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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

日本で、国際テロ報道の末端にいて思うこと

 アルジェリアのプラント襲撃事件やボストンマラソン爆弾テロなどに際し、テレビや新聞・雑誌などのメディアで発言させていただく機会が何度かありました。
 私はあくまで「情報および、その自己流解釈の紹介」が業務なので、あまりオピニオンめいたことを発信させていただく機会はないのですが、アルジェリア事件に関して、今年3月発売の右派系論壇誌『撃論』第10号に寄稿させていただいた際、論壇誌ということで拙文の末尾に、「日本にいて、国際テロ問題をウォッチしていて、日頃から思っていたこと」を書かせて頂きました。今回、その一部を抜粋引用してみます。
 なお、言うまでもありませんが、下記は単なる私個人の意見であり、単なる私個人の「願い」です。皆様はそれぞれご意見をお持ちでしょうし、それは当然のことですから、他の考えを否定するつもりのものではありません。ただ、私個人はたまたま個人的事情でこうした分野に関して当事者になってしまっていて、イスラムの問題も中東の問題も他人事ではないので、なんとなく歯がゆく感じてしまうだけのことです。

(以下、引用)
 今回の事件では、日本ではテロリストを批判するよりもむしろ、強行突入を実施したアルジェリア当局を非難する論調が目立った。これは前述した他の犠牲者の出身国も含め、諸外国ではほとんど見られなかった傾向で、まさに日本だけが突出していた。なぜか?
 今回、犠牲になった方々を悼む気持ちは筆者ももちろん強くもっているが、それはそれとして、日本の国民の多くには、対テロという戦争のシビアさに対する意識が著しく欠如しているのではないかという気がしてならない。今回の事件で日本の世論を貫いていたのは、単に「巻き込まれる」という他人事の意識だけだったと思う。
 しかし、実際には、世界の多くの国が、それこそ血の滲むような思いで、テロとの戦争を戦っている。アルジェリア軍の現場での判断がすべて正しかったどうかは筆者にもわからないが、まったく人質の安全を考慮しなかったわけではない。彼らは彼らで、テロリストとの凄まじい戦いを日々送ってきた経験があり、その中で彼らなりの行動をとったのだ。
 世界中の多くの国の人々が、多大な犠牲のもとに対テロ戦を戦っているなかで、日本だけが対テロ戦を諸外国に任せきりにし、他人事として「巻き込まれない」ことだけをひたすら考えているだけで、はたしていいのだろうか?
 今回の事件で、いくら日本がイスラム過激派を敵視しなくても、彼らの標的から除外されないことが証明された。他国とともにテロと戦わなければ、テロ対策で協力している主要国のサークルには加われず、テロからの防衛でも後回しにされることになる。
 それでも確かに、現在、世界の対テロ戦に参戦していない日本は、イスラム・テロの主標的になる危険は少ない。対テロ戦に参加すれば、おそらく日本人も主標的に加えられることになるだろう。だが、それでも世界に堂々と生きる国家として、必要なリスクなのではないかと思う。
 今回の事件ではまた、企業戦士としての日揮を褒め称える論調が目立った。筆者も彼らを尊敬するが、それは彼らが世界に出ていき、堂々たる仕事を成し遂げているからだ。日本がテロとの戦いに乗り出すことを、テロの標的になる企業戦士はおそらく望まないだろうが、筆者はそれでも日本が、自国民の安全だけに汲々とする国家でいて欲しくないという思いを持っている。
 もちろん日本がその道に踏み込むなら、それなりの策を講じるのは当然だ。その場合、日本は自衛隊の海外派遣部隊の拡充とともに、専門の情報機関の設置が必要となるだろう。これらは何も特殊なことではない。世界の主要国の中では、「普通の国」になることにすぎない。(引用了)
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  1. 2013/05/08(水) 11:48:37|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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