ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ソ連スパイ「ナザール」

 かのレフチェンコによって暴露されたKGBスパイ「ナザール」。ミトロヒン文書では「ミーシャ」というコードネームでしたが、この人物かもしれないという情報を入手しました。根拠が非常に希薄なので、本人が特定されない記述の範囲で紹介します。
 レフチェンコ証言およびミトロヒン文書によると、ナザール=ミーシャは外務省の電信官。モスクワの日本大使館勤務時代にKGBのハニートラップに引っかかり、その後、スパイになったようです。日本に帰国した後も、金銭報酬と引き換えに、大量の外務省機密文書・公電をKGB東京支局に提供しつづけたとKGB文書に記録されています。レフチェンコ事件の後、外務省が調査し、本人を特定したようですが、公表していません。事実無根の話だったら、その旨を個人名を秘匿したかたちで公表、もしくはリークするはずですから、ナザールが実在したのはおそらく間違いないと思われます。レフチェンコ事件当時に警視庁がかなり突っ込んだ捜査をしたようですが、結局は立件を断念しています。公務員の守秘義務違反は違法行為ですから、不起訴の理由はわかりません。日本政府、おそらく外務省サイドに、何か秘密にしておきたい事情があったものと思われます。
 さて、そんなナザールの正体ですが、「この人かもしれない」という人物は、電信官というよりは、外交官でした。ロシア・東欧関係の専門家です。
 大正時代におそらく満州で生まれています。ハルピン学院を卒業しているので、バリバリのロシア語スペシャリストですね。
 同学院卒業時点はちょうど戦争の真っ只中だったので、徴兵。満州、南方での兵役経験があるようです。戦後、外務省に入省し、ソ連担当となっています。KGBスパイとして活動したのは70年代ということなので、もしこの人物だとすると、もう50代のときですね。ノンキャリとしても、もうヒラという年齢ではありません。レフチェンコ亡命が79年で、それから数年内に日本の公安当局にナザール情報も伝えられているはずですが、その当時はすでに定年退職したか、あるいは定年間際だったものと思われます。
 この人物の名前をインターネット検索すると、ある関東地方の町で少なくとも7~8年くらい前までは存命だったことがわかりました。現在も生きているかどうかはわかりません。電話番号案内によると、本人名での登録はありませんでした。個人情報保護意識が高まってきた今、若い人はほとんど番号案内登録はしませんが、地方在住の高齢者はまだほとんどの人が登録していますから、すでに死亡している可能性が高いと私は考えています。同町内に同姓の登録がありました。珍しい苗字なので、息子かもしれません。今さらな話なので、取材はしていません。
 以上は非常に根拠の薄い話なので、取材したりメディアに発表したりするつもりは今のところありませんが、心に留めておきたいと思っています。

ところで、レフチェンコ事件のときはマスコミも大騒ぎし、エージェント被疑者をずいぶん追い掛け回したりしたものですが、2005年にイギリスで発表された『ミトロヒン文書2』で日本人エージェントの情報が出たときには、マスコミ各社自身がKGBに侵食されていたからか、ほとんど追及はなかったですね。
『ミトロヒン文書2』で新たに判明した日本人エージェントには、たとえば「70年代にリクルートされた駐ソ連防衛駐在官」がいます。KGB側が勝手にエージェントとしてファイルしていただけかもしれませんが、そのへん防衛省では調査したのでしょうか? 70年代に駐ソ防衛駐在官だった人物など人数も限られてますから、人物の特定はそう難しい話ではないですよね。駐ソ防衛駐在官ということは、80~90年代頃には自衛隊トップクラスに出世していた可能性も大ですね。どうなってるのでしょう?

 ちなみに、レフチェンコ情報&ミトロヒン文書については、『戦後秘史インテリジェンス』に詳細な記事を掲載しています。→アマゾン
『ワールド・インテリジェンス』スピンオフの他の2冊もよろしくです(インテリジェンス3部作ということで)
こちら→『インテリジェンス戦争』『インテリジェンスの極意
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  1. 2009/04/15(水) 10:08:27|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:4
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コメント

まったく個人的な感想なのですが、
よくアメリカの公文書館で日米関係の
資料を地道に研究されている方が
いらっしゃいますが、日ソ関係はどうなのでしょうか?

ああ見えてソ連はアルヒーフが非常に発達
していた国なんですよね。
ロシアの情報公開がどの程度なのかはわかりませんが、
東西冷戦の一方の雄なわけですから、
まだまだおもしろい文書が眠っていると思うですが・・・
  1. URL |
  2. 2009/04/21(火) 01:30:02 |
  3. ヨッシー #-
  4. [ 編集]

もうひと昔以上前のことですが、私もモスクワに在住し、機密文書を探してみたことがあります。といっても、実際に書庫に入れたわけではなく、いわゆる賄賂で仲介者に代行してもらうかたちです。
当時は、同じようなことをやっていたジャーナリストがたくさんいました。けれども、結局はそのようなかたちで機密情報が出てきたという話はほとんどなかったように記憶しています。
とくにソ連崩壊時の混乱期、あそこはちょっとした賄賂で何でも可能な社会だったのですが、それでも機密文書管理がしっかりしていたのは、かなり意外でした。
それで、当時のロシア発のスクープのほとんどは、要人証言というかたちになってました。これはもう信じられないくらい簡単でした。いわば「証言ビジネス」みたいな世界になっていました。眉唾な話も多かったですが。
いずれにせよ、ロシア側機密文書は現代史の宝庫のはずですが、現在に至るまでまだしっかりと機密保持されています。
  1. URL |
  2. 2009/05/04(月) 10:12:47 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

要人証言といえば・・

当時スターリン時代の高官の
最後の生き残りといわれた
ラザーリ・カガノヴィッチに会えた
日本人はいたのでしょうか?
  1. URL |
  2. 2009/08/13(木) 10:01:17 |
  3. tetu #-
  4. [ 編集]

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  1. |
  2. 2010/03/01(月) 04:51:45 |
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スパイ&テロ

 軍事アナリスト・黒井文太郎の公式ブログ。軍事について考えさせられるブログになっています。 4月17日の衛星映画
  1. 2009/04/16(木) 19:11:20 |
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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