ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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森=プーチン会談の茶番

▽森、プーチン氏の会談評価=「首相訪ロへ地ならし」-菅官房長官(時事)
 先ほど某テレビ番組でもこの話題をやっていましたが、もう完全に「プーチンは2島返還で決着をつけたがっている」という前提になっていました。何度も書いていますが、そんなことをプーチンはひとことも言っていませんね。どうともとれる曖昧な表現しかしていませんが、それは故意です。
 イルクーツク宣言がそれだ!ということにされていましたが、「1956年の日本国とソビエト社会主義共和国連邦との共同宣言が、両国間の外交関係の回復後の平和条約締結に関する交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した」だけです。あちらは「あれが出発点だけど、そこから両国が受け入れられる新たな解決法を探ろうぜ」ということしか言っていません。
 日本側も4島一括返還の要求を取り下げることはないでしょうし、ロシア側も現状を変更する気はないでしょう。なので、領土問題が進展しつつあるかのような報道は間違っています。ロシア側は領土を動かすつもりなどなく、領土問題を一時棚上げしたかたちの新たな実質的関係強化の枠組みを作りたいということではないかと思います。

 ところで、これまで「ロシアが2島返還を約束したことなどない」と指摘してきましたが、1度だけありました。
 ロシアのゲオルギー・クナーゼ元外務次官が昨年12月、北海道新聞に対し、以下のようなことを証言しました。
▽92年3月、日本側に領土問題で新提案を行った。
▽新提案は日ソ共同宣言に基づき、①歯舞、色丹2島を引き渡す手続きなどに合意②平和条約を締結③歯舞、色丹2島を日本へ引き渡す④その後、日露関係の推移を見て、ふさわしい雰囲気ができれば残る国後、択捉2島について協議するというもの。
 
 これに対して、今年1月8日、東郷和彦・元外務省欧亜局長が以下のように反論しています。
▽クナーゼ証言は間違いで、実際にはロシア側の提案は、「先行して歯舞・色丹2島を引渡し、その後、国後・択捉2島を継続協議。交渉がまとまれば平和条約を結ぶ」というもの

 私の知る限り、この2人の証言は、ロシア側が2島返還に具体的に言及したことを裏づける初のエビデンス情報です。
 ただですね・・・その時期が92年3月というのがどうにも???です。
 というのも、ちょうどその当時、私自身モスクワに居住しており、北方領土問題に関してモスクワ政界やロシア外務省をそれなりに取材していたのですが(クナーゼ本人も取材したことがありますし、ロシア外務省内の彼の腹心にもネタ元が何人かいました)、そんな情報はおろか、ロシア側から聞こえてくるのは、「領土を売るなんて、あり得ない」という発言ばかり。あるロシア外務省の役人は、「なぜ日本政府は、あり得ない領土譲渡にそんなに固執するのか? 日本外務省は形式だけでも話に付き合うように強く望むので、曖昧に付き合ってやっているが、いい加減にしてほしいのが本音だ」と言っておりました。
 他にもエリツィンの周辺だとか、政界幹部を結構取材しましたが、当時はモスクワの権力抗争も熾烈なものがあり、とくにナショナリズムは強固なものがあって、たとえエリツィンでも領土で譲歩すれば失脚していた可能性が高いと思います。対日交渉派だったクナーゼはたしかに一時期重用されますが、クレムリンでの発言力は皆無に近く、そんな大胆な外交政策を主導できたとは、にわかに信じられません(とくに東郷証言のような提案は、クナーゼの立場では無理だと思います。そこは日露当事者間で、曖昧な表現による誤解が生じていたのでしょう)。

 とはいえ、クナーゼが領土問題を解決して日露関係を動かしたいと考えていたことは、おそらく事実でしょう。それでかなり政治的に危険な綱渡りをやっていたということなのだと思います。
 ですが、それはクナーゼ独自の方針であって、クナーゼの退場とともに一緒に消し去られたプランなのではないかと思います。
 とにかくその後、エリツィンもプーチンも2島返還を明言していません。常に曖昧な表現しかしませんが、それは故意です。
 私自身は、戦争のどさくさに他国の領土を強奪したロシアは、速やかに4島を一括返還し、これまでの不法行為を日本国民に謝罪すべきと考えていますが、それと「情報を客観的に分析する」ということは別の問題かと思っています。
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  1. 2013/02/22(金) 15:13:21|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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