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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

もう誰も関心を示さなくなったシリア

 シリアではもちろん今も殺戮が続いているわけですが、米軍の介入が消えた時点で、予想どおり人々の関心がなくなってしまったようです。化学兵器廃棄プロセスはすでに動き出していますが、そんな茶番と現実の殺戮が同時並行で進行するという不条理劇のような状況になってきています。
 それでも当方は半分当事者なので、今後もしつこくフォローしていきます。

 明日発売の『中央公論』と『軍事研究』にシリア問題に関して寄稿しました。
 中公は「シリア内戦と化学兵器」という特集内の「そして独裁者による殺戮は続く」と題したレポートです。
 日本ではアサド政権の本質が理解されていない面が多いようなので、シリア国民の視点から、「問題は化学兵器ではなくて政府軍の無差別攻撃であること」「徹底した住民弾圧は独裁体制の必然であること」「反政府軍の主流は現地の有力者を中心に集まった自警団的部隊であること」等々を解説しました。
 同特集では他にも、久保文明氏、細谷雄一氏、池内恵氏による「アメリカが世界の警察官をやめた日」と題した座談会が必読。オバマ政権のシリア政策が主テーマですが、非常にバランスよくまとめられていて、たいへん勉強になりました。
 一方、軍研のほうは「化学兵器を国際管理下においてもアサドの殺戮が続くシリア内戦」と題したレオポートです。こちらは、アサド政権軍によるサリン使用⇒米軍の軍事介入準備⇒化学兵器管理と、この8月下旬から急展開しているシリア情勢の経緯の検証と今後の見通しを分析しています。
 ちなみに同号では、シリアとは関係ないですが、インテリジェンス関連で、阿部拓磨氏によるNSAの工作「プリズム」についての解説記事も必読です。
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  1. 2013/10/09(水) 18:36:40|
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アメリカでオスプレイ反対運動?その2

 現在発売中の『Themis』今月号で、コメントを採用していただきました。シリア問題です。
 また、本日TBS「朝ズバ」で、文字コメントを提供しました(採用されたかどうかは未確認)。こちらは日米外交防衛閣僚会合に関してです。

 その「朝ズバ」ですが、同番組で私が以前、「アメリカでオスプレイ反対運動は存在しない」と明言したことに関し、ちょっと前ですが、ツイッターにて「アメリカの活動家が、沖縄訪問時にオスプレイ反対を訴えた」とのご指摘を受けました。
 その根拠となったのが、以下のニュースです。
▽検証 動かぬ基地 vol.127 オスプレイ訓練延期させた米国女性(琉球朝日放送 2013年3月21日)
 ここに登場するのは、The Peaceful Skies Coalition(平和的な空たち連合)」の代表のキャロル・ミラーさんという方です。The Peaceful Skies Coalitionは公式HPによると、ニューメキシコ州・コロラド州での米空軍特殊作戦部隊のオスプレイとC-130輸送機による低空飛行訓練をやめさせるために設立された組織となっています。
 番組を拝見すると、ミラーさんは以下のように語っています。
「政治レベルでは彼らはオスプレイをここに配備するだろう」
「もしそれを私たちが止めることができたら、帝国の拡大を止めることを助けるだろう」
「騒音さえも、自由のための音だと言うのです」
 以上から、アメリカの活動家がオスプレイ反対を表明している、と同局は報道しています。

 ところが、ミラーさんが主導するThe Peaceful Skies Coalitionの上記のHPをみても、「オスプレイに反対」とは書かれていません。あくまで低空飛行訓練に反対しているだけです。反対の理由も、騒音や風圧による環境への悪影響ですね。オスプレイ限定でもありませんし、ましてや「オスプレイ特有の危険性」にはまったく言及されていません。
 考えられることは以下のようなことです。
▽ミラーさん個人だけが「オスプレイそのものに反対」
 どこにもいろいろな方がいますので、可能性がないわけではないです。
 ただ、同組織のSNSにこの人が書き込んでいるものなどを拝見すると、もともと反戦運動系の方で、すべての米軍の活動、すべての兵器に反対というような意識の方であることが推測されます。
 ですが、仮にそうであっても、あくまでこの方おひとりの見解であり、彼女が主導する同組織の考えではありません。アメリカにオスプレイ反対運動があるわけではないのです。
▽同局の情報操作
 地元住民や地元の環境へ配慮に欠けた米軍に対する抗議ということで、ミラーさんが沖縄で語ったことを、同局が「オスプレイ反対で連携した」と誤解し、そのように編集で恣意的に操作した可能性があります。
 たとえば、上記の3つのコメントも、それぞれ別個にトリミングされたコメントであり、文脈的に繋がっているのかどうかは、これだけではわかりません。
 まあ、最初の2つは流れとしては繋がっている可能性が高いとは思いますが、おそらくミラーさんが「地元の環境へ配慮しない米軍の横暴を止めたい」という意味で言っているものを、1本目でむりやり「オスプレイ」を強く印象付けようとしたものではないかなと推測しています。
 また、最後の「騒音さえも、自由のための音だと言うのです」のコメントも、キャプションでは「オスプレイの騒音さえも~」とされていますが、この映像では「オスプレイの~」とは言っていません。
 通常、もしも「オスプレイだから反対」、ましてや「オスプレイは危険だから反対」というのであれば、きっちり単独インタビューも撮っているわけですので、そうした明確なコメントを当然採用するはずなので、それがないということは、同局が期待するそうしたコメントがなかったということかと思います。

 要するに、アメリカには地元住民による「低空飛行訓練反対」運動はありますが、「オスプレイ反対」運動は存在しません。それを日本では沖縄の一部メディアが誤解して報じているということかと思います。
  1. 2013/10/04(金) 12:07:47|
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日英安全保障協力会議

 昨日、第1回の「日英安全保障協力会議」を拝聴して来ました。レポートは『軍事研究』に書くことになるかと思います。
PMABE_convert_20131001081615.jpg
 写真は安倍総理の基調演説。まあ一般的な話でしたが。
 それより興味深いのは英側のパネリストの面々。ポーリン・ネヴィルジョーンズ元国家安全保障・対テロ対策大臣、マーク・スタンホープ前海軍参謀長、ヨーク公アンドルー王子、リチャード・ソーンリー・ロールスロイスジャパン社長、クリスティーヌ・ザイツBAEシステムズ北東アジア社長、マイケル・クラーク王立防衛安全保障研究所長、それに何と言ってもジョン・スカーレット元MI6長官。アメリカからデニス・ブレア元国家情報長官です。

 ところで、最近拝読したもののうち、以下2つのエントリーが非常に面白かったので、勝手に紹介します。

▽63.4%(ホワイトホール61番地 ~インテリジェンスを学ぶ)
 防衛研究所の小谷賢さんのブログです。秘密保全法案に対するバランスのとれた現実的な視点で解説されています。我々メディア関係者は単純に「反対!」と叫びがちですが、こういうものは何もオール・オア・ナッシングというわけではないと私も思っています。

▽ネトウヨ・陰謀論者の肥やしとなる、自衛隊将官の陰謀論(dragonerの時事斥候)
 軍事ブロガーのdragonerさんのヤフー・ニュース版エントリーです。自衛官・元自衛官によるトンデモ陰謀論について、痛快にぶった切っています。例の田母神論文についてももちろん言及されていますが、同論文については私も当時、『軍事研究』で緩く批判させていただたことがあります。
 自衛隊のほとんどの方はきちんとされているのを私も知っていますが、たしかに困った人もたまにいますね。 

 ところで、書き忘れていましたが、先々週の9月17日、CS放送「TBSニュースバード」の「ニュースの視点」で、シリア情勢について解説しました。シリア情勢、相変わらず見通しは暗いままです。 
  1. 2013/10/01(火) 08:26:32|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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