菅義偉=プーチン電話会談「国内向け発表」の欺瞞
〜ロシアは1島すら返す気がない(※タイトル一部割愛)
2020年10月03日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/1384699月29日、菅義偉首相は、ロシアのプーチン大統領と就任後初めての電話会談を行った。日本側からの要請によるこの会談で、プーチン大統領からは新首相就任を祝う言葉が贈られた。電話会談自体は、セレモニー的なものだ。
注目されたのは、菅政権の対露交渉のスタンスだが、大方の予想どおり安倍前政権の路線をそのまま継承するものだった。
安倍前政権での対露交渉は安倍前首相本人と官邸の補佐官らが主導しており、官房長官だった菅氏はあまりタッチしていなかったようだが、それでも責任者の一人である。前政権の政策を否定するような動きはしないだろう。
それはつまり、北方領土返還に「1ミリも進展がなかった」安倍前政権の対露交渉を反省的に総括することはなく、今後も進展の望めない方向を継続するということだ。
同日の外務省発表文書にはこうある。
①菅総理から、日露関係を重視している、平和条約締結問題を含め、日露関係全体を発展させていきたい旨述べるとともに、北方領土問題を次の世代に先送りすることなく終止符を打たなければならず、プーチン大統領と共にしっかりと取り組んでいきたい旨述べました。
②これに対しプーチン大統領から、菅総理の就任をお祝いする旨述べるとともに、安倍前総理との関係を高く評価しており、菅総理との間でも二国間及び国際的な課題に関して建設的に連携する用意がある、平和条約締結問題も含め、二国間のあらゆる問題に関する対話を継続していく意向である旨述べました。この文面からは、日露首脳が今後も北方領土問題の解決のために対話を継続していくことが合意されたかのような印象が強く示されている。実際、多くの報道では、日本政府からのこうした情報を基に、今後も日露間で領土交渉が前向きに続けられることを示唆する記事を大メディア各社の「政治部」が報じている。
また、菅首相自身も、会見で同様の文言で発言をしている。こうした文言は事務方が緻密に作るもので、首相にはそれと齟齬がないようなコメントが要求されるから、それは当然といえば当然だ。
しかし、これはあくまで日本政府の発表でしかない。両者が主にどんな話をしたのかは、客観的にはこれだけではわからない。
ロシア側の発表は「北方領土」にまったく触れていないそこで、ロシア側の発表をみてみると、以下のとおりだ。
「双方は、近年の日露対話の発展および政治、貿易、経済、文化、人道の分野における協力の進展を評価した。
また、新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を含む医学分野における協力についても話し合われた。
両国の国民とアジア太平洋地域全体の利益のために、すべてにおいて両国の関係を深める努力を継続していくことを確認した。流行状況の経緯をみて、様々なレベルで接触を続けることに合意した」(9月29日、ロシア大統領府発表)
これだけである。領土問題については一文もない。これは互いが、会談のどの部分を重視したかということを表している。
日本の外務省発表も、相手がある外交の問題で「嘘を書く」ことはしないだろうから、ゼロから創作したわけではまさかあるまい。しかし、ロシア側が領土問題にまったく触れていないということは、ロシア側はそれをまったく重視していないことを意味する。
おそらく20分間の電話会談のどこかの部分で、菅首相が
一言さらりと「触れただけ」という程度だったのだろう。
しかもさらに、日本政府の発表文には、
意図的なごまかしがある。
菅首相は
「北方領土問題を次の世代に先送りすることなく~」と語ったとされているが、「北方領土問題」の存在、そして「北方領土」という用語自体を、ロシア側は一切認めていない。仮に菅首相がその言葉を使ったとしたら、プーチン大統領が「あらゆる問題に関する対話を継続していく意向である」などと応えることはありえない。
ロシア側が「領土問題は存在しない」との公式な立場を表明している以上、日本側がもし、そうした文言を持ち出せば、予想外の反応を引き出す可能性がある。そのリスクを避けるため、
菅首相に対しては事前に事務方から「北方領土」「領土問題」「領土交渉」は「NGワード」だとレクされていたはずである。
こうした場合には、たいていは相手を刺激しない別の言い方にする。たとえば「北方の島をめぐる双方の立場の問題」などといった曖昧な言い方にすれば、プーチン大統領にも異論はない。そして、そういった言い方を、日本国内用には「北方領土問題と同じこと」とするわけだ。もちろん上記の文言は筆者の推測だが、なんにしても菅首相は「北方領土」という言葉をプーチン大統領に直接ぶつけてはいないだろう~以下略
※全文は上リンクへ
スポンサーサイト
- 2021/02/03(水) 14:09:40|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0