォッチャーって我ながら怪しすぎますよね。まあ、やっていることは、だいたいそのとおりなのですが。

道楽Q様 いつもコメントありがとうございます。
 日本では公的機関でも報道機関でも、インテリジェンス分野一本でやっていける人事体系になっていないので、どんな優秀な人でも専門性を身につけるのはなかなか難しいと思います。大学やシンクタンクでもほとんどそういうコースはないですし。
 私のようなフリーライターは、その気になればワンテーマに絞って没頭することも可能ですが、実際には、生活費を得るためにさまざまな分野に手を広げなければなりません。
 それでも私は軍事誌のインテリジェンス記事欄担当やインテリジェンス専門誌編集人をやらせていただいたので、少しはこの分野を勉強する機会を得る幸運がありました。でも、なかなかこの分野一本というわけにはいかないのが現実です。もちろん私の能力&努力不足のせいなので、愚痴っていてもしかたないのですが。
  1. URL |
  2. 2010/04/15(木) 16:22:10 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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