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ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

徴兵かシャビーハか?捕虜の運命

 自由軍の武装強化を示す映像が、続々と発信されています。
▽自由軍が戦車を戦闘に投入
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 11月12日。イラク国境に近いブカマル。自由軍の戦車が、政府軍の狙撃兵が陣取っている建物を砲撃しています。
▽ブカマルの戦闘
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 同じ戦いのダイジェスト映像。自由軍の戦車が砲撃。

▽自由軍が政府軍兵士を探索
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 11月12日。ハサケ県ラスアルアイン。町の中心地を制圧したアル・カーカー旅団が、政府軍兵士&シャビーハの残党狩りを行なっています。
 前半の場面では、私服姿の4人の男たちが投降しています。捕虜たちは、自身の身分について尋問を受けていて「自分はただの徴兵兵士だ」と主張しています。
 というのは、同じ捕虜でも、徴兵兵士なのかシャビーハなのかで、扱いが大きく変わるからです。まず、徴兵兵士は強制的に兵隊になったと見なされますが、シャビーハは実質的に志願傭兵ということで、より厳しい扱いを受けます。ただし、徴兵兵士ではほとんど聞いたことがありませんが、シャビーハの捕虜の場合、ときおりシャビーハと自由軍現場部隊の間で、捕虜交換が行われることがあります。
 いずれにせよ、こうした内戦では、捕虜となったときの恐怖はたいへんなものだと想像できます。私もかつて、グルジア共和国の南オセチア紛争で、敵対勢力に民兵が拘束された瞬間を目撃したことがありますが、恐怖に慄き泣き叫ぶその姿は、尋常なものではありませんでした。
 上映像の後半では、別の建物に隠れていた私服の男が、最初は「私はあんたらの味方だよ」と言っていたところ、自由軍のひとりが彼がシャビーハだと気づき、激高します。映像は途中で途切れているのですが、最後のほうは、おそらくボコボコにされかかっている場面です。

 現在も反体制派は、政府軍将兵に離脱を呼びかけています。それに応じて自分から離脱した兵士は、迎え入れられます。もっとも、以前はそのまま自由軍に合流していましたが、最近は政権側のスパイも混じっているということで、強いコネがない場合には、多少警戒されることも多いようです。
 他方、そうではなくて、戦闘中に投降した場合の捕虜は、徴兵兵士でも厳しい扱いを受けます。命令とはいえ、市街地を砲撃したり、無差別狙撃をしたりして、子供や老人まで殺害していたのですから、怨念の対象となるのは避けられません。実際、すでに何万人もの政府軍将兵が、身の危険を冒して反政府軍に合流し、命がけで独裁者と戦っています(しかも相当数がその戦闘で命を落としています)から、今でも政府軍に残留している兵士は、半ば志願兵と見なされ、だんだんとより厳しい見方をされつつあります。
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  1. 2012/11/13(火) 16:19:46|
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黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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