3月28日、国連人権理事会で北朝鮮政権の人権侵害を告発する決議が採択されました。ヒューマンライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗さんがこの問題の本質を突く、非常にわかりやすい解説レポートを書かれています。
▽今日そこで起きているホロコースト:北朝鮮の驚くべき真実(ヤフーニュース 3月29日 土井香苗氏レポート)
ぜひ皆様にも読んでいただきたい文章です。金正恩政権の何が最大の問題なのかが、ここにあります。
北朝鮮でこうした国家犯罪がまかり通っているのは、かの国が独裁政権だからです。独裁とは、同国人を抑圧することでのみ存続できるシステムです。世界のどこにも「良い独裁」などはありません。
こんなことは北朝鮮に行ったことのない人でも、ちょっと考えればわかると思うのですが、日本でもほんの15年前くらいまで、政治家にもジャーナリストにも学者にも、北朝鮮シンパのような人がいました。
私が以前、北朝鮮に行った際、マスゲームやらモデル小学校やらを見てゲンナリしていたときも、本気で喜んでいた人もいました。良く言えば「素直な人」、悪く言えば「騙されやすい人」ということでしょうか。
上記した元北朝鮮シンパの方々のなかにも、実際に北朝鮮に行ったことのある人や、北朝鮮側といろいろ接触のある人もいました。北朝鮮の人はサバイバルのために指導者崇拝を貫かなければならないわけですが、そういうことがわからないのですね。いわゆるリベラルとか進歩的文化人とかの系統に多かったですが、そういうのは反米バイアスとかいうよりも、インテリジェンスのリテラシーの欠如であり、もっと言えば人間としての洞察力の欠如といえるかと思います。
シリアの問題もまったく同じです。今度の内戦前から、かの国でも、いたるところに独裁者の写真が掲げられ、テレビも新聞も独裁者賞賛プロパガンダばかりでした。
小学生は1年生から指導者崇拝を強要され、大人は選挙で独裁者への投票を強要されます。独裁者の批判をした人は刑務所に入れられて拷問を受けます。そのために国じゅうに秘密警察の監視網が敷かれていました。
北朝鮮では終身強制労働も広く行われていますが、シリアの場合は、面倒なのか簡単に処刑してしまいます。現在の内戦はそのメンタリティの延長の結果です。
なぜそんなことが行われてきたかというと、理由は簡単な話で、独裁だからです。そんなことはちょっと考えればすぐわかると思うのですが、これも上記したちょっと前までの北朝鮮と同じで、シリアとアクセスがある人も含めて、そこを理解できていない言説を散見します。
北朝鮮に関する情報は、北朝鮮政府側からのものと、そうでない側からのものがありますが、どちらをより参考にすべきかは明白です。シリアの場合もまったく同じです。
北朝鮮では戦慄の人権侵害が続いていますが、シリアでも独裁者による直接的な国民の殺戮が今も進行中です。独裁とはそういうものです。
上記レポートの最後には、こう書かれています。
「国際法廷による裁きがただちにもたらされると期待するのはナイーブすぎるのは言うまでもありません。ただし、現時点から法的責任を問うステップを踏み始めることは、それがICCへの付託であろうと特別法廷の設置であろうと、とても重要です。
なぜなら、国際的訴追という強いシグナルは、北朝鮮指導者たちに対し、新たな人権侵害を行うのを思いとどまらせることにつながる可能性があるからです。そしてもちろん、将来的に法廷での審理が可能になる日に向けて証拠収集を続ける取り組みは、被害者たちにいつの日か正義がもたらされることにもつながるのです。
横田めぐみさんが拉致されてからまもなく40年。そして政治犯収容所ができてからも半世紀以上。北朝鮮の人びとはもう待てないのです。日本政府が始めた今回の歴史的なステップ。安倍首相には、最後までやり遂げるべき道義的責任とチャンスがあるのです。
試されているのは21世紀の私たち人類の良心なのではないでしょうか」
とても深い、重い文章です。
北朝鮮もシリアも、独裁権力がもたらしている想像を絶する悲惨な状況を、放置するわけにはいきません。
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- 2014/03/29(土) 10:34:47|
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ようやく飛行ルートがほぼ判明したマレーシア航空機。しかし、いったい同機で何があったのか?は未だ謎のままです。
今後、奇跡的にフライトレコーダー、ボイスレコーダーが発見・回収されないかぎり、おそらく真相は解明されないと思うのですが、現時点の情報で推理してみました。あくまで仮説の可能性の順位付けです。
▽不明マレーシア機、墜落の理由は「操縦士の自殺・異常行動」か「ゾンビプレーン化」?(JBPRESS)
- 2014/03/28(金) 00:36:25|
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▽袴田事件の再審開始決定、釈放へ 証拠「捏造の疑い」(朝日)
私の専門分野ではないのですが、関係者にご縁があり、お姉様にお話を伺う機会などもあって、数年前に袴田事件について某誌に記事を書いたことがあります。私なりに事件に関する情報を検証し、冤罪の可能性を強く確信していましたので、再審となったことはたいへん嬉しく思います。
以前、拙著『謀略の昭和裏面史』で戦後の帝銀事件について書いたときもそうなのですが、日本の刑事裁判における自白絶対主義が、数々の冤罪の主要因であろうと思っています。
袴田事件では、捜査段階でのきわめて不自然な「自白」以外にも、裁判で「判然としない」として証拠採用されなかった数々の「証拠」があります。誰かが後から作為的に創作したとみられる「証拠」もありますが、それについては当時の捜査関係者が関わっていた疑惑もあります。警察・検察の自白調書もほとんどが採用されていませんが、それでもわずか1点の自白調書と、信憑性に乏しい間接証拠だけで有罪となるのは、日本の裁判所の欠陥といえるでしょう。
- 2014/03/27(木) 22:03:35|
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シリア:アレッポを脅かす不法な空爆 ~国連決議に反し、政府がたる爆弾を使用した証拠が明らかに(ヒューマン・ライツ・ウォッチ 03月24日)
拙ブログでさんざん指摘してきましたが、こんなことは最初からわかっていたことですね。まあ、ヒューマンライツ・ウォッチの皆様も最初からわかっていたことだったのでしょう。といいますか、アサド政権というものを少しでも知っている人であれば、最初からわかっていたはずです。
独裁政権がやることは、こんなものです。ポルポトとかと同じです。
戦争犯罪だなどと指摘しても、指摘するだけでは虐殺は止められません。
- 2014/03/27(木) 08:33:51|
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ウクライナ危機に関し、ハリウッド俳優のスティーブン・シガール氏が、ロシア政府のプロパガンダ放送「ロシア・トゥデイ」(RT)でしっかりロシア寄り発言しちゃっています。まあ、そういう人だからRTも接触しているわけですが。
▽RTのインタビューを受けるS・シガール(YOUTUBE)
セガール氏といえば、「沈黙~」シリーズで知られるタフガイ俳優ですが、かつては元CIA工作員説(もちろんデマ。実際は日本で合気道をしてた)もあったりしたのに、バリバリ親ロシア派なのですね。カラシニコフのイメージ宣伝にどうも首を突っ込んでいるようなので、そのあたりのウラもあるのかもしれませんが。
そんなセガール氏、じつはアリゾナ州知事選挙への出馬も取り沙汰されています。と、ホンモノのセガール氏は全然、沈黙しないタイプ! まあ面白いですが。
ついでに、以下はネットでは有名な話ですが、ウクライナ危機の場外乱闘をあと2件。
クリミアの34歳の女性検事総長ナターリア・パクロンスカヤたんが日本のネットでアイドル化していましたが、イタル・タスやBBCも「日本でアイドル扱い」と報じました。オタク文化はクール・ジャパンなわけですが、これどうなのでしょう? いいのか日本? まあいいのでしょうね。
▽ライフニュースのインタビュー(YOUTUBE)
ロシアには2年ほど住んだことがありますが、その印象でいえば、彼女は34歳にしては若いというか、とくに声が幼い感じですね。たしかに萌え系キャラではある気がします。
あと1つは、これもSNSで話題になっているのですが、在日ロシア大使館のツイッターが熱いです。
▽在日ロシア大使館TWITTER 2ちゃんねるみたいな書きっぷりで、怪しげな反西側言説を発信しまくっています。
「マイダン広場に西側の密使がほぼ常駐していたことはどう考えればいいのか?」
「キエフでの騒乱の際、EUやアメリカが何度となく言及したウクライナ指導部に対する制裁発動の脅しはどう考えればブダペスト覚書の保証の枠に収まるのでしょうか?これが主権国家に対する経済的強迫でなくて何だというのでしょうか?」
「どうやらウクライナでは20世紀初頭のアナルキーが復活しているようだ。ウクライナ反乱軍の軍服を着た人々がモスクワ発キシェニョフ行きの列車No.65に乗り込んで、パスポートチェックを始めたのです。そして、ロシアのパスポートを提示した市民は所持金と貴金属を引き渡すよう要求された」
「さっきツイッターした強盗行為には政治的釈明が伴っていた。強盗に遭った人々が地元内務機関に被害届を提出しようとした試みが無駄に終わった。警察は被害届の受理を拒否したのだ。 これが現在ウクライナで形成されようとしている法治国家なのだ!」
「西側の政治家の中には、制裁だけではなく、国内問題の先鋭化の可能性を語ってロシアを怖がらせている人もいる。彼らが何のことを言っているのか知りたいんだ。様々な国家反逆者の活動のことか、あるいはロシアの社会経済情勢を悪化させることで人々の不満を誘発することができると考えているのか」
「ロシアに対する最初の軍事的挑発はグルジア軍が南オセチアを攻撃した2008年、親米グルジア政権によって行われた。しかしロシア側の抵抗は帝国アメリカがどこからの抵抗もなく自国の勢力を投影することのできる一極体制に限界があることを見せつけた」
・・・「西側の密使」とか「帝国アメリカ」とか・・・
- 2014/03/27(木) 08:19:25|
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▽北朝鮮ミサイル:10年以内に米本土射程 米軍司令官見通し(毎日)
「10年以内」という数字は、何かのインテリジェンスに基づく数字ということではなく、「すぐにはできなさそうだが、いずれはやる」ということです。
金正恩政権も核ミサイル開発優先は揺らいでいませんから、いずれ「米本土に届く核ミサイル」を手にします。アメリカがこれを座視するというのは考えにくいですから(そのときどんなハト派政権であったとしても)、いずれ必ず「軍事的に対決」するという局面が来るでしょう。
それにしても、今回のノドン発射ですが、飛距離が少なかったこともありますが、日本ではほとんど注目されていないですね。日本とほとんど関係のないテポドンのときはあれほど大騒ぎしたのですが・・・。それこそ北朝鮮の狙い? いや、そういうわけではないとは思うのですが。
▽北朝鮮、弾道ミサイル2発発射=ノドン、飛距離650キロ-日米韓首脳会談けん制か(時事)
3月26日、日本テレビ「スッキリ」でVTRコメント採用していただきました。
- 2014/03/27(木) 06:58:10|
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▽オバマ米大統領、東欧でのNATOプレゼンス強化を主張(ロイター)
それはそうなのですが、ではNATOの誰がそれをやるのか?が問題です。
ブッシュ前政権以前であれば、話の主軸は米軍の東欧でのプレゼンス拡大ということだったのでしょうが、オバマ政権は大規模な国防費縮小を進めていて、世界中で同盟国・友好国への負担移しを根回し中です。今後、米軍の常駐という方向での話も進むでしょうが、規模としては小さいものに留まるのではないかと思います。
東欧諸国自身の軍備強化も進むとは思いますが、あとはどの国が東欧へ? 本来ならドイツ軍がいいのでしょうが、ドイツが国外、とくに因縁深い東欧に常駐というのは内外の政治的ハードルがかなり高いですね。
3月25日、TBS「ひるおび」スタジオに呼んでいただきました。
- 2014/03/27(木) 06:42:39|
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昨日に引き続き、JBPRESSさんに寄稿しました(内容は昨日の続きです)
▽ロシア軍に対抗するNATO軍の実情 ~ウクライナ危機 軍事対決はあるか(後篇)(JBPRESS)
本格的な米ロ戦争にはならないと思いますが、今後の状況次第で、両軍が展開(制限的なものでしょうが)して一触即発状態になる危険性はまだまだあると思います。ただし、地理的な条件からしても、ロシア優位は揺るがないでしょうが。
また、明日発売の月刊「宝島」に、中国の対米・対日工作についての記事を寄稿しました。
このところ、ロシアと中国を批判する記事を書くことが多くなっています。アメリカという怖い教師がやる気をなくした間隙に、2人の不良番長が暴れだしたみたいな感じですね。
- 2014/03/25(火) 01:10:29|
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JBPRESSに寄稿しました。今回、ちょっと文章が長くなったので、まずは前篇です。
▽「反米のカリスマ」プーチンの危険なチキンゲームは続く ウクライナ危機 軍事対決はあるか(前篇)(JBPRESS)
プーチンはクリミアを強引に併合したわけですが、それに対してアメリカ、EUは批判を強めています。
これに対し、ロシア側は住民投票⇒独立⇒編入の手続きを踏んでおり、地元の「民意」と正当な手続きに則ったものだ、としています。
住民投票の得票率はホントかな?という部分も多少はありますが、まあそれほど大規模な不正は報告されていませんので、ロシア編入の民意があったということは事実なのだろうと思います。
そして、たしかにプーチンは形式的な最低限の手続きは踏んでいます。これで文句ないだろう、ということですね。
それに対して、アメリカとEUは、ウクライナの主権を侵害している点をいちばん批判しています。法的にはそうなるでしょう。
私自身の考えはそれとはちょっと違っていて「地元の過半数が望むなら、ロシア編入もアリでいいのではないか」との考えです。それが地元の人の過半数の望みであれば。
けれども、今回のプーチンのやり方には、どうしても看過できないことがあります。「武力を使用したこと」、それに「嘘を平然とついたこと」です。
いきなり軍を送り込む。しかも、それを「自警団だ」と記者会見ですっとぼけてみせる。とくに、この記者会見で平然と嘘をついたという事実は、非常に重いと思います。今では誰もあまり突っ込まなくなっていますが、こういう人物に権力をもたせるのは非常に危険ですね。
たとえばシリアのアサド大統領も、あれはあれでそれなりに形式主義で、都合のいい枠内ですが、いかに自分は正当であるかを示すため、表面上の理屈は重視しています。けれども、プーチンと同じで、そこで平然と嘘がつけるのですね。
そういう人物は早く退場していただきたいものです。
マレーシア機不明事件。
18日、TBS「ひるおび」スタジオに呼んでいただきました。
19日、「ひるおび」文字コメントのみ採用していただきました。
23日、テレビ朝日「報道ステーションSUNDAY」VTRコメント採用していただきました。
あいからわず情報の少ないこの事件は、情報が少ないがゆえにどのような想定も理論上完全に否定はできないのですが、現時点で可能性の高い順番で考えると、「機長か副操縦士のパニックか自殺行動」と「電気系統の故障、場合によっては操縦システムの一部の故障、あるいは操縦クルーの失神などによるゾンビ・プレーン化」が半々くらいの確率かな、と考えています。
- 2014/03/24(月) 02:13:30|
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横田夫妻がモンゴルで孫娘の金ウンギョンさんとの面会を果たしたことが、大きな話題となっています。
これはかねて北朝鮮サイドから申し出がされていたところ、横田さんが娘のめぐみさんの安否情報が有耶無耶にされる恐れがあるということと、他の拉致被害者家族ならびに関係各運動の尽力への遠慮から、これまで踏み切れないでいたものでした。まことにお気の毒なことであり、今回の面会はとてもよかったと思います。
今回の面会は、日本側では日本赤十字社と同行した外務省の仕切りでした。
他方、北朝鮮側は北朝鮮外務省と朝鮮赤十字会が担当でした。朝鮮赤十字会はその実、党統一戦線部の指導下にある組織とみられているので、要するに北朝鮮外務省と党統一戦線部が取り仕切ったということかと思います。
もっとも、北朝鮮の側は、こうした政治性の高い案件になれば、「××ルート」というのはあまり意味がなく、要するに金正恩の了承で決まったということになります。
ただ、今回の流れは、金正恩の意思を反映させるのに、このところ金正恩体制の内部で実務テクノクラート系が重用されていることに合致します。
とくに昨年の張成沢処刑前後から、金正恩は視察や行事に党の副部長クラスのテクノクラート系を同行させることが多くなっています。実力者の側近に一任するというのではなく、しかるべき党や政府の官僚機構をきちんと使おうという兆候が見て取れます。
もっとも、統一宣戦部に関しては、古参幹部である金養建・統一戦線部長が優遇されていますので、その影響もあったかもしれません。
- 2014/03/17(月) 13:10:16|
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別冊宝島の新刊『大東亜共栄圏の真実』で、日本近代史の第一人者である秦郁彦先生のインタビュー記事を担当しました。
同書は「大東亜共栄圏」という昭和の用語がタイトルになってはいますが、実際は内容のほとんどが明治・大正期の日本の大陸進出を俯瞰するものになっています。私自身が担当したのは上記のみで、企画・編集には一切関わっていないのですが、日本の近代史、とくに幕末からの大陸進出の流れがわかりやすく俯瞰されており、お薦めの一冊です。
タイトルから旧日本を擁護する右翼的な論調かと誤解されるかもしれませんが、そんなことはなく、歴史的経緯が淡々と、しかしポイントを押さえて解説されています。インタビューに秦先生をもってくる点など(この人選に私は関わっていません)、担当された編集者の方のセンスと熱意が伝わる内容です(ムックの編集はとくにその分野に詳しい編集者が担当するというわけではないので、とくに歴史モノや軍事モノは玉石混交となっているのが実態です)。
(以下、マレーシア航空機行方不明事件関連)
先週火曜日のテレビ朝日「モーニングバード」でVTRコメント、水曜日のTBS「ひるおび」で音声コメントを採用していただきました。本日17日も「ひるおび」で音声コメント予定(採用されたかどうかは未確認)。
機長か副操縦士の犯行で決まりっぽい流れではありますが、まだまだ真相は不明です。
- 2014/03/17(月) 11:03:04|
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北朝鮮軍がミサイル&ロケット砲の発射実験を続けています。2月24日から始まった米韓合同演習へのカウンターという意味もあるのでしょうが、同時に北朝鮮軍自身の訓練ということでもあるのでしょう。
今回の発射は、16日夜、東海岸から日本海への計25発の短距離ミサイル発射です。射程70kmのフロッグと推定されます。25発というと、これまでの北朝鮮の発射訓練からするとかなり多めなのですが、その意図は不明です。
北朝鮮軍の一連の発射訓練は、まずは2月21日から始まりました。射程150kmと推定される新型の300ミリ多連装ロケット砲(放射砲)の「KN-09」で、4発が発射されました。これは新型で、初めての発射。まあ実験ということかと思われます。
(KN09はKN02短距離弾道ミサイル〈直径650ミリ?〉の改良型を指しているものと昨年報じられていましたが、韓国国防部の最近の発表では、300ミリに大型化された新型多連装ロケット砲を指しています。ちなみに、KN-02の射程は120km。昨年はそれを射程160kmまで延ばした改良型が開発されたと報じられていましたが、詳細は未確認)
次は2月27日。旗対嶺から日本海に向かってスカッド4発が発射されました。最大飛翔距離が約200kmとのことなので、おそらく射程300kmの「スカッドB」ではないかと思われます。
次は3月3日で、元山付近から日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発が発射されました。約500km飛んだので、射程500kmの短距離弾道ミサイル「スカッドC」か、射程700kmの「スカッドER」(スカッドC改良型)と推定されます。
次は3月4日、江原道から日本海に7発の多連装ロケット砲が発射されました。まず早朝に3発を約50km飛ばし、同日夕方に4発を約155km飛ばしました。早朝のは射程60kmの旧来型の240ミリ多連装ロケット砲で、夕方のは前述した新型のKN-09(300ミリ多連装ロケット砲)と推定されています。
ちなみに、北朝鮮は3月5日、朝鮮人民軍戦略軍報道官談話で、一連の発射について、「自国の領土で行われる正義の自衛的な訓練」「最高水準の命中率で、国際航海秩序に影響を与えることなく行われた」「米国の挑発が度を超えれば、攻撃型ロケット発射による報復につながる」と発表しています。
他方、アメリカ国防総省は3月5日、北朝鮮軍に関する年次報告書を議会に提出しています。
それによれば、移動発射機搭載型の弾道ミサイル「KN-08」を「ファソン13」と命名。射程は5500km以上で、開発中のICBMだとの認識を示しています(まだ発射実験を行なっていないため、実戦配備段階にはないとの分析)。
また、テポドン2改良型も最後の大気圏再突入体の実験が行なわれていないので、実戦使用不可。つまり、北朝鮮はまだ米本土を狙えるICBMは開発できていないと判断しています。
(追記。本エントリーを最初にアップした際、2月27日の発射についての記述をまるごと誤って削除していました。2月27日のエントリーで書いていた件です。いま気付き、慌てて追記しました。 3月17日・記)
- 2014/03/17(月) 07:19:21|
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マレーシア捜査当局が、機長の家宅捜索をしたそうです。前エントリーで列記したなかの、2番めの可能性ということですね。
現在の情報を合わせて考えると、たしかにその可能性がもっとも高い気がします。乗客によるハイジャックであれば、操縦クルーがまったく外部に知らせる間もなく、どうやってコックピットを瞬時に制圧したのか、大いに疑問です。
しかし、操縦クルーの犯行だとすると、腑に落ちないのは1点。「コックピットには機長と副操縦士がいる」ということです。もし片方の犯行だとすると、もうひとりはどうなったのでしょうか??
片方が片方を殺害??? まあ、その可能性はアリです。
あるいは、グル?? まあ可能性はありますが、その場合、2人とも自殺志願者で心中ということはまず考えにくいですから、なんらかの営利目的犯罪でしょうか。あるいは2人とも同じ過激思想のテロリスト? うーん、可能性がゼロではないですが、ちょっと無理がある気がしますね。
映画みたいですが、あとはこんな想像ぐらい。
「ハイジャック犯がCAにナイフを付きつけ『騒ぐな。このままコックピットに行け』。で、操縦クルーがドアを開けてしまい、ハイジャック犯が瞬時に機長と副操縦士を殺害」
あ、こういう可能性もありました。
「機長か副操縦士が、相手がトイレか何かで席を外した隙に施錠」
これがもっともありそうな気がしますが・・・でも離陸50分後にトイレというのも??
- 2014/03/16(日) 12:15:14|
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とにかく情報が二転三転し、謎が深まるばかりのマレーシア機不明事件ですが、こんな情報も。
▽マレーシア機不明、アンダマン諸島に向かった可能性も(CNN)
「自動報告システムが、報告されている同機と航空管制官との最後の交信から数時間、複数の衛星と交信していたことが確認された」
「トランスポンダー信号が同機から最後に発信された後に自動報告システムからのピン(ping)が受信されていることから、同報告システムは最長で5時間は正常に機能していたと見られる」
「これらの情報を総合すると、一連のデータは何者かがテロなどの目的で同機を乗っ取った可能性を示している」
「この説が浮上するきっかけとなったのが、同機がトランスポンダーによる通信を断った後、何度か大幅な高度変更を行ったとする米紙ニューヨーク・タイムズの記事(同機が民間のレーダー画面から消えた直後に約14キロ上昇したことがマレーシアの軍事レーダーで確認された)」
「インド洋のアンダマン諸島に着陸したとの説もある。この説は、ロイター通信が14日に明らかにしたレーダーデータの分析に基づいている」
「同機の操縦者は、ウェイポイントと呼ばれる飛行経路上に設定されている通過点をたどっており、そのウェイポイントに導かれてインド東部のベンガル湾に浮かぶアンダマン諸島に向かった可能性がある」
謎、深すぎ!
うーん、ハイジャック犯が、クルーが外部に異常を知らせる間もなく同機を制圧し、トランスポンダーを切り、クルーを脅すか自身が操縦するかで西に針路をとった???
あるいは、クルーがもともとテロリストとか犯罪者とか異常者とか何かで、管制との交信を自分で断つとともに、トランスポンダーも切って、西に向かった????
あるいは、何者かが画期的なサイバー攻撃で操縦システムと通信システムを乗っ取り、勝手に西に飛ばした??
上記記事のデータが事実なら、そんなことぐらいしか考えられない・・・
- 2014/03/15(土) 13:50:23|
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数日前のエントリーで「北方領土問題とウクライナ問題は関係ない」と書きました。なぜなら「どうせプーチンは北方領土を返す気はない」と考えられるからです。
北方領土問題は、もう長年にわたって「日本政府が交渉進展を示唆」⇒「メディアが乗っかる」⇒「実質的な進展なし」⇒「国民落胆」⇒「4島どころか1島も還らず」が何度も何度も繰り返されてきました。何度もそうなるということは、それだけの理由があると考えるべきなのですが、そこがどうも日本のメディアではむにゃむにゃしてきました。
「プーチンは返す気がないんだろ」とか言うと、「交渉に水をさすな」とか怒られるのでしょうか??
それはなんかおかしくね?ということで、昨年に引き続き、このテーマでJBPRESSに寄稿しました。
▽プーチンに北方領土返還の意志はない~日本の外交弱者ぶりを示す安倍首相の「プーチン詣で」(JBPRESS)
水を差すもなにも、戦略の大前提が成立していなければ、戦略を再検討する必要があります。
そもそも外務省は「プーチンは2島返還で決着したがっているけど、日本側が4島一括返還にこだわっているから交渉が進まない」という“推測”を、あたかも“事実”と前提して対露戦略を考えているようですが、「それでいいのですかね?」というのが上記記事の主旨です。
敵を知るということは、交渉ごとの基本ではないかと思うのですが、外務省では誰も「プーチンは返す気がない」と考えていないのでしょうか?
「プーチンは返す気がない」ということを前提に、「では、どうするか?」は、それぞれ国民各自にそれぞれの考えがあるでしょう。あくまで4島返還要求でいくにせよ、いったん棚上げでいくにせよ、それはこうした情報分析のうえで、議論すべきことです。上記記事でもそこまでは踏み込んでいませんが、いずれにせよそうした前提で。対露戦略を考えることが必要なのではないでしょうか。
ところで、前エントリーに多少加筆したものを、少しでも多くの方に読んでいただきたく、ヤフーニュースに寄稿しました。シリアをよくご存知ない方に向けて、ざっくりと解説しています。
▽震災と同じく3年が経過したシリア危機~すでに14万人以上が犠牲になったが、今も殺戮は続いている(ヤフー個人ニュース)
その他、現在発売中の『週刊朝日』に記事2本(北朝鮮ネタと中国ネタ)を寄稿。さらにウクライナ・ネタでコメントを採用していただきました。
また、やはり現在発売中の『週刊新潮』(ウイグル・ネタ)、『フライデー』(ウクライナ・ネタ)、『アサヒ芸能』(韓国ネタ)でコメントを採用していただきました。
- 2014/03/14(金) 02:59:22|
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本日は震災3周年。
ということで、メディアでは関連の特集が多く報じられています。
そんななか、私個人としては、一昨日の深夜テレビで放送されていた『遺体 ~明日への十日間』(君塚良一監督)という映画がいちばん心に残りました。西田敏行さん主演のフィクションですが、実話を基にした物語です。
『遺体』は、震災直後の釜石の遺体収容施設を舞台にしています。当時の震災報道でほとんど報じられなかった「場所」です。
震災当時もメディアでは「遺体を報じるかどうか」という議論があり、それは賛否両方の意見があっていいとは思いますが、私自身は映画『遺体』が、作り物の映像とはいえ、ぐっと刺さりました。遺体という存在・・・遺体と向き合う人々の姿・・・そういったものが、直接的に死の重みを突きつけるのです。
死者と行方不明者は1万8517人。さらに避難生活などで亡くなった方は2900人あまり。合わせると少なくとも2万1400人以上の尊い命が失われました。そのひとりひとりに、たいへんな悲しみの物語があります。
同じように、たいへんな悲しみを、まさに今、シリアの人々が経験しています。
シリアで反体制派のデモが始まったのは、震災から4日後の2011年3月15日。直後から独裁政権による凄まじい殺戮が始まり、もう3年になります。
この3年間で、すでに14万人の人が亡くなっています(政府側戦死者含む)。これは反体制派人権団体などによるカウントですが、実際には行方不明者が大勢いますので、犠牲者の総数はもっと多いと思います。14万人としても、人口2200万人の国での死者数です。
また、現在、自分の家を追われて国外難民あるいは国内避難民になった人が、1000万人弱に達しています。国民の半数という凄まじさです。
映画『遺体』を観た方も、観ていない方も、そこに2万人以上もの死があったことに衝撃を受けた方であれば、シリアの14万人の死の悲しみの凄まじさも、きっと想像していただけるのではないかなと思います。
去年の写真ですが、悲しみのほんの一部を貼っておきます。実際には、こうした遺体が14万体もあるのです。

こちらは最近。政府軍による市街地への無差別爆撃の犠牲者です。

ちなみに、シリアで凄まじい殺戮が始まってから、私は現地から発信される現場映像を日本のメディアで伝えようと動いたことがあります。雑誌メディアやネット・メディアでは遺体の写真・映像を使うことができたのですが、テレビではやはり当たり障りのない映像に制限されました。しかたないことですが、やはり本当の悲惨さを伝えるには不十分だったと思っています。
内戦前のシリアはよく知っています。秘密警察国家特有の重苦しさはありましたが、日本でイメージされているような未開の国ではなく、それなりの生活レベルの国でした。それが、民衆が独裁者に歯向かった結果、こんな酷い状況になってしまいました。
しかも、シリアでは今も、毎日数十人から数百人のレベルで殺戮が続いています。
政府軍vs反政府軍vsイスラム・テロ集団の三つ巴の戦いになっていて、もちろん戦闘で戦死する兵士もいますが、死者の多くは民間人です。先日、国際会議なるものがあって、政府軍による一般市民への無差別爆撃や、ライフラインをとめて飢餓や窮乏をもたらしている町村への封鎖が禁止されることになりましたが、そんな口約束はまったく守られていません。
本来であれば、シリア政府に国際社会が強い圧力をかける局面であるべきなのですが、国際社会なるものは今、ウクライナ危機に手一杯で、シリアの人々を見殺しにしています。
ウクライナ問題はもちろん重要ですが、毎日多くの人が殺されているシリアを、やはり忘れないでほしいと思います。
(先日、JBPRESSにシリア問題とウクライナ問題についてそれぞれ寄稿しました。残念ながらシリア記事のアクセスは伸びなかったようです。関心をもたれていないということですね)
- 2014/03/11(火) 12:27:55|
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表題のとおりです。
あえて言えば、これで「ロシア(プーチン)は縄張り(国益)を譲らないことがはっきりした」といったことぐらいでしょうか。
欧米主要国がロシア批判を高めているのに対して、日本政府は腰砕け。「北方領土交渉のためにプーチンに恩を売っておきたい」との見方がありますが、そうだとしたら愚の骨頂ですね。
もともとロシアに北方領土を返還する気などありません。だから、日本政府がプーチンに媚びても、何も変わりません。
むしろロシア側に「日本はマジで外交弱者」と教えてしまうわけで、逆効果でさえあります。
日本側にそうした考えが出てくるのは、「プーチンは歯舞・色丹を返還する意志がある」との前提があるからですが、何度も書いていますが、妄想です。
昨年の5月の拙稿です。
▽「プーチンは2島返還で決着したがっている・・・」 根拠なき定説はなぜ生まれたのか(JBPRESS 2013.05.07)
まあ簡単な話で、「プーチンは2島を返還する意志がある」と結論するならば、「では、それをロシア政府の誰が、いつ言ったのか?」「それはプーチンの意志だと、どういう根拠でわかるのか?」を証明しなければなりませんが、誰もできていませんね。日本側はどうも「ネックは日本側の4島一括原則」だと考えているようですが、違いますね。
それと、二国間の領土問題交渉に「個人的信頼感」など関係ありません。
森喜朗さんがプーチンと直接話ができるからといって、それで何かできるわけでもありません。プーチンが「森さんの頼みなら断れない」とか考える・・・わけはないですね。
ロシア側としては、「日本の元首相だし、邪険にはできない」だけの話であり、プーチンとすれば「ああ、そういう人いたっけ?」程度の話でしょう。
ロシアのような外交強国からみれば、日本などはたぶん眼中にないと思います。
- 2014/03/09(日) 09:31:28|
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昨日付『夕刊フジ』にコメントを採用していただきました。昆明のテロに関連して、ウイグル過激派についてです。
さて、ウクライナ情勢は外交戦の様相を呈してきていますが、他方、現地の雰囲気が気になるところです。
私は実際に現地の人々と話したわけではないので、これは推測になりますが、最近の怒涛の現地発情報・映像などを見ていると、「好戦的な人は一部で(もちろん無視できる規模ではないですが)、大多数のウクライナ人(もちろんクリミアの人も)はそうではない」という印象を持っています。
とくに映像からは、私の取材経験からいうと、最初のキエフのデモを除けば、圧倒的に「騒いでいる人が少ない」わけです。とくに報道映像ですが、ああいうものは報道カメラマンの習性からいうと、とにかくイメージがマックスになるような撮り方をするものですが(提供映像でも編集・ディレクションのマインドは同じです)、それがたいしたことがないのですね。
おそらくこういうことかと思います。
まず、キエフの広場デモが反ヤヌコビッチ運動として大衆運動に急拡大⇒スヴォボダ党などの極右勢力をバックとする過激グループ「右派セクター」が暴走⇒ヤヌコビッチが武力対応⇒流血⇒ヤヌコビッチと政権側治安部門が撤収⇒反ヤヌコビッチ野党が政権奪取⇒クリミアとグルジア東部の一部の親ロシア強硬派が反発&プーチン介入(同時並行)⇒プーチンがクリミア奪取(⇚今ここ)。
ということを振り返ると、そこそこ民意のような印象があるのは、最初のデモぐらいです。
あとは一部の人と外国(とくにプーチン)が煽ってこんな事態に陥っていますが、大多数のウクライナ人はこんな騒動を望んではいないでしょう。
やはり決定的な悪化要因は、プーチンのロシア軍介入・侵攻ですね。
極右の存在とか、民主主義の原則とか言えば、それは問題はありますが、大衆デモで腐敗政権が打倒されることは、まあ許容範囲かと思います。極右の暴力とか、親ロシア強硬派の暴動などのゴタゴタは続きますが、いずれにせよ今後また選挙をやって、なんとか折り合いをつけていくというのが民主国家の道だったのでしょう。
ところが、誰もまだ本格的な殺し合いなどしていない段階で、プーチンがクリミアに手をツッコミました。黒海艦隊の本拠地を死守したいということですが、これをやったことで、いっきに軍事的な紛争になりました。これはロシアの国益からすれば合理的かもしれませんが、禁じ手ですし、紛争が余計にややこしくなりました。
事態がここに至れば、プーチンはもうクリミアをそのまま手放す気はないでしょう。ロシアの国益を重視しているなら、ウクライナ東部に本気で侵攻する気はないとは思いますが、ウクライナのEU接近を妨害する圧力の手段のひとつとして、軍事カードを利用していく可能性はありそうです。
ウクライナの普通の人々にとっては、たいへんな迷惑じゃないかと思います。
- 2014/03/06(木) 13:05:22|
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JBPRESSに寄稿しました。
▽ロシアが本格的軍事介入へ ~今後のカギを握るウクライナの親ロシア勢力(JBPRESS)
今回、記事発表に至るまで、わずか数日間に何度書き直したかわかりません。事態の進展スピードが驚異的に早いため、書いた端から情報更新が必要になったからです。
これまで、なんだかんだと国際紛争をカバーする仕事をもう四半世紀続けてきましたが、こんなに展開の早いものは過去に思い浮かびません。
- 2014/03/04(火) 00:37:46|
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急展開中のウクライナ情勢ですが、ロシアがクリミアへ軍事介入を本格化する方向です。クリミア自治共和国政府がロシアに支援要請し、ロシアが介入をほぼ決めた感じです。今後、おそらくクリミアは実質的にロシアの勢力圏になると思われますが、その後、他のウクライナ東部地方にまでその流れが拡大するかどうかが焦点になります。
黒海艦隊の本拠地があり、ロシア軍がもともと存在するクリミアと、他の地域では事情が大きく異なりますが、すでにハリコフでは親ロシア派のデモの情報もあります。イケイケのプーチン大統領のことですから、どう出るか予断はできません。
ところで、クリミアがこのような事態に至った下地として、ウクライナ政府でのヤヌコビッチ追放からのわずか数日間で、クリミア半島内で親ロシア派の正体不明の武装勢力が素早く要所を制圧したことがあります。その主役はおそらくロシア軍の偽装歩兵部隊と、ウクライナの警察系特殊部隊「ベルクート」だったろうと思われます。
他に親ロシア派有志の部隊(おそらく軍のOBが中心)も参戦していますが、軍部隊がまるごと「ウクライナから寝返った」との情報はないようです(もっとも、現在はすでに親ロシア系のクリミア自治共和国政府が地域内のすべての軍・治安部隊の指揮権を主張しています)。
特殊部隊「ベルクート」(イヌワシ)に関しては、そもそもキエフのデモ鎮圧の時点で注目されていました。ヤヌコビッチ大統領および当時のウクライナ内相だったビタリー・ザハルチェンコの命令でデモ鎮圧を実行し、100人近い人を殺害したのが、このベルクートだったからです。
ベルクートはもともと旧ソ連の内務省治安部隊「OMON」を起源としています。OMONは内務省傘下ではあったものの、単なる警察部隊ではなく、装甲車などの重装備を擁し、テロ対策や民族紛争に出動する精鋭部隊として知られた部隊でした。
ソ連時代、ウクライナでは主要都市にOMON部隊が配置されていましたが、独立後、すべての州にベルクートとして配置されました。ベルクートは警察系の特殊部隊という立場ですが、指揮系統上は州(市)警察の指揮下にはなく、各州(市)の内務省組織が直轄していました。
ベルクートはもともとは内務省組織犯罪対策局の隷下部隊でしたが、97年に同局に專門の特殊部隊「ソーキル」(隼)が創設され、以後、ベルクートは内務省公安局の隷下部隊となっています。
もっとも、とくにクチマ政権時代の頃から、ときの政権の守護部隊となり、公安・治安維持ということで野党勢力あるいは反体制デモ隊などに対する弾圧の道具にされていました。とくにヤヌコビッチ政権下では完全に大統領の私兵と化していたようです。
警察系ではエリート部隊で、給与は一般警察官の1.5倍から2倍といわれています。ベルクートに入隊するには兵役と最低2~3年の法執行機関での勤務歴が必要。実績のあるアスリートは優先されます。実際には空挺部隊および海軍海兵隊の出身者が多いようです。
隊員には東部のロシア系が多いようですが、全員がそうだということではありません。各エリアの部隊は50人から600人。ウクライナ全体では4000人~5000人です。
各地域ごとに別運用ですが、いちばん大きな単位である連隊は2個。キエフとクリミアに配置されています。キエフの独立広場の弾圧には、キエフの部隊が投入されています。
キエフでの政変の最終段階で姿を消し、2月25日に新内相のアルセン・アバコフが解散命令を下しています。
独立広場での弾圧でウクライナでは悪名を轟かし、権力者の手先となっていたことで、ウクライナ各地で反ロシア系住民の憎悪の対象となっています。そのため、ロシア系の隊員の多くは、ロシア系住民が多数派であるクリミアに逃げたようです。彼らはおそらく、もともとクリミアに配置されていたベルクートの1個連隊に合流しているものと思われます。
自動小銃、防弾チョッキから、各種機関銃、装甲兵員輸送車まで保有し、統制のとれた歩兵という側面もあります。
前述したように、すでに親ロシアのクリミア自治共和国政府は域内の軍・治安部隊の指揮権を主張していますが、実際にその中心となるのはおそらくベルクートだろうと思います。
なお、ロシアは、クリミアに集結しているベルクート隊員にロシア旅券を与えるとも言っています。
- 2014/03/02(日) 01:05:19|
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▽北朝鮮ナンバー2の崔竜海氏監禁か(朝鮮日報)
だそうです。
同記事によると、現時点でウラがとれた話ではないようで、詳細は追加情報待ちということになりますが、可能性はあります。
金正恩政権はワンマン体制でいこうということですから、ナンバー2の崔竜海はいつ失脚させられてもおかしくない立場にいます。
もっとも、ナンバー2といっても、彼は晩年の金正日から急にとりたてられ、その後の金正恩=張成沢(すでに粛清済)のラインで軍内掌握の駒として実績以上の破格の出世をしただけの人物ですから、政権内でもそれほど突出した存在感のある「重鎮」というわけではなかったと思います。
ところで、崔竜海を軍を代表するポジションとの見方もありますが、違うと思います。彼のポジションは軍総政治局長という軍内の政治警察長官のようなもの、軍を監視するポストになります。なので、軍の利益を代表するという立場ではないと思います。そもそも、北朝鮮ではすでに政治勢力としての「軍部」という存在がほぼ消滅しています。
現在、金正恩政権でポスト張成沢の実権を握っているのは、党の筆頭部局である組織指導部と、いくつかの秘密警察的な実力組織です。なかでも粛清を実行する秘密警察の権限は圧倒的なものがあります。筆頭は国家安全保衛部ですが、それ以外にも人民保安部、その隷下の人民内務軍政治局、軍保衛司令部、人民保安部、それに軍総政治局といった機関があります。
現在の北朝鮮は金正恩のワンマン体制が強化されていますが、その恐怖政治の手足となるのが秘密警察であり、それらを重視する超独裁システムはまさに秘密警察国家といっていいでしょう。
もっとも、北朝鮮の超個人独裁体制のこれまでの慣例からすれば、そういった実権を握る人物こそが次の粛清の標的になる可能性があります。拙ブログでもすでに書いていますが、いまや紛うことなき実力者となっている金元弘・国家安全保衛部長あたりが、次は危ない気がします。
- 2014/03/01(土) 23:34:35|
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