ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ジャパニーズ「スパイ組織」が急増!?

 日本の情報コミュニティでは今、何が起きているのか?というと、ひとつには、各情報機関のあいだで「どこが外国情報機関とコネを作るか?」という競争である。
 というのも、これまで日本では、緒方竹虎=村井順コンビが創設した内閣情報調査室という組織がいちおう情報コミュニティの代表的なものだったが、海外に支局員がいるわけでもなく、冷戦時代はどちらかというと国内情報がメインだった(とくに選挙情報に定評があった)。
 警察庁警備局や公安調査庁の外事部門は基本的に防諜とテロ対策がメインであって、情報活動といってもKGBや朝鮮総連を監視したり、重信房子やよど号グループなどの追跡が任務のほとんどだった。防衛庁・自衛隊は、極東エリアの軍事情報ということでは通信傍受や対潜水艦戦でかなり本格的な情報活動を行なっていたが、外国との関係でいえば、ほぼ米軍に全面的にリンクしていた。
 というわけで、グローバルなインテリジェンス活動とすれば、外務省の仕事ということになったわけだが、外務省のカウンターパートはもとより外国の外交当局であり、インテリジェンスの分野には深く関与してこなかった。
 日本のインテリジェンス機関のシステムについては、海外からみるとわかりやすい。たとえば、CIAは日本のどことコンタクトしていたかというと、これらの日本の各組織を「使い分け」てきたという。
 たとえば、日本政府中枢に迅速に伝えたい情報は、表向きのカウンターパートである内調に渡す。ただし、内調は実働部隊を持たない役所であり、CIAからみてあまり利用価値のある組織ではなかったから、内調ばかりと付き合ってもあまりいいことはない。
 そこで、警察庁警備局や公安調査庁とも直接コンタクトする。彼らは朝鮮総連情報や中国関連商社情報などで冷戦期にはかなり有益な情報を持っていたし、CIA側から日本国内での調査リクエストを出しても、迅速に対応できる。CIAが日本でのインテリジェンス活動を考えた場合、利用価値がある組織というわけだ。
 外務省の各政策部局あるいは国際情報局ともコンタクトはある。米国務省の縄張りだからあまり大っぴらにはやれないだろうが、ここは情報交換だけでなく、一種の政策誘導のようなこともあったかもしれない。
 防衛庁の情報はこれはもうほとんど米軍ルートでアメリカに入っていた。CIAもコンタクトはあったろうが、これも大っぴらではなかったろう。
 こうしてみると、外国の情報機関が日本の情報機関と連携しようと考えたとき、本当の意味でカウンターパートになるような組織が日本にはないということがわかる。本来、内調がその役目を期待されていたが、前述したように、あまりにも陣容が小さく、その任をこなせない。
 それでも、日本の対外インテリジェンスが事実上、外事警察が主任務とする「赤軍派の追跡」と「共産圏スパイの監視」の2本立てだけならそう問題がなかった。だが、今やイスラム過激派組織の追跡や大量破壊兵器拡散問題など、よりグローバルな分野に対処しなければならない。
 では、既存の日本の情報機関にとって、どうすればグローバルなインテリジェンス能力を手っ取り早く強化できるか? いちばん簡単なのは、自分たちが他の日本の情報機関よりもいち早く外国情報機関のカウンターパートのポジションをゲットすることだ。
 そのわかりやすい例が、各機関の英語名である。これは『軍事研究』誌コラムで前に書いたことがあるのだが、もう一度ここでも紹介しておこう。
 日本の各情報機関では今、競い合うように「カッコいい英語名に改名する」ことが流行している。これまでこうした情報機関(部局)は、なるべく目立たないように(サヨクに「謀略機関ではないのか!」などとツッコまれないように)、ワザと無難な意味不明のネーミングにしていたところが多かったのだが、それでは外国の情報マンと会見して名刺を差し出しても、「???」ということになってしまう。そこで、これらの機関・部局がこっそり改名しているのだ。
 その先陣を切ったのは、内閣情報調査室だ。もともとの英語名は「キャビネット・リサーチ・オフィス」。なんだか政策シンクタンクみたいなネーミングだ。
 これでは迫力がないということで、86年に「キャビネット・インテリジェンス&リサーチ・オフィス」に改名した。日本語だけみると、「内閣調査室」から「内閣情報調査室」に改名したところで、たいして違いはないようにみえるが、本当の狙いは、英語で「インテリジェンス」という言葉を組織名に入れるところにあったわけだ。インテリジェンスという用語が入ることで、その組織はいっきに「情報機関」のイメージを帯びる。他の機関の改名にしても、要は「インテリジェンス」という用語をいかに取り入れるかということにすべてかかっている。
 ついでに言えば、内閣情報調査室長も今では「内閣情報官」となったが、その英語名は「ディレクター・オブ・キャビネット・インテリジェンス」である。外国人からみれば、日本の情報コミュニティの頂点に君臨するイメージだ。
 警察庁の場合、これまでは「警察庁長官官房国際部」は「ナショナル・ポリス・エージェンシー(=警察庁)」の「コミッショナー・ジェネラル・セクレタリアト(=長官官房)」の「インターナショナル・コーポレーション・ディビジョン(=直訳すると国際協力部?)」。他方、警備局外事課は「セキュリティ・ビューロー(=警備局)」の「フォーリン・アフェアーズ・ディビジョン(=外事課)」。どちらも外国人からみると、「インターポールの関係?」というイメージだ。
 そこで、警察庁では「フォーリン・アフェアーズ&インテリジェンス・デパートメント(=外事情報部)」というネーミングを考案し、その下部組織に「カウンター・インターナショナル・テロリズム・ディビジョン(=国際テロ対策課)」と「フォーリン・アフェアーズ・ディビジョン(=外事課)」を配置した。これで名刺を見せても、「おお、君はジャパンのインテリジェンス・オフィサーか」と認めてもらえる(たぶん)。
 公安調査庁も負けてはいない。これまでは「パブリック・セキュリティ・インベスティゲーション・エージェンシー」だったのが、数年前にこっそり「パブリック・セキュリティ・インテリジェンス・エージェンシー」に英語名のみ改名されている。その狙いについては、もはや指摘するまでもない。
 確認してみると、他の省庁の情報セクションでも、これまではたいてい「リサーチ」(調査)という語を使っていたのに、いつの間にか「インテリジェンス」という語にすり替わっている例が少なくない。
 たとえば、防衛庁防衛局調査課も今では「ディフェンス・インテリジェンス・ディビジョン」。陸海空各幕僚監部調査部も「インテリジェンス・デパートメント」になっている(各幕調査部は今年3月に改編・改名された)。
 外務省でも国際情報統括官は「ディレクター・ジェネラル・オブ・インテリジェンス&アナリシス・サービス」。こちらはスパイ・マスターよいうよりは、分析部門トップのイメージだ。ついでに見渡すと、たとえば、財務省関税局監視課にも「ディレクター・フォー・インテリジェンス」というポジションがあった。日本語の正式役職名は「密輸情報専門官」。ちょっと意訳しすぎの感もあるが。
 いずれにせよ、外国人からみると、今、日本ではインテリジェンス・ディビジョンが雨後の筍のようにいきなりどんどん誕生しているようにみえるかもしれない。ちょっと変だ。
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  1. 2006/07/23(日) 20:31:57|
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  4. | コメント:1
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内閣(情報)調査室の英語名

内閣(情報)調査室の英語名に関してですが,確か,日本名で「情報」が加わった際の英語名は「キャビネット・インフォメーション・リサーチ・オフィス」であり,後に再度「キャビネット・インテリジェンス&リサーチ・オフィス」に変更されたものと記憶しています。
  1. URL |
  2. 2007/01/01(月) 04:22:58 |
  3. 権兵衛 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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