ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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イラン動乱の行方

 イラン情勢が動きそうな気配です。たとえば、下記のようなものが、今の時代は大きな起爆力を持っています。
イラン衝突、少女死亡映像に衝撃 ネットで大反響

 強権体制下で民主化要求するということは、結局は「体制否定」→「革命・政変」につながります。そこでピープルズ・パワーが続くかどうか、そのときいちばん重要なのは「人々が勇気を持てるかどうか」ということです。覚悟を決めた核心勢力が成立し、そこから群集心理でイケイケな空気が盛り上がったときのみ、その流れは成功するのだと思います。
 イランの場合、まず核心勢力がどうなるかは、そのシンボルに祀り上げられたムサビ元首相の「ハラのくくり方」に決定的に左右されますが、どうやら当初ビビっていた彼も覚悟を決めたようです。
 【イラン騒乱】分水嶺を越えたイスラム体制 改革派ムサビ氏、最高指導者に反旗
 この国では、ハメネイに逆らうということは、たいへんなことです。ムサビはもともとそういうキャラじゃなかったように思うのですが、今回はなかなか立派な決断をしました。
 80年代に8年間も首相をやったムサビとか、元国会議長のカルビとか、かつてホメイニ時代にイスラム共和党独裁を切り開き、政敵を弾圧し、海外への「革命の輸出」謀略工作に関わったような連中が、ハメネイ憎しというだけ(まあ、それだけでもありませんが)でいまや民主化要求・反独裁の急先鋒になっているのが面白いですね。ホメイニ後継レースでハメネイに敗れたモンタゼリなんかも、もともとは独裁強権政権側のゴリゴリだったのに、後にまさかの民主派転向です。ホメイニの孫のフセイン・ホメイニなんかも、いっぱしの民主化運動家になっています。このあたりは権力争奪戦の色彩も濃いわけですが、うまくムーブメントを牽引できればそれも価値があります。
 自身が直接ではなく、欧州の友好国あたりを通じてということだとは思いますが、アメリカ諜報機関が今、ムサビ陣営を煽っている可能性は非常に高いと思います。アメリカの思惑としては、前回のハタミ政権のような半端な改革ではなく、ハメネイを頂点とするイスラム体制をガタガタにしたいと考えているものと思います。ハメネイたちが自分から身を引くことは期待できそうにないので、結局は政変しかありませんが、ムサビも国民の圧倒的支持があるというわけではないので、ここで反政府運動を煽ることは非常に有効です。現状ではまだ、弾圧を受けて抑え込まれる可能性のほうが高いですが、それでも国民を武力で弾圧したという傷は、やがてボディブローとして効いてきます。
 今後の展開はまったく読めませんが、こんなチャンスはめったにありません。なんとかイランの人々が自由に発言・行動できるような社会になってほしいものと切に願います。

 以上は、前回のエントリにいただいた下記コメントとも関連するので、こちらに私見を述べたいと思います。
「中東の国々に本当に民主主義が根付くのでしょうか? アメリカ型の多数決主義は、イスラムの教えと相容れない気がするのですが、黒井さまはどうお考えですか?」(sin様より)

 正直言って、なかなか難しいだろうと思います。イスラムの教えというより、「イスラム社会」の抑圧体質が人々の自由を大きく阻害している現実があるからです。社会の根幹がタブーにより成立しているような場所では、真の民主主義はあり得ません。
 結局、現在のイスラム圏の現状は、自由に発言・行動できる社会環境にありません。軍事独裁でなく、自由選挙が機能している国(たとえばアフガンやパキスタンなど)でも同様です。そういう国では、「周囲のみんなが言っていることしか自分も言わない」文化になっているので、形式だけ民主主義にしても、有力勢力間の争いになるだけです。
 私は、独裁政権打倒も大事ですが、そもそもこれらの国が「宗教?面倒くせーな」なんて自由に言える社会になって欲しいと思っています。以前書いたこともありますが、中東イスラム圏の人々とはもう20年くらいそれなりに深い付き合いをしてきました。で、「そういうの、もう嫌だ!」という人が、報道されない水面下にかなりの数いるものと確信しています。そもそも「宗教なんて面倒くせー」とホンネでは考えている人もたくさんいます(そんな人とたくさん会いました)。
 そういうことでは、私はその道を切り開いていく可能性がいちばんあるのは、イランではないかなと考えています。ゴチゴチのイスラム体制ではありますが、たいていのアラブ社会などよりずっと寛容度が高い。そういう国民性なんでしょうし、国民の知性のレベルが高い印象もあります。
 タブーというものは、縛りがきつければきついほど、崩れるときは劇的に崩れる可能性もあります。90年前後の共産圏の崩壊が典型例です。あるいはこちらは外圧の力ではありましたが、敗戦後の日本も同様です。
 前回も書きましたが、人間は誰しも、抑圧・束縛が嬉しいなどということはありません。イラクでもフセイン政権がアメリカ軍に打倒された直後は、国民の多くがアメリカ式の民主主義に期待していました。「中東には中東の考えがあって、アメリカが民主主義を押し付けても余計なお世話だ」というような言説が多いですが、イラクがうまくいかなかったのは、イラク国民が民主主義を拒否したのではなく、部族・宗派間の抗争をコントロールできなかったことや、流入するテロ組織や誘拐犯罪などを防ぐだけの治安部隊が投入されなかったことなど、いわば「別の理由」があったからだと私は考えています。
 今は北朝鮮とか以外はどこの国でも衛星テレビやネットが入っています。中東の国の人だって、西側先進国の自由な社会に対する憧れはあります。
 ご質問の答えになっていませんが、中東の民主化は「難しいけれども、不可能ということではない」「イランがそのパイオニアになる可能性がある」ということではないかなと考えています。(個人的に、『イスラムの連中にそういうの無理っしょ』と突き放しちゃ、たまたまイスラムとして生まれただけの彼らが可哀想じゃん!という感情があるので、しょせんは願望にすぎませんが・・・)
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  1. 2009/06/22(月) 10:36:51|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

ご丁寧にお答えいただきありがとうございます。

>そういうことでは、私はその道を切り開いていく可能性がいちばんあるのは、イランではないかなと考えています。

そういわれて思い出すのは、ホメイニ革命以前のイランは、イスラム諸国で一番アメリカにかぶれた国だったと言うことです。
パーレビ時代のことを書いた書籍では、かなり「近代化」していた感があります。もちろん、秘密警察SAVAKがあり、西側的自由があったわけではありませんが、それでもそれを受け入れていた「寛容さ」を黒井さまはいっていらっしゃるのかもしれません。

イスラムが抑圧の宗教だとは思いませんが、日本の仏教や韓国の儒教程度にまで薄まるのには、まだ時間がかかるのは確かでしょう。

今回の騒動が、かつての「第2次天安門事件」のような事態にならないことを祈るばかりです。

  1. URL |
  2. 2009/06/23(火) 00:00:55 |
  3. sin #-
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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