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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

米韓首脳会談で北朝鮮核武装黙認?

 米韓首脳会談では、北朝鮮の核ミサイル武装に関してどこまで踏み込んだ表現をするか注目していましたが、下記のようになりました(要旨)。

▽北朝鮮の挑発と威嚇を決して容認しない
▽北朝鮮の威嚇に対抗する抑止力を持続的に強化する
▽北朝鮮が核を放棄し、国際社会の責任ある一員に変化するのなら、支援する用意がある
▽韓米両国は北朝鮮の平和な非核化達成に向けた確固たる意志を持つ

 核を放棄するように働きかけるということですが、今さら北朝鮮は核を放棄しませんから、今後の北の核ミサイル武装維持にどの程度対処するかということが重要なのですが、そこが今ひとつ曖昧になっています。
 たとえば「北朝鮮の核保有を決して容認しない」との表現があれば明確なのですが、そうすると朝鮮半島の緊張激化が避けられません。今の表現では、「北朝鮮の核放棄に向けて働きかけるとともに、さらなる挑発には対処するけれども、現状ままならまあしかたないかな」というようなところでしょうか。
 また、今後、北朝鮮はさらに核とミサイルの戦力を上げてくることが予想されますが、それにどういった対処をするかも曖昧です。たとえば、米韓は、北朝鮮の挑発・威嚇に断固として対処する(当然、軍事力で対応ということですね)ということですが、この挑発・威嚇に核ミサイル武装強化がどの程度まで含まれているかが明確ではありません。
 具体的には、4度目の核実験、長距離ミサイルの発射実験、核施設稼働ということですが、これを北朝鮮が3~4月のような挑発・威嚇言動丸出しでやってきたら当然「断固として対処」でしょうが、あくまで自衛措置名目あるいは(今さらですが)平和利用タテマエで粛々と進めてきた場合、「とんでもない挑発だ!」として軍事報復するかというと、そこはなかなか難しいのではないかなと思います。
 韓国側報道官によれば、「核実験やミサイル発射に対価を与えない」とのことですが、この表現もなんだか腰砕けな感じですね。
 要するに、このの首脳会談では、今回の3~4月危機のような「北朝鮮による甚だしい挑発的言動」に対しては強い拒否メッセージとなりましたが、核保有そのものに対する明確な不容認メッセージは盛り込まれず、今後の核ミサイル武装強化に対しても曖昧さが残っています。
 結局のところ、北朝鮮は挑発的言動を控えれば、なんとなく核武装国として存続していくことになります。今後かならず核ミサイル戦力強化を進めてきますが、それに対してはどこまで強い姿勢で臨むかはまだわかりません。
 金正恩政権としては、とりあえずほっとしていることでしょう。彼らにとっては、計算通りかもしれませんが。

 ただし、前エントリーでも書きましたが、アメリカは近々、韓国沖で空母ニミッツを投入する訓練を実施します。恒例の訓練ではありますが、北朝鮮に対する軍事的圧力としては、最大級のものといえますので、北朝鮮がそれにどう対応するかが注目です。
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  1. 2013/05/08(水) 10:56:23|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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