ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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シー・シェパードて何?「いまどき左翼過激派」の系譜

 捕鯨反対で無茶な活動をやって世間の注目を集めている環境保護団体「シー・シェパード」がまたまた世間を騒がせています。あれは、環境保護団体大手の「グリーンピース」から跳ね返りの幹部が追い出されて作った団体で、いまどきの左翼業界では、反主流派の厄介者なのですが、日本のメディアではなんだかかなり有名になってきました。
 そこで今回は、2年前の洞爺湖サミットのときに、サミット妨害を生き甲斐とする「ブラック・ブロック」という集団を中心に、いまどき左翼過激派について総括した記事を再録してみようと思います(元原稿は『週刊エコノミスト』に寄稿)。

いまどきサヨク過激派の系譜

 2008年3月10日、サハリンから北海道・小樽港に入港したロシア貨物船に1人のドイツ人男性が乗船していたが、札幌入国管理局小樽港出張所によって上陸を拒否され、そのまま数日後にロシアに送り返された。入国拒否の理由は、所持金が少なく帰国チケットを所持していなかったことや、滞在日程が不明だったということだが、この37歳のドイツ人はじつは反グローバリズム活動家で、北海道洞爺湖サミットに対する反対集会に出席する予定だった。
 08年7月に開催される洞爺湖サミットに対しては、当然ながら入管当局や警察当局がテロ対策に本気になって取り組んでいる。もっとも危険なのはイスラム過激派アルカイダであり、全国の外事警察は現在、かつての極左過激派取締りの際の〝アパート・ローラー作戦〟にも似た国内在住イスラム系外国人の徹底した情報収集を進めているが、もうひとつ最重要警戒対象となっているのが、世界経済のグローバリズムに反対する〝過激派〟勢力だ。
 欧米の若者層を主力とするこれらの反グローバリズム団体は、先進国主導のグローバリゼーションが途上国の国民生活を圧迫しているとして、近年のすべてのサミットにおいて、街頭での抗議行動を実行してきた。その際に警備当局としばしば衝突していて、何度も暴動まがいの騒動を引き起こしてきている。たとえば07年6月の独ハイリゲンダム・サミットでは8万人規模のデモが暴徒化し、約1000人が身柄を拘束される事態となった。
 彼らは今度の洞爺湖サミットに際しても日本での抗議活動を計画しているが、日本政府は過激派の入国を空港や港湾の入国審査時に水際でくい止めようと、そうした活動家と思しき人物への入国審査を厳しくする措置をすでにとっている。2002年のワールドカップ時に導入した入管難民法のフーリガン条項(過去に暴動参加や建造物破壊行為などで摘発されたことのある外国人の入国を拒否できる条項)の適用も準備されているようだ。
 一方、こうした反グローバリズム団体の〝兄弟分〟として環境保護団体があるが、こちらにも近年、日本を対象とする過激な抗議行動を続けている団体がある。世界的に有名な環境保護団体「グリーンピース」から過激分子が分派して結成された「シー・シェパード」という団体で、日本の捕鯨を実力で妨害するという行為を続けている。たとえば08年1月15日に南極海を航行中の日本の調査捕鯨船に不法侵入したり、同3月3日に酪酸と思われる薬品入り瓶で〝襲撃〟したり、はたまた同3月6日には在英日本大使館の外壁をよじ登ってバルコニーに侵入し、捕鯨反対の横断幕を掲げたりと、その活動はもはやデモンストレーションの域を超えていると言える。

 こうした団体は、もちろんアルカイダのような本物のテロ組織ほど危険な存在ではないが、それでも「自らの信条のためなら多少の暴力行為も正当化される」という行動パターンは治安上も決して無視できるものではない。では、このようにしばしばニュースに登場するようになった〝暴れ者たち〟の正体とは何か?
 ひとことで言えば、彼らは、血の気の多い〝いまどきのサヨク〟ということになるだろう。必ずしも政治的な左翼思想とは言えないが、反核・平和、環境保護、動物愛護、反グローバリズムといった価値観の市民運動を基盤としていて、そこに労働組合やリベラル派・左派政党なども関与しているケースが多い。系譜としては、70年代のベトナム反戦運動に穏健な立場から参画したヒッピー・ムーブメントの末裔にあたると考えていい。
(実際、代々のロック・ミュージシャンがこうした運動のシンボルになっていて、たとえばかつてのジョン・レノンの役回りを今では「U2」のヴォーカルのボノが務めている。ちなみにオーストラリアのピーター・ギャレット環境相は元ロックバンド「ミッドナイト・オイル」のヴォーカル。日本ではさしずめ坂本龍一や忌野清志郎がその系譜にあたる)
 彼らの最大の特徴は、「弱者の味方である自分たちは正しい」と一分の迷いもなく信じていることだろう。ヨーロッパの多くの国では地域の普通の子供たちがボランティアとしてグリーンピースの募金集めを行っていたりするので、そのあたりの感覚は日本人が考えるよりはかなり強固なものがある。日本ではグリーンピースは半ば左翼団体視されているが、欧米豪などでは絶対的な〝善〟に捉えられているのだ。
 こうした運動は政治的にはたいていは穏健なものに終始するが、「〝ラブ&ピース〟と叫んでいるだけでは何も変わらない!」と直接行動にはしる過激派はいつの時代にも実在する。街頭で暴徒化する若者の群集心理はまさにフーリガン、あるいはネオナチなどの極右と似たようなものだが、ネオナチが「外国人移民は出ていけ!」と叫んで暴れるのに対し、〝いまどきサヨク〟はあくまでも弱者の味方なので、「外国人移民を守れ!」と叫んで暴れるわけだ。
 では、こうした〝いまどきサヨク〟の過激派を以下に分類してみよう。

反グローバリズム団体

▽ブラック・ブロック
 街頭で過激な抗議デモを行う反グローバリズム活動家の総称。正式には「ブラック・ブロック」という名の組織はないが、メディア的に使い勝手がいい用語のため、近年の欧米主要メディアに定着している。
 言葉の由来は、デモ参加者たちが好んで黒い衣装を着ることにある。黒がもともと無政府主義者のシンボル・カラーだったからだとの説もあるが、その真偽は不明だ。実際のところ、当初はデモ参加者の身元を隠すためのものだったようだが、今では同志の結束を誇示する一種のトレードマークのようなものになっている。ブラック・ブロックの起源は80年代のドイツで、それが91年の湾岸戦争反戦デモを機にアメリカに広まったとの説が有力である。
 とくに99年頃より、サミットをはじめWTO(世界貿易機関)あるいはIMF関連の国際会議などで組織的にデモ活動をするようになり、しばしば暴徒化している。破壊行為の対象は、主に有力な多国籍企業や金融機関の事務所など、グローバリズムを象徴する建造物が多いが、暴徒化の端緒として計画的に警官隊と衝突している傾向も見てとれる。
 ブラック・ブロックには欧米およびオセアニアの多くの団体が参加しているが、とくに有名なものをいくつか挙げる。
▽DISSENT!(異議)
 05年7月の英グレンイーグルズ・サミットに対する抗議活動を組織するために、欧州各地の反グローバリズム団体が参加して結成した国際ネットワーク。
▽ウォンブルス
 ロンドンを拠点とする反グローバリズム団体。「自由獲得効果的闘争オーバーオール運動」の頭文字だが、イギリスの子供向けアニメのキャラクター「ウォンブルス」に引っ掛けたもの。かつて街頭デモで白いオーバーオールを着用したことが名前の由来となっている。2000年代に入って活動を本格化させている。
▽ワイルド・グリーン
 97年にニュージーランド緑の党から派生した青年運動。その後、カナダをはじめ英語圏に勢力を伸ばしている。
▽反人種差別行動ネットワーク(ARA)
 80年代後半に米国ミネソタ州で結成。ネオナチ、白人至上主義運動、妊娠中絶反対運動などに反対する組織。主に北米を活動エリアとする。06年8月のウイスコンシン州での右翼デモに対抗するブラック・ブロックを主導した。
▽反ファシスト行動(AFA)
 85年にイギリスの極左活動家らによって結成された。主に右翼勢力への抗議を行っている。

環境保護団体

▽グリーンピース
 オランダを本部とする世界最大の環境保護団体。もともとは69年にアメリカの核実験に反対する主旨でカナダで創設された。70年代はじめより、各国の核実験海域に自前の抗議船を派遣して実験を妨害するという活動を続け、さらに70年代半ばからは反捕鯨運動にも乗り出している。
 グリーンピースは決して暴力的な直接行動を指向する団体ではないが、メディアを意識した派手なデモンストレーションを身上としており、各国の治安当局とときに対立する。日本との関連でも、92年に核物質を輸送していた輸送船を護衛していた海上保安庁の巡視船と衝突事故を起こしたり、05年12月、06年1月に南極海で日本の調査捕鯨船と接触したりといったことがあった。
▽シー・シェパード
 グリーンピースの共同創設者で直接行動派の中心人物だったポール・ワトソンが77年に組織を追放された後、81年に米カリフォルニアで設立した過激な環境保護団体。主に捕鯨反対運動で知られる。
 80年代より世界各地で捕鯨船を爆破したり、エスキモーのアザラシ漁を妨害したりといった活動を続けているほか、日本の調査捕鯨船に対しても、体当たりやスクリューにロープを絡ませて停止させるなどの妨害行為を続けている。また、03年には和歌山県のクジラ追い込み漁の仕切り網を切断するなどの犯罪も行っている。
 日本では〝エコ・テロ組織〟の代表格として非常に評判が悪い組織だが、「クジラがかわいそう」という声が圧倒的多数派の欧米豪などの国民のあいだでは英雄視されている。支持者にはミック・ジャガーやダライ・ラマなどの大物も名を連ねており、米『タイム』誌は00年に彼を「20世紀で最大の環境問題ヒーローのひとり」と評した。英『ガーディアン』紙は08年1月に「地球を救う50人」に彼を選んでいる。同年3月20日には、環境保護活動に関する豪州の有名な賞である「野生動物保護の戦士賞」が彼に贈られている。

エコ・テロリスト

 以上が〝いまどきサヨク〟の代表格と言えるが、世の中にはじつにさまざまな考えの人々がいる。地球環境や野生動物の保護のためには、テロも辞さないというエコ・テロリストの面々だ。ほとんどが〝仲間内〟の集まりによる泡沫組織のようなものだが、なかには以下のように、それなりに組織的な活動をしているケースもある。

▽動物解放戦線(ALF)
 76年にイギリスで結成された過激組織。狩猟愛好者の車両や皮革販売店、食肉店などへの放火や、それらの従業員への脅迫・傷害などを行う。90年代には「動物実験を行う研究施設に抗議して、HIV感染血液を食品に混入した」とか、「皮革靴店にHIV感染血液を詰めた爆弾を仕掛けた」などといった声明を発表したこともあった。
 同組織は極端な例だが、ベジタリアンも多い欧米先進国では動物愛護活動の裾野は日本とは比較にならないほど広く、ニューヨークやロンドンの高級エリアでは毛皮を着る女性にいきなり赤インクをかける行為なども頻発している。
▽地球解放戦線(ELF)
 前記「動物解放戦線」の姉妹組織。94年結成。環境保護のためならテロも辞さないと公言する。環境に影響を与える高級SUV車などを標的としている。
▽ハンティンドンの動物虐待阻止(SHAC)
 動物解放戦線の姉妹組織。イギリスの医薬品・食品安全性試験会社「ハンティンドン・ライフ・サイエンス社」の動物実験を阻止するために99年に結成された。01年には同社社長に暴行を加えたほか、同社関連施設への放火・爆破をたびたび起こしている。
 こうした〝エコ・テロ組織〟は社会的な支持基盤もほとんどない弱小組織とはいえ、やっていることは立派な犯罪行為であるため、米英の治安当局は明確にテロ・グループと定義してその動向を追っている。

 とりあえず日本にとって喫緊の課題は、洞爺湖サミットにおけるブラック・ブロックの活動をいかに抑えるかということだ。幸いなことに極東の片隅にある日本にまでわざわざ大人数の〝血の気の多い若者たち〟が押し寄せることはなさそうだが、セミプロ活動家の何人かは必ず訪日するだろう。ただ、彼らは同時に、サミットの重要な議題のひとつである地球環境問題のNGO活動家でもあるから、サミットに合わせて日本を訪問する正当な理由もあるということになる。正当なNGOメンバーをやみくもに入国拒否するわけにもいかないはずだ。
 今のところ彼らの受け皿になる日本国内のサヨク系市民団体はいずれもきわめて小規模なものであり、日本国内で大掛かりなデモを組織する力はなさそうだが、かといって警戒を怠ってはなるまい。
(以上、再録)
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  1. 2010/03/15(月) 16:01:36|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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