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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

デカン・ムジャヒディンとは?その2

インドのテロで何件か問い合わせがありました。犯人はイスラム過激派? デカン・ムジャヒディンって何?というわけですが、現時点での私の推測は以下のとおりです。

まず、犯人はイスラム過激派で間違いないと思います。他に現在のムンバイであのようなテロを起こす勢力はまず考えづらいということがひとつ。インドでのテロリストというと、その昔はシーク教徒のテロ組織もありましたが、今は活動をほとんどしていません。
また、アッサム州などの北東部にはたくさんのテロ組織(ほとんど少数民族系)がありますが、はるか遠いムンバイでテロという前例はちょっとなかったはずです。
デカン高原にはナクサライトという毛沢東主義派の左翼テロ組織がありますが、それもムンバイで同時多発テロなどちょっと考えられません。デカンつながりではありますが、まず無関係でしょう。
ムンバイは以前からイスラム・テロがしばしば起きていますから、どうどう考えてもイスラム過激派にしか思えません。

犯行声明ですが、偽者であれば本物が何か言ってくるはずなので、これもまあ本物と判断していいように思います。

ということで、現時点での推測では、犯人は「デカン・ムジャヒディンを名乗るイスラム過激派」と判断していいでしょう。
では、連中はどういう組織なのか?ということですが、あまり名称に深い意味はないように思います。
インド=パキスタンに限らず、イスラム・テロ組織はどこもたいてい「友達つながり」の緩いネットワークで形成されていて、組織という概念があまりありません。たとえて言えば、広いイスラム過激派ネットワークのなかの、「××派」程度の感じですね。
「アルカイダとの関係はあるのか?」という質問もあったのですが、関係はあるし、ないとも言えます。どういうことかというと、アルカイダ、タリバン、ISI(パキスタン国軍統合情報局)内の極右人脈、カシミール系イスラム・テロ組織各派、パキスタンのイスラム政党、などは、みんな「友達」関係にあります。組織間に関係があるというかたちでなく、構成員がぐじゃぐじゃに友達関係で繋がっているのです。
アルカイダというのは、その広くて緩いネットワークの代名詞のようになっているのですが、そういう意味では「みんな関係がある」ということになります。
しかし、アルカイダがそのネットワークのなかのビンラディン派という捉え方をすると、今回の犯人グループがビンラディン派と直接繋がっていたとは断定できません。可能性としてはむしろ低い。ビンラディン派はインドでのテロにそれほど関与してこなかったという経緯があるからです。
それより、背後関係ということでいえば、これまでのインド国内のイスラム・テロの場合、その背後にはほとんどISIが絡んでいます。イスラム過激派はこのあいだイスラマバードで大規模テロをやりましたが、こちらはさすがにISIが関与している可能性はちょっと考えにくい。けれども、インドでのテロとなれば、ISIが裏で糸をひいている可能性大です。

犯行声明の組織名にそんなに意味はないと前述しましたが、世界各地のイスラム・テロ組織はその個別のテロ作戦ごとに、主要参加者がなんとなく好みの組織名を作って名乗るということが普通にあります。今回の犯行グループも、ISIの支援を受けたラシュカレ・タイバあたりの系列の連中が、自前で作った組織名ではないかと思う。おそらく実行犯リーダーあるいはコア・メンバーたちの中に、デカン高原出身者がいたということではないか。
××派の上級幹部が、テロ実行グループに対して指示。「今回の作戦は××作戦。指揮官は×。お前たちを××ムジャヒディンを名付けよう」「おー!」というような感じではないかと思う。

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  1. 2008/11/28(金) 01:47:05|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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