ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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レバノン南部で国連施設と避難所が爆撃

 イスラエル軍のレバノン爆撃が続いている。国連施設や避難所も容赦はない。
 7月25日には、レバノン南部ヒアムの国連施設が攻撃を受けた。イスラエル軍の爆撃は午後1時20分に始まり、午後7時30分まで計16波の攻撃が行なわれた。その間、国連軍側はイスラエル側に10回にわたり攻撃中止を要求。国連副事務総長などもイスラエル国連大使に連絡をとった。
 しかし、イスラエル側はそれを受諾したのにもかかわらず、現場のイスラエル部隊はそれを無視したかっこうだ。イスラエル側から、どのような情報伝達が同国内で行なわれ、今回の爆撃続行になったのかなどの一切の説明はない。
 結局、5発が施設を直撃。この日の最後の爆撃で国連部隊兵士4人が死亡した。兵士の国籍はカナダ・中国・オーストリア・フィンランドである。
 なお、自衛隊が参加しているゴラン高原PKOが国連部隊活動開始ただの1人も戦死者を出していないという無風地区なのに対し、すぐ隣のレバノン南部は、これまでもイスラエル軍とヒズボラの戦闘に国連軍が巻き込まれ、多くの戦死者を出している危険地域だ。実際のところ、今回と同様の事件も何度もある。
 たとえば、96年の大規模衝突の際には、筆者も現場取材でそれを経験している。医薬品を配る国連部隊のコンボイに同乗取材した際、イスラエル軍の猛烈な爆撃を受けて前に進めなくなったのだ。
 このとき、同乗していた国連軍の指揮官が直接イスラエル国防省に電話して(現場から直接、イスラエル軍司令官に電話を入れていた)攻撃中止を求め、相手もそれに同意したのだったが、その後も攻撃は続いた。国連軍部隊指揮官は何度も抗議の電話を入れたが、相手は「司令部は攻撃中止を命令したんだけどなあ・・・」とすっとぼけていた。国連部隊指揮官は「あいつらわざとだ」と断言していた。いつもそうなのだと言っていた。
 こうしたコンボイは、当時、南部国境地帯に展開していたイスラエル傀儡のキリスト教徒軍「南レバノン軍」にもしばしば妨害された。南レバノン軍はイスラエル軍の完全指揮下にあったから、国連軍への嫌がらせも当然、イスラエル軍の指示によるものと現場では皆が信じていた。
 国連軍指揮官はこういうとき、南レバノン軍司令部ではなく、本当のボスであるイスラエル国防省に抗議するのだが、南レバノン軍が出てきたときは、もう何のかんのと理由をつけてはぐらかされるのが常だった。南レバノン軍の検問を筆者も通過したことがあるが、こちらもなんだかヤクザのような雰囲気の組織だった。
 また、一度、国連軍(フランス軍)コンボイの後に追走したら、普段はあまりイスラエルに嫌がらせを受けないフランス軍が、なぜかそのときだけイスラエル軍の猛烈な爆撃を受け、前進を阻止されたことがあった。指揮官がイスラエル側と連絡をとったところ、「イスラエル現場部隊のことはわからないが、おそらく追走車両(筆者の車)がヒズボラと勘違いされたか、あるいは外国プレスとわかっていて、現場取材を妨害しようとしたのかのどちらかではないか」とのことだった。

 以前に当ブログでも触れたが、レバノン南部攻撃の際には、無人偵察機で詳細なリアルタイム監視活動を必ず行なっている。また、AWACSも上空を遊弋し、ヘリや戦闘機も常に飛び回っている状態だ。イスラエル北部にはロケッド砲の航跡を探知する対砲レーダー・システムも完備している。
 そんな状態で、爆撃は非常に洗練された情報連携のもとに行なわれる。96年のときも、イスラエル軍の爆撃は驚くほど正確で、街中のヒズボラ関係者の自宅をピンポイントで破壊していた。当時、救急車が爆破されて国際世論の非難を浴びたこともあったが、私が取材したところ、その救急車はヒズボラが使用(家族と弾薬を積んでいた)していたダミーだった。
 そのような情報力を持つイスラエル軍が、国連施設を誤爆したとは考えづらい。故意に攻撃した可能性が高いのではないかと思う。
 当ブログですでに触れたが、避難民100人が殺害された96年のカナの国連軍施設爆撃も、おそらく施設を盾代わりにしたヒズボラに対し、聖域はないと警告するために故意にやったのではないかと思う。砲撃戦の現場に立つとわかるが、戦場は広く、砲弾1発の破壊エリアは小さい。住宅密集地で標的以外の建物に当たってしまったということはあるだろうが、丘陵地帯でたまたま当たってしまうなどいうことは、何百波もの絨毯爆撃ならともかく、普通は確率的にほとんど考えられない(今回の国連軍部隊への攻撃は、前述したように16波と報じられている)。

 今回はさらに、7月30日未明にレバノン南部カナで避難民が集まっていた施設が爆撃され、子供37人を含む54人が殺害された。イスラエルのオルメルト首相は、「民間人を盾にするヒズボラの責任」とコメントした。
 実際のところ、ヒズボラは民間人を盾にしているが、それは、住民を脅して自分たちの周囲に配置しているのではなく、たとえば避難所のすぐ隣に自分たちが隠れたりするというやり方だ。ヒズボラは避難所のほかにも、国連軍施設、病院、モスクなど、普通の国の軍隊だったら攻撃を躊躇するようなものを選び、そこを隠れ蓑にする。
 たとえば、筆者が避難所を取材すると、ヒゲ面で目つきの鋭い数人の男たちが、世間話を装ってこちらの素性を調べにかかってくることが多い。避難所にヒズボラが入っているのだ。
 また、走行するマスコミの車両があれば、その背後にピッタリと追走することもある。私もF-16が上空を飛び交うなか、ヒズボラの車両に追走されて冷や汗をかいた経験がある。
 ややこしいのは、ヒズボラ=住民ということだ。つまり、多くの兵士はそこで家族とともに生活している。イスラエル軍は原則的には、ラジオやテレビで爆撃予告を行なうが、ヒズボラの家族は逃げないことが多いし、逃げてもヒズボラ兵士の父親といっしょだったりすることが多い。そこを、イスラエル軍は女子供もろとも問答無用で抹殺してしまう。民間人の犠牲者のなかに、このヒズボラの家族が多く含まれている。
 避難民を殺害するなど言語道断だが、おそらく今回のカナの事件も、オルメルト首相が言うように、そこをヒズボラが隠れ蓑にしていた可能性は高い。
 10年前のカナ事件でも、爆撃直前にヒズボラが当該施設付近からカチューシャを発射していた。イスラエル軍はおそらくすべてを把握したうえで、あえて国連軍施設を攻撃したのではないか。
 10年前のカナ事件では、現場はフィジー軍のポストで、数名のフィジー兵が犠牲になった。そのちょっと前には、ネパール兵が犠牲になったこともあった。当時、一般避難民が言っていたのは、「なるべくフランス軍などヨーロッパ系の軍隊の近くにいたほうが安全だ。有色人種系の部隊は、イスラエルも遠慮なく撃ってくる」ということだった。
 いずれにせよ、レバノン南部の戦争現場とは、そういう場所だ。
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  1. 2006/07/31(月) 12:48:20|
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イスラエル軍の女性戦士たち

イスラエル軍の女性戦士たち
  1. 2007/10/31(水) 13:40:00 |
  2. ネタ画像道

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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