ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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アサド支持と反体制派支持の違い

 前エントリーに数人の方から異論&批判をいただきました。シリア問題に対する私の立場は何度も書いていますので繰り返しませんが、外国人が「親アサド政権派」「親反体制派」「どちらも批判派」のどれ寄りの視点になるかは、ほぼ以下の2つの観点に左右されるのではないかと思います。
①「政府と反体制派 どちらが国民に支持されているのか?」
②「反体制派もひどいことをやっているのではないか?」

 ①に関しては、私は、政府支持派はきわめて限られた支配層とそのオコボレにあずかっている層に限定されていると認識しています。数値的な統計はありませんが、まあせいぜい2割くらいではないかなと見ています。うち半分以上は、もともと積極的支持派というわけではなく、宗派対立化で自己防衛のために政府支持に傾いていった層と思っています。
 問題はそれ以外の国民ですが、ほとんどは心情的に反アサドと考えています。アサドは政権維持のために国民を大量虐殺していますので、そんなアサドを支持する声が、積極支持派以外から沸き上がってきたようなことは、どんなソースを漁ってもまず見当たりません。
 ただし、反政府派が必ずしも「すべての反体制派を支持」ということではありません。反体制派にもさまざまいます。ヌスラ戦線に対する現地の恐怖心や警戒感の声を、私はかなり早い段階で当ブログで紹介していますし、とくに北部エリアで自由シリア軍系のゴロツキ集団が一部存在することも書いています。どこの戦争でも、戦場とはそういう場所です。
 問題はその比率で、親アサド派の方には、「反体制派はテロリスト」に見えるようですが、私の見立てではほんの一部です。政府系メディアが誇張して喧伝するので、そればかり見ている人にはそう見えるということなのでしょう。
 国民の中でも、もちろん「すべての反体制派を支持」などはそんなにいません。「ちゃんとした反体制派なら支持したい」という層がいちばん多いのだろうと推測しています。
 私の情報ソースは、個人的な人脈ルート、他の報道、ネット情報(SNSやユーチューブ)の3種類で、それらを総合的に分析して判断しています。親アサド派の方は、アサド政権側人脈にだけ情報ルートがあるか、シリア政府系メディアあるいはロシアやイランのメディア、あるいはそれらを情報源にした他の報道・報告・ネット情報に情報源が偏っているかのいずれかでしょう。
「反体制派もひどい」ということに関して言えば、反体制派の一部に戦争犯罪に手を染めるグループはいますが、大半はそうではありません。たとえば本日の少年処刑のニュースに、反体制派のSNSが賛美の声で埋められれば私も見方を変えますが、そういうことにはなっていません。
 匿名の方のコメントにありましたように、国連の調査委員会が「どちらにも戦争犯罪はあるが、政府側が圧倒的にひどい」と報告していますが、そのとおりかと思います。それで国際社会(ロシアとイラン除く)の主流は、「イスラム過激派やゴロツキでない反体制派を支援」という方向を模索していますが、それが世界の標準的なスタンスです。
 それでもアサド支持という方には何も言う気もないですが、客観分析的な「どちらにも問題はある」の視点に関して、それで一歩引いた立場と私が一線を画しているのは、それはやはり私が半分当事者であるからだろうと思います。
 なにより今、進行している殺戮を止めるには、タテマエの形式よりも「イスラム過激派やゴロツキでない反体制派を支援」することが最重要だと考えているからです。
 シリアでは当初、多くの国民が恐怖支配の中、勇気をもってアサド打倒の声を上げました。サウジやカタールは関係なく、自分たちのために声を上げたわけです。
 ところが、それを政権が銃弾で圧殺します。そうして長い弾圧の月日の後、人々は身を守るために武器をとりました。ごく一部にサウジやカタールから資金が出ていますが、大半の反政府軍は政府軍から鹵獲した武器に頼っています。
 私はそんな反体制派の一部と最初からコンタクトがありますが、彼らは当初から非暴力闘争に賭けていて、武力レジスタンスを「逆効果だ」として抑えてきました。が、政権の弾圧の苛烈さに「武力レジスタンスやむなし」に立場を変えていきました。他に道がなかったからです。
 私はそんな彼らと情報の認識をほぼ共有しています。私はかねて当ブログで反体制派支持である理由を説明してきましたが、シリアには同じ情報認識の人がたくさんいます。シリアでは私はとくに変わった立場ということではありません。
 ただ、最近になって宗派抗争色が顕著に強まり(それもそもそもはアサド側の仕掛けですが)、反政府軍の一部、とくにスンニ派イスラム過激派系のなかに、他宗派に対する宗派ヘイト暴力が生じていることには、強い懸念を感じています(このこともすでに書いています)。反体制派の多くも、同じ危機感をもってます。
 アサド軍を撃退するためにはどんな勢力の力も必要だという現実と、この危機感とのギャップに関しては、反体制派内にもさまざまな議論があります。
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  1. 2013/06/11(火) 21:37:22|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<シリア反体制派の2つの誤算 | ホーム | 日本政府がやっとシリア反体制派支援へ>>

コメント

政権支持派は2割。それ以外は大半が反アサドと申されますが、それは確かなのでしょうか?
政権に批判的な欧米メディアですら、北部の住民の間で反体制派への不満が渦巻いている事実は指摘しています。
マスコミの取材にも必ず反体制派が同行し、自由な言論は事実上剥奪されているとも。
もし本当に大半のシリア国民が反体制派を支持しているならば、勢力圏内でマスコミの行動をマークする必要は無いと思いますが、いかがでしょう?
むしろ積極的に西側マスコミを招き入れ、シリア人がどれだけアサド政権を嫌っているかアピールできるはずだと思うのですが。

アラウィ派、キリスト教徒などへの殺害・虐殺・迫害が多く報告されているのは事実です。
クサイルが反体制派に占領された際に、大半のキリスト教徒が街から追放された事はご存知でしょうか?
クサイルの話ではありませんが、政府軍がイスラム主義者を撃退し、キリスト教徒を救った事は人権監視団ですら認めている話です。

私は必ずしも政権を支持するつもりはありません(反体制派を支持するつもりもありませんが)
しかし黒井氏の言い分には、明らかに疑問を覚える点が多いのです。

親アサド派は政府系メディアかロシアやイランのメディアの影響を受けていると仰られています。
では黒井氏の情報ソースである「他の報道」とはどういった報道なのでしょうか。
まさかカタール・サウジの代弁機関であるアルジャジーラやアルアラビーヤの事では無いですよね?

ユーチューブの映像は好きなように編集出来ます。
例えば、反体制派が先に銃撃し、政府軍が反撃したところから映像を公開すれば、視聴者にはどう映るでしょうか?
銃殺された市民の映像だけを流し、コメントに「政府軍がやった」と書かれていれば、それは検証しようがありません。
それが意図しない戦闘の、流れ弾で亡くなった遺体であってもです。

可能ならば政府は信頼出来ない、といった話では無く、反体制派の情報を信頼出来る理由を教えて頂ければ幸いです。
  1. URL |
  2. 2013/06/12(水) 01:09:34 |
  3. kmel #-
  4. [ 編集]

Kmelさん、それと鷹さん、アドバイスありがとうございました。
>黒井氏はアサド政権憎しで物事を見ています。
おそらく政権側に都合の良い記事は最初から信じていないのではないですか?

よく分かりました。
>政権支持派は2割。それ以外は大半が反アサド
とありますけど、「国民の7割が政府支持、中立が2割、反政府派支持は1割」という分析をNATOがしている(CIAの調査結果では75%が政府支持)というニュースを英紙辺りで最近見たばかりですけどね。
>どんなソースを漁ってもまず見当たりません。
と書かれると、Kmelさんが疑義を唱えられるのも頷けます。

キリスト教徒への虐殺や、ヌスラ戦線を反政府軍の主力と認める発言を「国民連合」代表が(朝日新聞へのインタビューその他で)していることなど、黒井氏が言う「ごく一部のゴロツキ反政府派」に責任を転嫁出来ないと思うのですが… ファデス通信のようなバチカンの報道も政権寄りのメディアなんですかね?
少年射殺事件一つとっても、反政府軍がやったことは「仕方ない」で済ます風潮がありそうで怖いですね。
  1. URL |
  2. 2013/06/12(水) 13:42:55 |
  3. ユータ #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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