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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

北朝鮮が短距離ミサイル発射

北朝鮮が東海岸の旗対嶺から、日本海に向かって短距離弾道ミサイル4発を発射しました。射程は200km以上とみられるとのことです。
 旗対嶺は北朝鮮のミサイル発射基地としてはよく知られたところで、たとえば2006年7月にテポドン2の発射実験がムスダンリで行われた際には、同時にここからノドンが発射されています。
 今回の発射はおそらく、米韓軍が24日から行なっている合同軍事演習「キー・リゾルブ」と野外機動訓練「フォールイーグル」に対する反発の意思表示兼発射実験でしょう。ただ、射程200kmのミサイル発射では、軍事的にはあまり意味のない示威行為といえます。
 発射されたミサイルですが、現時点ではまだ不明です。可能性としては、固体燃料ミサイル「KNー02」改良型(KNー09とも)ではないかなという気がします。これはもともと射程120kmだったKN-02を長射程化したもので、昨年段階で160kmまで射程を延ばしたとみられていました。もしかしたら、これをさらに射程延長し、今回、その実験を行なった可能性があります。
 あるいは、かねて保有していたスカッド系統の可能性もあります。北朝鮮は旧ソ連製のスカッドBとスカッドC、さらにそれを独自に改良したスカッドC改を保有していますが、こちらはもう何年も発射試験を行なっていないので、今回、使用された可能性があります。もしそうであれば、射程300km程度のスカッドBではないかと思われます。
 また、北朝鮮が開発中とみられる新型多連装ロケット砲(放射砲)との見方もあるようですが、現在開発中とみられる300mm以上のものでもおそらく射程は百数十kmと思われますので、いきなり200km以上というのは、なかなか考えにくいようにも思えます。もちろん北朝鮮の兵器開発の程度は外部には不明なので、断定はできませんが。
(追記)
 米国防総省報道官が「スカッドの発射実験とみられる」と発表しました。北朝鮮軍のスカッドはそれほど大量にあるわけではないのですが、ずっと放置してきたので、実際に作動するかの試験だったかもしれません。あるいは運用試験。ただし、それだけで4発は多い気もします。かといって
新型開発の実験だった可能性は今のところ低いように思うのですが・・・。
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  1. 2014/02/27(木) 23:26:53|
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『バンバン・クラブ -真実の戦場-』

 今まで機会がなくて観ていなかったのですが、ケーブルチャンネルで2012年公開の『バンバン・クラブ -真実の戦場-』を初鑑賞しました。90年代初頭の南アフリカを舞台とした報道カメラマンたちの物語です。
 実話がベースになっていて、「バンバン・クラブ」とは実在の4人のカメラマン仲間の通称。日本語でいえば「ドンパチ・クラブ」といったところでしょうか。4人のうちのひとりは、有名なスーダンの「ハゲワシと少女」の撮影者ですね(この実在記者の自殺まできちんと描かれています。また、他のカメラマンですが、惨殺された子供の遺体を撮影する葛藤などもあります。なので、単なるヒーロー物語ではありません)。

 戦場記者の世界を描いた映画はこれまでいくつもありましたが、私とは微妙に時代がずれていることが多かったように思います。が、この『バンバン・クラブ』は、まさに場所も時代も取材対象もノリもドンピシャで、思わず「おおー」と見入ってしまいました。
(ちなみに、これまでもっとも空気感がハマっていたのはニカラグア革命を舞台にした『アンダーファイア』でした。自覚してはいませんでしたが、初戦場取材先にニカラグア内戦を選んだのは、その影響が少しはあるのかもしれません)

 かつて南アフリカといえばアパルトヘイトの国で、多くの記者が白人vs黒人という構図で優れたレポートを書いていましたが、90年代はどちらかというと、黒人多数派のコーサ人VS少数派のズールー人の殺し合いになっていて、当時の私も『バンバン・クラブ』と同じく、そちらの紛争を主に取材しました。
 拙ブロブ既出ですが、当時の取材は以下です。
 ▽写真館⑳南アフリカ部族対立(ワールド&インテリジェンス 2010/10/04)

 当時はアパルトヘイト終結の時期で、世界中のプレスがマンデラおよびANCを取材しまくりましたから、私は逆にズールー人勢力に注目。ズールー人の政党「インカタ自由党」指導者、ズールー人ギャング、ズールー人のホームランドであるクワズールー・ナタール州などを取材しました。
 当時からヨハネスやナタール州は危険地帯だったのですが、私がもっとも緊張したのは、黒人居住区だったソウェト地区のミードウランズ・ホステルですね。ホステルというのは地方からの出稼ぎ者収容施設なのですが、実際にはコーサー人とズールー人のホステルが点在していて、それぞれ戦闘グループのアジトになっています。
 私が突撃潜入取材を行なったミードウランズ・ホステルは、ズールー人戦闘グループの最大拠点のひとつでした。『バンバン・クラブ』の冒頭は、主人公がやはりズールー人のホステルに迷い込む場面でしたが、まさに同じ感じです。とにかく怖い場所でした(ただし、私は映画のように殺人場面は目撃していませんが)。

 映画を観ていて「ん?」と思った部分を1点。『バンバン・クラブ』ではズールー人戦闘グループは白人政権と裏で繋がっていることを強調していますが、私がミードウランズ・ホステル取材中、警察部隊がホステルを急襲し、大掛かりな武器捜索を行なっていました。味方同士という雰囲気ではありませんでしたが、どういうことかよくわかりません。

 ところで、同映画でこんなシーンがあります。南アには黒人カメラマンもいるのですが、黒人間抗争の取材はできません。どちらからも敵方と疑われるからだというのです。
 そこで白人カメラマンがこう言います。「白人でよかった。白人はどこへでも入っていけるからね」
 なるほど。白人だけでなく、日本人もそうですね。日本人は国際政治の部外者なので、たいていの取材対象に白人記者より軽く扱われますが、その代わりほぼ世界中の紛争地で「部外者ゆえ無害」と見なされ、敵対する両サイドにさほど警戒されずにアクセスできます(もちろん例外はありますが)。そういう意味では、得しているのかもしれません。
  1. 2014/02/25(火) 05:01:26|
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安保理シリア人道支援決議の抜け道

 国連安保理でロシアも賛成して成立した人道支援決議。あたかも和平が動き出すかのような印象で報じられていますが、まだまだ楽観はできません。

 以下、その骨子(朝日新聞記事より。
▽全ての紛争当事者は人口密集地への砲撃や空爆など、市民を狙った攻撃を即時停止する
▽都市部の包囲を直ちにやめ、封鎖地域への支援物資搬入や医療サービス提供に協力する
▽医療施設、学校、その他の民間施設は非武装にする
▽国連事務総長に対し、採択から30日ごとの履行状況の報告を要請する
▽決議を順守しないケースがあれば、さらなる措置を取る

 ロシアが賛成にまわったいちばんの要素は、「さらなる措置をとる」との玉虫色の表現となったからです。これはどうともとれる表現で、今後は欧米・アラブ諸国が介入(制裁)強化を主張し、ロシアが制裁の骨抜きにまわるというまだるっこしいやりとりが続けられることになりそうです。
 軍事介入までいかなければアサド政権は屁とも思わないでしょうが、ロシアがいるかぎり、安保理でそこまで行くことはないでしょう。つまり、人々はまだまだ殺害され続けることになりそうです。
 また、一見、暴力停止を強く求めているのが希望に見えますが、そこは「双方」となっているところがミソですね。アサド政権やロシアは「暴力は反政府側によるものだ」という主張で押し通すことになるでしょう。

 こうした外交によって、欧米や湾岸からの反政府軍支援が滞ると、逆にアサド政権に有利になるかもです。
  1. 2014/02/23(日) 10:26:20|
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ウクライナやベネズエラの反政府デモでZello活躍

 ここ数日、世界中で騒乱が起きています。とくに展開が早いのが、ついに大統領が放逐されたウクライナですが、他にもベネズエラがかなり緊迫化。タイでも衝突が続いていますし、今度はトルコでも。他方、シリアの戦闘はますます激化していますし(とくにアレッポへの樽爆弾とダラア周辺の戦闘。それにゴラン高原方面でも)、レバノン、ソマリア、ブルンジ、南スーダンでもいろいろたいへんです。
 ベネズエラとウクライナからのレポートによれば、反政府側はアップルのトランシーバーアプリ「Zello」を多用しているとのことです。政府側からの妨害が難しいそうです。
 ところで、ベネズエラからのレポートによれば、政府側は「すべて外国(アメリカ)の陰謀だ」との論を展開しているようです。なんだかシリア独裁政権のプロパガンダとそっくりです。まあベネズエラであれば、アメリカがまったく無関係ということはないでしょうが、それがすべてということでは勿論ないわけで・・・
  1. 2014/02/23(日) 10:05:02|
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またも茶番に終わったシリア和平会議

まあ日本ではほとんど関心をもたれていませんが、やはり地球上で今もっとも重要な問題のひとつは、シリアで現在進行中の「独裁政権による自国民の虐殺」でしょう。
 ということで、JBPRESSに寄稿しました。
▽またも茶番に終わったシリア和平会議 ~アサド政権による「虐殺」の放置を黙認しただけ

 まあ「あくまでも交渉で平和的解決を!」と語るだけならラクなのですが、独裁政権には通用しないということです。
折しも国連の北朝鮮人道問題報告書が話題になっていますが、金王朝もアサド王朝も似たようなもの。独裁維持のためには非道な弾圧を続ける以外にないわけです。

 ということで、現在発売中の『軍事研究』に張猿沢粛清前後からの北朝鮮内部事情の分析記事を寄稿しました。

 また、『週刊朝日』先週号で、ソチ五輪関連でチェチェンの女性テロ・グループ「シャヒトカ」(女性殉教者)通称「黒い未亡人」について寄稿。
 また『週刊ポスト』先週号の内閣府職員変死事件関連記事で、一般的な話として対日情報工作の実情についてコメントを採用していただきました。また同事件関連では先々週にもテレビ朝日「モーニングバード」で音声コメントを採用していただきました。
  1. 2014/02/19(水) 10:59:49|
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予想どおり逆効果に終わったシリア和平交渉

 拙ブログで「断言」していたとおりの結果になっています。
▽シリア和平協議、具体的成果なく終了(CNN)

▽Nearly 1,900 dead in Syria since peace talks began: NGO(AFP)
シリア人権監視団集計。ジュネーブ2期間中、およそ1900人が死亡。うち498人以上が市民。そのうち40人が封鎖による餓死・病死。市民27人はISISと他の反政府軍との戦闘に巻き込まれて死亡。政府側戦闘員は515人が戦死。ISISとヌスラ戦線は208人戦死。ISISや政府軍との戦いでイスラム戦線などでは646人戦死。

 市民の被害の大多数は、政府軍による反体制派(自由シリア軍&イスラム戦線など)支配地域への未差別砲爆撃の犠牲者です。
 とくに北部で目立つのは、政府軍が爆撃した地域にISISが攻撃を仕掛けること。なので、一部にはアサド=ISIS共闘・密約説まで出ていますが、まあ政府側がISISを「利用」しているということでしょう。

▽反体制派地区に「たる爆弾」、90人死亡か シリア北部(CNN)

▽シリア内戦の死者、1月末時点で13万6000人超(AFP)
 昨年12月末時点の死者は13万0433人。アサド政権と反政府勢力の間の戦闘やイスラム武装勢力との戦闘で、その後の1ヵ月で6000人近くが死亡したとのことです。

 ということで、和平会議なるものが、むしろ政府軍に一般住民殺害の機会を与える結果になっていることが証明されています。
 こんなことは、多少なりともシリアという国、あるいはアサド政権というものを知る者にとっては「常識」なのですが、それでなくとも、過去のアサド政権の言動を検証すれば、客観的にもすぐにわかることです。
 実際、私の知る限り、シリア国民でジュネーブ2なんぞに期待している人は皆無に近いです。アサド政権を対等な交渉相手としているかぎり、無駄なことです。仮に停戦だの人道支援だのが合意されても、どうせアサド側は適当な理屈をつけて反故にするだろうことを、かの国では誰もが知っています。国際社会に対しては、アサド政権を封じ込める圧力だけが期待の対象ですが、これまでもずっと裏切られ続けていたので、もう誰も期待していません。
 今後の交渉再開が模索されていますが、無駄どころか逆効果となり続けるでしょう。

 和平会議の報道をみていて、気になったことをもう1点。
 ジュネーブ2が単なる政治ショーに終わった理由のひとつは、ISISが台頭した今、欧米主要国も完全に及び腰になっているということもあるわけで、それはもちろん各国の様々な思惑が交錯しているのではありますが、それでもそもそも国際社会が動けなかった最大の要因がきちんと明示されていないですね。
 これまで3年弱、国際社会には幾度も介入の機運がありましたが、それをことごとくツブしてきたのは、国連安保理で拒否権を濫用したロシアです。シリア内戦の主犯はもちろんアサド大統領ですが、それに匹敵する最大の戦犯はプーチン大統領です。
 これまで幾度も提出されていた安保理決議を、従来のようにロシア(その政策決定権はプーチン個人が握っています)が棄権してくれてさえいれば、事態はここまで悪化していません。
 反体制派の人々の誤算も、この「プーチンの安保理拒否権」にありました。政府軍に徴用された兵士も含めて、これまでの13万6000人の死者。そしてこれからさらに増加していくことが確実の多くの死に対し、プーチン大統領個人に最大級の責任があります。
 これは私だけではなく、多くのシリア国民に共通の認識です。
  1. 2014/02/03(月) 13:52:49|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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