ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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5月17日・講演のお知らせ

 お世話になっている日新報道の敏腕編集者・倉内慎哉さんが主宰する講演会(勉強会)にて、来たる5月17日(金)、講師役を仰せつかりました。
 どなたでも熱烈大歓迎ですので、ぜひお越しください。

「サムライの会」という名称ですが、べつに右翼の集まりではありません(笑)。今は月例会ですが、以前は隔月だったので「西向く侍の会」という名前にしたのが発端と聞いています。毎月、講師を呼んでそれぞれのテーマで語り合う感じです。

 今回、北朝鮮問題をテーマにしました。誰も金正恩の考えを知りませんから、この問題は100人いれば100通りの「推測」があると思いますので、質疑の時間をたっぷりとって、できればいろいろ議論できればなと考えています。
 拙ブログでも同テーマであれこれ書き散らしていますが、「黒井の考え方は間違っている!」という方、ぜひご参加をお願いいたします。
 事前予約制ではないので、直接会場においでいただければ幸いです。

 回覧いただいた案内文を以下に貼ります。

サムライの会・第94回例会

軍事アナリストの黒井文太郎氏をお招きします。北朝鮮による挑発的な言動が各国の緊張を高めています。我々はこの状況をどのように判断すればよいのでしょうか?情報分析が専門の黒井氏に、北朝鮮情報の見方を解説していただきます。

講師:黒井文太郎(くろい・ぶんたろう)氏
1963年、福島県生まれ。週刊誌編集者、月刊『軍事研究』解説記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経てジャーナリストに。軍事インテリジェンスを専門とする。主に軍事専門誌や月刊誌・週刊誌で旧陸軍特務機関、CIAやKGBの機密資料分析、中国や北朝鮮の対日工作、自衛隊非公然部隊などに関する調査記事を発表している。著書に『北朝鮮に備える軍事学』、『日本の情報機関』(講談社)、『ビンラディン抹殺指令』(洋泉社)、編著書に『戦後秘史インテリジェンス』(大和書房)、コミック原作に『大日本帝国 満州特務機関』『大日本帝国 実録 陸軍中野学校』(扶桑社)などがある。


演題:「北朝鮮情報をどう読むか」

日時:5月17日(金)午後6時半~

会費:3000円(軽食つき)

場所:「ル・パン」 港区麻布台1-11-2星野ビル2階 (東京メトロ神谷町駅下車1番出口、東京タワー方面徒歩5分、飯倉交差点角 螺旋階段昇る)
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  1. 2013/04/30(火) 10:08:30|
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北方領土交渉で進展なし

▽プーチン「領土問題解決に心からの意欲を持っている」(ボイス・オブ・ロシア)
 日本は甘いな・・・と言わざるを得ません。
 プーチン氏の言ったことは、「相互に受け入れ可能な条件のもとでこの問題を解決したいと心から願っている」ですね。返還の意思などどこにもありません。

 日露交渉では常に、「返還」という用語ではなく「解決」という用語が使われます。これには明らかな理由があります。つまり、日本とロシアで「解決」は2通りあるわけですね。
 日本の政府もメディアも「解決」をさも「返還」のようにミスリードするのはやめてほしいと思います。

 とくに「相互に受け入れ可能な条件」に関して、「プーチンは2島返還で決着したがっている」とまだ書き続けているメディアは、何を根拠にそう書いているのか不思議でなりません。プーチンは今回の首脳会談で、そう言っていますか? 言ってませんね。言っていないということはどういうことを意味するのでしょうか・・・。
 もう何度も書いていますが、いやはや・・・。
  1. 2013/04/30(火) 08:10:18|
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北方領土問題で交渉再開???

▽共同声明発表へ=領土交渉、再開見通し-日ロ首脳、今夜会談(時事)
 いよいよ今日ですが、予想らしきものを言わせていただくと、ロシアは領土で譲歩はしないと思います。上記事では「2島返還はOK]となっていますが、2島返還もたぶん言ってこないと思います。
 平和条約&領土問題解決に向けて「新たなアプローチで交渉継続」あたりでお茶を濁し、「ってことでいいじゃん」として「極東開発協力」を迫ってくることになろうかと・・・。
 理由は単純で、それがロシアにとって得だからです。
  1. 2013/04/29(月) 08:31:57|
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「ムスダン発射」で北朝鮮がもっとも気にしていること

 韓国メディアの報道には、「ボストン・テロでアメリカが北朝鮮問題に関心を払わなくなったので、北朝鮮は困っている」「関心を引き戻すために、ミサイルを発射する可能性がある」といった論調がありますが、その根拠がよくわかりません。
 北朝鮮はアメリカを怒らせたいのでしょうか?
 アメリカが北朝鮮を宥めるために妥協してくるというのならわからないでもないですが、北朝鮮がアメリカを挑発して怒らせても、利益は何もありません。
 北朝鮮にとって利益なのは、アメリカを本気で怒らせずに、「自分たちはアメリカと対等に渡り合っている」というタテマエを既成事実化することです。なので、北朝鮮はアメリカを本気で怒らせない線をびくびくしなから推し量っているのではないかなと思います。「振り向いてほしい」どころか、できれば「放っておいてほしい」のですね。
 いまだに発射されていないムスダンですが、発射するかどうかを北朝鮮が判断するときに、もっとも重要視するはずなのは、それが「アメリカの軍事報復を引き起こさないか」ということです。それがまず基本にあって、そのうえでさらに様々な他の要素を検討するということでしょう。
 北朝鮮は北朝鮮で、いつ攻め滅ばされやしないかと、びくつきながら対外戦略を模索しているはずです。綱渡りのサバイバル状況にある独裁政権にとって、自らの安全保障は最優先事項です。
  1. 2013/04/26(金) 21:49:16|
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中国「尖閣は核心的利益」

▽中国:尖閣は「核心的利益」…政府当局者、初の公式発言(毎日)
 当然の展開だと思います。これからさらに本格的に「盗りに来る」のは必至です。
「中国を刺激するから」との理由で「実効支配強化を手控える」という戦略ミスの結果ですね。要するに、分析が甘かったということでしょう。
  1. 2013/04/26(金) 21:26:02|
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アサド政権が住民虐殺にサリン使用

 ずっとくすぶっていた化学兵器使用疑惑ですが、ようやく解明されてきました。
▽「シリアで化学兵器使用」=英外務省も発表(時事 26日)
▽米政府、シリア軍が化学兵器を使用した可能性認める(ウォールストリート・ジャーナル日本版 26日)
▽シリアがサリン使用の可能性、対応策決定には確証必要=米分析(ロイター 26日)
▽シリア政府軍が化学兵器使用、サリンの可能性=イスラエル軍高官(ロイター 23日)
 もう間違いないでしょう。アサド政権は「反体制派のしわざ」と主張していますが、国連調査団受け入れを拒否しているのが、それが嘘である何よりの証拠ですね。
 手負いの独裁政権がついに禁断の兵器に手をつけたということは、今後、政権がさらに追い詰められたとき、凄まじいジェノサイドが行われる可能性があります(すでに住民に対する無差別虐殺がアサド政権によって日常的に行われていますが、化学兵器を大量使用すれば、桁違いの凄まじい殺戮になります)。
 人道上、絶対に看過できない非常に危険な局面です。
  1. 2013/04/26(金) 10:41:41|
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金正日が決めていた「危機」

 3月以降の北朝鮮の過激な挑発的言動ですが、年若い金正恩がハクをつけようと無理して背伸びして暴走していて、それを止める人が政権に誰もいない・・・というような見方があります。
 そうかもしれません。が、誰も見てきたわけではないので、わかりません。そうではないかもしれません。

 まず、今回の北朝鮮の言動ですが、私には「無軌道な冒険主義」にはまったく思えません。
 心理戦としては非常によくできたもので、結果的に北朝鮮は、3月~4月の緊張状態を利用して、対米核抑止を形式上は成功したかたちになっています。少し前のエントリーで書いたように、アメリカは口では「核保有を認めない」と言っていますが、実際には現状追認で緊張緩和に持っていくしか道はないでしょう。つまり、北朝鮮の狙い通りなわけです。
 こうした戦略を、はたして経験値の低い金正恩が、独力で発案したのでしょうか?
 事実はわかりませんが、可能性としては、側近・補佐役の入れ知恵の可能性のほうが高いと思います。北朝鮮は徹底した個人独裁システムなので、すべての決定権は金正恩ひとりの手にありますが、だからといって何でも彼の独断で決めているとはかぎりません。当然ながら、周囲には多くの側近・補佐役がいますし、そうしたところから日常的に助言を受けていると考えるほうが自然です。
 では、今回の挑発作戦のようなきわめて野心的な戦略を、誰が発案したのでしょうか?
 私は、それは故・金正日だと見ています。
 金正日は2008年に脳卒中で倒れ、2011年末に死去したわけですが、北朝鮮はすでに2006年と2009年に核実験を実現しており、当時から「数年後には起爆装置の小型化に成功して核ミサイル武装するだろう」と言われていました。核ミサイル武装が実現した際には、当然ながら対米核抑止を確立しなければなりませんが、そこでどういった方針・手順で臨むかということは、すでに金正日存命中で詳細に検討していたものと考えるべきでしょう。
 金正恩個人は新米独裁者ですが、その側近・補佐役には晩年の金正日のもとでこうした戦略立案に関わった人が何人もいるはずです。おそらくこうした人々の助言によって、金正恩は金正日の遺訓に従って「危機」を演出した可能性が高いのではないかなと思っています。
 金正恩政権発足から間もないため、なんとなく「暴走」イメージを持ってしまいがちですが、挑発作戦がこのタイミングになったのは、単にこの時期に核の小型化が技術的に成功したからというだけのことだろうと思います。金正恩政権発足まもない時期に核ミサイル武装が実現したのは、単に偶然です。金正日が生きているうちに核ミサイル武装が実現していたら、おそらく同じことを彼もやった可能性が高いのではないかなという気がします。
 今回の危機は、いわば故・金正日によって「あらかじめ予定されていた危機」だと思います。
  1. 2013/04/25(木) 17:36:18|
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ムスダンは(近いうち)発射される(と思う)

 もう平和利用という口実が必要な段階は過ぎましたから、新型ミサイルの実験は、近い将来に実行される可能性が非常に高い、と私は見ています。では、「いつやるの?」
 北朝鮮にとっていちばん得策なのは、「自衛措置」と強弁できる米韓合同軍事演習中、しかも最終日近い今月末でしょう。その理由は少し前のエントリーで書いたとおり。
 ただし、米韓軍事演習中はもちろん米韓軍は即応度が高い状態ですから、北にとっても警戒時期です。なので、あえてそれを避けて、5月以降、国連安保理やアメリカの出方を見つつ、時期を選定する可能性もあります。なので、4月が過ぎで仮に何もなくても、それで安心とはなりません(ただし、私はムスダン発射自体は、核再実験や核施設再稼働などに比べれば、日本の安全保障にとってはあまり重要なものとは思っていません)。
  1. 2013/04/25(木) 13:22:23|
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「記者→FBI→記者」もあるアメリカ

 ボストン・テロ関連して、昨日、読売テレビ「ミヤネ屋」に呼んでいただきました。また、一昨日発売の『週刊現代』にも関連のコメントを提供いたしましたが、採用されたかどうかは未確認です。
 ところで、ミヤネ屋ではとくに「FBIとはなんぞや?」ということを解説させていただいたのですが、それにちょっとだけ関連して業界小ネタを。

 今回のボストン爆弾テロでボストン市警やFBIに食い込んでニュースを発信し続けているCBSテレビの花型記者・アンカーのジョン・ミラー氏ですが、この人はかつてビン・ラディンのインタビューをアフガンで実現したことで、テロ・ウォッチャーの間では非常に有名な記者です。
 彼はその後、テロ対策の専門家として当局側に迎え入れられ、FBIの広報官などもしていました。以前、テレビでFBI広報官として登場していて驚いたことがあり、当ブログに書いたこともあります。
▽北方領土、FBI、アフガニスタン(2011/02/14エントリー)
 その人物が今度はCBSテレビ記者としてまたメディアに戻っているのですね。
 ちょっとWIKIで調べたら、こんな経歴です。
 ニューヨークのローカルTV局⇒ニューヨーク市警の首席広報官⇒ABCテレビ記者(そこでビンラディンのインタビュー)⇒ロサンゼルス市警テロ対策・犯罪情報部長⇒FBI本部の広報部副部長⇒CBSテレビ記者
 スタートが記者ですから、本籍はジャーナリストなのでしょうが、警察やFBIでも「研修」とかではなくて、バリバリの第一線、しかも幹部です。
 それは警察・FBI方面の情報に強いはずです。それにしても、こんな経歴が「許される」なんて、アメリカは面白い国ですね。
  1. 2013/04/24(水) 21:28:28|
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北朝鮮ミサイル発射準備さらに進む

 もともと私は今回の北朝鮮の対米心理戦では、金日成の誕生日とかいうことより、対米駆け引きの日程に基づいてミサイル発射を計画している(そのほうが北朝鮮にとって得)と私は仮定していたのですが、「4月いっぱいを、米韓軍事演習に対抗する口実で抑止力誇示実績を積む時期とする」(それが北朝鮮にとって得)ならば、4月下旬がミサイル発射の最適時期になります(北朝鮮にとって)。
 なので、そろそろ頃合的に北朝鮮がミサイル発射する頃からという気がしています。
 そこで本日のニュース
▽北朝鮮 ミサイル発射車両2台を追加配備=韓国筋(聯合ニュース)
 なんとなく北朝鮮が軟化しているかのような雰囲気の報道が多いですが、30日まではまだ何を仕掛けてくるかわからないと思いますね。

(追記)
 なぜミサイル発射が北朝鮮にとって得なのか、補足しておきます。
 仮に今、北朝鮮がミサイルを発射したとして、べつに米韓を狙ったものでなければ、単なる実験もしくは訓練になります。国連安保理決議違反であるし、日本の上空を通過すれば、日本への甚だ無礼な行為になりますが、米韓は攻撃を受けたわけでも、軍事的圧力を加えられたわけでもないので、実際には軍事行動は何も出来ません。合同演習中ならば何らかの圧力強化も可能ですが、演習終了後に新たに軍事圧力というには、北朝鮮の挑発は米韓が受けた脅威度としては充分ではありません(なので、北朝鮮としてはなるべく月末が得)。
 それは日米韓はじめ国際社会が非難の声を高め、国連安保理で制裁強化となる可能性はありますが、すでに非難されてますし、制裁も受けていますから、それがほんのちょっと風当たりが強くなる程度で終わる可能性が高いでしょう。
(この点、日本の報道では「ムスダン発射」⇒「グアムを狙って撃つ」と話が飛躍していることが多いです。あり得ませんね)
 それで北朝鮮としては、この2ヶ月間の心理戦で、対米抑止力アピールを、より固めることができます。その後は現在すでに始まっているような対話をめぐる心理戦に入り、のらりくらりと現状固定化⇒つまり、核武装国として振る舞うことになるでしょう。
 アメリカは言葉では「核保有を認めない」と言っていますが、戦争でつぶす気がないなら、事実上の現状追認とするしかありません。米朝関係は今後も緊張の度合いを高めていくでしょうが、今のところ北朝鮮の思惑通りに運ばれている気がしてなりません。
  1. 2013/04/21(日) 17:10:46|
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シリア革命・自コメントまとめ⑤2011年10月1日・再録「ネットは独裁を倒すのか」

 北朝鮮やボストン・テロがひと段落な感じなので、途中までで放置していた「シリア革命・自コメントまとめ」を再開しようとしたのですが、2011年10月1日に書いていたエントリーが、我ながらそこそこよくまとまっている気がしたので、再録します。すでに目を通していただいた方は、まったく同じものですので無視してください。

タイトル「ネットは独裁を倒すのか?」

 現在進行中の中東の民主化運動には、インターネット・ツールが一定の役割を果たしているわけですが、それが「ネット導入・情報化」→「情報公開&自由言論空間拡大」→「民主化」という歴史的必然のなせるワザなのかどうか・・・という点を考えてみます。
(以下、かなり長くなりますが、とりあえずまとめてみようと思います。一部、過去に書いてきたことと重複すること、ご容赦を)

 さて、上記した「流れ」の後者の部分、すなわち「情報公開&自由言論空間拡大」→「民主化」というのは、比較的わかりやすい話ではないかと思います。90年代初頭の共産主義体制崩壊でもそうでしたが、独裁政権が統制していた官製情報独占が崩れて、真実の情報が人々の目に触れるようになり、しかも、それまでご法度だった「誰もがホンネで話せる」環境が誕生すれば、人々を恐怖で縛ることで成立していた独裁は成り立たなくなります。
 あの極端な恐怖体制にある北朝鮮でさえ、もしも真の言論の自由が国民に与えられれば、金正日政権など明日にも崩壊します。
 ですが、上記した命題の前者の部分、すなわち「ネット導入・情報化」→「情報公開&自由言論空間拡大」は、どんな独裁国でも必ず起こるのか?という点は、議論の分かれるところではないかなと思います。というのも、「ネット導入・情報化」を実行しても、そこに完全なる統制の網を被せれば、「情報公開&自由言論空間拡大」を阻止することが可能かもしれないからです。
 そこで問題となるのは、国家が完全なる統制をキープしつつ「ネット導入・情報化」を導入することが現実に可能なのかどうか?ということになります。これは国際政治学あるいは国際関係論の分野でも、おそらく今いちばんホットな命題になるかと思うのですが、まさに新分野であるがために、「これだ」という理論は見あたらないようです。
 私はこのところ中国とシリアのケースに関して、その部分を調べています。両国とも、ネット導入をしつつ、政府の統制によって「情報公開&言論空間拡大」を阻止する政策を採用しています。
 で、結論から言うと、まだ完全な自由化まではほど遠い状況ですが、情報化の拡大によって、確実に「統制のタガ」が緩んできています。中国でもシリアでも、国民はネット経由で以前は考えられもしなかった大量の海外情報に接していますし、当局の対応を伺いながらではありますが、ネット発で発言するようにもなってきています。
 中国では公安部の懸命の締め付けによって国民レベルの反政府運動までは至っていませんが、高速列車事故などの「直接的な政権否定以外の言論」に関しては、当局を批判する動きが、なかばなし崩し的に黙認されつつあります。
 他方、シリアでは反政府デモの爆発的拡大を生んでいます。つまり、シリアではすでに民主化への動きに繋がっているわけです。
 そこで疑問が出てきます。それは歴史的必然だったのか? そして、今後もその流れは止まらないのか?ということです。
 アラブの典型的な権威主義体制であるシリアを例に考えてみます。シリアでは、国内のインターネットは、独裁政権と直結した通信会社・プロバイダーが管理しており、そのトラフィックを秘密警察が完全に監視・コントロールできる仕組みになっています。なので、理論上は完全統制が可能なシステムになっています。
(アラブ各国のインターネット統制のしくみについては、各国のインターネット・コントロール政策を詳細に分析した名古屋商科大学の山本達也先生の労作『アラブ諸国の情報統制~インターネット・コントロールの政治学』<2008年・慶応義塾大学出版会刊⇒アマゾン>が非常に詳しいです。中東情勢を研究する方には必読の書をいえます)
 しかし、実際には、シリア国民は携帯電話とインターネットを通じて大量の海外情報に触れることができていますし、主にSNSを通じて情報発信もできています。スカイプやヤフーメッセンジャーなどで互いの連絡もほぼ制限なく行えています。シリア政府が強力なファイアウォールをかけていますので、もちろん他の先進国の国民ほど自由ではないですが、もはや「完全な情報統制下にある」という状況でもありません。
 その経緯を振り返ってみます。

 もともとシリアでは官製メディアだけが存在し、人々が自分の意見を自由に発信する場もないという状況が長く続いていました。そこに最初の風穴が空いたのは、90年代に大きく広がった衛星テレビの登場でした。つまり、インターネットの前に、衛星テレビという「情報統制崩壊」のツールが“上陸”していたわけです。
 アラブ地域での初の衛星放送は、90年からのエジプト国営放送機構でしたが、娯楽番組を多く含むものとしては、91年からのサウジ系「MBC」、94年からのサウジ系「オービット」あたりが最初になります。ほかにも90年代半ばには多くの衛星放送がスタートしており、とくに95年打ち上げのフランス・ユーテルサット社のホットバードによって欧州の多くのチャンネルが視聴できるようになっています。
 情報統制国家だった大方の中東の国では当初、「堕落した欧米文化が流入する」などとして衛星テレビの受信機の設置を禁止しましたが、国民は珍しく国の政策に従わず、こっそり受信機の設置を進めました。当局は当初こそ取り締まりに動きますが、国民の衛星テレビ受信への意志はきわめて強固なもので、やがて事実上の黙認状態となります。
 私はちょうどその頃にエジプトに短期間居住したことがあるのですが、中東の人々(イランでも顕著)が怖い怖い政府の禁止措置に逆らって衛星テレビ受信に固執したのは、私の印象では、それこそ堕落した欧米文化=すなわち「娯楽」への渇望でした。国営テレビはつまらない大統領の演説やお堅い「NHK・Eテレ的番組」を延々と流していたわけですが、そんなときに衛星テレビは、海外制作のポップ音楽や映画、エンターテインメント番組を見せてくれたのです。
 また、これは拙ブログでも以前に書いたことがありますが、とくに人気だったのが、「堕落した欧米文化」の最たるものであるイタリアのお色気番組でした。ご存知のように、中東アラブはエロがご法度のお国柄だったのですが、逆にそれゆえにエロへの情熱は押し留めようがなかったともいえます。
 また、アラブの男たちにはひと昔前の日本のように、白人「金髪」女性崇拝傾向があるのですが、衛星テレビに登場する金髪のテレビ女優やニュースキャスター、歌番組の司会などが人気を博したりもしました。いずれにせよ中東イスラム圏は、独裁体制と同時にイスラム社会というガチガチの建前社会だったわけですが、そこにいっきに華やかで自由な空気を持ちこんだのが、衛星テレビにほかなりませんでした。
 官製報道でないアラビア語国際ニュースということでいえば、前述した「オービット」が英BBC放送のアラビア語ニュースを有料で放送しましたが、やがてオービットとBBCの衝突で放送が停止した後、そのスタッフを集めて96年にスタートしたカタールのアルジャジーラが無料放送で人気を博したことは周知のとおりです。
 こうしたさまざまな衛星放送によって、アラブ圏ではかつてない自由な空気がお茶の間に入ってくるようになりました。90年代にアラブ圏の都市部での生活を体験した方はわかると思いますが、インターネットの本格的導入の前、すでにあの地域では自由度がそれなりに進んできていたわけです。
 その背景には、独裁政権のコワモテ度が、かつてよりは表面上かなり緩和されてきたことがあります。
 90年代には、かつて米ソ冷戦にリンクしていた政治的な対立が緩み、それに連動して経済的な規制緩和・開放が部分的に進み、それにともない都市化・中産階級化が徐々に進んできていました。この時代、東南アジアでも中南米でも東欧でも似たような動きがありましたが、中東もまた、国によっては温度差はあったものの、全体としてはこうした時代の流れに乗っていたといえると思います。
 人々に本格的な「情報化」をもたらすツールであるインターネットと携帯電話は、90年代後半にアラブ圏でも導入されますが、シリアなどの権威主義体制国家では、当初、その使用には厳しい制限をかけていて、一般国民が自由に使える状況ではありませんでした。インフラ整備が遅れていたこともありますが、独裁政権側がこれらの導入を警戒したわけです。
 しかし、多くの国で2000年頃からネットと携帯電話が解禁されます。シリアではちょうどその年に前大統領が死去し、現在の大統領が世襲しますが、年若で英国滞在歴の長い大統領は、自身を「改革派」と位置付け、インターネットと携帯電話を広く国民に開放します。
 これはシリアだけでのことではなく、他のアラブ諸国でもほぼ同じ頃に同じような動きが出てきています。これは大きな背景としては、世界的にインターネットや携帯電話というツールが台頭していく過程とリンクしています。
 ネットの場合、もちろん多くの研究者が指摘しているように、経済活動に直結していたということもありますが、個人レベルでいえば、かつての衛星テレビよりさらに直接的に「エロ」への渇望が推進力となっていた気がします。このエロ・パワーによるネット拡大というのは、日本も含めて世界的に共通したウラ要素だと思うのですが、もともとエロが禁忌だったイスラム圏ではさらに決定的な推進エンジンになっていたのではないかと思います。
 もちろんその他にもネットで入手するゲームや映画、欧米ポップ音楽コンテンツなどもアラブの若者たちを惹きつけました。そのあたりの「娯楽」を入り口として、やがてネットサーフィンからメッセージのやりとりという方向にも足を踏み入れていったというのが、平均的なアラブの若者の姿だったのだろうと、乏しいサンプル調査から私は推測しています。
 他方、携帯電話のほうは、もともと国内の有線電話網が貧弱だったということが背景にあります。アラブ諸国でも携帯電話の通話料は結構高額なのですが、その便利さからあっという間に一般国民のあいだにも広がりました。搭載されたカメラで写真を撮ったり、携帯でデータ通信サービスを日常的に使うなどということも、その他の世界各国の国民たちと同様に、アラブ諸国でもすぐに一般的な光景になっていきました。

 2000年代はじめに中東アラブ各国で、いわば「なし崩し」的にインターネットや携帯電話が爆発的に普及したわけですが、権力者側がそれを公認した要因として、よく言われる経済活動上の必要性の他に、私は2つの点をとくに指摘しておきたいと思います。ひとつは「政権の正統性」、もうひとつは「権力層の利益」です。いずれも、そこでカギになるのは「政治的緊張の緩和」と「世代交代」だと思います。
 少なくとも大方の近代国家においては、いくら独裁でも建前上の正統性は必要になっています。独裁者は実際には「独裁者のための独裁」を行っていても、「オレだけが重要だ」「オレのためだけの国だ」などというホンネは言いません。ヒトラーもスターリンも毛沢東も金日成・金正日親子も、ポルポトやサダム・フセインでさえ、「国民のため」という建前を使ってきました。自分には国を治める正統性がある、との建前です。
 こうした表裏の使い分けを担保したのが、情報・言論の統制です。情報・言論の統制は、政治的正統性という建前と独裁権力を両立させるための必須条件で、そういう意味では、独裁の要件のワン・オブ・ゼムではなくて、まさに屋台骨といえるものです。したがって、そこに手をつけるということは、独裁政権にとっては必然的に致命傷になりえるわけで、それが今のアラブの春に繋がっているのだと思います。
 
さて、政治的正統性という建前が重要なのはシリアの場合も同様で、いちおう表向きは選挙を行い、議会を作ったりしています。そんななか、2000年に独裁権力を世襲したバシャール・アサド現大統領は、前述したように、自身を改革派と位置付け、先代のきわめて強硬な「締め付け」体制を多少緩和します。
 これには世代交代という要素も作用しています。現大統領が就任時は、政権上層部に先代時代からの腐敗した古株が多く残っていたのですが、大統領は同世代の側近(とくに実姉の夫)と協力し、彼らの多くを順番に引退に追い込みます。その口実に使われたのが「改革」という正統性だったわけです。
 これも前述したように、その頃は国内外の政治的緊張も以前ほどは緊迫していなかったため、権力上層部の世代交代と同時に、そうした開放的な施策が採用されたということになります。
 大統領は、そうしていくつもの規制緩和策を打ち出しますが、肝心の政治改革の部分については、実際にはそれらの改革政策はどれも実質的には実行されていません。ほとんどすべて口先だけの約束に終わっていて、独裁システムは温存されています。こうして、政治的な事実上の独裁システムは温存されながら、社会全体の統制は徐々に緩むという流れが定着していったわけです。
 シリアはたまたま先代の病死というわかりやすい契機があったのですが、他のアラブ諸国もほぼ似たような道に進みます。かつて血みどろの権力闘争を勝ち抜いて独裁権力を握った初代独裁者がどこの国でも高齢になり、その2世たちが国内政治を采配するようになってきたからです。こうしてエジプトやリビアを含む多くのアラブ諸国で、独裁者の息子たちがIT化の推進役になりました。
 しかも、こうした国々では独裁者ないしその取り巻きの2世たちが、携帯電話会社などの利権を独占し、多大な利益を得るようになります。シリアの場合は、大統領の従兄弟の政商がその恩恵にあずかっています。殺すか殺されるかの世界を生きてきた古い世代は、IT化に対する警戒心を解きませんが、甘やかされて育った若いボンボンたちは、「たいしたことあるまい」とタカをくくりつつ、目の前の金儲けに目の色を変えて邁進したのでした。

 改革を旗印に建前上の正統性をアピールする仕組みにとって、ネットへの介入がしづらいのは、それまでの国内メディアが「許可制」だったのに対し、サイトのブロックはいちいち「禁止」する必要があったからではないかと思います。
 当局の許可制のメディアの場合、載せられる情報は基本的に当局の意に沿うもので、それ以外はみんな禁止です。改革派を標榜するなら、許可の基準を以前よりほんの少し緩めるだけで充分です。
 ところが、ネットの場合は、世界中の無数のサイトとつながります。アクセスを禁止するためには、いちいちそのための理由が必要です。なので、「エロサイト」「イスラエルのサイト」「イスラム・テロリストのサイト」「CIAが裏で糸をひくサイト」などなど、いかにももっともらしい理由をつけて禁止しなければなりません。「独裁体制に不都合な真実を載せてあるサイトだからダメ」などとは言えないわけです。
 前述したように、インターネットのシステム自体は基本的に当局が随意にファイアウォールをかけることができるのですが、たとえば海外のニュースサイトを軒並みブロックすれば、それは当局が「国民には事実を知らせない」と宣言しているようなもので、改革派を自称する大統領からすると、いかにもマズイとなります。
 なので、ブロックするサイトは限定的にならざるをえません。シリアでは、反体制運動が広がった現在はよくわかりませんが、今年3月まででいえば、いちばん多いときでも約250程度のサイトがブロックされたに留まっていたと思われます。膨大なインターネットの情報空間からすれば、ほんのわずかの数といえます。
 しかも、ブロックされたサイトにしても、迂回路を経由するなどして、その気になればかなりのサイトがアクセス可能です。シリア当局はそれらもブロックすることもできるのですが、それにはそれなりの追跡作業が必要で、とても全部までは手がまわりません。反政府運動、クルド組織、イスラム過激派などの危険なサイトはともかく、エロサイトに裏ルートでアクセスしようとする若者あたりをいちいち摘発していては、キリがないわけです。
 ムハバラートにはそうしたネット監視のセクションもあるのですが、反体制運動が始まる前はそれほど政治的に緊迫した状況でもなかったので、それほど力を入れて監視していたとはいえません。

 こうした状況は、シリアのネットユーザーに、かなり「自由」な空気を実感させる効果を生みました。シリアのネットユーザーは、ネットをムハバラートが監視していることをみな承知していましたが、それでも以前と比べると、情報アクセスの機会は格段に広がっていました。
 また、SMSなどでの情報のやりとりも、ほぼ制限なく出来ましたし、自前のホームページやブログの開設も可能でした。こうしたネット使用は、他の世界の国々と同じく、若者層に猛烈な勢いで拡散しました。
 ムハバラートの怖さはみんな知っていたので、直接的な反体制コメントをネット発信するなどという危険は犯しませんでしたが、政治犯の釈放や、より民主的な改革の実行を求めるなどの政治的な発言をする人も少しずつ出てきました。ブロガーが逮捕されるなどという事件も散発的に発生しています。
 そんなとき、大事件が勃発します。05年2月、レバノンの反シリア派の中心人物だったラフィク・ハリリ前首相がベイルート市内で爆弾テロで暗殺されたのです。暗殺の背後にシリアがいると噂され、真相解明を求める声はシリア軍のレバノン駐留そのものに対するレバノン国内の反シリア運動に発展。さらに欧米や国連も巻き込んだ国際社会の圧力となり、アサド大統領はシリア軍のレバノン撤退を決断。同年4月までに完全撤退に追い込まれました。
 この事件でシリアではさまざまな勢力が水面下で動き出しますが、政治的に大きな失点となったアサド政権を批判する勢力も徐々に活動を活発化させます。こうして同年10月、民主派が「ダマスカス宣言」を採択。独裁国家シリアで初めて、民主化運動が目に見えるかたちで浮上します。
 ただし、それでもこの時期の民主派の要求はあくまで政治犯釈放などの人権問題や、より民主的な政治制度改革であって、アサド独裁体制の転覆を求めるものではありませんでした。これは従来、アサド大統領が自身を改革派と位置づけて約束していた政策に方向性が合致していたため、従来のようなムハバラートによる徹底弾圧が難しい状況でした。
 改革派として自身の正統性をアピールするアサド大統領は、ウラではムハバラートによる取り締まりを進めながら、オモテ向きは民主的改革を進めるような発言を繰り返します。実際のところは、高まる民主化要求を口先だけの時間稼ぎでかわすだけのことでしたが、民主派はそんな状況のなかでさらなる攻勢に出ていきました。
 そうした民主派の活動には携帯電話からアクセスするフェイスブックなどのSNSが有効に利用されましたが、アサド政権は07年11月、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどのアクセスを遮断。翌12月からはダマスカス宣言会合の出席者を逮捕するなど、民主派への大々的な弾圧に乗り出しました。
 このSNS遮断によってシリアのインターネット・コントロールが機能したとみる向きもありますが、私自身がシリア国内の知人たちに聞いた範囲では、迂回路を使ってフェイスブックにアクセスすることは、若者層の間では広く行われていたようです。
 これはシリア国内では違法行為であり、ムハバラートの摘発の対象になることは皆知っているわけですが、これも使用者が多数に上ることと、摘発が面倒なことから、よほど直接的な反政府言論でも行わないかぎり、それほど厳しくは取り締まられていません。ユーザーの側も、ムハバラートの摘発が怖いので、書き込みの表現には皆それなりに注意していたようです。
 また、スカイプも広く出回り、シリアの若者たちの連絡に利用されるようになります。こうして民主化運動も、ネットを介在して根強く続けられていきました。ときおりブロガーが逮捕されるなどの見せしめ的な弾圧は行われましたが、当局がネットユーザーを徹底的に監視することは事実上、まったく出来ていません。
 その頃、エジプトやイランなどの民主化運動にSNSが使われたことなどがときおり、国際ニュースで報じられましたが、そうしたことはシリアの民主活動家らもよく把握しており、仲間内ではネットを使った民主化要求の道を探る話し合いがたびたび持たれていたことを、私は今夏にレバノンで取材した反体制派幹部から聞いています。
 こうして、今年1~2月にチュニジアとエジプトで革命が進行したことをチャンスとみて、民主活動家グループはフェイスブックで民主化デモの呼びかけを行います。ネットでの呼びかけで中心的役割を担ったのは海外在住シリア人の若者たちですが、国内の民主化活動家らもそれに呼応します。クルド人組織やモスレム同砲団らの既存の政治グループも、その流れに合流しました。
 最初のデモの呼びかけは2月4日~5日でしたが、これは当局の厳しい警戒で実質的に不発。これで自信を深めた当局は、その直後にフェイスブックのアクセスを解禁。おそらくネット活動家を摘発する意図があったものと推測されます。
 ところが、フェイスブックを介在する民主化デモの呼びかけはその後も続き、3月15日には首都ダマスカスで政治犯釈放要求デモが発生します。ムハバラートによるネットの監視はほとんど効かなかったようで、SNSを介在したデモ呼びかけは瞬く間に全土に広がり、反体制運動の爆発に突入していったのでした。

 結局、いくらインターネット・コントロールを可能にするシステムを構築していても、ネットそのものを遮断しないかぎり、情報のインプットとアウトプットの拡大、そして言論空間の拡大は完全に抑え込むことは非常に難しい、という実例なのではないかと思います。
 まず、ユーザーの分母と、ファイアウォール回避の試みの数が、監視者のキャパでは追いつかないということがあります。これは、許可制メディアでなく、禁止を必要とするメディアの場合の宿命といえるかもしれません。
 また、正統性の縛りがあるため、禁止措置についてはどうしてもある態度甘くならざるを得ず、それは従来をはるかに凌駕する情報アクセスと自由の空気を持ち込みます。
 ここでユーザー側は、最初から急進的な反体制言論を打ち出すわけではなく、怖い当局の対応を様子見しながらジャブのように言論活動を始めますが、以前ほど露骨な弾圧をしないとみるや、そのスクラム・パワーである意味「図に乗って」いきます。赤信号もみんなで渡れば怖くないのです。
 そして、あるレベルまで来たら当然、当局が取り締まりに乗り出しますが、そのときには時すでに遅し。ネットで増幅された群集心理によって、コントロールが効かなくなっている・・・ということが往々にして起こるわけです。

 ここで、現実世界で大衆蜂起に至るかどうかの分かれ道は、群集心理と恐怖の力関係によるところとなるでしょう。群集心理が恐怖を上回れば、チュニジア、エジプト、シリアなどの道になり、下回れば中国のような状況になるということかと思います。
 恐怖を徹底するためには、当局の断固たる弾圧が必要になります。中国の場合、中国ジャスミン革命の呼びかけに、公安部と武装警察が投入され、徹底的なデモの未然排除が図られました。
 シリアの場合、とくに当初のデモの中心となった南部ダラアでの蜂起に、とくに当初の1週間ほど、治安当局が強攻策を手控えたことも大きかったのではないかという気がします。その頃、シリア当局はまだ放水車や催涙弾中心の弾圧でしたが、最初から実弾射撃を含む容赦ない弾圧を行っていたら、恐怖が群集心理を抑えこんでいた可能性があるのかどうか・・・そこはよくわかりません。
 しかし、中国にしても、前述したように高速鉄道事故などでは、結局はSNSでの言論空間をコントロールすることはもはや不可能になってきています。長い目で見れば、「ネット導入・情報化」→「情報公開&自由言論空間拡大」という流れは、これはやはり歴史の必然と考えるべきではないかなと思います。
 そこで、もうひとつのケーススタディとして注目したいのは、イランのケースです。イランでもネットを介在した反体制活動が行われましたが、当局の徹底した弾圧で、現在は反政府派がほぼ抑えこまれています。
 これが「体制側の勝利」として今後も体制派安泰で定着するのか? それとも、やがてはまた反体制運動が再燃することになるのか?
 イランのインターネット・コントロールはシリアよりもさらに厳格ですが、北朝鮮のようにほぼ完全にネット利用を遮断しないかぎり、いずれは独裁に対する「ノー」の火種が再び燃え広がることになるのではないかという気がします。理論上、インターネット・コントロールは可能かもしれませんが、実際にはシリアと中国の例のように、独裁維持のための実効性のあるコントロールはほぼ無理なのではないかと思います。
  1. 2013/04/21(日) 02:22:35|
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ダゲスタン=チェチェン訪問でジハーディストに?

▽Chechnya connections build picture of Tamerlan and Dzhokhar Tsarnaev(ガーディアン)
 兄弟はチェチェンには住んだことはないようですが、兄が昨年、ダゲスタンの父のもとで約6カ月を過ごし、その間、チェチェンの親戚を尋ねたこともあったそうです。その頃、兄に何かがあったのでしょうか?
 ただ、仮にイスラム過激派との接触があったとしても、チェチェンの武装勢力は基本的には対ロシア・テロなので、反米テロとなるのは、仮にそうだとしてもきわめてレアなケースでしょう。
 捕まった弟が供述すれば、そのあたりの謎がわかってくると思いますが・・・

(追記⇒元CIAのロバート・ベアがCNNで「アルカイダとは印章が違う」ながらも「海外で訓練を受けたジハーディスト」と見立てていましたね。どうでしょう? 現時点では根拠はまだ弱いと思うのですが・・・)

(追記2⇒18日付『東京新聞』でコメントを採用していただいていました)
  1. 2013/04/20(土) 13:45:17|
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(速報)テロ犯はチェチェン出身の兄弟

 ボストン・テロの犯人が判明しました。ボストン郊外の住宅地に住むチェチェン出身の若い兄弟とのことです。
 ちょっと意外ですね。過去事例での典型パターンとは少々違う印象です。
 動機ですが、単にアメリカ社会での疎外感からの暴発なのか、あるいはジハード思想によるものかはちょっとわかりません。前者であれば、当初見立てていた「極右かぶれ」などの無軌道暴走系に心理的には近い感じですが、後者であれば見立てを外したということになります。
 現時点での報道では、警察と銃撃戦となり、1人が死亡、1人が逃走中とのこと。いつまでも逃げ切れるものではなく、まもなく捕まるか死ぬかでしょうが、追い詰められて暴走しているので、非常に危険な状態といっていいでしょう。
  1. 2013/04/19(金) 21:12:53|
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テロ問題の本丸は「異常者テロ」

 ボストン・テロの容疑者2名の映像・写真をFBIが公開しました。
 前エントリーで「極右か」と書きましたが、メディアの方々と話していて、我彼の持つイメージがちょっと違うことに気づいたので書いてきます。
「極右」といっても、いわゆる政治運動のようなものとは全然違う「極右かぶれ」の異常者によるテロが、アメリカでは日常茶飯に起きています(本件に関する初エントリーでも「極右かぶれ」という言葉を当ブログでは使っています)。
 こうした事件のほとんどは、個人あるいは数人の仲間内グループです。妊娠中絶反対、ユダヤ人排撃、同性婚反対、ゲイ排撃などを主張するケースが多いですが、要するに異常者です。オスロ事件の犯人は移民排撃でしたが、典型的な異常者ですね。
 オバマ政権誕生のとき、アメリカの要人暗殺・暗殺未遂について過去事例を調べたことがあるのですが、ほとんどのケースは社会不適格者が社会への不満を募らせた挙句の理由なき殺意を動機にしていました。
 日本でも通り魔殺人がありますが、同じようなものです。
 テロ対策の面からすれば、それこそが難しさの核心でもあります。異常者をどこまで監視していいのか?というのは、民主国家では人権問題の面で簡単に答えが出せる問題ではありません。
 人権問題に絡むこうした「本質」について、マスコミでは正面から指摘することが困難ですが、本当のことを言えば、テロ対策の行く先はこの問題にぶつかります。
 今回のボストン・テロの犯人がどうかはまだわかりませんが、同時期に起きたリシン郵送の犯人はもう完全にこのパターンですね。
 欧米でのテロで「極右」と表現されているものの半分くらいは、実際には「異常者」のことだとみていいと思います。
  1. 2013/04/19(金) 10:35:04|
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ボストン・テロ やはり国内極右の少人数グループか

 昨日、NHK「ニュース・ウォッチ9」でVTRコメントを採用していただきました。
 昨日はこのVTR撮り後、いったん帰宅して所用を済ませてから、深夜23時から前エントリーで紹介したようにニコ生に出演させていただいたのですが、それが終了したのが午前02時過ぎ。帰宅直前の午前03時前にCNNが「犯人逮捕」のニュースを流したため、そのままTBSに向かって「朝ズバ」スタジオとなりました(「逮捕」は誤報で、どうやら現場で映像で撮られていた怪しい人物2名を捜索しているという話の模様)。
 まだ具体的な情報が少ないですが、2名とも本当に怪しいのであれば、単独犯ではなく、少なくとも2人組の可能性が高いということになります。どういった風体かという点ははっきりせず、情報は交錯していますが、1人について「白人男性」という情報もあります。もしもそれが事実であれば、私の当初の見立てどおり、国内の極右系という線が濃厚になります。
 いずれにせよ現時点では、どこの誰かもまだ判明しておらず、本当に犯人かどうかすらも確実でないような雰囲気なので(実際はわかりませんが)、アメリカからの続報を待ちたいと思います。
(あと、明朝「朝ズバ」「スッキリ」音声コメントの予定です)
  1. 2013/04/18(木) 20:13:14|
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生放送でミス

 ボストン・テロでいくつか発言の機会をいただきました。
 昨日は「朝日新聞」夕刊でコメント(早版は不明)、「ひるおび」で文字コメント、「報道ステーション」でVTRコメント、本日は「朝ズバ」スタジオ、「モーニングバード」スタジオ、「スッキリ」VTRコメント、「ひるおび」スタジオです。また、もしかたしたら「ワイド・スクランブル」でもVTRコメント使っていただけるかも、ということです。
 今しがたモーニング・バードの出番が終わったところですが、生放送中、「ノルウェーのテロ」と言うべきところをついうっかり「デンマークのテロ」と口走ってしまい、10秒後くらいにハッと気づきました。わかる人が聞いたら、鼻で笑われてしまいますね。集中、集中!
 北朝鮮関連では、昨日発売の『週刊朝日』に「金正恩の本当の狙い」という短い記事を寄稿しました。また、同じく昨日発売の『フラッシュ』にもコメントを提供しましたが、採用していただけたかどうかは未確認です。
  
 あと、本日22時30分、ニコニコ生放送の「夏野政経塾」という番組にも出させていただきます。こちらは夏野剛さんとニコ生で定期的に番組をやっている漫画原作者・樹林伸が出るので、その友人というだけで出させていただくことになりました。彼は私の講談社時代の同期で、古い付き合いになります。普段は錚々たるIT企業家や経営者が出られている番組なので、私なんぞは何をどう話したらいいか皆目見当もつきませんが、お時間のある方はぜひどうぞ。
  1. 2013/04/17(水) 10:08:31|
  2. 著作・メディア活動など
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ボストン爆弾テロ 犯人はイスラム過激派?

 第一報の印章では、極右テロの可能性をまず考えましたが、米メディアの続報をみると、現場にいて負傷した20歳のサウジアラビア人に注目が集中しています。怪しい素振りで現場から逃走しようとしていたらしいですね。
 となると、アルカイダに共鳴するイスラム過激派ということでしょうか。
 不発の爆弾がいくつも発見されていますが、現時点の情報では、ひとつひとつは小さいもののようです。イスラム過激派であれば、とにかくアメリカ人を多く殺害したいと考えると思うので、そこが謎ですね。あれだけの群衆ともなれば、そこそこ大き目のデイパックぐらいは持ち込めそうだと思うのですが・・。
  1. 2013/04/16(火) 12:15:33|
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ボストン爆弾テロの犯人像

 そういえば、9・11の頃から、ボストン・マラソンはテロのソフト・ターゲットとして名前が挙がっていました。警戒はしていたのでしょうが、市民マラソンは警戒にも限界がありますね。
 犯人像ですが、私の印象ではもっとも近いのがこんな感じです。
▽Eric Rudolph
 アトランタ五輪で爆弾テロをやった極右かぶれです。

 オクラホマ連邦ビル事件のティモシー・マクべイや、最近では、国は違いますが、オスロ爆弾・乱射テロのアンネシュ・ブレイビクなんかも、同類ですね。
 こういうものは、実際のところテロ監視網には入ってこないので、事前のマークはきわめて困難です。
 アメリカではこうした極右かぶれの小さなテロ(まがい)は日常茶飯ですが、イスラムかぶれもときどきいますので、そちらも警戒が必要です。
▽Xristos Katsiroubas
 こちらはアメリカではなくカナダですが、アルジェリア石油プラント襲撃事件に加わっていたカナダ人です(上記記事中の写真左)。もともとギリシャ正教徒の家庭で生まれ育った生粋の白人ですが、高校からおかしくなったようです。

(追記)
『ニューヨーク・ポスト』が「容疑者は現場で負傷した20歳のサウジ国籍者」と報じています。アルカイダ? 爆弾規模からは本格的な工作員という印章は受けませんが・・・。
 CBSによると、本人は関与を否定しているそうです。イスラム過激派なら、普通は堂々と大義を主張するものですが・・・・。続報を待ちたいと思います。
  1. 2013/04/16(火) 11:17:48|
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ゾルゲ事件 端緒情報の謎

▽松本清張「日本の黒い霧」の訂正求める(NHK)
だそうです。
 松本清張説では、そもそもの密告者は伊藤律ということですが、実際にはそう確認されていません。
 拙著『謀略の昭和裏面史』でもそのあたりに言及しているので、以下、ご参考までに。

ゾルゲ諜報団はなぜ露見したのか?

 第二の謎は、ラムゼイ機関の情報を、日本の特高警察はどうやって知ったのか?ということである。
 ラムゼイ機関は太平洋戦争開戦直前の昭和16年10月、警視庁特高部により一網打尽で摘発されている。
 特高の網に最初にかかったのは、アメリカに16年間の滞在歴を持つ元アメリカ共産党員の北林トモという女性で、北林の供述からアメリカ共産党員でラムゼイ機関の正規メンバーである画家・宮城与徳が逮捕され、この宮城の自白によってゾルゲのグループがすべて露呈してしまったというのが、その経緯である。
 だが、このラムゼイ機関摘発の端緒に関しては、今でも諸説があり、いまひとつハッキリしていない。従来の定説では、特高の取り調べを受けた日本共産党幹部の伊藤律が「アメリカ帰りの奇妙なオバさんがいる。アメリカのスパイかもしれない」などと語ったことから、その奇妙なオバさん=北林トモの存在が浮上したということになっている。
 これは、ゾルゲ事件の検事調書にそう書かれていたことに加え、伊藤律を取り調べてその端緒情報を最初に掴んだ当人である宮下弘・元警視庁特高部第1課第2係長がそう語っていること(『特高の回想~ある時代の証言』宮下弘編)、さらに本人の伊藤律自身が後にそれを認めていること(伊藤律遺稿)などから、それなりに説得力のある定説となっている。
 だが、それは本当は違うのではないか?との説もいまだ根強く囁かれている。
 たとえば、伊藤律特高スパイ説(戦後、伊藤はそれで共産党を除名された)の誤りを論証した渡部富哉著『偽りの烙印』によって、伊藤律が「アメリカ帰りのオバさん」の話をする以前から、特高警察が北林トモを内偵していたことが明らかにされたが、それはつまり、伊藤律供述が端緒だったということではなかったということにほかならない。
 また、平成4年に『週刊文春』取材班によってソ連秘密警察のスパイだったことが暴露された元日本共産党議長・野坂参三が、もともとゾルゲのスパイ活動に関わっており、その情報を特高に伝えていた可能性があるのではないかという見方もある。
 その根拠は、アメリカにいた宮城与徳に対し、ラムゼイ機関に合流するため日本に行くように指示したコミンテルンの連絡員と称する日本人もしくは日系人の“ロイ”という正体不明の人物が野坂本人だった可能性があること。そして、野坂自身に、ソ連秘密警察だけでなく、日本の特高警察にも情報を流していた疑惑が色濃くあることである。
 これは、この事件を長く追及している元米軍情報将校のジェームズ小田という人物がかねて主張していることで、小田の見方によれば、伊藤律供述発端説というのは、野坂参三というスパイを隠すための特高警察の偽装情報だったということになる(『スパイ野坂参三追跡~日系アメリカ人の戦後史』(ジェームズ小田著)『未完のゾルゲ事件』元朝日新聞モスクワ支局長・白井久也著)。
 ゾルゲ事件も大事件だが、野坂参三や伊藤律の正体もまた、ミステリーである。

(初出2006年当時の情報を元にしています)
  1. 2013/04/16(火) 10:33:41|
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ボストン爆弾テロ、犯人は極右かぶれか?

 速報です。ボストン・マラソンで爆弾テロが発生し、2名が死亡、数十名が負傷しました。
 爆弾の規模が小さいところからみると、大掛かりな組織的犯行というよりは、個人もしくは数名の小規模グループによる犯行の可能性が高いでしょう。
 この日は「パトリオット・デー」であり、ボストン・マラソンは「アメリカの象徴的イベント」でもあるので、目立つことを目的とし、ソフトターゲットとして選択された可能性があります。「極右かぶれ」「イスラム過激派かぶれ」などが考えられますが、どちらかというと極右かぶれの「臭い」がします。
 また、この日はブランチ・ダビディアン事件やオクラホマ連邦ビル爆破事件の日付である4月19日にも近いので、何らかの関係がある可能性もあります。
 まだ情報が少ないので、今後の情報に注目です。

(追記)
 爆破した2個に加え、不発が3個、発見されたそうです。その3個の規模が気になりますね。
 最初に比較的小型のものを爆発させ、一般人を遠ざけた後に、警察官を殺害するために第2弾を爆破するというのは、以前、北アイルランド共和軍が多用した手口です。
 また、バリ島ディスコ爆弾テロでは、最初に店内で爆破し、客や見物人が店外の路上に集まっていたところを自動車爆弾で大量殺害した例もあります。

(追記)
 ニューヨーク・ポストが「容疑者は負傷した20歳のサウジ人」と報じました。アルカイダのシンパでしょうか?
  1. 2013/04/16(火) 08:44:01|
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小型化と非核化とムスダン

 北朝鮮情報に関連して。

 アメリカでは、国防情報局が「北朝鮮は核小型化した」との報告書を書き、政府が火消しに奔走していますが、要するに、アメリカの諜報機関にもそれはわからないことです。DIAが書いたからそうだということには全然なりません。
 結局は推測するしかないのですが、3回目の実験に成功ということは、私としては「小型化成功の可能性が相当に高い」と考えています。それを否定する情報は存在しないのですが、「きっとまだだろう」との根拠の薄い直感(期待?)だけで判断するのは危険だと考えています。

 アメリカが「非核化するなら平和条約OK」と言い出しています。「北朝鮮は平和条約で体制保証を得るのが最終目的で、そのためにアメリカに振り向いてほしくて核開発している」論が正しければ、北にとっては願ったり。すぐにも平和が訪れるでしょう。
 しかし、そうはなりませんね。北朝鮮の目的は「核武装」そのものだからです。
 韓国も対話呼びかけを盛んに行っていますが、これからこんな感じになるかもしれません。▽非核化のため対話開始⇒北朝鮮は在韓米軍撤退を条件⇒交渉長期化(この間、北朝鮮は核ミサイル戦力をせっせと増強)⇒決裂・・・
 将来のことはわかりませんが、ひとつ明確なのは、北朝鮮が自ら核武装を放棄することはないことです。独裁体制の生命線ですからね。今後、核武装強化を抑える方向で圧力をかけるという流れになっていくしかないような気がします。

 ところで、やはり「ムスダン発射は北朝鮮の暴発」⇒「ムスダン、日本も危ない」と考えている人が非常に多いと、友人・知人と話していても実感します。
 全面戦争にはなりませんし、日本も危険ではありません・・・と力説しているのですが、「オマエだって北朝鮮が暴発して核ミサイルが日本に来るって書いてるじゃないか!」と。
 いや、あれは朝鮮半島有事か内乱で金正恩が死亡するなどして、完全にアナーキーな状態になった場合の話なんですけれども・・・
  1. 2013/04/14(日) 08:52:43|
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ミサイル防衛は「誘導」システム

 今週は北朝鮮問題でいくつか発言させていただく機会がありました。
 4月9日は「朝ズバ」文字コメント、「ひるおび」スタジオ、TBSニュースバード(CS)の「ニュースの視点」スタジオ、10日は「ひるおび」スタジオ、11日は「ひるおび」音声コメント、11日は「Nスタ」音声コメント、12日は「ひるおび」スタジオ、BS朝日「午後のニュースルーム」スタジオです。また、11日発売の「週刊文春」「週刊新潮」、12日発売の「フライデー」にコメントを採用していただきました。
 ところで、こうしてメディアの方々と話す機会があると、やはり「ミサイル防衛なんて、ピストルの弾丸をピストルで撃ち落すようなもので不可能だろう」と考えている方が結構いらっしゃいます。
 そこでちょっと考えたのですが、こんな喩えはどうでしょう?
「外野フライを野手がボール(グラブでもいいですが)を投げて当てるのはかなり難しいけれども、ボールより早い竹コプターを付けて追えば空中でキャッチ出来そう」
 うーん、なんか違いますが、要するに「迎撃対象の弾道を捕捉」し続けて、必要な速度の迎撃体を最後まで「誘導」するということは、単に撃ちっぱなしで当てようというのとは違うということです。もちろん非常に精緻なシステムが必要なのはその通りですが、それが技術開発によって実現されたということでしょう。
  1. 2013/04/12(金) 21:39:51|
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お詫びと訂正

 今週発売になる『軍事研究』5月号に「金正恩の雄叫び『ソウルを3日で攻略する』~北朝鮮『休戦協定』を一方的に破棄」という記事を寄稿したのですが、記述に誤りがありました。
 アメリカがアラスカにGBIを14基追加配備したことに触れた部分で、その予算を「数千億~1兆円」と書きましたが、「1000億円弱」の間違いです。1 billion dollarsをなぜか1兆円に誤算していました。明らかに数字が多いので、自分で読んで「げっ!」となりましたが、なぜか入稿時にスルーしてしまっていました。
 お詫びして訂正します(来月号の寄稿記事中でも訂正します)。
  1. 2013/04/08(月) 18:11:26|
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北朝鮮もアメリカもただ「抑止」措置をとっているだけ

▽米国防総省がICBM発射試験を延期 北の過剰反応を懸念か(産経)
 この記事に関して、「アメリカは譲歩の姿勢を見せている」という評価があります。
 まったく違います。対北朝鮮の抑止力強化も含め、アメリカは一貫して防衛措置はきっちりととっています。
 今回の流れで、アメリカがとってきた措置は、「局地挑発対応計画」承認、戦略爆撃機の演習参加といった対北朝鮮抑止力の強化・誇示と、アラスカ・グアムのミサイル防衛強化というディフェンスの徹底で、それぞれが理に適っています。
 アメリカはこの2点に対しては揺るぎない政策をとっており、まったくブレがありません。ICBM試射延期は北朝鮮に口実を与えないための措置で、「対北朝鮮抑止力の強化・誇示」も「防衛措置の徹底」も関係ありません。
 ついでに言えば、北朝鮮側のやっていることもすべて「対アメリカ抑止力の強化・誇示」「防衛措置の徹底」にほかなりません。決して金正恩政権はとち狂ったわけでもなく、独裁政権のサバイバルという目的に沿った対応をしています(もちろん善し悪しは別です。前提である「独裁政権の維持」自体が悪なのは当然です)。
 要するにアメリカも北朝鮮も、それぞれ抑止力強化を図っているというじつに単純な構図だと思うのですが、北朝鮮情勢の急展開でいろいろ解説を目にすると、とくに韓国メディアの論点で、根拠の希薄な「穿った見方」が非常に多いことが目につきます。「穿った見方」ももちろん大切ですが、「穿った見方」が有効なのは、オモテの見方では説明がつかないことが発生しているときです。
 が、北朝鮮が打ち出している挑発行為はすべて、対外的に核保有国の実績を積むという北朝鮮自身が表立って主張していることですべて説明がつきます。「穿った見方」は参考意見としては重要ですが、それが事実のようになんとなくなってしまっているのは、大いに問題だと思います。
  1. 2013/04/08(月) 08:19:06|
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古是三春氏講演会のお知らせ

 お世話になっている日新報道の倉内慎哉さんが主宰する月例の勉強会にて、今月は軍事評論家の古是三春さんを講師にお迎えするということです。私はたぶん所用で行けないと思うのですが、どなたでも大歓迎とのことですので、北方領土問題に関心のある方は是非どうぞ。
(以下、ご案内を転載します)

サムライの会・第93回例会

軍事評論家の古是三春氏をお招きします。安倍首相のロシア訪問が四月下旬に予定されている折、北方領土問題の歴史を振り返っていただきます。昨年、プーチン氏が意味深な発言をしたことで解決への期待が高まっていますが、ロシア側の真意はいかなるものなのでしょうか?ロシア事情に詳しい古是氏の推理をお聞きします。また、日露関係の変化が日中関係に与える影響についても分析を加えていただきます。

講師:古是 三春(ふるぜ・みつはる)氏
1960年東京都生まれ。旧共産圏に多くの人脈を持つ。主に共産圏の軍事史、軍事技術史について記事を執筆しながら、日本の機甲部隊の歴史や戦車開発、戦史についても研究している。主な著書に『ノモンハンの真実 日ソ戦車戦の実相』(産経新聞社)『戦後の日本戦車』(共著、カマド出版)『ホントに強いぞ自衛隊!』(共著、徳間書店)など。近刊として週刊アサヒ芸能増刊 『理想の自衛隊』(徳間書店)が4/1発売予定(店頭4/2)。また、今回の講演テーマに関連した記事を『日本の領土防衛の真実』(週刊アサヒ芸能増刊・徳間書店)に執筆している。

演題:「北方領土問題の行方」

日時:4月19日(金)午後6時半~
会費:3000円(軽食つき)
場所:「ル・パン」 港区麻布台1-11-2星野ビル2階 (東京メトロ神谷町駅下車1番出口、東京タワー方面徒歩5分、飯倉交差点角 螺旋階段昇る)

(追記
 上記プロフィールにあった近刊の『理想の自衛隊』に、私も「北朝鮮の核ミサイルを迎え撃つ 自衛隊は3段階の迎撃能力を持て」という記事を寄稿しています。こちらも是非どうぞ(⇒アマゾン)
  1. 2013/04/07(日) 08:00:55|
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米韓軍の特殊作戦

 今週木曜、TBS「Nスタ」「ニュース23」でVTRコメント採用していただきました。また金曜「ひるおび」でもコメント使っていただきました。
 北朝鮮は毎日、いろいろな手を打ってきます。日本のメディアでも大きく報道されるようになってきました。
 しかし、それらの報道・解説をみていてやはり気になるのは、「北朝鮮はアメリカに交渉の席について欲しいため、アメリカを振り向かせるために挑発している」というのと「一連の挑発は国内向け」の2点ですね。すでにいろいろ書いているので繰り返しませんが、おそらく違うと思いますね。
 さて、それはさておき、ちょっと注目したのはこの記事。
▽開城工団:人質発生なら外交解決、韓米両軍による救出も(朝鮮日報)
▽半島有事に北の核施設制圧、在韓米軍に専門部隊(読売)
 当然、以前からさまざまな想定で特殊作戦は検討されてきたのでしょうが、その最前線でもいろいろ準備があるようです。
  1. 2013/04/06(土) 12:30:48|
  2. 著作・メディア活動など
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イランの暗躍

 イスラム過激派ネットワークの歴史と構造を検証するとわかるのですが、スンニ派の場合はモスレム同砲団、湾岸のワッハーブ派、エジプト中南部の対コプト教徒勢力、パキスタンやバングラデシュのイスラム協会など、いわば草の根の土着の民間ネットワークが核になっているのに対し、シーア派の場合はほとんどケースで、背後にイランが関与しています。
 とくにレバノンのヒズボラの内部には、イラン特務機関の「枝」のような人脈があって、過去、世界各地でイランの代理人としてテロを行ってきました。イラクでもイランの息のかかったシーア派の民兵組織があります。イラクもそうですが、パキスタンなどでも、地元でスンニ派勢力と抗争しているシーア派のグループがあると、そういうところにイラン情報部は食い込んでいきます。
 なので、シリア政府軍にシーア派外人部隊が加わっていても、なんら不思議ではありません。イランの工作でしょう。統括者はおそらくイラン革命防衛隊で独自の実力をもつ海外工作部門「クドス部隊」でしょうね。
▽Assad deploys foreign fighters in capital to protect Shiite shrines(アサドは首都のシーア派寺院を守るために外国人戦闘員を配置/アル・アラビーヤ 5 April)
 戦闘員の国籍はイラン、レバノン、イラク、パキスタンだそうです。
  1. 2013/04/06(土) 11:53:28|
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新型ミサイルは気にならない日本?

▽北朝鮮:中距離ミサイル、日本海側に移動か…韓国報道
 ほとんどミリ級の確率だった銀河3号の石垣島落下可能性であれほど大騒ぎしたのに、ムスダンかKN-08が太平洋上への着弾を予定して試射され、失敗して日本本土に落下するという可能性がなぜかスルーされています。それも確率はきわめて低いですが、銀河3号であれだけフィーバーしたのに・・・
  1. 2013/04/04(木) 12:39:31|
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本当はまだアメリカと交渉したくない北朝鮮

 本日発売の『週刊新潮』の記事「狼少年とバカにできない金正恩の横須賀・三沢・沖縄攻撃宣言」にコメントを採用していただきました。
 ところで、ここのところ「日々のニュース」になっている北朝鮮ですが、本日はこんなニュース。

▽明白で現実的な危険…米、THAADをグアム(読売)
 KN-08に備えてのことでしょう。もしかしたら今月中にも試射をするかもしれませんが、そうなるとおそらく日本の上空を通過していくことになるでしょう。
 ヘーゲル国防長官の北朝鮮の脅威に対する評価は、「核の能力を保有し、ミサイルを発射する能力もある」「日本や韓国などの同盟国、米国のグアムにある基地、ハワイ、西海岸を脅かす」だそうです。KN-08の射程見積に苦慮している様子ですね。
 THAADはやはりいいですね。早急に日本も導入を検討すべきでしょう。

 対する本日の北朝鮮はこちら。
▽北「小型化した核攻撃で完全粉砕」…米に警告(読売)
 核攻撃の作戦計画に関して「最終的に承認されていることを、正式にホワイトハウスと国防総省に通告する」だそうです。毎度の「口撃」ですね。

 それより読売の注目記事はこちら。
▽正恩政権、米との対話を再三拒否…前国務次官補(読売)
「北朝鮮はアメリカを交渉に引きずり込むために、核ミサイル開発や軍事的挑発で一所懸命にアピールしている」といった見方もありますが、核ミサイル戦力保有のチャンスに、本気で交渉する気などなかったはずです。とにかく今は長距離核ミサイル配備までなんとか時間稼ぎをし、交渉するのは、長距離核ミサイルを配備して対米抑止力を実現した後のことでしょう。狙いも非核化というよりは、両者核保有国同士としての対等な平和条約といったところでしょう。
 北朝鮮はどんなにアメリカに圧力をかけられても核ミサイルを手放すなどということはしないでしょうから、日本政府もそこは深刻に考えたほうがいいと思います。個人的にはTHAAD導入がいいと思うのですが・・・。
  1. 2013/04/04(木) 11:38:21|
  2. 著作・メディア活動など
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Yahoo!ニュースに書いてみました

 Yahoo!ニュースの「個人」欄にお誘いいただいていたので、第1回目を書いてみました。
 前エントリーを下地に、解説を書き加えたものです。
▽北朝鮮の狙いは「パキスタンのように核武装国として認められたい!」(Yahoo!ニュース)
  1. 2013/04/03(水) 06:35:35|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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