ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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次は核実験か

 先週金曜日、TBS『総力報道!THE NEWS』にコメントを使っていただきました。当ブログでも書いてきたように、ノドンに搭載できるような核弾頭小型化に注目すべきというようなお話をさせていただきました。
 ここ数日、日本のメディアでもこの核弾頭小型化の話が出てきていますが、「パキスタンが核ミサイルを実戦配備しているので、北朝鮮にもその技術が入っている」との言説をちらほら見かけます。ですが、パキスタンと北朝鮮では核爆弾の種類が違うので、ちょっと話が違うように私は考えています。
 先日の拙ブログの繰り返しになりますが、パキスタンは起爆装置の構造が簡単な濃縮ウラン型、北朝鮮は起爆装置技術がたいへん難しいプルトニウム型です。現在の濃縮ウラン型は効率化のためにプルトニウム型と同様の爆縮型を採用しているケースが多いようですが、プルトニウム型では1万分の1秒以下という精密な爆破タイミングが要求されるのに対し、濃縮ウラン型はずっとアバウトでも起爆しますから、そこは起爆装置はまったく別物と考えるべきです。よって、パキスタンが核搭載ガウリ(=ノドン)を実戦配備しているからといって、北朝鮮ノドンがすでに核搭載しているということではありません。パキスタンと北朝鮮の技術交流で怖いのは、北朝鮮が濃縮ウラン製造をこっそりやっているのではないかという疑惑(未確認情報。今のところそれほど根拠のある情報はありません)と、パキスタンがプルトニウム製造に乗り出したという話ですが、今のところ切羽詰った話ではないようです。

 今回のテポドン騒動でのメディア解説で気になったもうひとつは、例の政府筋の「ピストルの弾をピストルで撃ち落とすようなもの」発言に対するバッシングです。軍事専門家の多数は、「そんな認識はもう古い」と仰りますが、私は前にも書いたように、現状のMDの技術を信用していません。「ピストルの弾をピストルで撃ち落とせることもある」ところまで来たことに異存はありませんが、「ピストルの弾を必ず撃ち落とせる」まではまだまだほど遠いと思います。高高度・高速の米偵察衛星をSM3が破壊しましましたが、入念な計算のうえであることは既述しました。「ちょうかい」は失敗していますね。これまでの米軍の実験も、比較的実戦的なものでは成功率はそれほどでもありません。なかなか計算どおりにはいかないということです。
 それと、もうひとつ。テポドン2のブースターの構造について、未確認情報・推定情報がぐじゃぐじゃになって報じられているというのも妙な風景でした。私はテポドンについてはだいたいグローバル・セキュリティの推定図あたりがまあまあ「そう外していないかも」くらいに思っているわけですが、さまざまな推定情報がメディア各社でも錯綜していて、かなり混乱していました。「これは違うんじゃないの」という報道もけっこう多かったように思います。米軍インテリジェンスが(たぶん)入る防衛省の専門家はどう見ているのか気になりますが、意外に「グロセキュを参考」にしていたりして・・・…。

 さて、今後のことにもかかわってくるのですが、外交の専門家の方々が、テポドン発射の狙いについて、「オバマ政権と交渉するため」とか「ミサイルを売るため」とか解説されているところをよく拝見しましたが、それにも少し違和感があります。それらは「従」であって、「主」ではないだろうと思うからです。
 北朝鮮は金日成の時代から、体制生き残りのために核ミサイルの開発を一貫して続けてきました。今後も続けていくことでしょう。非常にわかりやすい、シンプルな話です。
 2006年に北朝鮮はテポドンと核爆発の実験を行ないました。タイミングについて多少は政治的判断もあったでしょうが、大枠でいえば、それが可能な技術水準に至ったから行ったということではないかと私は考えています。で、そのテポドン実験は失敗だったから、それを改善して、今回の発射となったのではないかと。単純な話ですね。衛星は失敗とか報道されていますが、06年の失敗(発射直後の爆発)を払拭し、98年テポドン1の飛距離を大幅に更新したわけですから、まずまず成功といえます。
 で、次ですが、私はいずれ再び核実験をすると見ています。前回の不完全な起爆装置の改善、それに小型化起爆装置の実験も必要になるからです。国際社会から制裁を受けるでしょうが、核ミサイル完成のほうが北朝鮮にとってははるかに重要です。いつやるか?は、これも多少は政治的判断でしょうが、原則的には「技術的に可能になったら」という可能性が高いと考えています。

 さて、ではわが日本はどうすべきか?ですが、ここが難しいですね。日本の安全保障だけと考えると、いちばんの目標は「核弾頭完成の阻止」ということになります。秘密施設で邁進している開発自体は止めようもありませんが、最終的な段階で必要となる「小型起爆装置による核実験」を阻止するということは考えなければなりません。そうしますと、私は前述したように北朝鮮はいずれ再度の核実験を行う可能性が高いと考えていますが、それを政治的な圧力でできるかぎり遅らせるということが必要ではないかという話になります。つまり、6カ国協議の枠組みを強化して、中国の北朝鮮に対する発言力を高め(まもなく後継者問題も出てきますから、中国の発言力はいろんな意味で非常に注目です)、政治的に北朝鮮に核実験をやりにくい雰囲気に持っていくわけです。一種の心理戦・情報戦というものですね。私たち日本人の苦手な分野かもしれませんが、いろいろ複合的な手を考えることは重要だと思います。
ただし、この6カ国協議ですが、これまでを振り返ると、北朝鮮の核武装を止めるのに、実際にはほとんど役に立っていないようにも見えます。もうプルトニウム作ってから、量産を少し凍結したというだけですからね。核ミサイル開発は事実上、まったく阻止できていません。
 振り返ると、北朝鮮の譲歩を引き出した唯一の例が、アメリカがマジの寧辺空爆を検討した94年の金日成=カーター会談だけという気がします。やっぱり武力をちらつかせないと交渉は進まないということでしょうか。
 
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  1. 2009/04/06(月) 13:33:33|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

中国は北朝鮮の核武装を問題視してないのでしょうか?
ジャーナリストの青木直人氏によると中国の経済侵略を金日成は快く思ってないようなので、北朝鮮からの核脅迫を受けることになる可能性があると思うのですが。
  1. URL |
  2. 2009/04/06(月) 21:39:17 |
  3. 超音波 #s29rOa1w
  4. [ 編集]

中国は中央政府各派、軍中央、軍管区等でまたいろいろ考えはあるかと思います。ですが、今の流れですと、核再実験の事実上の容認になる可能性が高いと私は思います。
  1. URL |
  2. 2009/05/04(月) 09:41:42 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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