アメリカが本格的にシリア反体制派のテコ入れに動くようです。
▽シリア国民評議会は「明らかなリーダーではない」 米国務長官(11.01 CNN日本版)
アメリカは国民評議会を見限り、国内で活動する反体制派を中心として、新たな反体制組織を創設し、そこを直接、強力に支援していこうということです。
これには2つ理由があって、ひとつは、海外亡命者メインだった国民評議会の役割がすでに終わったということでしょう。
かつては国内の活動はすべて地下活動だったため、どうしても表立った政治活動は海外を拠点にせざるを得ませんでしたが、いまや国内に広く反体制派が勢力を拡大していますから、実質的な活動能力のある勢力に主導権をバトンタッチできるようになってきたということがあります。
それはもちろんそちらのほうが効果的ですから、当然の措置といえます。それにシリア反体制派は諸派が林立し、海外亡命者中心の国民評議会ではまとめきれませんから、その点でももう国民評議会は活動の中心から一歩下がることが求められます。
もともと国内で熾烈な戦いを日々繰り広げている自由シリア軍の現地部隊では、国民評議会などほとんど歯牙にもかけられていませんでしたから、その点でも国内勢力の結集とその統合・調整はベターな措置といえます。
自由シリア軍も、現在は創始者のアスアド大佐が主導権を握っていますが、実際にはアスアド司令官の影響力はたいしてありません。アスアド派以外の諸部隊も含めて、国内部隊の再編成が望まれます。
もう1つの理由は、イスラム過激派外しです。国民評議会はモスレム同胞団の影響力が強かったので、それを排除したいということもありますが、アメリカとしてはそれよりとくにアルカイダばりのサラフィスト勢力を外し、民主的世俗派を中心とした統一反政府運動を形成することで、将来のアサド後の混乱を避ける目的があります。
私は、アサド政権を一日でも早く打倒するには、アメリカの支援を得ることが断然有利だと考えているので、このプランはアリだと考えています。
実質的な活動能力のある各地域の(デモ)調整委員会と各反政府軍勢力を中心に、イスラム過激派を排除するかたちで反体制派組織が統一され、欧米からの軍事支援が大々的に入るようになれば、アサド打倒の近道になると思います。
この件に関し、シリアの知人を話してみましたが、概ね私と同じ考えでした。ただし、どうも聞いてみると、必ずしもそうした考えの人ばかりではないようです。
アメリカが取り仕切る今度の反体制派組織の主導権は、アメリカが指名した反体制派リーダーたちが握ることになりますが、シリア国民の間では、どうもアメリカ主導の動きすべてに反対する意見が少なくないとのこと。というのも、昨年の蜂起以来、彼らの中には「アメリカは自分たちを助けてくれなかった」という被害者意識が非常に強くあって、「アメリカはどうせ自分の利益しか頭にないのだろう」との不信感が根強くあるらしいのです。
冷静に考えれば、たとえアメリカに不信感を持っていたとしても、アメリカの支援を得るほうが断然有利なのは明白ですし、それをわかっている人もいるようなのですが、まるで悪夢の中にいるような感覚になっている一般市民には、かなりシニカルな考え方になっている人が多いことも事実なようです。
なかなか難しい局面ですが、ここは非常に重要なところなので、速やかな反体制派の再編とアメリカの本格介入を私は期待しています。
ところで、下はウガリット・ニュースのサイトで配信されたアラウィ派の離脱将校マゼン・ファウワズ少佐の戦死を伝える写真です。こうした勇気ある人は、シリアにはたくさんいます。
いまだに「シリア反体制派は外国人のテロリスト」とのシリア政府のプロパガンダに誘導された誤った論調を散見しますが、こうした方々の死に対し、著しく礼を失することだと気づかないのが不思議です。
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- 2012/11/02(金) 12:13:00|
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