スノーデンはなぜ逃亡し、メディアに暴露したのでしょうか?
彼はメディアに対しては、「米情報機関が米国民を監視していたから」というような意味のことを言っています。人権活動家のように、人々のプライバシーを侵害する権力が許せなかったのでしょうか?
あるいはウィキリークスのように、何でも公開すべしとの考えでしょうか?
過去、ネットでの発言は何度かあったようですが、とくにNSAのシステム管理をするようになってから、とくに目立ったネット活動もなかったようです。アノニマス的な愉快犯的ハッカー体質があれば、もっと早くに何らかのアクションをしていた気もします。
ひとつの仮説ですが、彼はITエンジニアなので、外国諜報監視法(FISA)や愛国者法に基づく監視活動の法的根拠をよく知らなかった可能性もあります。
NSAは米国内外を問わず、各種の有線無線通信をもう膨大な分量を、根こそぎ監視できるシステムを構築しています。あとはやろうとするかどうかだけですが、そこに、とくに米国民に対する通信傍受に対する上記したような各種の米国内法の縛りがあります。ただし、そこは9・11以降の立法・改正によってかなりグレーゾーンになっている部分があるわけですね。
もっとも、今回の件でも、米政府サイドはNSAの違法行為は全面否定していますし、過去の実際にテロ防止に役立っていたことを公表しています。
米国内の世論も、当初は自国民への監視、それにとくに米大手IT企業各社が協力しているということで政府批判の声が高まりましたが、いちおう合法活動であることや、テロ対策への寄与などの話から、それほど続いていません。中国へのハッキングなどの話もありましたが、これまで中国からのアメリカへのハッキングの話ばかりでしたので、米国民としては問題視する方向にはないようです。
言ってみれば、スノーデンが非難する米当局の米国民への監視活動も、既知の話です。ニュースでそれをみた米国民の多くも、そのあたりの話をよく知らなかったということかと思います。
スノーデンの考えについては、やがてさまざまなことがわかってくると思いますが、なんとなく「お騒がせ男」ということで収まっていくのではないかと思います。
もっとも、NSAサイドとしては、そのシギント・システムの技術の詳細を知っている人物だけに、外国の手に渡れば、かなり痛いことにはなります。
現在、ロシアが保護していますが、ロシアとしてもアメリカのシギント・システムのしくみを詳細に知りたいとの考えはあろうかと思います。
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2013/06/26(水) 11:50:22 |
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報道では「元CIA」という肩書きが主流ですが、前エントリーで書いたように、彼の「価値」は元NSA(民間契約なので正規局員ではないですが、実質上の要員です。高給なので、単なる下働きという立場ではありません)ということです。(海外報道では肩書き説明も、元NSAと元CIAが半々くらいですね)
なかでも最後、わずか3ヵ月でしたが、ハワイのクニア地域シギント作戦センターのシステム管理者だったという立場は大きいですね。
NSAの中心部局であるシギント本部の実働セクションが国家安全保障作戦センターですが、その中核機関である地域シギント作戦センターはテキサス州ラックランド(中南米担当)、ジョージア州フォート・ゴードン(欧州・中東担当)、ハワイ(アジア担当)の3ヵ所しかありません。
今は海底光ケーブルもハワイを経由せずに直接、米本土とアジアを直結するものが主流ですが、やはりハワイの地域シギント作戦センターがアジア全域のシギント作戦の中核であることは変わりません。
NSAのシギント作戦については、ダンカン・キャンベル、ニッキー・ハーガーやジェームズ・バムフォード、リチャード・リッチェルソン、パトリック・ラーデン・キーフらの著作や米紙の調査報道ぐらいしか表面化していないので、いずれ出すであろうスノーデンの著作は注目ですね。元CIA工作員の手記はもう何冊も出ていますが、元NSA要員のメディア暴露は他にはウイリアム・ビニーくらいしかなかったはずです(※追記 ビニーの関連で他にも数人いましたね)。(UKUSA関係では過去、英GCHQのキャサリン・ガン、カナダ通信安全保障局のマイク・フロストなどの証言があります)
2013/06/26(水) 08:34:58 |
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この人は現在30歳。もちろんベテランではないですが、全然知らないという年齢でもありません。
しかも、工作管理者ではなく、システム管理者ですから、逆にむしろ機密情報へのアクセス機会がありますね。
経歴はほぼ以下のとおり。
2004年に陸軍入隊。特殊部隊コースに入るが、訓練中の負傷で断念し、4ヶ月後に除隊。NSAメリーランド大学言語先進研究センターの警備員を経て、ITセキュリティ専門家としてCIAに入局しています。
この経緯がちょっと謎ですが、独学でそれなりに高度なIT知識はあったということでしょう。じつはスノーデンのIT知識レベルについては、その教育歴がいまひとつよくわからなのですが、レベルが低ければこうした職には就けません。彼は諜報工作要員というのではなく、技術者として採用され、その後もその腕を買われて転職を繰り返しています。
その後、2007年、ジュネーブ支局にコンピューター・ネットワークの整備保安担当として赴任。2009年に退職しています。ですから、元CIA局員ではありますが、CIAでのキャリアはあまりないと言っていいでしょう。
それよりも、彼が重要なのは、なんと言ってもNSAでの勤務歴です。まずは同年、NSAの民間人契約として、日本のNSA施設に赴任。翌2010年からは、デル社やブーズ・アレン・ハミルトン社の契約コンサルタントとしてNSAに出向。今年2月頃から、ブーズ・アレン・ハミルトン社からハワイのクニア地域シギント作戦センターでシステム管理者として勤務。今年5月に逃亡し、逃走先の香港で欧米メディアに機密情報を暴露したといった経緯です。
こうしてみると、所属は民間ですが、彼はほぼNSA要員といっていいですね。NSA正規職員であれば給与もたいしたことはないはずですが、民間契約ゆえに20代なのに一千数百万円、いいときには2000万円くらいの棒給だったそうですから、やはりそれなりに高度な技術を持っていたということですね。
前述したように、かなり広く深い部分まで知り得たかもしれないし、もしかしたら内部データを持ち出しているかもしれません。
その情報レベルがどれほどかはわかりませんが、いずれにせよ「アメリカの秘密を知る男」には変わらないわけですね。これからさらに、彼の争奪戦が荒れていきそうです。
(お知らせ)
本日発売の『週刊朝日』に、朝鮮中央テレビのフェイスブック騒動と北朝鮮の宣伝工作・心理戦について寄稿しました。
また、現在発売中の『週刊ポスト』のグラビア企画「赤坂」の「米国大使館空撮」記事で、米国大使館に関して若干の情報を提供しました。
また、昨日のTBS「朝ズバ」と本日のフジ「とくダネ」で、辛坊治郎氏ヨット遭難事件に関して、海上自衛隊の捜索・救難活動、救難飛行艇「US-2」についてなど、ひとことですがコメントを採用していただきました。
2013/06/25(火) 16:31:29 |
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現在発売中の別冊宝島『北朝鮮の本当の軍事力』に寄稿しました。(⇒
アマゾン )
核とミサイルの現状、サイバー戦能力、それと朝鮮半島+日本有事シミュレーションを担当しました。シミュレーションは当初、「在日米軍vs北朝鮮軍」というリクエストだったのですが、現実的に想定しにくいので、だんだん日米韓vs北朝鮮に進むということで思考実験してみました。
また、6月18日、来月公開の韓国映画『ベルリン・ファイル』の監督来日トークイベントのゲストに呼んでいただきました。北朝鮮の工作員、韓国情報部員、CIA、モサド、アラブ系テロ組織、ロシア人武器商人などが登場するスリリングな傑作です。
▽【公式サイト】映画『ベルリンファイル トークイベントの様子はこちら
▽「ベルリンファイル」リュ・スンワン監督大いに語る! 来日イベント実施 ところで、4月にニコ生で呼んでいただいたときの座談会(本編は会員限定)の一部が、ユーチューブにアップされていました。
全員泥酔状態という恐ろしい状況ですが、いちおうご紹介しておきます。
▽元NHK堀潤「インタビューで普天間肯定派の意見があっても、NHKで放送させてもらえなかった」 (ニコニコ生放送【会員限定】夏野剛×堀潤×樹林伸×黒井文太郎 1/3【4月17日放送】)
これでちょっと面白いなと思ったのは、私がオスプレイ問題を持ちだしたときの、夏野氏の「アメリカで、乗っている人間が生命を失うようなものを開発したらたいへんなことだ」(だから欠陥機ということは考えられないという趣旨)という発言です。
これはまさに核心をついた指摘ですね。べつに軍事技術に通じていなくても、アメリカ社会を多少知る人ならば、普通にそう考えます。といいますか、まずそう考えないほうがおかしいとさえいえます。
こうしたことにまず気づけば、「オスプレイは欠陥機で危険だ」という言説が出てきたとき、自然と「ホントかな?」と疑問を持つことになります。それでネットでちょっと調べれば、危険派言説がかなり怪しいということがわかってくるわけです。
オスプレイ問題が盛んに報じられていた頃、なにかのテレビ番組で、コメンテーターの方が「軍産複合体の利益のために米軍は欠陥機にもかかわらずオスプレイ配備を急いでいる」というような内容の解説をされていたのを偶然見て、驚いた記憶があります。アメリカで、国防当局がどこかの企業の利益のために兵士の生命を危険に晒す欠陥装備を配備するなどあり得ませんね。アメリカのメディアも国民も、そんなに甘くはありません。
こういうのを陰謀論というのですが、アメリカのメディアと世論の影響力を多少とも知っていれば、こうした言説が怪しいということはすぐ気づくと思うのですが・・・。
安全保障以外の分野でも、陰謀論的な言説は世にあふれていますが、おかしな言説を「おかしい」と気づく着眼点は無数にあると思います。
2013/06/23(日) 16:15:04 |
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G8の主要テーマに浮上したシリア問題ですが、「予定どおり」G7対ロシア、で物別れに終わりました。プーチンはここまで犯罪幇助してしまった以上、何が何でも手を引くことはないでしょう。
この件で、日本の報道各社もいろいろ報じていました。総じてアサド政権の暴力を止める必要性については伝えていましたが、反体制派への武器許与に対して、内戦拡大につながる可能性への懸念にも言及していましたね。
国連事務総長の政治的解決路線もそうですが、シリアの人々は、もうそんなタテマエにはうんざりしています。各国政府が「面倒だから」軍事介入したくないという本音は理解できますが、「平和的な政治的解決優先」的な感覚は、シリアで人々が日々直面している現実とはあまりに乖離しすぎていて目眩がしそうです。
何度も当ブログでも書いていますが、アサド政権はヒズボラやイラン革命防衛隊の援軍も得て、歯向かう者は徹底的に弾圧する気でいます。反体制派がアサド排除にこだわるのは、アサド政権の暴力的本質を知っているからです。
反体制派への武器供与が不可であれば、多国籍軍の介入による強制的な平和執行しか道はありません。でも、多国籍軍介入をする気がないのであれば、反体制派への武器供与しか道はありません。
ロシアと話しても時間の無駄ですし、タテマエの話し合いに費やす時間自体が、躊躇なくアサド政権を支援するイランやロシアに有利に働いています。その間、犠牲になっているのはシリアの人々です。
2013/06/19(水) 10:12:26 |
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本日、日本語訳がリリースされたヒューマンライツ・ウォッチのレポートです。
▽シリア:学校への攻撃 生徒たちが危険に直面 ~子どもに対する尋問や逮捕 (June 6)
聞き取り調査に基づき、具体的事例として挙げられているのは、以下。
シリア政府側
▽教師と国の治安関係当局者が、反政府活動容疑をかけられた生徒たちを尋問したり暴行を加えた
▽治安部隊と親政府民兵組織シャビーハが、生徒たちの平和的抗議デモを襲撃
▽軍事目的に利用されていなかった学校施設を政府軍が砲撃
▽学校を軍事基地や兵舎、拘禁施設、狙撃拠点として使用
反体制派側
▽学校を軍事基地や兵舎、拘禁施設、狙撃拠点として使用
シリア情報をウォッチしていれば、上記は既知の話ですが、「双方に問題がある」論に拘泥している人がいるようなので、第三者の調査報告をご紹介。
たしかに「双方に問題」はありますが、その内容はまあ、こんなものです。
2013/06/18(火) 20:32:23 |
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▽シリア:米「化学兵器使用」と反体制派に軍事支援決定 (毎日)
フランス、イギリスに続き、アメリカのインテリジェンスもやっとアサド軍の化学兵器使用を断定。反体制派(当然ですが、イスラム勢力は除外されます。いちいち書くの面倒)への軍事支援開始を決めました。これで米英仏の軍事支援が決定です。
あと問題は、それがどれだけの軍事支援になるかということですが、おそらくMANPADSを除く携行武器とその弾薬になるのではないかと思われます。MANPADSがないと空爆は続きますので、本来であれば飛行禁止空域設置が望ましいのですが、現状では各国もNATOも否定していますから、今のところ望み薄です。
今後、この軍事支援を受けて反体制派は攻勢に出ますが、空爆が続くということは、民間人の犠牲はまだまだ続くということに、残念ながらなりそうです。
2013/06/14(金) 10:38:14 |
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下の記事は、今もっとも懸念される宗派抗争の例といえます。
▽衝突でシーア派60人死亡=シリア (時事)
スンニ派イスラム過激派系反政府軍の拠点に、隣接するシーア派の村の民兵が奇襲をかけて2人殺害。反政府軍が報復として村を襲撃し、壮絶なバトルで反政府側戦闘員10人死亡、シーア派側戦闘員が60人死亡、という事件です。60人の死亡は多いので、もしかしたら処刑が行われた可能性がありますが、まだ詳細は不明です。もしそうであれば、反政府側の戦争犯罪になります。
(ただし、戦争の現場というのは、敵戦闘員への報復処刑と、一般住民の虐殺は同等には扱われません。私自身は反政府軍支持ですが(正確には「イスラム過激派以外で強圧的言動を抑制している世俗派系反政府軍」。いちいち書くの面倒臭いなあ)、たとえば反政府軍が非武装の一般住民を虐殺することと、政府軍が反政府軍捕虜を処刑することでは、当然ですが前者の犯罪度が高いと考えます。国際法違反の捕虜処刑がいいわけではありませんが、武器をとって戦うとはそういうことで、戦場の常識です)
ところで、この件の発端はシーア派民兵側の奇襲ですが、村の民兵の総意ではない奇襲だった可能性もあります。これはあくまで仮定ですが、宗派抗争が危険なのは、一部の跳ね返りの暴走がコミュニティ全体の危機に直結することです。
コミュニティの危機となれば、生存のために誰もが戦闘に参加せざるを得なくなります。宗派抗争が怖いのは、まさにその点です。
2013/06/13(木) 17:52:45 |
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▽電気ショックから人間の盾まで…シリアで子供の拷問横行 国連報告書 (共同)
ここ数日の当ブログへのコメントで、親アサドないし反・反政府の考えの方は、「反政府派『も』ひどいことをしている」に拘泥しているらしいことがわかりました。
それは国際ニュースで報道されるように、戦争なので当然あります。しかし、規模と程度、組織的な関与のレベルが全然違うことに気づかないと、全体像が見えなくなるわけですね。都合のよい一部の情報だけを繋ぎあわせて分析を誤るチェリー・ピッキングの典型例といえるでしょう。
現実は、上記記事のとおり。反政府軍側の戦争犯罪とは比較にならないほど政府軍の戦争犯罪が横行しています。あまりに日常過ぎて、もはやなかなかニュースにならないくらいですね。
民衆蜂起がスタートし、政府軍からの住民への一方的弾圧が開始されてから半年後、ようやく反政府軍が徐々に誕生し、それからさらに1年後くらいから、反政府軍の中の一部に(とくに北部地域の一部)に問題があるグループが出てきたり、イスラム過激派系グループの勢力伸長が見られるようになりました。
その後、アサド政権が宗派対立を扇動したこともあって、この半年ぐらい、政府側・反政府側双方の一部に、他宗派への宗派ヘイト傾向が出てくるようになりました。
その間、反政府軍に押されていた政府軍は住民ごと殺戮する砲爆撃をエスカレートさせ、政府側民兵に住民殺戮をさせてきました。つい先日には、人が足りなくなったのでヒズボラを雇い、宗派抗争を決定的にさせました。
大雑把に言えば、現在はそんな状況です。
この間、アサド政権側はどう宣伝していたかというと、「反政府デモは外国に扇動された一部のテロリスト」「外国の陰謀でテロリストが武装化した」「政府軍はテロリストから国民を守っている」・・・。
アサド政権の人でさえ、立場上そう言ってはいても、本音では信じていないと思いますが。
(追記)
たとえば戦争犯罪事例の数の差というのが、いまひとつピンと来ない方もいらっしゃると思うので一例を挙げると、この2年間の反政府側による戦争犯罪の「具体例」を100件挙げるのは難しいけれども、政府側の事例なら1週間も要らないと、このくらいのレベルの差です。
2013/06/13(木) 14:00:15 |
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なんですか、これ?
▽NATO、「シリア国民の70%がアサド政権を支持」 (イラン・ラジオ日本語版)
「シリアの国営サナ通信によりますと~」だそう。まあ正直でよろしい。
で、SANA記事はこちら
▽NATO Study: 70% of Syrians Support Syrian State and President al-Assad (シリア・アラブ通信)
こちらは「World Tribuneによると~」だそう。
ちなみに、ヒズボラのテレビ局でも「World Tribuneによると~」ですね。
▽NATO Study: Assad Winning War, 70% of Syrians Support Him (アル・マナール)
で、World Tribuneではこちら。
▽NATO data: Assad winning the war for Syrians’ hearts and minds (ワールド・トリビューン)
こちらは「Middle East Newslineによると~」だそう。
で、Middle East Newslineをみると・・・それらしき記事がありましたが、有料なのでスルー。
ちなみに、この話の出処であるMiddle East Newslineですが・・・よくわかりませんが、中東関連の軍事・防衛産業業界の小さな情報企業みたいです。
ちなみに、ワールド・トリビューンはSGI(創価学会インターナショナル)発行の新聞だそうです。
で、ちなみに欧米・アラブ圏の主要メディアはどこもこのネタをスルー。
以上、幻のNATO報告でした・・(脱力)
2013/06/12(水) 17:09:43 |
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シリア問題で日本の「反・反体制派」の方から再度ご意見をいただきました。
私の情報分析が認められないとのことで、それはべつに構わないのですが、この件での反体制派情報ソースへの疑問についてご指摘があったので、簡潔に。
以前も書きましたが、政府側、反体制派ともに偽情報、誤情報、誇張情報はあります。ただし、これだけ情報が現場からダイレクトに流出する時代になると、そうしたものは全体的には淘汰されます。ある勢力がユーチューブとSNSを大規模に偽装し、ありもしない「現実」を偽装することは、理論上不可能ではないですが、現実には無理です。
とくに恣意的な偽装が困難な現場映像は証拠性が非常に高く、その流出量の圧倒的な差が決定的です。つまり、シリアの現実というのは、ユーチューブ映像の山を丹念に検討し、それに関連するSNSの声の山を検証すれば、ほぼわかることです。シリアの場合、ユーチューブと関連SNSでたいていの事実は表面化されます。反体制派サイドでも問題点はほぼ露呈しています。
(ちなみに、私は断固、反体制派支持ですが、とくに最近は「反体制派はすべて支持」などでないことはこれまでも書いています。ただし、アサド政権の犯罪に比べれば、規模的に圧倒的に枝葉レベルですし、比較的小さな件をいちいち書かないのは、単に比較的小さなことだからです)
前エントリーで、「自身の人脈」「報道」「ユーチューブやSNS」が私の情報ソースと書きました。それらを「総合的に分析する」と書いていますが、それだけです。
上記「報道」の中には、アル・ジャジーラやアル・アラビーヤも当然、ワン・オブ・ゼムに含まれます。SANAやRT、プレスTV、المنارなんかも見ます。とくにジャジーラの現地報告は重要なソースと考えています。もちろんワン・オブ・ゼムですが。
あと私の場合は、やはり基本には、自分の経験によるアサド政権に対する厳しい見方があります。シリアに居住したことはありませんが、かれこれ20年間、かの国に私の第二の「実家」があったわけで、それなりに恐怖支配の実態を見てきました。どなたかが「シリア人の知人は全員アサド支持」と書かれていましたが、アサド政権に近い人は厳しい相互監視下にあるので、外国人にはそう言うしかない立場にあります。
このあたりの主観の違いは、第三者からみれば、私の見方もワン・オブ・ゼムでしかないですが、あとは発言者のレベル評価で判断してもらうしかないですね。まあ、私ごときの海外取材経験値や、情報収集・分析の訓練度などたいしたものではないですが。
正直、「アサド政権と反体制派はどちらが支持されているのか?」といった議論はあまり関心ありません。
実際のところ、「国民の大多数は反アサド。ただし反体制派にもいろいろあって、最近は殺し合いレベルが極度に悪化したため、宗派ヘイト傾向の一部の過激グループが増殖中」です。これは私が思い込みで書いていることではなく、国際社会、少なくとも欧米やアラブ圏の報道・世論の大勢です。欧米メディアは嘘ばかり、とは私は考えていません。
それよりも、それを前提として考えるべきなのが、「では、どうやって殺戮を止められるか?」ということで、たとえば、「反体制派(当然、自由シリア軍主流派)を軍事的に強化させて政変を早めるのがベターなのか?」「外国軍が大々的に軍事介入しないと収まらないのか?」「それとも、独裁政権存続容認での勢力棲み分けが現実的なのか?」「あるいは独裁政権存続容認で反体制活動家の国外亡命と国内での報復弾圧抑止に国際社会の努力を集中すべきなのか?」といった議論が重要かと思っています。
私は上記のうち、「反体制派の軍事的強化」支持なのですが、そこはいろいろ議論のあるところと思っています。
ところで、私は反体制派のデモ仕掛け人系の古参人脈とコンタクトしていますが、たしかに彼らには2つの大きな誤算がありました。
ひとつは、非武装デモで政権内部からもっと大掛かりな離反が即座に起きなかったこと。これはアサド政権の暴力装置内部の恐怖支配の徹底が上回りました。後にかなり広範な離反が起きていますが、遅すぎました。
もうひとつは、非武装デモへの弾圧を受けて、国際社会が助けてくれなかったこと。リビアとシリアの差は、まさにこの点で、その意味では、反体制派の大勢は、最悪の戦争犯罪人はバシャールと並んで、国連安保理決議をことごとく妨害したロシアのプーチンだと考えています。
この2つの誤算から、状況は泥沼化し、今、彼らがもっとも恐れていた宗派抗争の局面になりつつあります。とくに、イランやヒズボラの直接介入によって、反体制派とシーア派住民との抗争が激化することが避けられない状況です。
シリアの場合、表だって話されることはあまりなかったのですが、本音ベースでの私の印象では、スンニ派は比較的オープンなアラウィ派やキリスト教徒より、独特のエスニック集団であるシーア派に対する不信感が水面下に根強くあったような気がします(あと、クルド人に対してもですが)。
このあたりは、アラブ世界に共通のいわば宗派差別に近い感覚ですが、その被差別意識をシーア派側も感じているはずで、いまやシリア各地で暗躍中のイラン人部隊やヒズボラに彼らが合流すると、シーア派敵視のスンニ派過激派が対抗し、イラク化というコースが待っています。
これをいかに防ぐかが喫緊の課題になっています。
2013/06/12(水) 13:22:08 |
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前エントリーに数人の方から異論&批判をいただきました。シリア問題に対する私の立場は何度も書いていますので繰り返しませんが、外国人が「親アサド政権派」「親反体制派」「どちらも批判派」のどれ寄りの視点になるかは、ほぼ以下の2つの観点に左右されるのではないかと思います。
①「政府と反体制派 どちらが国民に支持されているのか?」
②「反体制派もひどいことをやっているのではないか?」
①に関しては、私は、政府支持派はきわめて限られた支配層とそのオコボレにあずかっている層に限定されていると認識しています。数値的な統計はありませんが、まあせいぜい2割くらいではないかなと見ています。うち半分以上は、もともと積極的支持派というわけではなく、宗派対立化で自己防衛のために政府支持に傾いていった層と思っています。
問題はそれ以外の国民ですが、ほとんどは心情的に反アサドと考えています。アサドは政権維持のために国民を大量虐殺していますので、そんなアサドを支持する声が、積極支持派以外から沸き上がってきたようなことは、どんなソースを漁ってもまず見当たりません。
ただし、反政府派が必ずしも「すべての反体制派を支持」ということではありません。反体制派にもさまざまいます。ヌスラ戦線に対する現地の恐怖心や警戒感の声を、私はかなり早い段階で当ブログで紹介していますし、とくに北部エリアで自由シリア軍系のゴロツキ集団が一部存在することも書いています。どこの戦争でも、戦場とはそういう場所です。
問題はその比率で、親アサド派の方には、「反体制派はテロリスト」に見えるようですが、私の見立てではほんの一部です。政府系メディアが誇張して喧伝するので、そればかり見ている人にはそう見えるということなのでしょう。
国民の中でも、もちろん「すべての反体制派を支持」などはそんなにいません。「ちゃんとした反体制派なら支持したい」という層がいちばん多いのだろうと推測しています。
私の情報ソースは、個人的な人脈ルート、他の報道、ネット情報(SNSやユーチューブ)の3種類で、それらを総合的に分析して判断しています。親アサド派の方は、アサド政権側人脈にだけ情報ルートがあるか、シリア政府系メディアあるいはロシアやイランのメディア、あるいはそれらを情報源にした他の報道・報告・ネット情報に情報源が偏っているかのいずれかでしょう。
「反体制派もひどい」ということに関して言えば、反体制派の一部に戦争犯罪に手を染めるグループはいますが、大半はそうではありません。たとえば本日の少年処刑のニュースに、反体制派のSNSが賛美の声で埋められれば私も見方を変えますが、そういうことにはなっていません。
匿名の方のコメントにありましたように、国連の調査委員会が「どちらにも戦争犯罪はあるが、政府側が圧倒的にひどい」と報告していますが、そのとおりかと思います。それで国際社会(ロシアとイラン除く)の主流は、「イスラム過激派やゴロツキでない反体制派を支援」という方向を模索していますが、それが世界の標準的なスタンスです。
それでもアサド支持という方には何も言う気もないですが、客観分析的な「どちらにも問題はある」の視点に関して、それで一歩引いた立場と私が一線を画しているのは、それはやはり私が半分当事者であるからだろうと思います。
なにより今、進行している殺戮を止めるには、タテマエの形式よりも「イスラム過激派やゴロツキでない反体制派を支援」することが最重要だと考えているからです。
シリアでは当初、多くの国民が恐怖支配の中、勇気をもってアサド打倒の声を上げました。サウジやカタールは関係なく、自分たちのために声を上げたわけです。
ところが、それを政権が銃弾で圧殺します。そうして長い弾圧の月日の後、人々は身を守るために武器をとりました。ごく一部にサウジやカタールから資金が出ていますが、大半の反政府軍は政府軍から鹵獲した武器に頼っています。
私はそんな反体制派の一部と最初からコンタクトがありますが、彼らは当初から非暴力闘争に賭けていて、武力レジスタンスを「逆効果だ」として抑えてきました。が、政権の弾圧の苛烈さに「武力レジスタンスやむなし」に立場を変えていきました。他に道がなかったからです。
私はそんな彼らと情報の認識をほぼ共有しています。私はかねて当ブログで反体制派支持である理由を説明してきましたが、シリアには同じ情報認識の人がたくさんいます。シリアでは私はとくに変わった立場ということではありません。
ただ、最近になって宗派抗争色が顕著に強まり(それもそもそもはアサド側の仕掛けですが)、反政府軍の一部、とくにスンニ派イスラム過激派系のなかに、他宗派に対する宗派ヘイト暴力が生じていることには、強い懸念を感じています(このこともすでに書いています)。反体制派の多くも、同じ危機感をもってます。
アサド軍を撃退するためにはどんな勢力の力も必要だという現実と、この危機感とのギャップに関しては、反体制派内にもさまざまな議論があります。
2013/06/11(火) 21:37:22 |
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▽米政府、シリア反体制派への武器供与について今週にも決定へ (ロイター)
とにかく急いでほしいものです。
ところで、下記のようなニュースが。
▽G8でシリア反政府勢力への支援表明へ (NHK)
シリアの問題は、あまり日本の国益とは関係がないですが、米英仏が反体制派への武器供与に乗り出す(まだ全面的ではないでしょうが)のに合わせて、日本政府も反体制派に自動車や発電機などを支給するようです。
こうしたことで重要なのは、米英仏だけが突出する印象を避けることです。日本もこの問題では米英仏の側に立つことを鮮明にし、他の国々も同調しやすい環境を作り、ロシアとイランをより孤立化させることが必要です。
実は日本はシリアと国益上の繋がりが弱く、逆に足枷が少ないことから、日本政府は革命初期から反アサドを鮮明にし、珍しく政治的な態度を明確にしてきました。基本的にはアメリカに同調したということですが、私自身は人道的観点から、全面的に日本政府のこうした姿勢を高く評価しています。
上記NHK報道では、前述したように自動車や発電機を支給するようです。使えないものを送ったりしないように、現地のニーズをよく把握し、現地で世俗派地元反体制グループに確実に届けられるようにして欲しいものです(あと、どうせならガソリン、灯油、プロパンガスも大量に)。
まあ内戦中で日本大使館も機能していませんから、支援ルートはアメリカにお任せということになるとは思いますが、いい機会でもあるので、外務省と自衛隊から腕利きを現地に送り込んでみたらいいと思いますね。外務省からはアラビストの若手ノンキャリ。自衛隊は現地情報隊と特殊作戦群の幹部がいいと個人的には思うのですが。
(追記)
上記のNHKニュースでは「自動車や発電機」などの供与を検討とのことだったのですが、結局、軍事転用されない医療分野の支援になるそうです。
もちろんそちらも喫緊に必要なきわめて重要なもので、たいへん良きことだとは思うのですが、日本国の意思表示としては弱まった感が否めず、少々残念です。
2013/06/11(火) 11:02:46 |
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▽米情報機関のネット監視報道…情報源は元CIA (読売)
既知の話と思っていたのですが、アメリカでも問題になっています。
情報源の元CIA職員ですが、最近まで民間企業職員の身分でNSAハワイ事務所に勤務していたそうです。ハワイであれば、標的は主に中国、東アジア、東南アジアでしょう。主回線は日本経由ですし、当然、日本も監視対象です。
報道されているところによれば、米通信サービス企業は、パトリオット法にもとづく監視要請に応えて対応していたようです。それ自体は既知の話なのですが、どうやらNSAの監視計画「プリズム」は、情報収集・分析ソフトの画期的進歩によって、収集・分析の幅を大幅に広げているようです。
2013/06/11(火) 03:29:40 |
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昨日のエントリーにコメントをいただきました。シリア内戦の今後の犠牲者数予測について、政府側、反政府側どちらが勝利したほうが結果的に少なく済むのかといった主旨だったのですが、私の考えはほぼ以下になります。本来ならもう少し緻密に論を進めたいのですが、余裕がないので大雑把に書きます。
まず、欧米の大規模軍事支援で反政府軍が勝利した場合、短期間戦闘の犠牲者が相当数、出ます。アサド軍は敗北すれば抵抗はほぼ終わり。残党がゲリラ的抵抗を続ける可能性は非常に小さいでしょう。
その後の反アサド勢力による報復や内紛に関しては未知数で、大小どちらにも振れる可能性がありますが、動機は「復讐」だけなので、小に留めることは充分可能です。反政府側の勢力図がどうなるかなどの変数があるので予想は難しいですが、シーア派やアラウィ派への大弾圧に必ずなるというのは想像にすぎません。仮に一部で衝突が発生しても、少なくとも新体制で主導権を握る可能性が高い自由シリア軍の主流派が、民族ヘイトの大虐殺にはしることは考えられません。
逆に、政府軍が反体制派を殲滅する場合ですが、戦闘の過程で犠牲者は極大になります。抵抗のモチベーションが違いますから、前述した逆パターンより戦死者は増えますし、政府軍は一般住民への攻撃を躊躇しませんので、民間人の犠牲者はケタ違いに増えます。
また、政府側勝利後ですが、反体制派狩りが徹底的に行なわれます。独裁は抵抗を殲滅しないと存続できない性質のものなので、これは徹底的に行なわれます。そして、反体制派に加わった国民は膨大な数になりますから、膨大な数の国民が弾圧の対象となります。アサド政権の先代からの実績を鑑みれば、拘束・拷問で済めばまだいいほうで、多数が処刑となる可能性が高いでしょう。
さらに、政府軍が勝利しても、反体制派のゲリラ戦はずっと続きますので、双方に犠牲者がカウントされ続けていくことになります。いつまで続くかわかりません。おそらくずっと続きます。結果、たいへんな数の人命が失われます。
最後に、このまま国際社会が放置(私は、平和的解決模索などはこの放置と同義と考えています)した場合ですが、政府側も反政府側もどちらも引きませんから、犠牲は日々カウントされ続けるということになります。
そして、その後は「このまま内戦継続」「政府側勝利」「反政府側勝利」のいずれかしかありません。後二者の場合は上記した道で、前者の場合は解決がどんどん後に延びるだけです。
以上のことから、シリア内戦における犠牲者総数は①現状維持 ②政府軍勝利 ③反政府軍勝利、の順になることが予想されます。
2013/06/07(金) 16:02:20 |
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北朝鮮問題で日本ではすっかり核ミサイルの話が消え、拉致問題一色な感じです。拉致問題はむろん最重要問題のひとつであり、全力で対処すべきものですが、今のタイミングで北が仕掛けているのは、以前書いたように核ミサイル問題からの争点外しの工作と思われますので、そこは自覚して対応すべきと思います。
北朝鮮は韓国へも似たような争点外しをやっていますね。
▽北朝鮮、韓国側に協議提案 工業団地の再開など (CNN日本語サイト)
▽コメント北朝鮮、南北当局会談を提案 韓国、受け入れ表明 (産経)
先月中国を訪問した崔竜海が6者協議の再開の意向を匂わせたのも、同様でしょう。
ですが、こうしたニュースに隠れた本丸はこちらです。
▽北朝鮮、来月にも核施設を再稼働か—衛星写真から分析 (ウォールストリートジャーナル日本版)
これに対して韓国国防部報道官は「もう少し時間はかかりそう」との見解を公表していますが、いずれにせよ北朝鮮は着々と核戦力増強に向けて動いています。
ところで、中国との尖閣問題でも、したたかな戦略・戦術を要求される局面です。
▽尖閣棚上げ論で中国、関係打開へ揺さぶり 野中氏の「角栄から棚上げと聞いた」発言をめぐって騒ぎになっていますね。公式にはそういうことではないのでしょうが、当時は事実上の棚上げ(でも実効支配は日本側)ということでしょう。
ということで、にわかに「中国は棚上げ継続を望んでいる」かのような見方も出てきていますが、甘いと思います。
▽中国監視船2隻、尖閣沖の接続水域を航行 (読売)
2013/06/06(木) 16:38:19 |
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アメリカとロシアが根回ししていたシリア対話国際会議ですが、6月中の開催予定が流れました。
これについて報道をみていると「反体制派が内紛していて、参加する代表すら決まらないから」というような話になっているものが多いのですが、少し違います。
違いますというか、反体制派が内紛しているのはそのとおりなのですが、それだけが問題ではありません。反体制派の対外政治活動家はいわゆる海外組が多く、さまざまな主張がそれぞれありますが、主流派は「アサド退陣」が総意です。国内の反政府軍指導者も各地区革命委員会指導部もほとんどそうです。
アサド退陣を前提にしない対話は、単なるアサド側の時間稼ぎと見られています。中にはアサドと交渉もアリという考えの反体制派もいますが、そんな大勢と乖離した人が反体制派代表として参加しても、まったく茶番でしかないわけです。
あるいは、「アサド退陣」を主張して対話に臨んでも、あちらは呑むわけはないですから、対話努力のポーズという無駄なセレモニーに終わるのは必至であり、しかもその間にも人々は殺され続けます。これまで繰り返されてきた無駄な時間がまた繰り返されるだけです。
平和的解決を目指す努力と言うと聞こえはいいですし、なんとなく人道的なニュアンスがありそうに見えますが、逆です。
英仏が早急に武器を自由シリア軍に供給することが、戦闘激化で一時的な犠牲者増加を誘引しますが、それでも平和への唯一の道だと思っています。一時的でも犠牲者を増やすのはダメという意見もあるかと思いますが、それをしないで増え続ける犠牲者は構わないのでしょうか。
あるいは、政府軍が圧勝し、叛乱軍を駆逐すれば、それも平和です。ですが、それで大弾圧の犠牲者が大量発生しますね。独裁政権が反乱分子を恩赦するなどはあり得ません。
あるいは、アサド存続で民主化・・・するわけがないことは拙ブログで再三指摘してきたとおり。結局、大弾圧になります。
反体制派がアサド退陣に頑ななのは、こうしたことを知っているからです。互いに歩み寄るのが対話という考えは、独裁者の国では通用しません。
徐々に宗派対立の様相を呈してきたシリア内戦について、ボスニア戦争との類似性を指摘する声が報道でも増えてきています。私はボスニアを数度取材していますが、独裁構造か否かは決定的な違いです。
ボスニア戦争は独裁vs抵抗の戦いではありません。最初から民族抗争の構図です。そこは対話⇒和平の道があるわけです。
シリアは違います。リビアと同じですね。解決は武力による独裁打倒しかないです。その後の問題はもちろん生じますが、とにかく目の前の殺戮を止めるのが先決です。
ところでリビアといえば、少し前のエントリーでコメント欄にも書いたのですが、リビアとシリアの最大の違いは、NATOの軍事介入の有無です。NATOの介入に否定的な意見もあるかもしれませんが、カダフィ軍がベンガジを落とそうというときにNATOが介入して勢力を逆転させなければ、大弾圧と抵抗運動が続き、今のシリアのようなひどい状況になっていたでしょう。
ときどき「NATOが介入したせいで、リビアは今のようなひどい状況になった」との見解を散見しますが、前述したシリアの武器供与の話と同じで、そうしないと生じるマイナス要素のほうが甚大だということです。
2013/06/06(木) 15:55:27 |
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▽ケネディ暗殺本の真実:陰謀説唱えるものが良く売れる (ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)
だそうです。
ケネディ暗殺だけではないですね。日本でも、ナンデモ陰謀論のトンデモ本のほうが市場があるようです。
拙著の中でも、アンチ陰謀論の陰謀本という線で書いた『謀略の昭和裏面史』がやはりセールス面ではもっとも好成績でした。
いっそ陰謀論サイドになっちゃえばラクなのでしょうが・・・うーん、やっぱ無理。
2013/06/05(水) 11:54:14 |
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▽シリア政府のサリン使用に疑いなし、あらゆる選択肢検討=仏外務省 (ロイター)
ということになりました。
ここまでは予想どおり。アサド政権の非人道ぶりを知っている人間にとっては、驚くこともない当然の話です。
問題はこの先で、英仏と米は何をやってくれるのかということですね。オバマ大統領は化学兵器使用をレッドラインと言ってましたが、今はほとんど知らんぷりです。
もっとも、はるか遠くの無関係な日本の国民としては、英仏や米に文句を言えた立場でもないので、まったく無力なのが残念です。
2013/06/05(水) 11:34:07 |
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新刊の『東アジア軍事情勢パーフェクトガイド』(学研・歴史群像シリーズ)で、北朝鮮軍の項および中国軍の一部について寄稿しました。(
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このテのムックは出版業界でも玉石混交ですが、こちらはさすが歴群さんだけあって、編集担当の方の熱意がこもったしっかりした内容になっています。
他の執筆陣も、井上孝司氏、岡部いさく氏、河津幸英氏、北村淳氏、小泉悠氏、白石光氏、奥村俊一氏、福好昌治氏、藤井非三四氏と錚々たる面々です(他に小川和久氏がインタビューで登場)。
と、ふと気づいたのですが、私含めて10人の執筆者のうち7人もが『軍事研究』の常連執筆陣ですね(河津編集長も)。いろいろ参考になる記事が多く、お薦めです。
ところで昨夜、某原稿をなんとかやっつけたのが午前3時過ぎ。それから朝ナマをチラ見したら、古庄幸一・元海幕長、火箱芳文・元陸幕長、森本元防衛相が揃い踏み。せっかくこれだけの重鎮が揃っているのだから、国防問題のリアルな話をもっと聞きたかったのですが、他のゲストの先生方が司会者含めてなんだか既視感たっぷりの神学論争でちょっと・・・。非常にもったいないと思います。左右論客の口喧嘩ショーはもうお腹いっぱいと感じるのは私だけではないと思うのですが・・・。
2013/06/01(土) 11:34:10 |
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福島県人として朗報。
▽被ばく量最大10分1に=「迅速な避難」と評価-福島原発事故で国連科学委 (時事)
曰く「住民が被ばくした放射線量は低く、『これまで健康に影響していない。将来的にも影響しないだろう』との見解をまとめた」だそうです。
ということで、被曝に関しては問題ナシです。
ちなみに、私は昨年の国会事故調の最終報告書の住民避難・被害のパートの編集にちょっと関わったりしたので、多少は現地の被害状況を知っていますが、あの報告書はそれこそ「問題があれば全部指摘する」との方針で取り組まれたもので、それでも巷間、雑誌やネット、一部新聞で流布されていた放射能被害の風評のほとんどが書き込まれませんでした。
つまり、国会事故調のたいへん優秀なスタッフ集団が強力な権限と豊富な予算で徹底的な調査をしたところ、それらのほとんどが事実ではないと否定されたわけですね。
国会事故調の報告書については、菅直人政権の誤謬の部分ばかりが強調され、反原発派側の文書のように誤解されていますが、少なくとも住民避難・被害のパートを熟読していただければ、放射能風評のほとんどがいかにいい加減なものかが裏読みできます。国会事故調の立場上、「問題はない」という書き方はされてませんが。
(※私自身は事故調編集室の単なる小間使いのような立場で、調査・分析・評価には一切関わっておりません)。
2013/06/01(土) 10:46:48 |
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