『ニューズウイーク日本版』今週号に特集記事も出てましたが、現在、パキスタンのアザド・カシミール&パンジャブ系イスラム過激派テロ組織「ラシュカレ・タイバ」が勢力を伸ばし、従来の対インド限定から対欧米キリスト教社会へと攻撃対象を拡大している傾向があります。『ニューズウイーク』では「第2のアルカイダ」とまで表現されていますが、あのあたりはもうアルカイダとタリバンとパキスタン・タリバンとラシュカレ・タイバと他のパキスタン&バングラデシュ各イスラム過激派とをひとまとめにして考えないといけないでしょう。いわば「中央アジア・南アジアのアルカイダの仲間たち」という一大テロリスト勢力がいるわけです。
もっとも、この「仲間たち」のなかで、アルカイダの中核であるアラブ人やタリバンのアフガン・パシュトゥン人よりも、米軍の攻撃に晒されずに大っぴらに軍事訓練ができるパキスタン人グループの存在感が徐々に強まっているということはあります。ラシュカレ・タイバの台頭は、「仲間たち」のなかでパキスタン人勢力が主役になりつつあることにリンクしています。
パキスタン人のイスラム強硬派ネットワークが要警戒ということになると、日本の公安警察も忙しくなるかもしれません。アメリカと同盟国の情報機関は911以降、全力で世界に散ったアルカイダ系ネットワークの監視作業を行っていますが、その中核だったアラブ系ネットワークについては、日本はあまり関係ありませんでした。国内にほとんどアラブ人コミュニティが存在しなかったからです。
ですが、パキスタン人はかなり流入していて、実際に日本国内のイスラム活動の主役になっていますから、例えば本国のイスラム強硬派の人脈に繋がる人物が入国していてもおかしくありません。その人物がたとえイスラム過激テロ組織のメンバーでなくても、ちょっとした知り合い程度の関係ならいくらでも見つかることでしょう。そのほとんどが無害だとしても、公安警察には、そのあたりはいちおう押さえておくことが要求されます。公安警察の対イスラム・テロ部門はこれまでもパキスタン人たちを監視してきているようですが、そのさらなる徹底化をアメリカのカウンターパートから要求されることにもなるでしょう。
日本に武器を持ち込むことは容易ではないので、日本国内でアメリカ大使館を狙うといった類のテロはあまり現実的ではないですが、中古車や電化製品などの貿易の利益とか、あるいは在日のモスクが集めた寄付金などが回りまわって「仲間たち」の資金源になっていた、なんてことくらいはあってもおかしくないですね。
ちょっと古い情報ですが、2002年1月刊の拙著『世界のテロリスト』(講談社)から、ラシュカレ・タイバの項を転載します。
◎「ラシュカレ・タイバ」(正義の軍隊:RASHKAR-E TAYYIBA)
ラホール近くのムドゥリケで、ISI(パキスタン軍統合情報局)がパキスタンのスンニ派原理主義組織「伝道・指導センター」(MDI: MARKAZ UD DAWA WA WALIRSHAD)の軍事部門として、89年に創設。93年よりカシミールで武装闘争を開始するが、もともとアフガン戦争時代の義勇兵人脈を母体としているため、幹部のほとんどはパキスタン人かアフガニスタン人である。司令官はハフィズ・ムハマド・サイード。全世界のイスラム連帯を掲げる。兵力は300~400人とみられている。ISIにより訓練され、その強力な影響下にある。ISIの傭兵として、シーク教徒やヒンズー教徒住民の虐殺を行っているとされる。
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2010/03/26(金) 10:30:23 |
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