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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

アサド政権との交渉は凶悪犯対処

現在発売中の『週刊現代』にコメントを採用していただきました。北朝鮮のサイバー部隊に関してです。

シリア問題のジュネーブ2会議で、両陣営の直接協議が難航しています。当然だと思います。アサド政権側からすると、譲歩する利益がないからです。
 アサド政権の目標は独裁体制維持です。それは反体制派の根絶と同義です。反体制派が生き残っている状況での安定などはむしろ望んでいません。良い悪いかでいえばもちろん悪ですが、アサド政権の利益ということで考えれば合理的な判断です。このような状況で和平が進むなどということはまず考えられません。アサド政権が何か妥協するとすれば、唯一、それだけ追い詰められた状況であるときだけでしょう。
 ジュネーブ2は内戦当事者の政治的な交渉の体裁ですが、それで事態は動きません。アサド政権は立て籠もった凶悪犯ですから、凶悪犯対処と同様の対策しかありません。つまり、強行突入の準備を進め、包囲網を敷き、そのうえで交渉が必要になってきます。
 振り返ると、昨年の米軍介入未遂が絶好のチャンスでした。ああいうプレッシャーのときのみ、アサド政権は譲歩します。
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  1. 2014/01/28(火) 19:04:11|
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ジュネーブ2会議と内戦現場の大きな「壁」

 ジュネーブ2(シリア和平会議)で、シリア政府と国民連合の直接交渉が始まりました。目下、ホムスへの人道物資搬入について交渉が行われています。
 もちろん実現すれば朗報ですが、こうした「ほんの一部の交渉」が動いている間は、シリア政府はフリーハンドを得たことになるので、必ず他の全土で一般住民への無差別砲爆撃を強化します。国際社会やメディアが「和平への第一歩だ」などと言っている間に、今日も明日も明後日も多くの人々が殺害され続けていきます。
 ホムスへの物資搬入を交渉している間に、ヤルムーク・キャンプをはじめ全土でライフライン封鎖を強化し、飢餓や窮乏が拡大されていきます。それがアサド政権の一貫したやり方です。
 交渉を無駄だとはいいませんが、「まず交渉の席に着くこと自体が重要だ」などという楽観論には賛成できません。アサド政権に時間的余裕を与えている面は確実に存在しますし、それこそが政権側の狙いでもあるわけです。
 少しでも人道支援の道を探ることには賛成ですが、ジュネーブ2をめぐるメディア報道などをみると、その点が置き去りにされている危惧を感じます。
  1. 2014/01/26(日) 22:00:30|
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シリア問題の基礎事項

 シリア問題でどうも日本の報道がおかしいのではないかと前々から感じていたところは、この問題のいちばん重要な基礎事項がきちんと明示されていないことでした。
 基本的な構図はそれほど複雑なことではなくて、「独裁者にノーと言った国民を、政権が殺戮」⇒「武器をとって抵抗」⇒「政府軍が住民もろとも殺戮」ということです。実に単純な話ですね。
 それを前提としたうえで、さらにそれからその他の諸々発生してきた問題、たとえば外国の介入の問題であるとか、反体制派内部の軋轢であるとか、過激派の流入の問題であるとか、そういった派生問題についても言及すればいいと思うのですが、どうも最初からそちらメインで情報が流れているので、なんとなく主従転倒した話になってしまうわけです。

 ということで、お薦めの記事をご紹介します。
▽クローズアップ2014:シリア、遠い停戦 政権・反体制派、初交渉(毎日)
 良記事です。シリア問題の基礎事項がわかりやすく解説されています。毎日新聞デジタルの契約者しかアクセスできないようですが、メンバーの方にはぜひお薦めします。

 ところで、前エントリーなのですが、私はなにもヒューマンライツ・ウォッチや「話し合いで解決を!」と主張する方々を偽善者だと非難しているわけではありません。
 より重要なのは現実であるわけですから、理想だけに思考を留めずに、リアルに有効な方策を考えたいということを問いたいだけです。
  1. 2014/01/26(日) 01:07:04|
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ヒューマン・ライツ・ウォッチのシリア提言に溜息

 ヒューマンライツ・ウォッチがシリア問題国際会議に対するステートメントを発表しました。
▽シリア:持続的平和に 正義は不可欠

 さすが調査能力の高い国際人権団体大手であり、現状認識は完璧です。100点といっていいです。
 それに対する提言も完璧です。まさに仰るとおり。そう、そのとおりに出来れば・・・。

 しかし、この提言を読んで、嘆息を禁じ得ないわけです。いったいどの国のことを言っているのかな?と。
 絵に描いた餅というか、まるで妄想ですね。実現性は皆無といっていいでしょう。こうした理想を語ることにも、何か意義があるのかもしれませんが、私にはよくわかりません。

 正義を語るのもいいですが、日々殺害され続けている人々は、これを読んでどう思うでしょうか?
 私にはこんな声ばかり聞こえてきます。
「とにかく僕らに武器をくれよ!」
 平和を語るのは容易ですが、それだけでいいのでしょうか? こんなことを書くと、また“平和主義陣営”からは「戦争を煽っている!」とか曲解されてヒステリックをな批判を浴びるのでしょうが・・・(溜息)
 愛は世界を救う? うーん、救って無い気がしますね。
(※当エントリーは、「あくまで話し合いで解決を!」と考える良識ある方々に対して問いかけています。「アサドは必要」「悪いのは反体制派」「アメリカは手を引け」と主張する一部の方々は、根本からシリアの現状が見えていないので、もうどうでもいいです)
  1. 2014/01/22(水) 15:33:40|
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「シリア政府が1万1000人処刑」は氷山の一角

▽シリア政権、1万人以上殺害か=証拠写真持ち出される-米英メディア(時事)
 こんな数字は氷山の一角でしょう。アサド派民兵による私刑を含めれば、数字は何倍にもなるはずです。

 アサド政権が「抵抗する者は容赦なく徹底的に殺害する」こと、「抵抗する者を殺害するためなら一般国民の犠牲を屁とも思わない」こと、「人々が抵抗しないように徹底的な恐怖支配を貫く」こと等々は、シリア国民なら皆、最初から知っていたことです。叛乱軍の主力は、それゆえに自己防衛としてあくまで抵抗を続けてきたわけです。

 反体制派は「国際社会の介入」と「政府軍の分裂」を期待して抵抗運動を続けてきたわけですが、「政府軍の内部統制が強固だった」ことと「国際社会が無介入だった」ことで、革命は頓挫しました。昨年夏頃からはISISの乱入でとくに北部・東部で自由シリア軍が後退を余儀なくされ、戦線が政府軍優位で推移。政府軍による非支配地域への樽型爆弾の無差別爆撃、あるいはライフライン封鎖による兵糧攻めなどで、ますます悲惨な状況になっています。

 事態がここに至れば、現在進行中の無差別殺戮を緩和・停止するためのアサド容認も選択肢かもしれませんが、その後にはポト派級の大量処刑が待っています。
 国際会議に関しては、シリア国民連合とイランの出席をめぐって駆け引きが続いていますが、アサド政権はあくまでアサド存続前提で、抵抗運動根絶を主張するだけですから、反体制派の実質的な全面降伏しか妥協点はありません。それに、国民連合は反体制派をまとめていないので、同会議が仮に開催されたとしても、実質的な前進はないでしょう。
「いったん妥協し、後から選挙」とか「とりあえず停戦し、現在の支配地域で勢力を分ける」などというのは、絵に描いた餅です。アサド政権はそれほど甘くないし、それを反体制派も国民も知っています。
 現在、軍事的にアサド政権が打倒される要素が消えた状態なので、今後の見通しとしては「アサド独裁存続で大弾圧・大量処刑」か「政府軍による無差別殺戮継続」かしかないようです。
 一方、今や抵抗運動最大のガンとなっているISISですが、情勢がどちらに向かうにせよ、中長期的にはいずれ勢力は減退に向かうでしょう。しかし、その過程で多くの犠牲者が出ることは避けられません。
 いずれにせよ、今年も「希望」はまったく見えません。
  1. 2014/01/21(火) 17:21:06|
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コメント欄停止のお知らせ

皆様
 拙ブログをご笑覧いただき、ありがとうございます。
 少々コメント欄が荒れてきたようですので、とりあえず以後、非表示設定にいたしました。投稿自体は可能ですので、管理人へご意見のある方は、これまで通りで私自身は拝読させていただきます。
(ただし、拙ブログは業務ではなく、あくまで個人の日記にすぎないものですので、個別の投稿にお返事を差し上げるということはいたしません)
 以後、拙ブログに対する公開でのご意見をご希望の方は、拙ブログはツイッターに連動させておりますので、そちらのほうでお願いいたします。当方のアカウント名「@BUNKUROI」と入れていただければ、ご意見は私自身も把握できます。
 今後とも、よろしくお願いいたします。

 黒井文太郎 拝
  1. 2014/01/17(金) 17:36:49|
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小野田少尉死去

 現在発売中の『軍事研究』で日本版NSCと特定秘密保護法について解説しています。
 また、昨年末に『週刊SPA』に掲載していただいた私のインタビュー記事が、中国共産党機関紙系『環球時報』に引用されました。が、どうも発言内容が曲解されているようで・・・まあいいですが(笑)。

 昨日、小野田寛郎元少尉が死去されました。享年91歳。ご冥福をお祈りします。
 小野田氏は「陸軍中野学校」の分校で、「遊撃戦」(ゲリラ戦)教育部門である静岡県の「二俣分校」で訓練を受けた人物です。日本軍がフィリピンを撤退する際、現地に密かに留まってゲリラ戦を行う「残置諜者」としてルバング島に潜伏しました。
 陸軍中野学校というと、旧陸軍のスパイ教育機関として知られていますが、二俣分校のほうは本校のような諜報・謀略など「秘密戦」(特務工作)の専門家養成とは違い、特殊部隊のような特殊な戦闘技術(破壊工作・宣伝工作含む)&サバイバル技術を教育する機関でした。戦後の北方領土返還運動で知られる末次一郎氏もそこの卒業生です。
 陸軍中野学校については、小生が原作を担当した下記コミックで詳しく解説しています。
▽本当はすごかった大日本帝国の諜報機関
※上記アマゾンの読者レビューに、人間関係の描写に疑問を指摘する声がありますが、ストーリーはフィクションですから、もちろん登場人物の具体的な行動には創作が含まれています。しかし、時代背景および旧軍の特務工作の内容については、現在入手し得る資料を精査しており、なるべく実際のトピックを盛り込むとともに、事実関係で破綻のないように構成しています。
 また、レビューいただいた方の根拠が関係者から聞いた話とのことですが、個別のオーラルヒストリーが必ずしも事実ということにはなりません。特務工作の分野は秘匿性が極めて高く、信頼性の高い情報が非常に少ないですが、それでも複数の情報をチェックすることで、ある程度は全体像を把握できます。
 旧軍の特務工作について、より正確な情報を知りたい方は、下記拙著をご笑覧いただければ幸いです。
▽謀略の昭和裏面史
  1. 2014/01/17(金) 16:28:55|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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