ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

シリアとパレスチナ

 ダマスカスのアル・ヤルムーク(パレスチナ難民居住区)で、「アサド政府軍&PFLP-GC」連合軍と、「自由シリア軍&地元パレスチナ人自警団」連合軍の戦闘が発生しています。
 アサド政権は先代からパレスチナ・ゲリラの一部を支援していましたが、今回、こうして極悪政権ぶりが露呈したことで、パレスチナ人社会にも影響を及ぼしています。
 とはいえ、シリアの実情をよく知っているパレスチナ人の世界では、ほぼすべてが反アサドに転じています。ハマスの指導部もすでにダマスカスを去り、カタールなどに移っています。
 アル・ヤルムークでも昨年の早い段階から、難民たちは反政府側に転じていて、アサド政権軍の攻撃をたびたび受けてきました。しかし、アル・ヤルムークでそれなりに幅を利かせているPFLP-GCが、アサド政権の傭兵として動いています。
 もっとも、PFLP-GC(パレスチナ人民解放戦線総司令部派)は、もともとシリア秘密工作機関の下部組織でした(だからアル・ヤルムークでも勢力があるわけです)。司令官のアハマド・ジブリルも元はシリア軍将校です。なので、PFLP-GCをパレスチナ・ゲリラと定義するのは正しい認識ではありません。
 こうした例は他にもあって、たとえばファタハのアブ・ムーサ派もシリア工作機関の下部組織でしたし、かのアブ・ニダル派も一時はサダム・フセインの傭兵のような存在でした。
 かようにパレスチナ・ゲリラなどというものには、外国勢力がウラで糸を引いている怪しげなものが少なくなかったのですが、興味深いのは、そんな傀儡傭兵パレスチナ・ゲリラを素直に「パレスチナの大義」とか信じてきた層(いわゆる反米派に多い)のなかに、シリア問題ではアサド政権擁護に拘泥しているケースがまま見られることです。
「パレスチナ解放闘争を支持」する人が「国民弾圧するアサド政権を擁護」するという、なにやらブラック・ジョークみたいな状況になっています。反米=反イスラエル陣営のスターとして著名な英『インデペンデント』の大物記者ロバート・フィスク氏なども、なにかそんな印象です。

 ちなみに、PFLP-GCは、かの日本赤軍の庇護者でした。日本赤軍はもともとは左翼ゲリラ「PFLP」(パレスチナ人民解放戦線)のKGB系列テロ細胞「ワディ・ハダド派」の庇護を受けていましたが、ハダド死亡後はPFLPに捨てられ、PFLP-GCに拾われたという経緯です。
 もっとも、PFLP-GCはシリア工作機関の下部組織ですから、日本赤軍は結局はアサド政権に庇護されたということになります。日本赤軍はすでに“終了”していますからよかったですが、もしも細胞が現地に残っていたら、間違いなくアサド政権の手駒として、シリア国民に対するテロ工作に従事させられていたはずです。仮にそんなことになっていたら、日本人のイメージはアラブ社会で地に堕ちていたことでしょう。

 ところで、個人的な話ですが、私は1984年、大学3年のときに、長いバックパッカー旅行の際に偶然、このダマスカスのアル・ヤルムーク・キャンプほか数ヵ所の難民キャンプを訪れる機会があり、それがこんな分野に足を踏み入れるきっかけになりました。
ira4.gif
(1984年 筆者撮影)
 この子たちも、もう30代になってるはず。みんな無事でいてくれればいいのですが。

(追記)
 そういえば、ベイルートでPFLP-GCの世話になっている岡本公三を、つい先日亡くなった若松孝二監督が訪ねるという深夜のTVドキュメンタリーをいつだったか偶然視た記憶があったので、ググってみたら、下記の番組でした。
▽テレメンタリー2011 決着~岡本公三と若松孝二の40年(テレビ朝日)
 で、個人的にちょっと驚いたのは、その制作陣が、私がかつてテレビ業界にいた頃の同僚たちだったこと。みんな頑張っているのだなあ、とたいへん励みになりました。
スポンサーサイト
  1. 2012/11/01(木) 12:36:02|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
<<アメリカがシリア反体制派強化へ | ホーム | 内戦か虐殺か>>

コメント

岡本公三がテル・アヴィヴの空港で乱射事件を実行したのは十九才の時ですね。残りは余生なのでしょうか。

日本の左翼って人権よりもイデオロギーの方が大切なんでしょうね。

イスラエルがパレスチナ人を三万人殺したらゾロゾロ出てきて大騒ぎするのに今は都合が悪いのでシランプリ。

原発反対とかに逃げている(笑)。
  1. URL |
  2. 2012/11/02(金) 05:10:41 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

昔、週刊誌編集者だった頃、新宿あたりで呑んでるオヤジに、重信だの岡本だのを英雄視してるのがよくいました。私は「何言ってんの、このヒトたち?人殺しじゃん」と思ってましたが。

 日本の左翼というかリベラル・市民運動・人権活動方面の方々と最近、少し接触したのですが、シリアに対しては反応は両極端。北朝鮮拉致問題や広範な人権問題をやっている方面はほぼ反アサドですが、反シオニズムとかイラク戦争反対とかに特化してたような方面は、反米アラビストの影響を受けてアサド派が多いようです。
 もっとも、私の知るかぎりでは、彼らもいちおう「人権」重視です。アメリカ、イスラエル、サウジ、カタールが人権を侵害していると、困ったことに頭から信じ切っている感じです。
  1. URL |
  2. 2012/11/02(金) 10:26:08 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

まあ、英雄と人殺しは裏表の関係にありますから置いておきますが。岡本と重信はテロリストである事は間違い無いでしょう。何かを変えた訳でも無いですし。

日本左翼の中にも一応シリア政府を批判する人がいるのですか。へえ~。性質の悪いイデ(オロギー)馬鹿だけかと思ってましたが。

イスラエルの占領や米国の中東政策を批判する事とシリアのアサド政権を批判する事は全然矛盾しないと思いますが。そう思わないのが左翼イデ馬鹿なんでしょうね。

海外の人権団体HRWなどは欧米やイスラエルの人権侵害批判と同時にシリアなどアラブ諸国やシナのチベット問題も扱っていますが左翼イデ馬鹿に彼らの爪の垢でも煎じて飲ませましょう。
  1. URL |
  2. 2012/11/03(土) 04:10:54 |
  3. 道楽Q #-
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://wldintel.blog60.fc2.com/tb.php/1005-53574f56
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。