ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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威嚇を狙うイスラエル軍の爆弾

 私がしばしば参考にさせていただいている軍事解説サイト「週刊オブイェクト」(http://obiekt.seesaa.net/)でしばらく前から、イスラエル軍がガザ攻撃に使用した白燐弾(煙幕弾)やDIME(高密度不活性金属弾)の話題が大きく採り上げられています。これらの兵器について、「残虐兵器だ!」との非難が市民運動グループなどから上がっていることに対し、同サイトでは、いずれも破壊力・殺傷力の極めて低い兵器であることを論じています。
 兵器に人道兵器とか非人道兵器とか私にはよくわかりませんが、ニュース映像でよく見かけた「空中で爆発して火の粉を降らせる爆弾」(白燐弾)などは、ああして画面で見ると迫力がありますが、「週刊オブイェクト」で指摘されているように、通常の榴弾などに比べると、圧倒的に被害が小さい爆弾であることはたしかです。
 そこで、ひとつの疑問。では、なぜイスラエル軍はわざわざ破壊力の小さい兵器を使っているのでしょうか?
 この答えはきわめて簡単だと私は思います。威嚇のためということです。
 イスラエル軍の戦闘力は、ハマスとは比べようもないほど圧倒的に強大です。本気を出せば、ガザ住民を皆殺しにするくらいのことは出来る軍事力を保有しています。
 ですが、そんなわけにもいかないので、なるべく住民に大きな被害が出ないような配慮をしています。つまり、手加減しているわけです(とはいえ、被害が絶対出てはいけないと考えるほど甘くもないですが)。
 イスラエル軍のガザ攻撃は、まずは明確な軍事目標に対しては、通常の榴弾などできっちりと破壊しています。ハマスの拠点や秘密軍事施設、幹部アジトなどですね。このあたりは、一般の住民の巻き添え被害など一顧だにしない冷徹さです。
 ですが、実際には破壊すべき目標かどうかあやふやな場合も多いでしょう。そんなときのイスラエル軍の行動には昔からパターンがあります。攻撃日時を予告し、「その時間に外出している者は敵性戦闘員と見なして攻撃する」と通告するのです。
 建物の内部までは破壊しない白燐弾などは、そんなときに威嚇兵器として使用されます。いつでもオマエらなんぞ殺せるんだぞ、というプレッシャーですね。実被害を抑えつつ爆弾の雨を降らせる……それで我彼の力の差を誇示し、恐怖心を植えつけようというわけです。
 その他にも、たとえばイスラエル軍はF-16を使ってソニックブームをぶつけるということもよくやります。ソニックブームとは、戦闘機などが超音速飛行したときに発生する衝撃派で、これを地上にぶつけるとちゃちな窓ガラスくらいは割れてしまうほどの音響となります(私自身、イスラエル軍F-16のソニックブームで思いっきりビビらされた経験があります)。
 ソニックブームそのものに殺傷力はありませんが、かといって戦場では「単なる嫌がらせじゃん」と油断するわけにもいきません。10回は嫌がらせ(ソニックブーム)だけだったとしても、11回目で本物の爆弾が投下されたりするからです。そうして恐怖心を持たせる。イスラエル軍も酔狂で嫌がらせするほど暇じゃないでしょうし。
 圧倒的な戦力のイスラエル軍の戦闘とは、いつもだいたいこんな感じです。今回のガザ紛争では1300人もの犠牲者が出たとも言われています。もちろん大きな殺戮ですが、市街地へのあれほどの爆撃なら、数千人の犠牲が出ても本来はおかしくはありません。
 そういう点では、イスラエル軍の攻撃はいわゆる無差別爆撃ではありません。イスラエル軍の軍事行動を止めようとする運動自体は私自身も大賛成ですが(誤解のないように書いておきますが、本稿はイスラエルの行動を是認するものではありません。念のため)、イメージだけで感情的に叫ぶようなことでは、あまり効果もないのではないでしょうか。
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  1. 2009/02/11(水) 01:22:39|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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