ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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普天間飛行場問題についての私見

 久々の更新ですが、今回はちょっとオピニオンぽいことを書いてみます。

 オバマ訪日を前に、普天間問題が大きく注目されています。で、日米同盟に関してさまざまな考えがメディアでは飛び交っているのですが、それらを視ていても、よくわからないことがあります。
 問題は日米同盟の是非とか、在日米軍の意味とか、そういうことなのでしょうか? アメリカはなにも好意から日米安保をやっているわけではありません。自国の国益にプラスだからそれを選択しているわけです。冷戦時代、世界中でソ連と熾烈な影響圏争奪バトルをしていたアメリカは、日本を対ソ防波堤とすることが国家戦略上、死活的に重要だったということですね。
 安保条約の片務性を問題視する意見が多いですが、アメリカの国益という観点からすると、リアルな話ではあまり関係ない気がします。日米安保条約の本質は「基地提供」条約だと思います。
 では、安保によって得をしたのはどちらか? 在日米軍の起源は事実上「戦勝国による戦敗国への命令」ですが、冷戦中は日本側もそれで安全保障という利益を享受していたので、どちらが得をしたかは、簡単には結論づけられません。
 ですが、ここで無理やり「アメリカ側のコストである日本・極東の安全保障」と「日本側のコストである基地提供」がイーブンだったと仮定しましょう。これは誰にも計測不能ですが、ここでは仮に等価交換だったと理論上考えてみます。そうでないと、もとからこの条約は不平等条約だったということになります。
(この点、「安保によって日本はアメリカに一方的に守ってもらっているだけ」と考えている人が多いようですが、基地提供はその代価としては充分すぎるコスト負担です)

 で、私が不思議なのは、このコスト負担バランスにおいて、冷戦終結という基礎前提変更がなぜほとんど反映されていないのか?ということです。「日本・極東の安全保障」にとって、ソ連の崩壊というのは、もう天地がひっくり返るほどの大地殻変動です。ソ連が崩壊したということは、「日本・極東の安全保障」を提供するというアメリカ側のコスト負担が劇的に軽減したことを意味します。
 ここで北朝鮮・中国の脅威を引き合いに、極東はいまだ冷戦構造にあるとの論理も聞きますが、それに対処するコストはまったくレベルが違います。北朝鮮と中国の軍事的脅威は、ソ連軍とは比べものにならないくらい小さいものです。「日本・極東の安全保障」を提供するというアメリカの負担は、相対的に大幅に小さくなっています。
 それと、日本側のコスト負担バランスを考えたとき、「日本・極東の安全保障」の意味も大きく変化しました。たとえば北朝鮮・中国(ロシアも)はソ連と違って、本質的に日本侵略を戦略目標としていません。いまや「日本の安全保障」の比率が相対的に劇的に低下し、「極東の安全保障」がメインになっています。日米安保は「日本・極東の安全保障」が戦略目標ですが、日本にとっては当然ながら「日本の安全保障」が主で「極東の安全保障」は従にすぎません。朝鮮半島有事や台湾海峡危機に知らん振りしろというわけにはいきませんが、日本はサブ・プレイヤーにすぎず、そのコスト負担はそれに応じて低減するのは当然のことではないでしょうか。
 この日本側のコスト負担こそが、基地提供にほかなりません。日本は日本防衛という死活的な戦略に対して、泣く泣く貴重な国土を差し出しましたが、脇役となった現在、コスト負担は何かもっと違うかたちでも充分なのではないでしょうか。
 ところが、冷戦終結後も基地返還はきわめて限定されたものに留まっています。なぜか? アメリカの既得権益だからです。
 冷戦終結後、在欧米軍などはかなり縮小しました。費用対効果で費用過多になったからです。ところが、在日米軍は日本側が運営費用まで出してくれるので、米軍とすれば非常に安上がりですから、ずっと持っておきたいのは当然のことです。
 それは日本列島、とくに沖縄はアメリカの軍事戦略にとってきわめて重要な場所にあることは事実ですが、アメリカの軍事戦略はアメリカの都合であって、日本国民がその犠牲になる筋合いのものではありません。日本は自国の国益に合致する範囲で負担するだけの話でいいはずです。
 が、いまや日米のコスト負担バランスが、日本側の一方的過多になっちゃっています。これも計量化は不可能ですが、感覚的にはたとえば10対1くらいになっているのではないでしょうか(もちろん根拠のある数字じゃありませんが)。
 ですので、日本の防衛のために在日米軍が必要ということはいいとしても、問題はその規模ということではないかなと思うのです。

 で、日本がやるべき対米外交は、この不平等協定の是正ではないかと思うのです。なんだか明治初期の不平等条約解消交渉みたいですが、それこそが普天間問題の本質ではないかと思うのですね。
 実際のところ、たとえば沖縄の米軍基地などでは、もうほとんど使っていないようなところもあります。いざというときに使えるようにということですが、そのときは自衛隊基地も民間空港・港湾も使えますし、それは全部やめなくてもいいかもしれませんが、かなり撤収できるのではないかと思います。
 ですが、今の報道からさっぱりわからないのは、「なぜアメリカと、主権国家として当然のバーゲニング交渉ができないのか?」ということです。
「沖縄の海兵隊主力をグアムに移転してもいいけど、その費用は日本国民が出せ!」なんておかしくないでしょうか。普天間を含む米軍再編すべてがそうですが、すべて「アメリカが損しないならいいよ」というスタンスです。コストは両国が負担すべきで、日本側はすでに負担過多です。アメリカ負担が圧倒的に少ないというのはおかしな話です。
 自民党政権も民主党政権もこの点、やっていることは同じ対米バーゲニング交渉で、いずれもアメリカ側に要請して断られるという構図です。民主党は当初、主権国家としてアメリカに強く出るはずが、実際に政権を担当したら、そうもいかない現実に直面したのでしょう。
 そこで疑問なのは、主権を持つ日本政府が何もできないのはなぜなのか?ということなのですが、そこがまったくわかりません。普天間飛行場は危険だから閉鎖することを決めるのは、国民の安全を担う日本政府の当然の責務で、アメリカは主権国に従うべき筋の問題ですが、なぜそれが出来ないのか? 代替の方策は日本側でなく、アメリカ側が模索するのが筋で、アメリカ側から提案があれば、それを検討してあげてもいいというのが日本政府の本来の立場ではないのか。
 もしかして、アメリカがまさか日米安保破棄でもチラつかせているのでしょうか?
 米軍に強いことを言うと、信頼関係を損なう→日米安保が崩壊する、との意見もありますが、アメリカはコスト負担バランスが米側有利なうちは日米同盟を破棄しないでしょう。仮に現在、1対10で丸儲け状態のところを、1対1・5くらいにバーゲニングしても、まだ国益に有利なうちは立場を変えるはずもありません。

 ただし、日本・極東の安全を超えた部分が今、じつは重要になってきています。そこが普天間問題であまり触れられていないように思います。つまり、対テロ戦です。
 日本はアメリカの対テロ戦にたいして参加していませんので、その弱みがあります。申し訳程度に参加してますが、あれだけ米英はじめ各国の兵士が死んでいっているなかで、1人の戦死者もなく、1人も殺していないような国は、何もしていないのと同じようなものです。そこがアメリカからすると、「基地くらい出せよ」ということになるのかもしれません。
 ですが、対テロ戦への参戦は、日米安保の基地提供とは別枠として進めるのが筋ではないかと思います。
 いずれにせよ、日本政府はなぜかアメリカの既得権益に手をつけることが、主権国家なのにまったくできないという構造が歴然としてあります。そのリアルな交渉現場の事情を詳しく知りたいところです。
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  1. 2009/11/07(土) 12:00:45|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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