ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

クリミアの親ロシア勢力内で力を持つ特殊部隊「ベルクート」

 急展開中のウクライナ情勢ですが、ロシアがクリミアへ軍事介入を本格化する方向です。クリミア自治共和国政府がロシアに支援要請し、ロシアが介入をほぼ決めた感じです。今後、おそらくクリミアは実質的にロシアの勢力圏になると思われますが、その後、他のウクライナ東部地方にまでその流れが拡大するかどうかが焦点になります。
 黒海艦隊の本拠地があり、ロシア軍がもともと存在するクリミアと、他の地域では事情が大きく異なりますが、すでにハリコフでは親ロシア派のデモの情報もあります。イケイケのプーチン大統領のことですから、どう出るか予断はできません。
 ところで、クリミアがこのような事態に至った下地として、ウクライナ政府でのヤヌコビッチ追放からのわずか数日間で、クリミア半島内で親ロシア派の正体不明の武装勢力が素早く要所を制圧したことがあります。その主役はおそらくロシア軍の偽装歩兵部隊と、ウクライナの警察系特殊部隊「ベルクート」だったろうと思われます。
 他に親ロシア派有志の部隊(おそらく軍のOBが中心)も参戦していますが、軍部隊がまるごと「ウクライナから寝返った」との情報はないようです(もっとも、現在はすでに親ロシア系のクリミア自治共和国政府が地域内のすべての軍・治安部隊の指揮権を主張しています)。
 特殊部隊「ベルクート」(イヌワシ)に関しては、そもそもキエフのデモ鎮圧の時点で注目されていました。ヤヌコビッチ大統領および当時のウクライナ内相だったビタリー・ザハルチェンコの命令でデモ鎮圧を実行し、100人近い人を殺害したのが、このベルクートだったからです。
 
 ベルクートはもともと旧ソ連の内務省治安部隊「OMON」を起源としています。OMONは内務省傘下ではあったものの、単なる警察部隊ではなく、装甲車などの重装備を擁し、テロ対策や民族紛争に出動する精鋭部隊として知られた部隊でした。
 ソ連時代、ウクライナでは主要都市にOMON部隊が配置されていましたが、独立後、すべての州にベルクートとして配置されました。ベルクートは警察系の特殊部隊という立場ですが、指揮系統上は州(市)警察の指揮下にはなく、各州(市)の内務省組織が直轄していました。
 ベルクートはもともとは内務省組織犯罪対策局の隷下部隊でしたが、97年に同局に專門の特殊部隊「ソーキル」(隼)が創設され、以後、ベルクートは内務省公安局の隷下部隊となっています。
 もっとも、とくにクチマ政権時代の頃から、ときの政権の守護部隊となり、公安・治安維持ということで野党勢力あるいは反体制デモ隊などに対する弾圧の道具にされていました。とくにヤヌコビッチ政権下では完全に大統領の私兵と化していたようです。
 警察系ではエリート部隊で、給与は一般警察官の1.5倍から2倍といわれています。ベルクートに入隊するには兵役と最低2~3年の法執行機関での勤務歴が必要。実績のあるアスリートは優先されます。実際には空挺部隊および海軍海兵隊の出身者が多いようです。
 隊員には東部のロシア系が多いようですが、全員がそうだということではありません。各エリアの部隊は50人から600人。ウクライナ全体では4000人~5000人です。
 各地域ごとに別運用ですが、いちばん大きな単位である連隊は2個。キエフとクリミアに配置されています。キエフの独立広場の弾圧には、キエフの部隊が投入されています。
 キエフでの政変の最終段階で姿を消し、2月25日に新内相のアルセン・アバコフが解散命令を下しています。
 独立広場での弾圧でウクライナでは悪名を轟かし、権力者の手先となっていたことで、ウクライナ各地で反ロシア系住民の憎悪の対象となっています。そのため、ロシア系の隊員の多くは、ロシア系住民が多数派であるクリミアに逃げたようです。彼らはおそらく、もともとクリミアに配置されていたベルクートの1個連隊に合流しているものと思われます。
 自動小銃、防弾チョッキから、各種機関銃、装甲兵員輸送車まで保有し、統制のとれた歩兵という側面もあります。
 前述したように、すでに親ロシアのクリミア自治共和国政府は域内の軍・治安部隊の指揮権を主張していますが、実際にその中心となるのはおそらくベルクートだろうと思います。
 なお、ロシアは、クリミアに集結しているベルクート隊員にロシア旅券を与えるとも言っています。
スポンサーサイト
  1. 2014/03/02(日) 01:05:19|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<今後のカギを握るウクライナの親ロシア勢力 | ホーム | 崔竜海失脚情報(朝鮮日報)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://wldintel.blog60.fc2.com/tb.php/1357-91c2f8ee
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。