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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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「安全性」と「基地問題」を混同しているオスプレイ反対運動

 オスプレイは他の軍用機と比べて、とくに危険な欠陥機ではありません。これは何も私だけが主張していることではありません。軍事専門誌に評論を書いているような軍事評論家の方で、オスプレイを欠陥機だと言っている人はたぶんいないと思います。
 オスプレイ欠陥機説というのは、日本だけの独特な現象です。先週、私は朝ズバで「オスプレイ反対の声はアメリカにはない」と明言し、基地反対派の顰蹙を買ったようですが、どの軍事専門家に聞いてもたぶん同じコメントをすると思います。
 しかし、日本ではいまだにオスプレイを危険な航空機だと誤解している方が多くいます。これはおそらく基地反対派の方々の中に誤解があり、それがマスメディアの方々にさらに誤解されて広まり、その誤解のままに報道されているからと思われます。
 この問題は、どちらもべつに日本の安全を考えてのことなのでしょうが、左右の感情的な敵意むき出しの論争になりがちで、なかなか建設的な方向に議論がいきません。
 当ブログでかねて書いているように、私自身は沖縄基地のうち、海兵隊基地については大幅縮小が持論なので、どちらかというと基地反対派に近い立場ですが、それでも基地反対派の一部のメディアが仕掛けるオスプレイ欠陥機説は、あまりに事実を恣意的に歪曲したものであり、賛成できません。
 私がちょっと残念に思うのは、マスメディアの方の中に、基地反対派(とくに在沖縄メディア)の言うことを無条件で信じてしまう傾向が感じられることです。私のブログごときが基地反対派の方々の耳に届くとは思っておりませんが、マスメディアの方でこの問題の報道に関わっている方がひとりでも読んでいただければと願い、昨年10月にJBPRESSに寄稿した記事の一部を再録してみます(※元記事ではそれプラス、日本政府の対応の問題に言及しましたが、対立軸を明確にするため今回は割愛します)。

「安全性」と「基地問題」を混同しているオスプレイ反対運動

 2012年10月1日、オスプレイの沖縄配備がいよいよスタートした。地元では反対運動が激化しているが、米軍は粛々と計画通りの運用を10月中旬より開始する予定で、日本政府もそれを認めている。今後も反対運動は続くだろうが、彼らの要求は無視されるだろう。
 ということで、反対派と賛成派の遺恨試合は、これからも続く。反対派は「沖縄を踏みにじる日米両政府」を非難するだろうし、オスプレイ容認派は「反対派は日本の安全保障を分かっていない」と批判する。どうも議論がかみ合わない印象だ。
 オスプレイ配備の是非をめぐる言説は、2012年7月の大騒動の頃に出尽くした感があるが、あれから3カ月が経過し、改めて振り返ってみると、議論が進まない理由がいくつか見えてきた。要するに、下記の2つの論点がごちゃ混ぜになっているのだ。これらは本来、まったく質の異なる問題である。

(1)オスプレイは欠陥機か否か?
(2)在沖縄米軍基地をどうすべきか?

 まず1つめの論点は、「オスプレイは欠陥機か否か?」だが、本来、今回のオスプレイ配備問題は、これに尽きる。そもそも巷間言われているような欠陥機であれば、そんな危険なものが日本国民の頭上を飛び回っていいはずはない。住民の反対は当然なことで、そんな暴挙に出る米軍も、それを許した日本政府も到底許されない。
 しかし、結論としては、上記のような話にはならない。オスプレイには構造上の欠陥はなく、他の米軍機に比べて、特に危険ではないからである。
 すでに広く報道されている通り、沖縄に配備されるMV-22オスプレイの飛行10万時間あたりの重大事故率は、他の海兵隊の航空機の平均値よりも低い。といっても、それほど突出して低いわけでもないので、要するに“普通”ということになる。
 姉妹機の空軍特殊作戦用CV-22オスプレイ機は事故率が非常に高いが、これはそれだけ過酷な運用をしているのが原因である。例えば、自動車でも乗用車とF-1マシンの事故率を比べても意味がないように、航空機の事故率を、その運用事情を無視して比較してもしかたがない。
 また、すべての航空機は通常、開発・試作段階から配備初期に事故が起こりやすく、概して老朽化によってまた事故率が上がる。機械工業の分野で、故障率のバスタブ曲線と呼ばれる法則だが、それに加えて、運用傾向によっても事故率は大きく変動する。後継機種の登場によって旧式機が実戦や訓練から引退し、平時の輸送業務中心に出番が限定されれば、それだけ事故率は下がる。こうした傾向を利用すれば、調査対象期間の設定次第で、特定の機種の事故率を高く見せたり、低く見せたりすることもできる。オスプレイ反対派が持ち出す“数字”はすべて、こうして恣意的にこじつけたものだ。

 防衛省と外務省は2012年9月19日、「MV-22オスプレイの沖縄配備について」との報告書を公表した。2012年4月のモロッコでの墜落事故、および6月のフロリダでの墜落事故(こちらは特殊作戦用CV-22)の原因究明調査を踏まえ検証した結果、「機体の安全性には特段の問題はなく、MV-22オスプレイが他の航空機と比べて特に危険と考える根拠は見出し得ない」と結論付けられた。
 上記のモロッコとフロリダでの相次いだ墜落事故が、オスプレイ危険説のいちばんの論拠だったが、米当局の調査結果では、いずれも人為的な操作ミスであり、機体の欠陥が原因ではなかったとされた。十分に根拠のある内容であり、反対派がこれを“論理的”に否定することは不可能であろう。
 そうなると、反対派としては、「日本政府も米軍も、事実を隠蔽しているに違いない」との陰謀論に頼るしかなくなるが、少なくとも米軍当局が、米兵の生命の安全に直結する問題でそのような隠蔽工作をしたら、大変な大スキャンダルである。仮にそんなことをしたとしても、到底隠せるはずがない。要するに、陰謀論は荒唐無稽な妄想なのだ。
 反対派からはこの他にも「大量の事故機を隠している」「欠陥機であることを現場兵士は承知しているが、米軍上層部が口止めしている」「軍産複合体がウラで暗躍している」といったトンデモ陰謀論がいくつも出ているが、いずれも根拠のまったくない空想の話にすぎない。
 もう少しまともな反対論としては、「たとえ機体の欠陥でなくとも、人為的な操作ミスが頻発するような操作性の悪い機は、安全とは言えない」との指摘がある。確かにそのとおりだ。しかし、オスプレイはたまたま2件の操作ミス事故が続いただけで、決して他の航空機より事故が多いわけではないことは、数字が証明している。

 このように、反対派は一所懸命にオスプレイの安全性に対するマイナス要素を探し出し、それを基にネガティブキャンペーンを仕掛けるが、そのことごとくが論理の正当性を逸脱しており、破綻している。最終的には、「それでもオスプレイは絶対に落ちないとは言い切れない」といった言い方がされるが、そもそもすべての航空機は100%の安全性など担保できない。
 問題なのは、あくまで安全性を阻害する機体の欠陥の有無であり、結局のところ、オスプレイは他の海兵隊の航空機より危険とは言えないのだ。

基地反対運動の攻撃材料に

 しかし、それでもオスプレイが危険だと信じている国民は少なくない。反対派に同調するマスメディアが、大々的にネガティブキャンペーンを続けているからである。
 ここで留意すべきは、オスプレイ反対論の中心にいるのは、基地反対派であるということだ。彼らは、オスプレイだから反対しているのではなく、沖縄の米軍そのものに反対している。彼らは基地反対運動のための攻撃材料を常に探しているが、そこにオスプレイが現れた。そこで、オスプレイは危険だとのキャンペーンを仕掛けたのである。
 これは宣伝戦・心理戦としては大成功で、普段は基地問題に無関心な人々も、危険な欠陥機が日本の上空を飛び回るなどという話には過敏に反応する。テレビで「危険な米軍機がやって来る」などという話を聞けば、誰だって不安を覚える。

 お断りしておくが、筆者自身は沖縄の海兵隊に関しては、「大幅に縮小すべし」と考えている。在沖縄米軍の存在は抑止力として認めるものの、現在の規模は日本に必要な抑止力のレベルを超えており、沖縄が過大な負担を強いられていると思っているからだ。
 その意味で、筆者はむしろ基地反対派の側に軸足を置く立場だが、それでもオスプレイ反対の論拠は邪道だと思う。
 基地反対の議論と、危険な機体ではないかという議論はまったく別のもので、そこを故意に混同すべきではない。いくら宣伝戦で成功したといっても、アンフェアな仕掛けは、正当な議論のためにはマイナスではないかと考える。

「安全保障のためにオスプレイが必要」という反論は有効か?

「オスプレイは危険か否か?」という、すでに真相が明らかな論点を巡る宣伝戦にかまけている間に、本来、議論すべき問題が影に隠れてしまっていることを指摘したい。普天間飛行場の移設問題だ。
 オスプレイが特に危険な航空機ではないとしても、普天間飛行場の環境そのものが極めて危険だということは間違いない。したがって、普天間飛行場の移設問題こそ、早急に取り組むべき問題である。
 筆者自身の考えは、嘉手納統合がベターというものだが、これにはさまざまな考えや立場の人がいるので、ここではこれ以上言及しない。ただ、「普天間の危険性」と「オスプレイの危険性」は、関連はするが別個のイシューであり、これを故意に混同すべきではない。オスプレイが配備されなくとも、既存のヘリだけで普天間は十分に危険なのである。
 他方、オスプレイ賛成派・容認派の側には、オスプレイが必要な理由について、安全保障上の観点から論じる議論があるが、これも反対派との議論をおかしくしている。
 海兵隊がオスプレイを導入することで、在日米軍の能力は強化され、ひいては抑止力も強化される。それは事実である。しかし、オスプレイ反対派による「危険な欠陥機だ」との主張に対する反論としては、抑止力強化論は有効ではない。
 仮にオスプレイが危険な欠陥機であるなら、「日本の安全保障のために、沖縄県民の生命を危険に晒してもいい」というロジックになる。「オスプレイは抑止力として必要だから、危険だけれども我慢してくれ」と言われても、これは沖縄県民には受け入れられない話だろう。
“日本の安全保障”と“沖縄県の負担軽減”は、沖縄駐留米軍問題の2つの核心で、もっとも重要な論点だが、かといって、オスプレイが危険な欠陥機であるかどうかは、直接はリンクしない。

 オスプレイの問題点は、実際には危険な欠陥機ではないオスプレイを、基地反対派が強引に争点に持ち出したことにある。その論理が破綻していることは上述した通りだが、それでも、マスメディアを巻き込んだネガティブキャンペーンはかなり成功し、多くの日本国民が「オスプレイは危険だ」と誤解する状況になっている。
 今後、米軍は粛々と自らの計画のままにオスプレイを運用していく。反対派は、日本政府のアメリカ追従ぶりを非難するだろうが、その際、またオスプレイ欠陥機説を繰り返し持ち出すだろう。
 こうして、本来は別の話である「オスプレイは欠陥機か否か?」「在沖縄米軍基地をどうすべきか?」が、あるときは故意に、あるときは無意識に混同され、不毛な論争が続いていくことになる。(了)

 どんな航空機にも100%の安全など存在しません。いずれ沖縄のオスプレイが事故を起こすことも充分にあり得ます。
 しかし、それは本当にオスプレイだから特別に起きた事故なのだろうか?ということを検証せず、基地反対運動の材料ということで利用すれば、基地問題の本質からどんどんずれていくだけでしょう。
 今回のペイブホーク事故の報道をみて、そんな危惧を強く覚えました。
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  1. 2013/08/12(月) 19:33:06|
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  2. 2013/08/16(金) 12:22:09 |
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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