ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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もともと意味のなかったシリア国際会議

 アメリカとロシアが根回ししていたシリア対話国際会議ですが、6月中の開催予定が流れました。
 これについて報道をみていると「反体制派が内紛していて、参加する代表すら決まらないから」というような話になっているものが多いのですが、少し違います。
 違いますというか、反体制派が内紛しているのはそのとおりなのですが、それだけが問題ではありません。反体制派の対外政治活動家はいわゆる海外組が多く、さまざまな主張がそれぞれありますが、主流派は「アサド退陣」が総意です。国内の反政府軍指導者も各地区革命委員会指導部もほとんどそうです。
 アサド退陣を前提にしない対話は、単なるアサド側の時間稼ぎと見られています。中にはアサドと交渉もアリという考えの反体制派もいますが、そんな大勢と乖離した人が反体制派代表として参加しても、まったく茶番でしかないわけです。
 あるいは、「アサド退陣」を主張して対話に臨んでも、あちらは呑むわけはないですから、対話努力のポーズという無駄なセレモニーに終わるのは必至であり、しかもその間にも人々は殺され続けます。これまで繰り返されてきた無駄な時間がまた繰り返されるだけです。
 平和的解決を目指す努力と言うと聞こえはいいですし、なんとなく人道的なニュアンスがありそうに見えますが、逆です。
 英仏が早急に武器を自由シリア軍に供給することが、戦闘激化で一時的な犠牲者増加を誘引しますが、それでも平和への唯一の道だと思っています。一時的でも犠牲者を増やすのはダメという意見もあるかと思いますが、それをしないで増え続ける犠牲者は構わないのでしょうか。
 あるいは、政府軍が圧勝し、叛乱軍を駆逐すれば、それも平和です。ですが、それで大弾圧の犠牲者が大量発生しますね。独裁政権が反乱分子を恩赦するなどはあり得ません。
 あるいは、アサド存続で民主化・・・するわけがないことは拙ブログで再三指摘してきたとおり。結局、大弾圧になります。
 反体制派がアサド退陣に頑ななのは、こうしたことを知っているからです。互いに歩み寄るのが対話という考えは、独裁者の国では通用しません。
 徐々に宗派対立の様相を呈してきたシリア内戦について、ボスニア戦争との類似性を指摘する声が報道でも増えてきています。私はボスニアを数度取材していますが、独裁構造か否かは決定的な違いです。
 ボスニア戦争は独裁vs抵抗の戦いではありません。最初から民族抗争の構図です。そこは対話⇒和平の道があるわけです。
 シリアは違います。リビアと同じですね。解決は武力による独裁打倒しかないです。その後の問題はもちろん生じますが、とにかく目の前の殺戮を止めるのが先決です。

 ところでリビアといえば、少し前のエントリーでコメント欄にも書いたのですが、リビアとシリアの最大の違いは、NATOの軍事介入の有無です。NATOの介入に否定的な意見もあるかもしれませんが、カダフィ軍がベンガジを落とそうというときにNATOが介入して勢力を逆転させなければ、大弾圧と抵抗運動が続き、今のシリアのようなひどい状況になっていたでしょう。
 ときどき「NATOが介入したせいで、リビアは今のようなひどい状況になった」との見解を散見しますが、前述したシリアの武器供与の話と同じで、そうしないと生じるマイナス要素のほうが甚大だということです。
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  1. 2013/06/06(木) 15:55:27|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

黒井先生の論調では、反体制派が勝たねば意味が無いように見受けられますね。
私個人から見れば、政府軍が勝利して反体制派を一掃すれば済む話だと思いますが。

リビアではNATOが反体制派に加担し、結果としてカダフィ政権は倒れました。
その後カダフィ氏の出身派閥や黒人労働者の話が途切れましたよね。
残酷な扱いを受けている事は漏れ聞こえてきますが、具体的な事は全く明かされていません。

今回の内戦でアサド政権が敗れれば、それはシーア派への大弾圧へと繋がるでしょう。
ならばアサド政権が勝利し、反体制派が粛清された方が犠牲は少ないのではないですか?
  1. URL |
  2. 2013/06/06(木) 17:34:35 |
  3. kmel #-
  4. [ 編集]

kmel氏へ。
独裁政権下の反体制派への弾圧は、独裁者への犯行への報復はより闇に葬られやすいと考えられます。
それに今まで命がけで独裁者やその支持者と戦ってきた人の犠牲も無駄になる可能性が非常に高いでしょう
(アサド独裁政権が同情して民主化を進めるという事は非常に可能性として低いと思う。民主化すれば報復を受けやすくなるでしょうから(独裁政治を敷いていた時よりかは))。
どうして、シリアの反体制派が粛清されたほうがいいのか、あまりに不謹慎で傲慢すぎる、そして汚い、人間的に。命がけで独裁者側と戦ってきた人の思いを踏みにじるようなことばですね。kmel氏の言葉は。あまりに非人間的だ。ネタのつもり、思考実験のつもりでも汚すぎる。

  1. URL |
  2. 2013/06/06(木) 20:56:18 |
  3. thexread #RRaS8zIo
  4. [ 編集]

リビアの場合、少なくとも外務省の渡航情報では新政権施政下でトリポリなど都市部に限定してかもしれないですが、治安が回復傾向にあることが記されていますね。主要都市ですら戦場になっているシリアに比較すればマシなのでは。内戦で流出した武器のコントロールは途上とはいえ、コントロールする方向に政府が動き出している点だけでもシリアとは懸隔があるように感じます。元反政府勢力による報復の加熱や非人道的行為も非難されてしかるべきですが、そこは内戦終結後、国連にPKOなどの形で監視させるというのはどうですかね。
ヌスラ旅団などイスラーム主義勢力はシリアのイスラーム国家化を最終目標に置いているかもしれないですが、自由シリア軍はあくまでも民主化クーデターを標榜している以上、その点を突いて(内戦が終結した場合を仮定してですが)報復の過熱やあらたな弾圧などが起きないよう国際的な監視を送り込む、というのは理屈として通りそうな気もします。

ここまで内戦が過熱してバシャール・アル・アサドが降りるなんていうことは有り得ないと思います。仮に自己の生命や権限の保持と民主化を両立させるなら、2011年のデモの段階で譲歩をしていたと思います。犠牲者が増加した後で「やっぱり助けて」と態度を翻したところで、硬化した反政府勢力からアサド自身の保身という譲歩を引き出せるとは考えられません。

内戦以前のアサド政権による人権弾圧はヒューマン・ライツ・ウォッチなどでも指摘されてますね。反アサドないしバース党政権的な文言を公の場で発する事自体がおそらくは日本で言えば「刑法に抵触する行為」、というように感じられます。あとは予防拘禁や拷問を疑わせる拘禁者の不審死なども伝えられているようで。個人的には経済政策や外交政策など直接人権とは関係の無い部分でのアサドあるいはバース党政権に対する市井のシリア人の見解が気になるところですが、社会矛盾を完全に解決できない(まあコレはどの国の政府も一緒と言えば一緒でしょうけど)にも拘らず、検閲報道やらなにやらで自分達の意見が全く政治に届かない、届けようとする行為は軒並み摘発される、とすれば良好とは言いがたいでしょうね。まぁ、市井のシリア人とひとくくりにできるモノなのかとも考えてしまいますが…。
  1. URL |
  2. 2013/06/08(土) 03:36:50 |
  3. AJAX #-
  4. [ 編集]

おっと、ヌスラ旅団ではなくヌスラ「戦線」でしたね。他の組織と混同してしまってました…
  1. URL |
  2. 2013/06/08(土) 03:37:34 |
  3. AJAX #-
  4. [ 編集]

 欧米の反体制派支援が遅れたことで、宗派抗争色が強まり、サラフィスト系の勢力拡大に繋がってしまったことは、残念ながら事実です。ですが「遅すぎるから必要ない」ではますます状況はひどくなる一方です。今からでも早急・大規模に反体制派への武器供与を実施することで、傷口が広がることを止め、アサド政権崩壊後の環境改善になると思います。
 反対意見をみると、「どうせダメだろう」だけで終わっている論調が多いですが、そういうものではないと思っています。

 他方、善悪の論点でいえば、日本でアサド支持を鮮明にしている人に直接会ったことはありませんが、反米=反・欧米メディア=反・反体制派、から心情的にアサド支持な人がいることは承知しています。
 私自身は、そうした方はシリアの現状をよくご存知ないのだからしかたないな、としか思っていません。
 シリア国営メディア情報とか、ロシアやイランのメディア、あるいはシリア政府系人脈と表面的なお客様的立場でしか付き合ってこなかった外国人記者・専門家の論調からシリア観を組み立ててしまうと、そうなるのもしかたないですし。
 シリアは40年にわたって徹底した恐怖支配を続けてきた収容所国家です。支配する側とそのオコボレに預かっていた人々以外の大多数の人にとって、恐怖と憎悪の対象でしかありません。あとは殺し合いが嫌でおとなしくしている人と、死んでもいいやと戦う人に分かれているだけです。
 私自身は20年の実体験からある程度そうしたことを実感として知っていますが、他にも実際に現地で反体制派地区を見聞してきた方々による血のかよったレポートがもういろいろ出ていますので、シリア情勢に興味のある方はそうしたものを参考にされればよろしいのになあ、と。
  1. URL |
  2. 2013/06/11(火) 11:49:07 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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