ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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シリア反体制派の2つの誤算

 シリア問題で日本の「反・反体制派」の方から再度ご意見をいただきました。
 私の情報分析が認められないとのことで、それはべつに構わないのですが、この件での反体制派情報ソースへの疑問についてご指摘があったので、簡潔に。
 以前も書きましたが、政府側、反体制派ともに偽情報、誤情報、誇張情報はあります。ただし、これだけ情報が現場からダイレクトに流出する時代になると、そうしたものは全体的には淘汰されます。ある勢力がユーチューブとSNSを大規模に偽装し、ありもしない「現実」を偽装することは、理論上不可能ではないですが、現実には無理です。
 とくに恣意的な偽装が困難な現場映像は証拠性が非常に高く、その流出量の圧倒的な差が決定的です。つまり、シリアの現実というのは、ユーチューブ映像の山を丹念に検討し、それに関連するSNSの声の山を検証すれば、ほぼわかることです。シリアの場合、ユーチューブと関連SNSでたいていの事実は表面化されます。反体制派サイドでも問題点はほぼ露呈しています。
(ちなみに、私は断固、反体制派支持ですが、とくに最近は「反体制派はすべて支持」などでないことはこれまでも書いています。ただし、アサド政権の犯罪に比べれば、規模的に圧倒的に枝葉レベルですし、比較的小さな件をいちいち書かないのは、単に比較的小さなことだからです)

 前エントリーで、「自身の人脈」「報道」「ユーチューブやSNS」が私の情報ソースと書きました。それらを「総合的に分析する」と書いていますが、それだけです。
 上記「報道」の中には、アル・ジャジーラやアル・アラビーヤも当然、ワン・オブ・ゼムに含まれます。SANAやRT、プレスTV、المنارなんかも見ます。とくにジャジーラの現地報告は重要なソースと考えています。もちろんワン・オブ・ゼムですが。

 あと私の場合は、やはり基本には、自分の経験によるアサド政権に対する厳しい見方があります。シリアに居住したことはありませんが、かれこれ20年間、かの国に私の第二の「実家」があったわけで、それなりに恐怖支配の実態を見てきました。どなたかが「シリア人の知人は全員アサド支持」と書かれていましたが、アサド政権に近い人は厳しい相互監視下にあるので、外国人にはそう言うしかない立場にあります。
 このあたりの主観の違いは、第三者からみれば、私の見方もワン・オブ・ゼムでしかないですが、あとは発言者のレベル評価で判断してもらうしかないですね。まあ、私ごときの海外取材経験値や、情報収集・分析の訓練度などたいしたものではないですが。
 
 正直、「アサド政権と反体制派はどちらが支持されているのか?」といった議論はあまり関心ありません。
 実際のところ、「国民の大多数は反アサド。ただし反体制派にもいろいろあって、最近は殺し合いレベルが極度に悪化したため、宗派ヘイト傾向の一部の過激グループが増殖中」です。これは私が思い込みで書いていることではなく、国際社会、少なくとも欧米やアラブ圏の報道・世論の大勢です。欧米メディアは嘘ばかり、とは私は考えていません。
 それよりも、それを前提として考えるべきなのが、「では、どうやって殺戮を止められるか?」ということで、たとえば、「反体制派(当然、自由シリア軍主流派)を軍事的に強化させて政変を早めるのがベターなのか?」「外国軍が大々的に軍事介入しないと収まらないのか?」「それとも、独裁政権存続容認での勢力棲み分けが現実的なのか?」「あるいは独裁政権存続容認で反体制活動家の国外亡命と国内での報復弾圧抑止に国際社会の努力を集中すべきなのか?」といった議論が重要かと思っています。
 私は上記のうち、「反体制派の軍事的強化」支持なのですが、そこはいろいろ議論のあるところと思っています。

 ところで、私は反体制派のデモ仕掛け人系の古参人脈とコンタクトしていますが、たしかに彼らには2つの大きな誤算がありました。
 ひとつは、非武装デモで政権内部からもっと大掛かりな離反が即座に起きなかったこと。これはアサド政権の暴力装置内部の恐怖支配の徹底が上回りました。後にかなり広範な離反が起きていますが、遅すぎました。
 もうひとつは、非武装デモへの弾圧を受けて、国際社会が助けてくれなかったこと。リビアとシリアの差は、まさにこの点で、その意味では、反体制派の大勢は、最悪の戦争犯罪人はバシャールと並んで、国連安保理決議をことごとく妨害したロシアのプーチンだと考えています。
 この2つの誤算から、状況は泥沼化し、今、彼らがもっとも恐れていた宗派抗争の局面になりつつあります。とくに、イランやヒズボラの直接介入によって、反体制派とシーア派住民との抗争が激化することが避けられない状況です。
 シリアの場合、表だって話されることはあまりなかったのですが、本音ベースでの私の印象では、スンニ派は比較的オープンなアラウィ派やキリスト教徒より、独特のエスニック集団であるシーア派に対する不信感が水面下に根強くあったような気がします(あと、クルド人に対してもですが)。
 このあたりは、アラブ世界に共通のいわば宗派差別に近い感覚ですが、その被差別意識をシーア派側も感じているはずで、いまやシリア各地で暗躍中のイラン人部隊やヒズボラに彼らが合流すると、シーア派敵視のスンニ派過激派が対抗し、イラク化というコースが待っています。
 これをいかに防ぐかが喫緊の課題になっています。
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  1. 2013/06/12(水) 13:22:08|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
<<シリア与太情報の流れ方の一例 | ホーム | アサド支持と反体制派支持の違い>>

コメント

黒井さん。
あんた自分でこの文章を何度も読み返して、これまでに書いてきたことと比べて何とも思わない?
この言い訳がましい文はなんなんだよ!
恐怖支配の実態〜って何?
そんなもん無いと思っている人間からしたら、具体的に書いてもらわないとわかんないから。

  1. URL |
  2. 2013/06/12(水) 14:58:16 |
  3. ヤス #-
  4. [ 編集]

テロと言えば今は大半が原理主義者たちによるものですが、90年ぐらいまでは、ソ連の支援を受けた左翼独裁国家が
行っていました。イラク、リビア、シリア、南イエメン、PFLP、日本赤軍、アルジェリア等。ソ連の継承国であるロシアは最後の砦、シリアを守りたいのでしょう。サダム体制同様、先代アサドもスターリンの真似をした、恐怖体制を作ってきました。恐怖の弾圧に立ち向かって行った一般的なシリアの人々には敬意を表したいです。最近、マケイン上院議員がシリア北部を訪問しましたが、それと対照的にオバマ大統領の優柔不断はこれまで事態を悪化させました。まだ大統領候補だった2008年のグルジア紛争のときも、オバマ氏はロシアよりの発言をしていました。彼はロシアに対しては常に及び腰のようです。 ところで、NHKなどに出演するシリアの専門家の方は、よくSANA通信をブログ等で引用しています。やはり、番組の解説ではアサド寄りの解説をしていました。 今後も黒井先生のシリア情報を期待しております。
  1. URL |
  2. 2013/06/12(水) 16:10:54 |
  3. mustafa kemal #-
  4. [ 編集]

ある、動画サイトを閲覧すると、金曜日には反アサド側がデモをしているようです、星が3つある旗が多数振られいます。もちろん、アサド賛成派も存在するのは事実だと思います。

スターリングラード攻防戦と米ソ冷戦時の局地戦争とカルバラの悲劇が混在しているようなシリア内戦が簡単に終了するとは思えません。個人的には、イランイラク戦争やレバノン内戦で戦闘停止になったのも、他国の軍事介入だったので、それしか方法はないと思います、そうでなければ、アサド政権側はロシアなどから武器を供給され、反政府側はアメリカやNATOから武器を供給されたりして、どちらかが、殲滅されるまで戦う悲劇になるでしょう。でも、どこの軍隊が介入するのか?と聞かれると、正直言って答えに窮するところではあります。
  1. URL |
  2. 2013/06/12(水) 21:37:44 |
  3. 匿名 #-
  4. [ 編集]

 ロシアからの軍事支援としては、防空システムや戦闘機、あるいは戦闘車両などで、それ自体脅威ではありますが、対ゲリラ戦で決定的な兵器かというと、そうではないと思っています。
 それよりも政府軍が不足しているのは「信頼できる兵力」で、そこにヒズボラやイラン革命防衛隊、イラク・シーア派民兵などの援軍の有効性があります。
 それに対し、反政府軍側が必要としているのは携帯式対空ミサイル、強力な対戦車兵器、その他の携行武器の弾薬で、それが充分に供与されれば、早い段階で反政府軍勝利となると思います。
 ただ、とくに携帯SAMは反米テロリストの手に渡るときわめてやっかいな兵器なので、やはり供与は難しいということになりそうです。
 なので、武器供与があるとしても、性能が限定的な対戦車兵器、小口径の迫撃砲、機関銃類、その他の携行武器の弾薬あたりに留まるでしょう。
 しかし、それだけでもそれなりの数を供与されれば、相当数の犠牲のうえではありますが、反政府軍が勝利すると思います。これは希望的観測ということではなくて、ゲリラ戦の状況をみての分析です。
 各地のゲリラ戦の経緯をみていても、クサイルのような集中攻撃以外の局面では、反政府軍側に不足しているのは携行武器とその弾薬です。しかも、決定的に不足しています。
  1. URL |
  2. 2013/06/12(水) 23:52:36 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

結局、反政府軍に不都合な情報・映像は取り上げないのですね。それに関して複数の方が疑問を提示していられるわけですが?(残念ながら、ほとんど回答がありませんけど…)
 
私は反政府軍の犯罪が「枝葉レベル」の取るに足らない情報とは思えません。もし政府軍が同じ行為を行ったなら、たぶん貴方は大々的に書き立てるのではありませんか?
サリンに関する話題も然り。
捏造が多いYouTubeの動画や、偏向報道ばかりのアルジャジーラを参考にされることに関してはもう言及しません。

もしこのブログが「シリア反政府派ファン」として書かれているのなら、「ファン同士盛り上がって下さい」で終わりますが、「ジャーナリスト」を標榜するなら、あまりに偏りすぎていると思うわけです。貴方のブログファンの中には「反政府軍はなけなしの中古の軍装備しかしていない」と思い込んでいる人が多いのでは? 事実でないことは動画を多数見られている貴方はご存じのはずです。

ファンの広場の「荒らし」ではありませんので、もうコメントしません。安心して下さい。
  1. URL |
  2. 2013/06/13(木) 11:01:19 |
  3. ユータ #-
  4. [ 編集]

 報道を鵜呑みにしない視点は重要ですし、アルジャジーラの報道には私自身、「これはどうかな?」と思うこともたまにはありますが、中東地域におけるアル・ジャジーラの取材力は圧倒的ですし、カタール王族への直接批判を除けば、中立性も中東地域の大手メディアでは突出しています。
「偏向報道ばかりのアルジャジーラ」とか言ってる時点で、ジャーナリズムでは鼻で笑われます。お疑いなら大手メディアの外報部の人に聞いてみてください
  1. URL |
  2. 2013/06/14(金) 05:45:57 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

 あと、政府軍と反政府軍の武器レベルは、素人には同じに見えるかもしれませんが、もう圧倒的な差があります。お疑いなら、自衛隊の方にでも聞いてみてください
  1. URL |
  2. 2013/06/14(金) 05:49:11 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

 あと、サリンの件は、政府軍のしわざだと、つい最近も書いてます。たしかルモンドの現地報告がありましたし、フランスのインテリジェンスも確認しています。
 フランスのインテリジェンスより怪しげなネット情報を信用していたら、インテリジェンス業界では鼻で笑われます。
  1. URL |
  2. 2013/06/14(金) 06:02:57 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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