現在発売中の『サンデー毎日』の特集企画「ニッポン、世界はこうなる」にコメントを採用していただきました。シリア政権崩壊(これは必至)と、イラン危機緊迫化の可能性について私見をお話しさせていただきました。
シリア情勢では、久々のアサド演説がありましたが、内容がゼロなのは予想通り。自分が追い詰められているという自覚すらない能天気なもので、ロシアとイラン以外の諸外国はまったく相手にしていませんし、SNSを見ても、シリア国民の間では“ジョークのネタ”以上のものにはなっていません。
ジョークといえば、たしかどこかの国の首脳が、アサド演説の現実乖離ぶりを「アサドは部屋に閉じ篭って情報機関の報告ばかり聞いているのだろう」と茶化していましたが、実際そんなところなのでしょう。おそらくそれにSANAとかRTあたりのプロパガンダ記事をネットでチェックして、「ムハバラートの言うことはやっぱり正しいじゃないか!」とか信じ込んでいる(信じようとしている?)気配が濃厚です。
シリアの現状がどうなっているかというと、北部、東部、南部のほぼ全域で、自由軍が支配地をかなり広げていて、基地に篭城する政府軍を包囲する段階になっていますが、とくに弾薬不足から現在は一進一退の状況のようです。
劣勢の政府軍側は、相変わらず市街地に対して、空軍機での爆撃やロケット砲や榴弾砲での砲撃などの飛び道具攻撃を続けています。ある武器はなんでも使っている現状から、政府軍側でももしかしたら弾薬不足になりつつあるのかもしれませんが、そこは不明です。
各種報道から考えると、政府軍の兵力は十数万人といったところと思いますが、離反予備軍も多いので、実際に自由軍の脅威になるのはせいぜい6~8万人くらいではないかなと推測します。兵力だけなら、もう反乱軍側が優位に立っているとみていいでしょう。
政府軍はホムス、あるいはダマスカスのダラヤ地区など、自由軍が進出した重点地域に兵力を集中する作戦にシフトしています。今後はとくにダマスカス攻防戦の激化が予想されます。自由軍側とすれば、ある段階でいっきに首都大攻勢をかける必要があります。アサド軍もダマス防衛には全力であたるでしょうから、ある程度は長期戦になるかもしれません。最後はカダフィのときのように、アサドがラタキアに篭もって長い篭城戦という展開でしょうか。
国際報道ではいまだに「勢いは完全に反体制側にあるが、戦力はまだまだ政府軍が優位」との従来からの解説が多いですが、どうも各地で進撃中の反乱軍側の意識は、もうそんな感じではなくなってきています。国際社会では政治的解決がどうのという話がまだ出ていますが、そんなものに期待する時期はもうとっくに終わっているというのが、SNSを見る限り、シリア国民の一般的な感覚と思われます。
ところで、本日発売の『軍事研究』2月号に、ジャーナリスト・桜木武史氏のシリア北部ルポが掲載されています。結局、こうした外国人記者の潜入ルポがもっとも現地の実情を客観的に知り得る有力材料になりますので、シリア情勢に興味のある方は必読です。
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- 2013/01/10(木) 10:02:48|
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