ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

北朝鮮の欺瞞工作・心理戦

 12月12日、北朝鮮が衛星を打ち上げたことで、今週は何度かTBS「朝ズバ」「ひるおび」「Nスタ(VTRコメント)」、共同通信(コメント)などで解説させていただく機会がありました。
 もっとも、私自身は1週間はまず延期だろうと予想していたので、恥ずかしながら完全に外しました。直前に「第3段を交換」だの「発射台から取り外し」だのといった情報が韓国メディアから流れていましたが、情報の「出方」が曖昧なので、それ自体はあまり信じていませんでした。
 しかし、北朝鮮当局が「時期の調整を検討」「第1段に技術的不具合」「期間を1週間延長」と発表していたので、これは「延期間違いなし」と見立てていました。北朝鮮は堂々の宇宙開発とアピールしていますし、こうした情報を故意にオープンにしてきています。後で「やはり信用できない」などと追及されないための措置です。なので、北朝鮮がこの時点でそんなことを発表した以上、多少のトラブルは実際にあるのだろうと考えていました。
 結果的に予告期間3日目での打ち上げですから、深刻なトラブルが実際にあったとは思えません。仮にあったとしても微調整で済む程度のものでしょう。「一度、取り外してから夜のうちに再設置した」などという見方もあるようですが、そんなアクロバティックな無謀な賭けをする切迫した理由はちょっと考えられません。実際、アメリカの偵察衛星はずっと発射台に設置されていたことを把握してたようです。
(※追記⇒「何か」が発射台から一旦取り外されたということはあったようです。ただ、それでも再設置後は最初からチェックをし直すことになりますから、この短時間で発射されたということは、ミサイル本体が丸ごと外されたというのは、ちょっと考えにくいです)
 北朝鮮の意図についてあれこれ推測がメディアを賑わせていますが、よくわかりません。「欺瞞工作」「心理戦」というような見方もありますが、それにしてはあまりにスモールな気がします。メディアが踊ったくらいなもので、実際には米韓の監視システムにもほとんど影響を与えていませんし、いったい何が狙いだったのか不明です。
 もしかしたら何かの意図をもった欺瞞工作だった可能性はもちろんありますが、今回の騒動は、どちらかというと韓国メディアのフライングでしょう。韓国メディアは北朝鮮情報に関して、スクープも突出していますが、フライング報道もよくあります。とくに、情報ソースが「韓国政府筋」「韓国議員筋」「韓国情報部筋」の場合、具体的にそれらの中のどういう筋なのかによって、情報の信憑性が大きく変わってきます。カタい情報であれば、大手メディアはすべて後追いするので、単独メディアの独走パターンだと要注意です。
 今回の報道もそんな気配があったのですが、その後の韓国報道をみると、単なるフライングではなく、韓国政府筋の一部にも実際に誤情報はあったようです。一部報道では「アメリカは、韓国政府に伝えるとすぐ漏れるので伝えなかった」と報じられていますが、それも考えにくいので、おそらく韓国政府の中枢にだけ伝えて、そこで情報が止まっていたというのが、ありがちな線に思います。推測ですが。
(アメリカは偵察衛星情報などでは独占的な実力がありますが、ヒューミントでの韓国情報機関ソースの情報バーターや分析での協力関係も必要としていますから、この局面で情報提供遮断というのはちょっと考えにくいです。韓国政府中枢が誤情報の訂正をしなかったのは、サード・パーティ・ルールでしょう)

 この間、日韓のメディア報道をいろいろチェックしましたが、いつも思うのは、北朝鮮の意図など誰にもわからないということです。なので、さまざまな推測がありますし、それぞれそれなりの根拠はあるのでしょうが、ここでは私見を少し綴ってみます。北朝鮮の意図は誰にもわかりませんから、もちろんこれは単なる私見にすぎないことをまずお断りします。
 さて、今回のような北朝鮮関連の事件が起きていつも思うのは、北朝鮮の欺瞞工作よりも、むしろ日韓メディア側の根拠の薄い「深読み」の一人歩きが多すぎるのではないかなということです。金正恩政権の意図など誰も知らないのですが、「彼らの狙いは?」と考える。そうした視点で検討すること自体はインテリジェンスの基本であり、たいへん有益だと思うのですが、残念ながら、数多ある可能性の一部のみが拡大解釈される傾向があると思います。
 何度か当ブログでも描きましたし、いつも思うのですが、どうも北朝鮮の一連の核ミサイル開発について、「北朝鮮のアピールだ」という根拠の薄い見方が強すぎる気がします。私は、北朝鮮はこの現代において世襲独裁という不条理な権力構造をサバイバルするため、必死になって体制維持のための戦略を模索しているのではないかなと考えます。それはきっと想像以上に厳しいものでしょう。
 私が今、これは違うだろうと思っているのは、「北朝鮮はアメリカと交渉したがっており、振り向いてほしくてアピールしている」という見方です。そういう見方の元には「北朝鮮はアメリカと平和条約を締結し、政権を認知・保証してほしい。核ミサイル開発はそのための外交カードである」との認識があります。この論法でいえば、「アメリカが応じれば、北朝鮮は核ミサイルを放棄する」という理屈になりますが、非常に甘いと思います。
 私から見れば、とんでもなく楽観的なこの甘い見方がそれなりに広く認識されているのは、北朝鮮側が対外交渉でこうしたレトリックを故意に匂わせるからです。ですが、それが北朝鮮側による単なる時間稼ぎではないとは断定できません。
 周知のとおり、北朝鮮は「力の信奉者」です。力だけを信じ、力にしか屈しません。また、これも周知のとおり、目的のためにはどんな嘘も平気です。そんな彼らが、力に基づかない口約束の世界を信じるとは到底思えません。
 衛星打ち上げ期間を延ばしたり、もしかしたら発射台周辺で何らかのダミー欺瞞工作をやったのかもしれませんが、そんなものよりも、「北朝鮮が交渉を望んでいると思わせ、核ミサイル開発の時間を稼ぐ」のが真の心理戦かもしれないなどと思ってしまうわけです。
スポンサーサイト
  1. 2012/12/15(土) 19:34:41|
  2. 著作・メディア活動など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
<<義母の国外脱出 | ホーム | 9月のシリア軍参謀本部突撃シーン>>

コメント

相互リンク

初めまして、人気サイトランキングです。
サイトランキングを始めました。
ランキングに、登録して頂きたくメールさせて頂きました。
SEO対策にも力を入れています。
一緒に発展していけれるように頑張りたいと思いますので宜しくお願いします。
http://is.gd/nREQxM
  1. URL |
  2. 2012/12/15(土) 20:34:17 |
  3. まゆみ #-
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://wldintel.blog60.fc2.com/tb.php/1079-01d3b580
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。