ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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暴論 在日米軍は第7艦隊で充分では?

 秘書が逮捕され、いよいよ土俵際に追いつめられた民主党・小沢代表。以前、某誌(ワールド・インテリジェンスではありません)で取材申請した際の小沢事務所の倣岸な態度(それに比べると、意外にも麻生太郎さんや小池百合子さんのところはたいへん丁寧な“取材拒否”でしたが)を根に持ってい単純な私としては、小沢氏に個人的にはあまりいい印象は持っていなかったりするのですが、少し前に集中砲火に遭っていた「在日米軍は第7艦隊で充分」発言について少し思うところがあります。
 小沢さんの発言については、じつは私の周囲でも非常に評判が悪く、「あいつは軍事をわかってない!」という声が圧倒的に大きいのですが、私の考えはちょっと違っていて、「日本の防衛だけなら、第7艦隊だけで充分じゃないの」と思っていたりします。
 空母打撃群を擁する第7艦隊の戦力は、それはそれは凄まじいものがあります。しかも、仮に極東有事ともなれば、世界最強の米軍がどどっと動きます。在韓米軍基地、グアムだけでも、たいへんな戦力を確保できます。
 日本にはもともと陸軍はたいしていませんから、海軍以外には空軍と海兵隊ということなのですが、たとえば空軍でいえば、グアムと韓国の基地だけでもすごい戦力になります。横田はともかく、三沢と沖縄はたしかに戦略的に重要な要衝ですが、ま、なければないで済んでしまうのではないかなと。
 たとえば、ロシア軍が全面的に侵攻でもしてきたら三沢は非常に重要ですが、ロシア軍が日本侵略? ちょっと考えられないです。
 中国と戦火を交えたら沖縄は死活的に重要になるでしょうが、日本を防衛するということなら自衛隊の基地を米軍が使ってもいいわけですし、平時はそんなになくてもいいのでは? 嘉手納を半分くらいにして自衛隊の基地とし、米空軍にも使わせてあげるよ的な感じでも、米軍は困るけれども、日本はそんなに困らないのではないでしょうか。それは中国軍が総攻撃をかけてきたらちょっと不安ですけど、中国軍が日本侵略? ちょっと考えられないです。
 いちばんのお荷物である海兵隊ですが、沖縄の海兵隊は、日本を守るために存在しているわけではありません。ということで約束どおりグアムにお引取り願うのがよろしいのですが、その費用を日本国民がなぜ負担しなければいけないのか納税者としては理解に苦しみます。
 さて、そんなことをすればアメリカは日本を守らなくなるとの議論がありますが、本当にそうでしょうか? アメリカが怒って第7艦隊を横須賀から引き揚げる、などということはないのではないかなと。理由は簡単で、アメリカの不利益になるからです。横須賀を使えるというのは、それだけでもものすごいおトクな利権です。アメリカがそんな利権を自ら手放す理由はありません。
 そして、横須賀を使わせてやっている以上は、日本防衛義務をきっちりと迫ることが出来ます。対テロ戦やイラク戦で、「日本も貢献しないと、日本有事にアメリカが守ってくれなくなる」との議論がありましたが、日本の基地を使いたいなら日本を守るのは当然です。日本を守らないなら、日本から出て行くのが筋ですから、そこまでアメリカ様の機嫌を伺うのはいかがなものでしょう。
 私としては、日米安保を双務的な対等のものにしたうえで、米軍が日本で使用している基地や日本側が負担している費用と同等のものをアメリカ本土内に用意してもらい、アメリカ国民の税金で自衛隊が実弾射撃訓練できるくらいになって初めてイーブンではないかなどと思っています。
 
 一方、在日米軍を減らせば、その分、自衛隊を強化しなければならないとの議論がありますが、私はその議論にも疑問を持っています。同等の抑止力を維持するという前提ならそのとおりなのですが、現在の在日米軍は日本防衛に必要な抑止力をはるかに超えていると考えているからです。つまり、今の時代、抑止力なんぞもっと小さくても構わないのではないかと。
 こういうことを言うとよく怒られるのですが、さらに乱暴なことを言うと、抑止という理論も私はあまり信じていません。今は戦国時代でも帝国主義時代でも冷戦時代でもないので、抑止力なんて本当に有効なのかという疑問があります。
 では、かつての社会党の非武装中立とどう違うのかというと、まずは時代背景が違うということです。冷戦時代、抑止力がなければソ連の侵攻を受ける可能性もゼロではなかったと思います(ただし、理論的には、机上の論理だった非武装中立は現実に失敗したわけではありませんから、必ずしも妄言だったと結論づけることも出来ないと考えております)。その意味で、米軍の抑止力は有効だったと評価していいと思います。
 ですが、時代が変化し、国際政治状況が劇的に変化しています。かつて私は拙著『北朝鮮に備える軍事学』(講談社+α新書)で、軍事バランスという考え方に疑問を呈したことがありますが、政治的なゼロサム状況にない状態での抑止力の有効性も、理論的にはあまり関係ないのではと思っています。
 たとえば、では仮に今、中国軍が解散した場合、日本は満州を再び占領するでしょうか? 仮にソ連軍が解散した場合、日本は国内法規にしたがってすぐさま北方四島を占領し、島民を国外追放するのでしょうか? 竹島はどうでしょうか? 軍事バランスだけなら、今でも全面戦争をやれば自衛隊は韓国軍を排除して竹島を占領できるかもしれませんが、それをやらないのはなぜ?
 尖閣問題にアメリカは介入する約束を事実上してきませでしたが(本日付『読売新聞』によると、国務省が安保適用を明言したということではありますが)、それならなぜ中国軍は尖閣を占領しないのでしょうか? 本当に自衛隊の抑止力のせいでしょうか?
 では、フィリピン軍が解散したら自衛隊はフィリピンを占領するのでしょうか? 自衛隊が解散したらフィリピン軍は日本を占領するのでしょうか? アメリカ軍が解散した場合、ロシアはアメリカを攻撃するのでしょうか? このように、抑止力が消滅したからといって、軍事的脅威が出現するとは必ずしも限らないのではないでしょうか。
 とはいえ、たとえばアメリカ軍とあらゆるアメリカの治安機関が解散すれば、アルカイダはすぐにもアメリカ攻撃プランを練り始めるでしょう(アルカイダに抑止理論は関係ないですけど)。自衛隊と韓国軍と極東米軍が解散したら、北朝鮮軍はすぐにも韓国を占領するでしょうし、ついでに日本を攻撃するかもしれません。つまり、抑止力というのは、それは有効な条件下にとってのみ有効だといえます。政治的な敵対状況下にない場合、「抑止力がないと国は守れない」という理論は成立しません。
 軍備はすぐに増強できないので、将来の万が一に備えることは当然必要だ。将来の脅威は予測できないじゃないか……というのは理論上正しいですし、それゆえに、ほとんど軍事的脅威下にないような国でも、いくらかは軍備を保有しているわけです。
 が、実際のところ、惰性で軍備縮小していない国も少なくないように思います。結局、将来の脅威をどう考えるかというのは、国際関係の推移をどう見るかという点にかかってきます。たとえば、ドイツ周辺の国でドイツが再び侵略国家になると本気で考えている人はあまりいないと思います。冷戦時代に東西対立に備えて軍備を保有し、その惰性でそれを維持し、その後、ちょうど国際治安維持活動などが出てきたので、それに流用している……というような国が多いように思います。
 極東の場合、ロシアと中国が侵略国家になる可能性があれば、これはたいへんな脅威ですが、そうならないのではないかと考えれば、脅威は存在しないとの結論になります。
 現実を見ると、日本ではおそらく多くの人が、ロシアや中国を信用していないということだと思います。これは、アジアや欧米の一部の人たちが、日本が再び侵略国家になるかもしれないと考えているほどですから、さもありなんではあります。私はロシアや中国の政治構造の推移を見て、将来的に彼らは「多少強権化することはあっても、日本を侵略するまでのことはしないだろう」と見立てていますので、そこの見立てが違う人とは議論が噛み合いません。これは、どちらの側の見立ても実証されていないので、いくら議論しても決着がつかない問題ではないかなと思います。中国とか韓国あたりの人に「日本もいずれ再び侵略国家になるはずだ」と指摘され、「そんなことは絶対にない」といくら説明しても、理論上、絶対とは言えないことと同じです。

 話が脱線しました。
 日本の安全保障上の脅威とは、北朝鮮と中国とロシアですが、ロシアはともかく、他の2国はいずれも朝鮮半島有事と台湾海峡有事の流れですから、日本が単独で二国間全面戦争を想定した抑止力を構築する必要は、理論上は必要ありません。
 仮に北朝鮮の自暴自棄なカミカゼ特攻攻撃を想定しても、空自で充分です。自衛隊と在日米軍が消滅したら、中国が尖閣を占領し、海底ガス田を独り占めし、東シナ海からを日本の漁船を追い出すくらいのことはやる可能性はあるでしょう。そういう現実の脅威が存在する場合にこそ、そのための抑止力が必要になるわけです。自衛隊も、そのための戦力は是非とも必要ということになります。
 そうしたもろもろを勘案すると、現実的には西方の離島とその海域を防衛する自衛隊の戦力があり、日米安保を裏書するそこそこの在日米軍が存在すれば、日本の抑止力は成立すると思います。そこそこの在日米軍のなかで、最適かつ充分なのが、米海軍の超強力な第7艦隊ということでいいのではないかというのが私の考えです。
 たぶん私の考えは極端なものでしょうし、民主党の小沢代表の考えとも違うのでしょうが、それはそれとして、日本が敗戦でアメリカに大きな便宜を与えることを強いられ、冷戦でそれを日本側も利用し、冷戦後は惰性で過大な負担を強いられつづけていると思っている人は結構多いのではないかと思います。
 たとえば、対テロ戦とか中東の安全保障にもっと積極的に介入する(私は治安維持活動参加は世界すべての国の責務と考えています)。それで在日米軍の規模縮小を迫る。本来、独立国とはそういうものではないかと。・・・あややや、国連絶対主義を除けば、まんま小沢ドクトリンになってしまいました。
 ま、日米は実際のところ主従関係にありますし(この点、オバマ政権が日本を重視してるとかそうでないとか、現実乖離の報道が多いように思います。オバマであろうとブッシュであろうと、アメリカは日本なんぞこれまで重視したことはありません。日本の記者は米政府内の対日部門の人間と接触するのでそういう話になりますが、対日部門なんて米政府内では泡沫セクションです)、そう簡単に話が進むことはないですが、小沢発言くらいのブラフをかましてアメリカを少し焦らせるくらいのことをしたほうがいいのではないかとは思うのですが……。
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  1. 2009/03/05(木) 15:17:58|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

ヘリボーン作戦用の島の価値

沖縄の海兵隊は台湾救援の為にも存在しています。故に緊急時にグアムからでは間に合わないです。中国軍が行うかもしれない、ソ連がアフガンに侵攻した時のようなスタイル、初動で政府庁舎や国会を襲って・・・という方式に対抗する為には、即座に台北に海兵隊をヘリボーンで降ろすというオプションは残すべきでしょうね。

台湾海峡問題が片付かない限り、海兵隊は沖縄に在るべきでしょう。
  1. URL |
  2. 2009/03/07(土) 02:03:28 |
  3. JSF #mQop/nM.
  4. [ 編集]

ご指摘ありがとうございます。日米同盟のあり方については、ご指摘のように各項目ごとに具体論で再検討することが求められているように思います。よく親米vs反米の感情論バトルみたいになってしまうことが多いですが、具体的状況ごとにひとつひとつ考えると論点がクリアになりますね。
  1. URL |
  2. 2009/03/09(月) 18:32:37 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

・・・北海道への上陸も視野に入れていたからこそ、旧式の小型揚陸艦から
新型のイワン・ロゴフ級などへの大型化が進んでいたのが冷戦末期のソ連極東海軍です。
もちろんww3があるとするならヨーロッパでしょうが、アメリカの戦力分散を狙い、先に
北海道への侵攻の公算は高いものでした。
だからこそ日本はFS-XでF-2のような強力な戦闘攻撃機の配備を進めたわけですが?

沖縄は極東におけるキーストーンです。
沖縄を失えば、アメリカの展開能力は大幅に失われます
だからこそ強力な空・海兵軍を配備してるんですけど。

日本周辺国が装備の近代化・拡大を進める中、日本だけ縮傾向にあるのは地域の
ミリタリーバランスを崩すものと言わざるをえません。
その最中さらに在日米軍を減らすなんて、正気の沙汰とは思えません。
小沢発言がどれだけ現状と乖離したものであるか、みなよく理解しているからこそ
叩かれている訳ですが。
  1. URL |
  2. 2009/03/11(水) 04:20:27 |
  3. 匿名 #-
  4. [ 編集]

個人的な意見ですが、ロシアや特に中国は状況さえ許すなら(何らかの外交問題が他国との間で生じた時に、相手が自国より軍事的に弱く、国際社会は非難声明位しか出来ないなら)武力行使も辞さない勢力と思います。ロシアは軍事演習の一環で日本上空侵犯を繰り返しますし、カニ密漁程度で日本漁船に銃撃を加えますし、しかも中国に至っては、相手に対して先制攻撃をかけるケースが台湾への武力介入やベトナム懲罰戦争や南沙諸島問題での空軍力行使などで見受けられます。だからこそ、中国やロシアが金を儲けて近代的な軍事力を整備出来る様になった今日においては潜在的な脅威と見做す必要があるかな、と思ってしまいます。

日本は太平洋戦争で滅亡寸前まで追い込まれて、戦争は自国の経済運営にとって大きなマイナスになる事を学習したので、状況が許そうが国際社会(特に欧米)の賛同を得られない武力行使は実施しない国になったはずです。
日本が再び侵略国家になるかもしれないと考えているアジアや欧米の一部の人たちに対しては、日本の若者の命を危険にさらしてまで直接占領したい獲物は、少なくとも日本の周辺国には存在しないと政府レベルで意志表明していく必要があるでしょうね。
 対テロ戦とか中東の安全保障にもっと積極的に介入するのには、私も賛成です。結局アラブのテロリストは己の趣味を他人に武器で脅して強要してるヒドイ人達なのですから。ただし、今の自衛隊では民間人と区別のつかないテロリスト相手に、死屍累々になりそうな気がしますので、強力な無人兵器(アメリカのプレデターに攻撃機能を付加した感じのもの)や頑丈な移動車両と駐留基地防衛用の各種システムを開発するなり購入するなりして運用能力も身につけてから参加する方がいいでしょうね。

日本の抑止力なんぞもっと小さくても構わないのではないかと。
との事ですが、日本はそんなに例えば中国と比較して強力な戦力をもってるのでしょうか?空軍力は何となく日本の方が上だと思いますが、潜水艦の探知に結構苦戦してるように思うのですが。
陸軍戦力については、今のところPKOやPKFなどに積極的に参加する意思がない以上、潜水艇あたりで移動可能な少数の特殊部隊程度しか相手にする事はないでしょうから、あまり必要ないかもしれませんね。それに人員を今の半分にしてでもアメリカのフューチャーウォーリアーで見られる装備を一人一人に持たせる方が、有事の際には効率的に相手を追い込んで死人ゼロで勝てるようになるでしょうから。
  1. URL |
  2. 2009/03/30(月) 11:57:22 |
  3. 超音波 #s29rOa1w
  4. [ 編集]

コメントをありがとうございます。いろいろ考え方はあると思いますので、建設的な議論はたいへん有意義と思っています。
こちらも米英の関連メディアをひたすら渉猟するばかりの日々ですので、当方の知識にもかなり偏向があることは自覚しています。今後とも、ご意見があればよろしくお願いいたします。
  1. URL |
  2. 2009/04/03(金) 13:32:15 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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