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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

金正恩=張成沢が手をつけた北朝鮮軍部掌握

 昨年末時点でトップ4だった人物が全員更迭された北朝鮮軍部ですが、それでは現在、指導部はどうなっているのでしょうか?
 まず、最高権限はもちろん金正恩ですね。で、その次が軍部ではないですが、張成沢でしょう。金正恩と張成沢の意向に忠実に動いているのが玄永哲・軍総参謀長ですが、彼は自分では何かを決定する権限はないでしょう。玄永哲をはじめ軍部上層部を監視しているのが崔竜海・軍総政治局長ですが、彼は張成沢の完全な子分といっていい人物です。
 今回失脚した金正覚は、これらの傀儡将官たちよりは実績・実力で一歩抜きん出ていた人物ですが、要は力を持ちすぎてロイヤルファミリーに警戒されたということかもしれません。
 そうすると、他にも「力を持ちすぎた将官」は粛清される可能性があります。筆頭は金元弘・国家安全保衛部長あたりでしょうか。
 彼も金正日晩年期から急速に重用された人物で、軍内秘密警察だった軍保衛司令部司令官、軍総政局副局長を経て、金正恩体制下で前の実力者(昨年末の軍部トップ4だった第1副部長)が排除された後に国家安全保衛部長に就任しました。今回更迭された金正覚とともに、金正恩体制発足後の軍内粛清で功績があったとみられています。
 北朝鮮では、秘密警察畑の実力者で長生きした人はあまりいません。最高権力者に警戒されるからです。彼あたり次は危ない気がしますね。
 秘密警察畑といえば、少し違いますが、軍の諜報謀略機関のトップである金英徹・軍偵察総局長あたりも、急速に実力を付けて来た人物なので、権力抗争を生き抜けるかどうか、逆にわかりません。11月、金英徹は大将から上将に降格されましたが、まさにその微妙なポジジョンを表しています。
 なお、やはり実力者で、次のエースと目されていた崔富日・軍作戦局長も、11月、大将から上将に降格されています。また、前述した玄永哲・軍総参謀長は、今年7月に大将から次帥に昇格したばかりですが、10月に再び大将に降格されています。結果、次帥で実権ポストを握っている人物は、前出の崔竜海・軍総政治局長くらいなものになりました。金正恩は少し次帥乱発気味でしたが、軍部上層部の粛清をほぼ終わらせたので、元に戻したということでしょうか。
 このあたりの采配は、金正恩が細かく考えているとも思えないので、おそらく張成沢の入れ知恵なのではないかなと思います。

 ところで、先週だったか金正恩が国家安全保衛部を訪問したとのニュースがあったと思いますが、同部および軍偵察総局による対韓工作は、相変わらず活発に行われています。
 4日前のニュースにこんなものもありました。
北朝鮮の「暗殺道具」、韓国当局者がCNNに公開(CNN 11.26)
 ペン型毒針は昔からの定番ですが、懐中電灯型銃は初めて見ました。金元弘も金英徹も忠義ぶりをアピールするために、さらに韓国でのテロに一所懸命励んでいくかもしれません。
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  1. 2012/11/30(金) 20:36:57|
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黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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