ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ダマスカス封鎖

 政府軍によってダマスカスが封鎖されたとの情報が入っています。なにかやるつもりでしょうか。

 ところで、昨日の金曜日恒例デモですが、「『国連平和維持軍は要らない』の金曜日」と命名されました。ブラヒミや「国際社会」はシリア人のために「良かれ」と思っての話なのでしょうが、当のシリア国民が「今更遅すぎる」「ただバシャールの時間稼ぎに利用されるだけに決まってる」と思っています。
 シリア人社会のインサイドからみていると、「国際社会」との感覚のあまりの格差に愕然とすることがよくあります。

 シリアを普通の国と思っていること自体が間違いです。バシャールはもともと、ソ連の支援の下で恐怖と暴力で国を支配した父親から独裁権力を世襲し、事実上、国家と国民を私的に「所有」していました。だから何をやってもいいと思っているわけです。
 対外的なタテマエは、バシャール側からすれば「嘘も方便」というものです。バシャール側は「交渉」という概念そのものが理解できないと思います。彼自身はおそらく「なんだよ。父の時代より少しは緩くしてやったのに、それで文句言う奴がいるなんておかしいだろ。そんな恩知らずは狂人のテロリストに決まってる。テロリストをかばってる連中もまとめてみんな死ね!」と思っていることでしょう。
 そんな独裁者の周囲には、うまいことしようとだけ考えている連中がうようよいます。それがバース党であり、軍や秘密警察です。彼らのアタマにあるのは、自己保身だけです。日本の政治家や官僚は下手を打ってもせいぜい無職になるか懲役くらいで済みますが、シリアの支配階層は下手したら生命を失うので、そちらはそちらでサバイバルに必死です。
 そういうことはみな心の奥ではわかっているのですが、あえて見ないふりをしてきたのがシリアの人々です。ところが、反体制運動をきっかけに、そうした現実がいっきに目に見えるように露呈してきたのが、今のシリアです。
 まずその基本事項を理解していただいたうえで、諸々のことを現実的に議論していただきたいものです。

(追記)
 そういえば数日前、AJAX氏から以下のようなコメントをいただきました。

1.シャビーハのような政府系民兵組織が政府側につく理由は何なのでしょうか?私個人としては今般の内戦で生活基盤が破壊され、アサド政権側から当座の金と引き換えにシャビーハとして活動することを持ちかけられたとか、あとは元々アサド政権下で既得権益にあずかっていた連中の末端が自発的に志願したとかそのへんのことを推測しているのですが、今一つ納得できません。

2.反政府武装組織はいくつもあるようですが、その中にはイスラーム色の強い団体と、そうでない団体があるようですね。主流となっているのはシリア民主化に重きを置き、イスラーム法統治とは距離を置く団体だと考えているのですが、それで正しいのでしょうか?また、イスラーム色の強い団体はやはりサウジアラビアなどの国外から「世俗主義のアサド政権」に対する「イスラームの勝利」のために義勇兵として入ってくる連中が主流なのでしょうか?


 それに対して、直接の回答とは少し離れてしまった部分もありますが、以下のようなコメントを記しました。転載します。

 シャビーハは、犯罪者・愚連隊人脈から金目当てで入る人と、アラウィ派の町村からオルグされて仲間内でまとめて入ってくる人と両方います。日本の暴力団と同じで、基本は志願者ですが、大多数は成り行きで入ってしまい、抜けられなくなってしまった人々です。殺戮集団なので、同情はしませんが。
 反政府軍の大多数は、自衛のために合流した地元民です。誰もが「神さま万歳!」と言っていますが、べつにイスラム国家建設のために戦っているのではなく、アサド軍への抵抗のためにやっています。
 どこのグループに入るかは地元の人間関係による成り行きがほとんどですが、そのなかには地元のモスク人脈とか離脱兵の中のイスラム主義者系人脈が中心になっていて、ジハード色の非常に濃いグループもあります。各人がどこに所属するかは、だいたい成り行きです。各グループの主義主張は、幹部がたまたまどのくらいジハード色が強いかといったことに拠ります。ボスたちにもいろいろな人がいるので、本当に千差万別です。
 外国人義勇兵にも、反独裁ロマン系と、アルカイダばりのジハード主義者と両方います。これは必ずしも相反することではなく、多くの人が両方の性格を有しています。
 現在、大別すると「①ジハード主義と一線を画し、あくまでアサド打倒を掲げる自由シリア軍主流派」「②アサド打倒を掲げるものの、ジハード色の濃い自由シリア軍内の独自勢力あるいは自由シリア軍外の独自勢力」「③自由シリア軍外のジハード主義グループ」がいます。
 ③は外国人も多いですが、シリア人も多くいて、必ずしも外国人部隊ということではありません。ただ、イラク戦やチェチェン戦の経験者が戦闘能力が高いことから、現場で発言力が大きいという傾向はあるようです。
 アサド政権は③を強調して宣伝していますが、実際には①が圧倒的多数派で、次が②となり、③は少数派になります。当初、シリア人はどれもあまり区別していませんでしたが、最近は現場で軋轢も増えていて、③を批判する人が①②にも増えてきています。地元で略奪するようなのも、③に多いようです。


(追記その2)
 前段の私のアサド政権評について、一方的と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際はこれでもかなり抑えて書いています。シリアの一般の人々の大多数は、もっと過激です。そこにも国内外の大きな認識格差があります。
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  1. 2012/12/08(土) 12:51:40|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

私のような若輩者のコメントを取り上げていただき大変恐縮しています。頻繁に長いコメントを入れてしまって申し訳ない。

貴ブログ内のアサド政権の評価は日本ではやはり実感として湧きにくいところはあるのかなと思います。また、反政府勢力の使用する手段(自動車爆弾など)がイラク、アフガニスタンで常用されるイスラム主義勢力によるテロと酷似している点で、反政府勢力に対する負のイメージに結びつきやすいのかもしれません。Youtubeなどでアップロードされた動画などで、インターネットが無かった昔よりは内戦の現場について知ることができるとはいえ、やはり直接銃砲弾にさらされる地域の人々とは埋めることの出来ない懸隔があるなということを自覚させられてしまいますね。一見して感情的に見えるものは得てして「冷静にあらず」と切り捨てられがちですが、アサド政権の所業がシリア国内における市井の人々にそのような激しい感情を惹起させるほどのものが(日本では報道されなくても)実際にはあった、と考えるべきだと、そういうことでしょう。(付け加えて言えば、当初ロクな武器も無かった反政府武装蜂起がこれだけ長続きしているというのは、アサド政権に対する鬱積した不満の証左でしょう)少なくとも私含め戦地に行ったことの無い人間はその点の無知を冷静さと履き違えることのないようにしたいものです。
  1. URL |
  2. 2012/12/12(水) 00:12:37 |
  3. AJAX #qXOZr2Kk
  4. [ 編集]

その国のことは、その国に住んでいても部分的・一面的にしか理解できないものだと思うのですが、私が心がけているのは、インテリジェンスに「一般論」を持ち込まないことです。それぞれの国、それぞれの分析対象にはそれぞれ固有の要素があるので、それを軽視しないということですね。ちょっと知識が増えてくると、人はすぐ脳内でパターン化、法則化するのですが、それは無用なバイアスに繋がりやすいと思います。言うは易くで、なかなか自分でも出来ていませんが。
  1. URL |
  2. 2012/12/22(土) 21:57:27 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

シリアに関して追記しますと、アサド政権を評価する見方は、ほぼ例外なく政権メディア情報を元ソースとするか、それで書かれた第三者の記述をソースにしています。私も当然、政権側ソースを日常的にチェックしていますが、信憑性はゼロと評価しています。外部メディアの記事がもっとも参考になりますが、誤情報もたしかにあるので、そこはある程度、真贋を判断する訓練が必要です。あと、インテリジェンス研究の観点でも興味深いのは、ネット情報の使い方です。ネット情報は信用ならんと無視する人が多いですが、シリアの場合はネット情報に地元民のツッコミ書き込みが殺到しますし、証拠映像が意識的にアップされますので、誤情報かどうかは比較的判断しやすいです。また、地元委員会のSNSなどは、誤情報排除に最初からたいへんな努力をしていて、結果的に役立つ情報が多くなっています。誤情報を見分ける目があれば、シリア情報でもっとも有益なものはSNSに集中しています。分析を誤っている記述は、ほぼ例外なく、このネット情報を故意に無視しています。
  1. URL |
  2. 2012/12/23(日) 11:46:52 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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