何度も書いていますが、アサド政権はすでに国民を殺しすぎているので、途中で半端な妥協はしません。ここまで来たら、反体制派をどこまでも弾圧し続けなければ、自身のサバイバルが不可能だからです。
シリアが内戦状態に陥ったのは、アラウィ派とスンニ派が衝突したというような旧来型の内戦の構図ではなく、武装した一派が非武装の一般人を一方的に殺しまくったというジェノサイド犯罪の結果です。
旧来型であれば交渉、和解の道もあるかもしれませんが、シリアの場合は難しいでしょう。アサド政権と反体制派の交渉の場を設定することで米露が合意したことについて、国際報道は概ね好意的に受け取っているようですが、私はとても楽観できません。
シリア内戦の現状は、もともと国内に圧倒的支持基盤をもつ反政府軍側が兵力ではすでに勝っているものの、武装レベルでいまだ政府軍が圧倒的に優位という状況です。
反政府側が兵力で優位ということは、勝利のために米軍やNATO軍の介入を必要としません。自由シリア軍の幹部がかねてから主張していますが、必要なのは単に武器・弾薬です。
政府軍は現在も、戦闘機や戦車、ロケット砲、短距離弾道ミサイルなどを豊富に保有しています。対する反政府軍は一部に海外から持ち込まれたものもありますが、大半の兵士は政府軍から鹵獲した小火器に頼っています。
化学兵器使用疑惑を受けて、ようやくオバマ政権も反政府軍への武器供与の方向に進みだしました。オバマ政権ではどこまでやってくれるのかそれほど期待はできませんが、他方では英仏なども武器供与に踏み出すことを公言しています。
アサド政権としては、もっとも怖いのが、英米仏から反政府軍への武器弾薬供与です。今もなんとか権力を保っていられるのはひとえに武装レベルの優位のおかげですが、その優位性が崩れれば政権はもちません。
なので、アサド政権としては、英米仏から反政府軍への武器供与をいかに遅らせるかが死活問題になってきます。米露がお膳立てしようとしている「和解交渉」なるものが動き出した場合、せっかくここまでこぎつけた武器供与の話が一時停滞する可能性があります。
つまり、これまでのアナン調停、ブラヒミ調停のように、単にアサド側の時間稼ぎに利用されるだけに終わる懸念があるわけです。
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- 2013/05/10(金) 10:20:25|
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