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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

スールー王国の末裔?

 3月に入って、ボルネオ島のマレーシア領サバ州で、マレーシア軍とイスラム系武装グループ「スールー王国軍」の戦闘が激化しています。スールー王国軍と自称しているのは百数十人のグループで、フィリピンのスールー諸島から来た元モロ民族解放戦線(MNLF)系の武装集団のようです。
 彼らは2月12日にボルネオに上陸して海岸の村を占拠。しばらくマレーシア軍とにらみ合った後に、掃討作戦が開始されたようです。
 スールー王国軍は同王国の独立と、サバ州の併合を要求していますが、いずれ鎮圧されるのは時間の問題でしょう。ただし、フィリピン南部のスールー諸島では、スールー王国軍を支援する動きも出始めているようです。
 かなり昔ですが、このあたりは取材経験があります。フィリピン政府軍と内戦中だったMNLFゲリラ部隊を、彼らの本拠地であるスールー諸島のホロ島で取材しました。私が会った最高位の人物は、当時、MNLF書記長だったサキルディン・バハジンという人物で、この人もスールー王国のスルタン(国王)一族の末裔のひとりでした。
 このあたりは、長い内戦がようやく収まったところなので、何をやりたいのかよくわかりませんが、まあ伝統的に海賊・山賊が多く、もともとかなりアウトロー&バイオレンスな土地柄ではあります。
 下記リンクは私の取材時の写真。外国人の誘拐をよくやっているゲリラたちで、みんな面構えが半端でない雰囲気です。彼らはバハジン書記長に近い人脈ですから、この取材時からもう20年以上経過していますが、もしかしたら彼らの中の誰か、もしくはその子弟が「スールー王国軍」に加わっている可能性もありそうです。
▽写真館⑧イスラム・ゲリラ

(追記)
 そういえば、つい先日、「ネプ&イモトの世界番付」で、オードリー春日さんがスールー海の漂海民族「バジャウ人」の海上集落を訪ねていました。いやあ個人的に超懐かしかったです。こんなところです。
▽写真館⑨漂海民
 スールー海はアウトロー&バイオレンスな場所ですが、旅するには非常に興味深いところでした。
  1. 2013/03/07(木) 21:11:14|
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オスプレイとイメージ商法

 テレビをつらつらとチラ見していたところ、いくつかのニュース番組やワイドショーで「オスプレイ本土上空訓練」のニュースをやっていました。
「オスプレイが他の米軍航空機より危険」というのは、数字のうえでも否定された誤認識(「デマ」ともいいます)ですが、いまだに「突出した危険性」を伝える誤情報が報道されていて、飛行ルート上に住む方々は、テレビのインタビューに「どんなのかわからないので怖い」「勝手に飛ばないで欲しい」と口々に言っていました。
 当然ですね。どんなものかわからなければ怖いでしょうし、自分たちの町のうえを勝手に飛ばないでほしいと願うのは当然です。
 すでに当ブログでも書いていることなので詳細は繰り返しませんが、もう様々な別個の問題が故意に混同されていて、おかしなムードが広がっています。なんだか悪徳商法みたいな「空気」ですね。
 何度も書きますが、オスプレイは「他の米軍機より危険」ということはありません。米軍の訓練そのものに反対するのはべつにアリだと思うのですが(私の地元は神奈川ですが、米軍機もよく飛んでます)、それとオスプレイはとくに関係ありません。
「よくわからないけど、危険と言っている人がいるから怖い」という感覚は、放射能汚染の話でもよく見られることですが、悪徳商法と同じで、人間心理の弱点をよく突いています。
  1. 2013/03/07(木) 18:06:55|
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シリア革命軍と陰謀論

 昨日はラッカが陥落したニュースが先代大統領の銅像引き倒し映像とともに大きく報道されました(日本以外では)。アレッポやダマスなど大都市圏でも革命軍が攻勢をかけています。
 とはいえ、独裁者軍もまだまだ強力な戦力を保持していて、戦闘はまだしばらくは継続の方向です。アメリカの非軍事支援表明と連動して、サウジやカタールが武器支援に本格的に乗り出す姿勢をみせていますが、現時点ではまだその効果は限定的です。
 ところで、この紛争に対して、海外の反米派の間では今でも根強く「アメリカの陰謀だ」論があるようですが、陰謀論はむしろアラブ市民のお家芸のようなものでもあります。じつは反体制派のSNSでも、逆に「アメリカとバシャールは裏で手を組んでいる」「イスラエルがバシャールを助けている決まっている」といった陰謀論が根強く存在します。SNSだけではなく、実際にそういう主張をするシリアの人も、何人も知っています。
 下記の事件の真相はまだ明らかではありませんが、もしかしたらそんな陰謀論に踊らされている可能性があります。
▽シリアで国連要員20人拘束 反体制派か、政府軍撤退を要求(共同)
「UNDOFがシリア政府軍を助けていると非難。解放条件として、近隣にある村からの政府軍撤退を要求している」だそうです。犯行グループは「ヤルムークの殉教者」を名乗っているそうなので、普通に考えれば、パレスチナ系の革命軍の一部ということになりそうです。
 さっそく反体制派SNSでは、「逆効果だ」という議論が沸き起こっているいっぽう、逆に「独裁者側の成り済ましに決まっている」との陰謀論な主張も出てきています(もっとも、容易にバレやすいそんな偽装工作をあえてやるかというと、その可能性は低い気がします)。
 いずれにせよ、反体制SNSの「世論」は、いまや革命軍各派も無視できないものなので、いずれ解放されるとは思うのですが(ただし、ヌスラ戦線系のイスラム過激派だとなかなか難しいかもしれません)。
  1. 2013/03/07(木) 09:20:26|
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亡命シリア人の良記事

 シリアで反体制運動が始まって、まもなく2年になります。内戦は泥沼化し、すでに7万人以上が殺害されています。
 ですが、シリア内戦の本質について、日本ではあまり理解されていないように思います。そもそも日本にとってはなじみの薄い国ですから、当然といえば当然でしょう。日本語の情報源もきわめてかぎられており、問題の本質を知るには充分とはいえません。
 当ブログでは2年前の反政府活動勃発当初から、アサド独裁政権の強権専制性を指摘し、抵抗運動の拡大を紹介してきたわけですが、シリア問題の本質をついた日本語の良記事を発見したのでお知らせします。現在発売中の『ニューズウイーク日本版』所収の「アサドを怪物にした父の亡霊」という記事です。
 執筆者はエジプトに自主亡命したシリア人作家で、現在はアメリカのブラウン大学研究員となっているニハド・シリース氏。同記事は、これまで私が国内外のシリア国民から長年にわたって聞いていた話と、何から何まで一致します。シリア問題に関心のある方には、是非是非是非お薦めします。
 英文の元記事はネットに公開されています。
▽Daddy Dearest  Inside the mind of Bashar al-Assad
 直訳すると、元記事タイトルは「父を溺愛 ~バシャール・アサドの心の内」ですね。

 ちなみに、シリース氏は来月、英文で小説を発表するようです。タイトルは「The Silence and the Roar」(「沈黙と叫び」あるいは「静寂と轟音」)。
 かつてサダム・フセイン独裁下のイラクの恐怖体制を描いた「Republic of Fear」(Kanan Makiya:1989)を思い出します。私はこの本でサダム体制の本質を知りました(後に海外亡命イラク人社会を取材するきっかけになりました)。
 シリース氏の新刊にも期待です。
  1. 2013/03/06(水) 11:07:42|
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実際には難しい生物兵器テロ

 日付的には昨夜になりますが、テレビ東京「実録世界のミステリー」でVTRコメントを採用していただきました。題材は、2002年11月にニューヨークでペスト感染者が出た事件。警察が当初、生物兵器テロの可能性も疑っていたということで、生物兵器テロに関してひとこと語らせてもらいました。

 さて、生物兵器テロですが、これは大きく分けると、「生物毒を凶器(毒物)として使用するテロ」と、「病原体を使用するテロ」に分かれます。通常、「生物兵器テロ」と聞いて連想するのは後者と思いますが、実際にはリシンやボツリヌス毒素など、前者のほうが実例は多いです。
 では、この後者のほうをみると、さらに2つに分けられます。「感染拡大が期待できる病原体を使うテロ」と「人から人へは感染しない病原体を使うテロ」です。これも生物兵器テロのイメージだと後者でしょうが、実際には炭疽菌のように、後者が多いです。
 生物兵器は核兵器、化学兵器に並んで大量破壊兵器とされていますが、それは「感染拡大が期待できる病原体を使う」ことを想定した評価です。ペスト(肺ペスト)、天然痘、出血熱、コレラなどですね。また、感染力の強い病原体と、致死性の高い病原体の遺伝子を組み合わせたスーパー病原体(キメラ・ウイルスと総称されます)もあります。
 ですが、こうした潜在的大量破壊能力のある生物兵器がテロで使われ、実際に大きな被害をもたらしたという事例はありません。テロリスト側には、こうしたテロをやらない、それなりの理由があります。
①病原体が入手しづらい
②効果的な使用方法が計算しづらい
③人類に対する犯罪とみなされ、世間の支持を得られない
④テロリスト側も感染の危険がある
 他にもいろいろあると思いますが、主な理由はこのあたりでしょう。自爆テロを行うようなテロ集団なら、④は除外されるかもしれないですが・・・
▽生物兵器テロ(宝島社新書)
biotero.jpg
  1. 2013/03/05(火) 03:19:01|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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