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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

シリア内戦解決に必要なアメリカの武器供与

 一切の武器、一切の戦争は悪である・・・という考え方の人もいらっしゃるかと思いますが、ある武装勢力に人々が殺害され続けている状況を止めるためには必要な戦争があり、必要な武器があるという考えもあります。私は後者で、たとえば一昨年のリビアの反カダフィ戦、あるいは現在のシリアの反アサド戦などはそれに相当すると考えています。A勢力対B勢力という構図の場合は背景が複雑で、なかなか判断が難しいことがありますが、独裁VS抵抗という構図は比較的単純なものです。

 シリア情勢に関し、こんなニュースがありました。
▽シリア内戦解決へ対話、米露外相会談で一致(読売 2月27日)
 アサド政権と反体制派の対話実現を目指すということですが、現状では難しいでしょう。
 先日、シリア国民連合議長が「アサドを外すなら、副大統領と対話してもいい」と言い出し、それに対してアサド側も最近、初めて「(実質的な)反体制派と対話してもいい」と言い出していますが、アサド存続が前提であれば、反体制側が合意することはないでしょう。
 平和的解決のために対話すべきでは?と平和な国に暮らす外国人は考えるかもしれませんが、シリアでは多くの人がそうは思っていません。なぜならアサド政権が言う「対話」は、アサド独裁を前提とし、自分に歯向かう者を徹底的に抹殺するための一時の方便にすぎないことを皆、知っているからです。
 反体制派の主流派も、アサドと側近さえ排除できれば、アサド体制の残りの人々と新たな国作りをするのに吝かではありません。それは各勢力間の綱引きで相当な混乱が予想されますが、新たな国作りにはしかたないことであって、独裁と弾圧よりはマシだと考えられています。
 いずれにせよ、反体制派は、独裁者の君臨が残る形式での決着は容認しないでしょう。独裁者が残れば、独裁体制は必ず専制政治を復活させるからです。独裁政権はそうしなければ存続できないのです。
 シリアの人々がこれだけの犠牲を払いながらもアサド拒否を貫いているのは、単なるアサド個人への憎悪だけでも(これだけ身内を殺害されて、たしかに憎悪も広がっていますが)、あるいは自分たちの将来の利益のためでもなく、基本的には自分たちの「生存」のためなのです。
 上記の米露の合意が機能しないのは、ロシアはあくまで「アサドと反体制派の対話(=アサド独裁の存続)」を目指すのに対し、アメリカはいずれ「アサドなきアサド体制残党と反体制派の対話」(=実質的なレジーム・チェンジ)を目指すことになるからです。 

 ところで、本日の読売朝刊が、エコノミストの下記記事の一部抜粋を掲載していました。
▽シリア:国家の死(英『エコノミスト』誌 2月23日号掲載記事の全文翻訳版をJBPRESSが2月25日に掲載)
 私はこのエコノミスト誌の分析と意見に、全面的に同意します。
 アメリカはオバマ政権内部でもシリア反体制派への軍事支援を容認する方向に傾いてきていますが、どうやら肝心のオバマ本人がブレーキ役になっているようです。
 シリア内戦は戦局的にはほぼ膠着状態に陥っていますが、反体制派はべつに米軍のアサド軍攻撃を望んでいるわけではなく、武器・弾薬の供与を切望しています。勢力に勝る反体制派は、武器・弾薬さえ充分に入手できれば、容易に革命を成し遂げられると考えていますし、実際そうなるでしょう。 
 カギを握るのは、アメリカの武器供与です。アメリカ国民はもはや自国兵士の海外での戦死は容認しないでしょうが、軍事介入といっても米軍派兵といった話ではないので、あとはオバマの決断だけですね。
 英誌の主張が少しでも米国民の世論に作用し、オバマ政権への作用となればいいのですが。
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  1. 2013/02/28(木) 10:50:43|
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北朝鮮・昨年4月の「特別行動宣言」はやはりサイバー攻撃だった

 現在発売中の『週刊現代』の記事「アメリカはCIAを送り込んだ 北朝鮮 金体制を転覆せよ」にコメントを採用していただきました。アメリカ政府は公式には現在も、軍事作戦・対テロ作戦以外の政治的暗殺を大統領令で禁じていて、記事中に言及されている暗殺作戦の部分は私にはまったくわかりませんが、CIAの仕組みや軍事オプションの仮定などをお話させていただきました。

 ところで、今年1月16日のアルジェリア人質事件発生から、その後の一連の北朝鮮核実験関連などのニュースが続き、他のトピックのフォローが疎かになっていました。ひとつ紹介します。
 アルジェリア事件の発生と同日の1月16日、韓国警察庁サイバーテロ対策センターは、昨年6月9日に『中央日報』のシステムがハッキングされ、新聞製作用サーバーのデータが削除されるなどの被害を受けたサイバー攻撃について、「北朝鮮によるものとみられる」との捜査結果を発表しました。
 当局の発表によると、不正アクセスは少なくとも韓国内のサーバー2台と外国のサーバー17台(10カ国)が経由されていたことが判明。それらのサーバーのうち11台を解析したところ(4カ国の計8台はデータ開示を拒否した模様)、最終攻撃である中央日報の新聞製作用サーバーへの攻撃に使用された1台が、過去の北朝鮮サイバー部隊によるサイバー攻撃で使用されたものと同じサーバーだったことが判明。しかも、そのサーバーは北朝鮮国営の朝鮮逓信会社(KPTC=Korea Post and Telecommunications Corporation)が使用するIPでアクセスされていて、その接続元のPCは「IsOne」と名づけられていたということも判明しました(今回のサイバー攻撃では中央日報のサイトの改竄も行われましたが、その際、サイト画面に「Hacked by IsOne」と表示されるようにされていました)。
 また、一連の解析で、北朝鮮が過去のハッキングに使用したものと同一の悪性コードが使用されていたことも判明しています。
 北朝鮮の攻撃は周到に進められていました。初めて中央日報のサーバーにアクセスしたのは昨年4月21日。その後、1か月以上にわたって密かな情報収集と攻撃準備が進められ、6月7日にサーバー管理者のPCをハッキング。同9日に集中攻撃に出ました。
 タイミング的には、北朝鮮が昨年4月13日の銀河3号初号機の打ち上げ失敗の後、韓国との中傷合戦が過熱した際、4月23日には朝鮮中央テレビが「革命武力の特別行動がまもなく開始される」と宣言。攻撃の対象には韓国の保守系主要メディア各社も含まれるとしていたことに対応しているといっていいでしょう。
(しかも、北朝鮮はサイバー攻撃直前の6月3日にも、中央日報はじめ保守系メディアに対する攻撃を予告していました)。

 ちなみに、昨年4月にこの「特別行動」声明が発表された際、私は「サイバー攻撃の可能性が高い」と当ブログや「ひるおび」で予想してしていました。それほど難しくもない予想ですが、私の予想が当たることなどあまりないので(昨年4月と今年2月の核実験予想もマグレで当たりましたが)、いちおう書き留めておきます。
▽北朝鮮軍の特別行動(ワールド&インテリジェンス 2012年4月23日)
▽北朝鮮核実験と新軍部の動向(同4月27日)
▽北朝鮮のサイバー部隊(同4月30日)
(上記後者は北朝鮮のサイバー部隊の概要を紹介しています。ご興味のある方は是非どうぞ)
 ちなみに、上記記事でも言及していますが、サイバー攻撃は、とくに不正アクセスの部分で同じ手が通用しない世界なので、通常戦力とは違い、どこの国も自分たちの手の内を見せたりはしません。なので、今回の攻撃が彼らの本気のレベルのものかどうかはわかりません。決して侮ってはいけないと思います。
  1. 2013/02/27(水) 12:28:55|
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戦時作戦統制権の韓国軍への移譲が延期へ??

▽駐韓米国大使「韓国が準備不足なら戦作権移譲は不可」(中央日報)
 アメリカはこれまでアフガンやイランあたりに集中してきましたが、今後は北朝鮮対策にもやっと乗り出すのでしょうか?

 ところで、前々から気になっていたのですが、アメリカが軍事力の世界展開を縮小させ、紛争介入レベルも低下させている件について、よくわからない深読みを散見します(とくに利権陰謀論系とか)。
 もちろん経済的な利益追求の面もありますが、基本的には安全保障上の当然の政策でしょう。
 冷戦時代は、ソ連と熾烈な陣取り合戦をしていましたので、かなり自腹持ち出しでの世界展開もやむなしでした。世界警察の代わりを務める理由があったわけです。
 冷戦終結後は、アメリカ人ばかりが外国のために血を流す理由もないですから、当然ながら海外への介入は減ります。ただ、アメリカを標的とするイスラム過激派が台頭すると、その聖域を潰しておく必要が生じます。ですが、イスラム過激派の対米テロ拠点を潰してしまえば、あとは関係ありません。もちろんさまざまな要素が複雑に作用していますが、根底にあるのはそんな簡単な構図だと思います。
  1. 2013/02/22(金) 16:55:12|
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森=プーチン会談の茶番

▽森、プーチン氏の会談評価=「首相訪ロへ地ならし」-菅官房長官(時事)
 先ほど某テレビ番組でもこの話題をやっていましたが、もう完全に「プーチンは2島返還で決着をつけたがっている」という前提になっていました。何度も書いていますが、そんなことをプーチンはひとことも言っていませんね。どうともとれる曖昧な表現しかしていませんが、それは故意です。
 イルクーツク宣言がそれだ!ということにされていましたが、「1956年の日本国とソビエト社会主義共和国連邦との共同宣言が、両国間の外交関係の回復後の平和条約締結に関する交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した」だけです。あちらは「あれが出発点だけど、そこから両国が受け入れられる新たな解決法を探ろうぜ」ということしか言っていません。
 日本側も4島一括返還の要求を取り下げることはないでしょうし、ロシア側も現状を変更する気はないでしょう。なので、領土問題が進展しつつあるかのような報道は間違っています。ロシア側は領土を動かすつもりなどなく、領土問題を一時棚上げしたかたちの新たな実質的関係強化の枠組みを作りたいということではないかと思います。

 ところで、これまで「ロシアが2島返還を約束したことなどない」と指摘してきましたが、1度だけありました。
 ロシアのゲオルギー・クナーゼ元外務次官が昨年12月、北海道新聞に対し、以下のようなことを証言しました。
▽92年3月、日本側に領土問題で新提案を行った。
▽新提案は日ソ共同宣言に基づき、①歯舞、色丹2島を引き渡す手続きなどに合意②平和条約を締結③歯舞、色丹2島を日本へ引き渡す④その後、日露関係の推移を見て、ふさわしい雰囲気ができれば残る国後、択捉2島について協議するというもの。
 
 これに対して、今年1月8日、東郷和彦・元外務省欧亜局長が以下のように反論しています。
▽クナーゼ証言は間違いで、実際にはロシア側の提案は、「先行して歯舞・色丹2島を引渡し、その後、国後・択捉2島を継続協議。交渉がまとまれば平和条約を結ぶ」というもの

 私の知る限り、この2人の証言は、ロシア側が2島返還に具体的に言及したことを裏づける初のエビデンス情報です。
 ただですね・・・その時期が92年3月というのがどうにも???です。
 というのも、ちょうどその当時、私自身モスクワに居住しており、北方領土問題に関してモスクワ政界やロシア外務省をそれなりに取材していたのですが(クナーゼ本人も取材したことがありますし、ロシア外務省内の彼の腹心にもネタ元が何人かいました)、そんな情報はおろか、ロシア側から聞こえてくるのは、「領土を売るなんて、あり得ない」という発言ばかり。あるロシア外務省の役人は、「なぜ日本政府は、あり得ない領土譲渡にそんなに固執するのか? 日本外務省は形式だけでも話に付き合うように強く望むので、曖昧に付き合ってやっているが、いい加減にしてほしいのが本音だ」と言っておりました。
 他にもエリツィンの周辺だとか、政界幹部を結構取材しましたが、当時はモスクワの権力抗争も熾烈なものがあり、とくにナショナリズムは強固なものがあって、たとえエリツィンでも領土で譲歩すれば失脚していた可能性が高いと思います。対日交渉派だったクナーゼはたしかに一時期重用されますが、クレムリンでの発言力は皆無に近く、そんな大胆な外交政策を主導できたとは、にわかに信じられません(とくに東郷証言のような提案は、クナーゼの立場では無理だと思います。そこは日露当事者間で、曖昧な表現による誤解が生じていたのでしょう)。

 とはいえ、クナーゼが領土問題を解決して日露関係を動かしたいと考えていたことは、おそらく事実でしょう。それでかなり政治的に危険な綱渡りをやっていたということなのだと思います。
 ですが、それはクナーゼ独自の方針であって、クナーゼの退場とともに一緒に消し去られたプランなのではないかと思います。
 とにかくその後、エリツィンもプーチンも2島返還を明言していません。常に曖昧な表現しかしませんが、それは故意です。
 私自身は、戦争のどさくさに他国の領土を強奪したロシアは、速やかに4島を一括返還し、これまでの不法行為を日本国民に謝罪すべきと考えていますが、それと「情報を客観的に分析する」ということは別の問題かと思っています。
  1. 2013/02/22(金) 15:13:21|
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対米サイバー攻撃で名指しされた中国軍61398部隊

 まずは告知からですが、現在発売中の『週刊朝日』の記事「北朝鮮核ミサイルが飛来する日」で、コメントを採用していただいています。同誌では先週号に関連記事を掲載していただいたのですが、ちょうど発売日に核実験が強行されるというタイミングでした。いずれにせよ核ノドンの脅威は現実のものなので、少なくともミサイル防衛の強化は急務だと思います。
 また、本日は「核実験場で再実験の動き」のニュースも流れています。核問題は決して終わったのではなく、まだまだ続くとみるべきで、今後の動向に要警戒です。

 ところで、つい先ほど某メディアの方から下記の件で問い合わせがあったので、取り急ぎひとことだけ。
▽サイバー攻撃元は中国軍部隊…米情報会社(読売)
 同記事によると、サイバー攻撃の犯人は、中国軍の「61398部隊」だったそうです。
 この部隊は上海を拠点とする軍の総参謀部第3部第2局のことです。上海には対北米(アメリカとカナダ)を標的とする信号傍受分析機関として総参謀部第2部の「第2局」と「第12局」が置かれていますが、そのうちのひとつということですね。
 この部隊はもともと、北米の内外の通信を傍受して分析するのが主任務のシギント部隊ですが、衛星回線や光ファイバー回線への侵入能力があるうえ、おそらく米政府や米軍、米主要インフラなどのいくつかのクローズドなネットワークにも侵入できる可能性があります。さらに、アメリカの内部事情にも精通した分析官がいることもあって、最近はこうしたシギント部隊がサイバー・スパイの主部隊にもなっています。
 もともとシギントの部門は解放軍の正規隊員が主に行ってきましたが、サイバー・スパイ部門はそれだけでは能力的に不十分で、民間のハッカーやIT企業・研究機関と連携して民兵部門を組織しているともいわれています。
 米調査会社によれば、侵入者の侵入元が上海地区に集中しているとのことで、あまり高度に偽装されていない可能性がありますが、いずれにせよ国家によるサイバー攻撃はサーバーのデータをすべて開示することはありませんから、「自分たちは踏み台に利用されただけ」と言い逃れできます。そこがサイバー戦の難しさなのですが。
  1. 2013/02/21(木) 13:03:34|
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「脅威」の現実性評価

 中国海軍による火器管制レーダー照射を受けて、今週発売の週刊誌は「日中開戦」ネタが満載でした。
 その中で、『週刊現代』にコメントを採用していただきました(他にいくつか取材受けましたが、面白いことがいえないので不採用)。
 レーダー照射はたしかに状況によっては軍事衝突を引き起こし得る挑発行為ですが、日中に関して言えば、中国側も日本側が応戦しないのを承知でやっているわけで、そんなことではまず戦闘になりません。日中両国ほどの実力・存在感とその両国間関係があれば、開戦に至るにはかなり高いハードルがあります。ハラスメント合戦というのは今後も発生するでしょうが、要は駆け引き戦ということです、というような話をさせていただきました。
 もちろん将来的な軍事的緊張というものを想定して国防システムを準備しなければならないのは当然ですが、それはそれとして、「脅威」というものを現実性から考えることも重要でないかなと思います。最悪の事態に備えることは必要ですが、起こりそうなことと、起こりづらいことを分けて考えるということです。

 たとえば、まず起こらないだろうことは、私の考えでは以下になります。
▽日中全面戦争
▽日朝全面戦争
▽イスラム過激派が日本国内でテロ

 次に起こりづらいことは以下です。
▽日中が尖閣周辺限定で本格的戦闘
▽北朝鮮が正規の軍事作戦として日本を攻撃
▽イスラム過激派が在外日本大使館をテロ

 起こらない可能性が高いけれども、起こるかもしれないことは以下です。
▽中国軍が尖閣進出
▽近い将来の朝鮮半島有事
▽近い将来の金正恩政権崩壊

 起こる可能性がそこそこあるもの
▽尖閣海域でのちょっとした衝突
▽将来的な金正恩政権崩壊

 まず起こるだろうこと
▽中国の尖閣海域侵入常態化(日本の実効支配の崩壊)
▽北朝鮮の核ミサイル戦力増強
▽海外で日本人がイスラム・テロに巻き込まれる

 ざっとこんな感じでしょうか。
 こうしたことを勘案すると、まず喫緊の課題は、中国の尖閣侵入キャンペーンへの備え。それも有事ではなく平時でのカウンター策をもう今すぐ取り組むべきと思います。
 それと、軍事的脅威でもっとも恐ろしいのは、「将来的な金正恩政権崩壊」に付随する核ノドンの脅威です。他をいったんうっちゃっても、ミサイル防衛の強化は必要だという気がしますね。
 まあ、こうした脅威の評価は人それぞれで、異論のある方は当然いらっしゃると思いますが、上記は現時点での私の評価ということです。

 ところで、日中開戦シミュレーションの記事をみていつも思うのですが、どうして中国側のサイバー戦をスルーするのでしょうか。リアルに警戒すべきもののひとつだと思うのですが。
  1. 2013/02/16(土) 13:11:27|
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独裁を維持するもの

▽核問題:朴次期大統領「旧ソ連は核兵器があっても崩壊」(朝鮮日報)
 朴槿恵・次期大統領の発言は以下。
「北朝鮮が多くの核実験を行い、核兵器の能力を高めたとしても、国際社会では孤立し、国民を窮乏状態に陥れ、それによって国力を消耗させるようでは、結局破滅の道を自ら招くことになる。旧ソ連は核兵器がなくて崩壊したわけではないということを認識すべきだ」
 旧ソ連について、大枠ではその通りですが、直接的には情報公開と監視・統制の緩みが体制崩壊を招いています。
 北朝鮮の独裁体制を維持するためには、内外のレジーム保障システムが必要です。外に関しては、これは核ミサイル武装に尽きます。外から攻められない抑止力を持つということで、北はもう半世紀もかけて核ミサイル武装の目標に邁進しています。
 それより重要な対内政策としては、監視・統制の徹底に尽きます。もちろん経済状況を良くし、国民生活を良くすることは安定に寄与しますが、それだけで独裁は維持できません。もっとも重要なのは、恐怖支配を徹底されることで、実際、北朝鮮王朝3代はそのようにして維持されています。
 恐怖支配の道具ですが、一般国民に対しては、秘密警察、党、軍などを総動員して最優先事項として実施しています。秘密警察内部、軍内部に対しても、二重三重の監視・統制システムを作っています。
 北朝鮮政治の分析の際、軍部の掌握といった観点が非常に重要ですが、これはよく言われる「軍部の支持を得る」「軍部の歓心を買う」といったユルいものよりも、徹底的な恐怖支配に基づく「軍部の監視・統制」がより重要です。その仕組みはいくつもありますが、金正恩政権は現在、軍総政治局に強力な権限を集中させ、軍内部の危険分子・予備軍を徹底的に粛清しています。
 北朝鮮の独裁体制の2本柱は対外的な「核武装」と対内的な「恐怖支配」で、それは過去も現在も変更はないように見えます。最近、この前者について発言させていただく機会をいくつかいただいているのですが、後者についてはなかなか話す機会がありません。
 北朝鮮の経済状況はかなりひどいことになっているらしく、水面下では軍内部ですら不満の声が出てきつつあるという情報もありますが、独裁政権の最優先方針は、軍部の歓心を買うのではなく、「不満分子を殺せ」であることに留意する必要があると思っています。
  1. 2013/02/14(木) 13:13:26|
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ついに核の脅威下に入ったらしいのに・・・

 昨日、TBS「朝ズバ」で文字コメントのみ、「ひるおび」でスタジオ出演させていただきました。
 私はこれまで、テポドン騒動では「先島諸島に落ちるなんてまずありません」「日本の安全保障とはあまり関係ありません」、オスプレイでも「とくに危険だということではないです」と、たいていは煽り情報の大火を火消しする側の発言をしてきましたが(イスラム・テロ関連などでも、これまでずっと「日本で原発テロなどやりません」と言ってきました)、今回ばかりは北朝鮮核ミサイル武装の脅威のリアルさをなんとか認知してほしいと、微力ながらこうした機会に発言しました。
 ですが、私ごときの声ではもちろんなんともならず、予想はしていましたが、本日のメディア各社の報道をみると、「核実験」はすでに過去の話になってしまったような雰囲気です。
 ですが、これがイスラエルなら問答無用で空爆していますね。アメリカでも黙ってはいないはずです。
 私は自分が人間としてボケナスであることを自覚しているので、これまで「平和ボケ」という侮蔑表現を一度も使ったことがないのですが、これでいいのかなとは思います。もちろんリアルな脅威、そうでない脅威をしっかり区別して読者や視聴者に届けられていないメディア(私もその末端のひとり)の責任なわけですが・・・。
  1. 2013/02/14(木) 10:05:38|
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ニコ生【核実験を強行】どうなる北朝鮮?どうする日本?

 本日(日付では昨日)夜、ニコニコ生放送の緊急特番「【核実験を強行】どうなる北朝鮮?どうする日本?」に呼んでいただきました。朴斗鎮さん、井上トシユキさんとお話させていただきました。
▽【核実験を強行】どうなる北朝鮮?どうする日本?(ニコ生)
 ニコ生は反響がリアルタイムでわかるのが面白いですね。来場者数は2万6019人、コメント数は7414件でした。
 ちなみに、日曜日に呼んでいただいた同じ二コ生の下記座談会では、来場者数が2万6411人で、コメント数が5497件でした。
▽映画「ゼロ・ダーク・サーティ」公開記念/徹底討論「ビンラディン殺害の真実について語ろうぜ」
 来場者数は企画への関心度、コメント数は実際に見た人による内容への関心度(つまり面白さ)、ということでしょうか。まあ、マニア度の高いテーマのほうがコメントも自然に増えるような気はしますが・・・。
  1. 2013/02/13(水) 04:12:14|
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核実験 現時点でわかること

 核実験の情報は、まだ続報待ちの部分が多いですが、とりあえず現時点でわかること、わからないことは以下。

 まず、これが核実験かただの地震かということは、地震波の波形で判断できることで、今回、人工的な爆発によるものと断定できます。
 次に、核実験か、通常爆弾を使用した爆発か、ということは、実際には希ガスの検出がなければ断定はできませんが、今回の爆発規模が推定6~7キロトン(韓国国防部)ということですから、まず常識的に通常爆弾の線は除外していいでしょう。よって、なんらかの核実験が行われたと判断できます。

 実験の内容ですが、爆発規模から考えて、一部に推測が出ていた水素爆弾はまず考えられません。ブースト型核爆弾の可能性もまずないといえます。
 北朝鮮当局は「威力が高く、小型・軽量化したもの」との声明を発表していますが、やはりプルトニウム型の小型化実験の可能性がもっとも高く、次いで濃縮ウラン型ということになります。プルトニウム型の場合、ミサイル弾頭に搭載できない中途半端なサイズのものを実験する意味はまったくないので、やはりこの実験によって、核ミサイル武装を実現したと見なすべきです。
 濃縮ウラン型であれば、サイズの大きな爆弾なら、とくに実験などしなくても実用性がほぼ担保されますから、実験を行なったのであれば、ミサイル搭載可能なサイズの爆縮型とみていいでしょう。
 プルトニウム型の場合、北朝鮮がどれほどの効率化を実現化しているかにもよりますが、推定では現時点で6~10発分程度のプルトニウムの備蓄があると思われますので、今後、それを増やすために原子炉と再処理施設という生産ラインを復活するかどうかが注目されます。
 ウラン型の場合、仮にすでに公表済みの寧辺のウラン濃縮施設だけなら、遠心分離器2000個程度と思われますので、まだ量産体制にはなっていません。が、他に秘密の施設をどこかに作っていた場合、あるいは作りつつある場合、かなりやっかいな事態になります。
 なお、今回の実験がウラン型かプルトニウム型かは、地震波測定だけからは判断できません。早い段階で希ガスが採取され、その分析によって判断できる可能性がありますが、できない可能性もあります。

 今後ですが、日米韓がそれぞれ経済制裁を強化するとともに、国連安保理でも制裁決議が行われることになります。経済制裁の強化は当然ですが、今回はおそらくそれに加えて、戦略物資の密輸出入をブロックするための船舶検査が俎上に乗るでしょう。
 仮にそうなれば、日本も海保・海自が参加することになります。もっとも、臨検などは米軍などにお任せし、実際にはP-3Cなどによる監視活動がメインになる可能性が高いのではないかと思います。
 あとは、日米韓でミサイル防衛強化が模索されます。日本は巨額の経費と運用要員確保という難題はありますが、既存のSM-3、PAC-3に加え、THAAD導入を検討すべきと思います。
 米韓連合軍は、軍事演習を強化するなど、対北朝鮮圧力を高めるでしょう。米軍がすぐに北朝鮮を攻撃するような事態にはなりませんが、米太平洋軍の対北朝鮮作戦計画の準備の強化に、徐々に動いていく可能性があります。このあたりは中国との外交も絡んでくるので、どの程度の動きかは現時点では読めません。基本的には朝鮮半島でのことで、日本とは直接あまり関係ありませんが、いわゆる周辺事態の対米軍支援の部分が、さらに強化される可能性はあります。
  1. 2013/02/12(火) 16:57:31|
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核の小型化で日本が射程内に入る脅威

 ほんのちょっと前に韓国メディアから「核実験場から人員撤収」「中止か?」と報じられたばかりですが、実験に備えて現場から退避しただけだったのかも。
 北朝鮮の核実験は、何度も書いていますが、核ミサイル武装に向けた技術的なステップで、政治的な内外へのアピールはあまり関係ないと思います。おそらく今回の実験によって、核ノドンが完成となる可能性が非常に高いと思います。

 ちょうど本日発売の『週刊朝日』に、「実はテポドン発射実験より深刻 北朝鮮 核の小型化で日本が射程内に入る脅威」という記事を寄稿しています。日本は核ノドンの脅威を深刻に受け止めるべきだと思います。

 また、本日発売の『フラッシュ』で、「自衛隊X中国海軍」という記事と、「ゼロ・ダーク・サーティ」公開に合わせた「CIA最先端ハイテク捜査技術を暴く」という記事にコメントを採用していただいています。
  1. 2013/02/12(火) 13:05:57|
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速報 核実験?

 未確認ですが速報が出ました。とり急ぎ第一報
  1. 2013/02/12(火) 12:14:02|
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核実験中止???

▽北朝鮮、「重大措置=核実験」は早合点と非難 米を揺さぶりか(産経)
 祖国平和統一委員会のサイト「わが民族同士」にて発表。「米国と敵対勢力が、3回目の核実験を行うと早合点し、実行すれば『先制攻撃』まで行うべきだと無駄口をたたいている」だそうです。
 あれほど明言していたので、何があっても強行する覚悟だと思っていたのですが、中国が強硬に反対したか、アメリカの報復を恐れたか、あるいはその両方かといったことかと思いますが、どうにもよくわかりません。北の内部で路線対立のようなものが起きている徴候は見えないですが・・・
 今後の動向にとにかく注目です。

  1. 2013/02/11(月) 01:06:50|
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冷静に、慎重に、現実的に、大胆に

 昨日、TBS「報道特集」でコメントを採用していただきました。北朝鮮核ミサイルの件です。
 また、現在発売中の『週刊新潮』でコメントを採用していただいています。北の工作機関のネタです。
 また、本日発売の『軍事研究』で、「ミサイル成功の陰で軍人トップを大粛清」という記事を寄稿しています。
 軍研3月号は、他にも興味深い記事が多いです。最近の軍研は、世界の安全保障情勢全般に関して非常に示唆に富むアップデートな記事が増えているように感じますね。

 北朝鮮の核実験、あるいは中国レーダー波事件、それに尖閣問題もそうですが、「熱くならずに、冷静に対処せよ」との主張を散見します。当然だと思います。こうした問題は、冷静に状況を分析し、慎重に対策を打ち出すべきです。感情で報復するなど、最悪でしょう。
 しかし、冷静に対処することと、「何もしない」はまったく違うと思います。冷静に分析し、慎重に判断した後は、現実的に、大胆に対策を進めるべきです。
 私は、北朝鮮の核実験は、日本の安全保障の根底を揺るがす大事件だと考えています。冷静に日本の安全保障を再検討し、早急にその強化を図るべきだと思っています。
 また、東シナ海の中国との国境問題は、中国側が着々と尖閣奪取の手を打ってきているのに、日本側の対処が信じられないくらい遅いと考えています。冷静に、慎重に、はいいのですが、そこで終わってしまって、ただ口で抗議するだけでは・・・これでは中国側はますます本気で尖閣を取りに来ると思います。
  1. 2013/02/10(日) 15:22:12|
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「ゼロ・ダーク・サーティ」モデルは実在の女性分析官

「ゼロ・ダーク・サーティ」の主人公は、実在のCIAビンラディン追跡班の女性分析官です。この人物について詳細は報じられていませんが、2011年7月にAPが配信した記事にちょっと出てきます。この作品の制作チームはおそらく、このAP記事をきっかけに女性分析官を主人公にするアイデアを考えたのではないかなと推測します。
 この記事はインテリジェンス方面ではたいへん注目を集めた記事で、その頃、私もこの記事についてブログで触れています。
▽CIAビンラディン追跡の内幕(2011/07/29アップ)⇒なかでも興味深いのが、7月5日にAP通信が配信した「ビンラディンを狩り出した男」という長文記事で、そこではビンラディン追跡で中心的な役割を果たしたCIA幹部分析官の詳細な経歴が紹介された。

 当該記事は以下です。
▽Osama Bin Laden's Hunter: CIA Analyst Examined(元記事は2011年7月5日:AP)
 同記事は、ビンラディン追跡班を主導したCIA幹部の「ジョン」という人物のことを追った記事ですが、その中にこんな記述があります。
 All the while, John's team was working the list of bin Laden leads. In 2007, a female colleague whom the AP has also agreed not to identify decided to zero in on a man known as Abu Ahmed al-Kuwaiti, a nom de guerre. Other terrorists had identified al-Kuwaiti as an important courier for al-Qaida's upper echelon, and she believed that finding him might help lead to bin Laden."They had their teeth clenched on this and they weren't going to let go," McLaughlin said of John and his team. "This was an obsession."
 It took three years, but in August 2010, al-Kuwaiti turned up on a National Security Agency wiretap. The female analyst, who had studied journalism at a Big Ten university, tapped out a memo for John, "Closing in on Bin Laden Courier," saying her team believed al-Kuwaiti was somewhere on the outskirts of Islamabad.
 映画では、年齢の整合性を合わせるためか、女性分析官は高卒でCIAに入ったとありますが、実際には大卒ですね。

(追記)
 ところで、タイトルの「ゼロ・ダーク・サーティ」ですが、ビンラディン襲撃作戦の開始時間が深夜0:30だったことに由来しています。
 もっとも、これは作戦出撃地となったアフガニスタン時間。実際に現場となったのはパキスタンで、両国間には30分の時差がありますから、報道では通常、作戦開始時刻は「現地時間01:00」と記述されています(拙著でもそうしています)。
  1. 2013/02/09(土) 05:10:37|
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ブースト型核分裂弾説が浮上

▽【図解・国際】北朝鮮のブースト型核分裂弾の構造(2013年2月)
 韓国軍の鄭承兆・合同参謀本部議長が6日、「ブースト型核分裂弾を試す可能性も排除できない」と発言したことで大きく注目を集めているブースト型核分裂弾。翌7日にも国防省報道官が、「(同型を試す可能性は「相当ある」と発言しています。
 そうした見方が浮上した理由は、北朝鮮が2010年5月に「核融合反応に成功した」と公表したことと、今回、「高いレベルの核実験を行う」と表明していること、それに今回、実験場の2ヵ所の坑道を準備している様子がみえ、2発同時実験を行なう可能性があることです。
 2010年の公表のときは、「何をバカなことを!」と一蹴した専門家が多かったのですが、仮にそれが事実だったすれば、ブースト型の実験が行なわれる可能性もなくはないかもしれません。
 もっとも、そうなれば2段階すっとばした実験となりますので、いきなり今回そこまでやれるかどうかはわかりません。軍事的には、北朝鮮がいまもっとも必要としているのは核爆弾の確実な小型化ですから、まずはプルトニウムの小型起爆装置の実証実験、さらに現時点でウラン型に邁進するつもりなら、シンプルなウラン型の実験をすることになると思うので、2発同時実験ならば少なくとも1つはどちらかということと思います。
 それと、2発同時の可能性についてですが、たとえば同じ型の爆弾でも、起爆装置をレベル違いの2種類で検証実験しておきたいという可能性もあるかと思います。いずれにせよ、これは想像するしかない話ですが、さまざまな可能性があるということですね。
  1. 2013/02/09(土) 01:48:40|
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映画「ゼロ・ダーク・サーティ」関連

 告知です。
 今月10日(日曜日)21時~23時、CIAビンラディン追跡班の女性局員を主人公にした映画『ゼロ・ダーク・サーティ』の公開(2月15日)に合わせたニコニコ生放送のネット番組に呼んでいただきました。ご案内はこちら⇒▽映画「ゼロ・ダーク・サーティ」公開記念/徹底討論「ビンラディン殺害の真実について語ろうぜ」

 また、現在、全国のTOHOシネマズで配布している『TOHOシネマズマガジン』で同作品の紹介頁の監修を、全国のシネコンで配布している『月刊シネコンウォーカー』で同作品について短い解説文を書かせていただいています。

 それと、同作品の劇場配布チラシにも解説文を書かせていただいてるのですが、先日、近所のライトオンで買い物をしたところ、同作品の鑑賞券プレゼント・キャンペーン中で、レジで現物をゲットしました。
CINEMA.jpg

 アメリカでも注目されたこの映画ですが、けっこうスピーディにストーリーが展開するので、鑑賞される方は、その前に拙著『ビンラディン抹殺指令』を読んでおくと100倍楽しめます・・・かも。
▽ビンラディン抹殺指令
ビンラディン抹殺指令表紙

 映画に出てくるエピソードはほぼ同書内で書いたことと同じで、それ以外のこともだいたいは欧米のメディアやドキュメンタリーで知っていた内容だったのですが、映画版で1点だけ初めて知ったことがありました。
 ビンラディンの連絡員の電話を特定した経緯ですが、その連絡員の実親の電話を張っていてキャッチしたそうです。それまでは、パキスタンのイスラム指導者の通話先からキャッチされたという情報が出回っていました。制作チームはそのあたりのことはかなり調査したようですから、映画での情報がおそらく正しいのでしょう。
 あまり詳細に書くとネタバレになってしまうので、これ以上は自粛しますが、話題の映画ですので、ご興味のある方は是非、劇場でどうぞ。
  1. 2013/02/07(木) 17:18:52|
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実現可能性はないが圧力材料にはなるシャラ交渉案

 シリア国民連合のハティーブ議長が、アサド政権との対話路線を打ち出しました。
 シリアでは政府軍と反政府軍の攻防が現在、ほぼ膠着状態に陥っています。戦局は反政府軍優勢で推移していたのですが、政府側がまだまだ武器弾薬の備蓄が豊富なのに対し、反政府軍側ではとくに弾薬の欠乏が顕著になっています。
 そんな状況の中、政府軍による市街地砲爆撃で一般市民の死者が増え続けているため、これを止めるためにハティーブが方針を転換したという流れです。
 もっとも、反体制派陣営の主流では、大量殺人者であるアサド本人との妥協は考えられません。国民連合の内部でもいろいろ議論はあったのですが、ハティーブはそこで、「アサドの命は助けるが、政権から外し、シャラ副大統領と対話する」というプランを提案しました。
 ですが、これは実際にはアサド側が受諾する可能性はほとんどないでしょう。アサド政権でのシャラのポジションは言葉どおりの「お飾り」であり、民衆蜂起後はむしろ「反乱容疑者」として厳しい監視下におかれています。アサドがそんな人物に権力委譲するなどということは考えられません。
 なので、ハティーブ提案の実現可能性はほぼゼロと見ていいですが、外交上は、アサドの本性を暴きだす効果は多少期待できます。国際社会はハティーブ提案を強力に後押し、アサドに圧力をかけることが急務だと思います。
  1. 2013/02/06(水) 11:43:24|
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北朝鮮の思惑に対する過大評価と、核ミサイル技術に対する過小評価

▽ケリー米国務長官「北朝鮮、核実験で代価支払うことに」(中央日報)
 アメリカはこれまで北朝鮮問題を重要視せず、後回しにしてきましたが、核ミサイル武装を目前に、多少は危機感を持ちつつあるようです。実際、アメリカが軍事的にどのように動くかで、朝鮮半島情勢が決まってくる部分は非常に大きいでしょう。
 現時点では、仮に核実験を実行したとしても、すぐに米軍が大きく動くということはないでしょうが、朝鮮半島有事に備えた具体的な作戦計画とその準備が着実に進展するでしょう。
 アメリカが軍事的圧力を高めることが、現実には北朝鮮を押さえる唯一の道かもしれません。北朝鮮はアメリカを妥協させるために故意に軍事的緊張を高めているといった見方が多いですが、北朝鮮と米韓軍の戦力比は圧倒的なので、北朝鮮はむしろ「決定的な」軍事的緊張を避けたいのではないかと思います。
 過去にも、北朝鮮が唯一妥協したのが、94年の金日成=カーター会談だけです。当時は、クリントン政権が寧辺への限定的空爆をチラつかせたため、金日成が核開発凍結に応じました。それ以降、北朝鮮はバンコ・デルタ・アジアの口座凍結などで一時的・部分的に妥協の姿勢を見せたことはありますが、決定的な妥協は94年だけです。
 北朝鮮が核ミサイル開発でアメリカや国際社会を恫喝・威嚇しているといった見方も、北朝鮮を非常に過大評価していると思います。北朝鮮はむしろ、四面楚歌状態で常にアメリカに怯えているのではないかと思います。
 軍事的挑発についても、北朝鮮側よりもむしろ米韓軍のほうが恒常的に行っていますし、非民主主義体制、外交的孤立、経済危機、軍事的劣勢など、どれをとっても政権存亡が綱渡り状態の北朝鮮は、外部が想像するよりずっと強い危機感を持っているのではないかと推測します。したがって、北朝鮮の瀬戸際外交の虚勢をまとも受け取る必要はないと思います。

 上記したように、主要なメディア論調をみるに、「北朝鮮の思惑」に対して過大評価する傾向を感じるのですが、その反対に、核とミサイルに対しては、むしろ過小評価する論調をときおり見受けます。
 北朝鮮の全体の技術力は国際水準では圧倒的に低いものですが、それでも核とミサイルに関しては、すでにかなりの長期にわたり、国の資金の多くを投入して開発に邁進してきました。北朝鮮が国外で入手し得る民生コンピューターの性能もかなり高度なものになっていますし、イランとの技術提携もあります。その分野における(&サイバー戦部隊も)北朝鮮の力を過小評価すべきではないと思います。
  1. 2013/02/06(水) 10:27:53|
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尖閣の「棚上げ」幻想は捨てるべき

▽中国海軍:自衛隊護衛艦に火器管制レーダーを照射 (毎日)
 また、あいかわらず領海や接続水域への侵入も続いていますね。
 ちょっと前に中国側が尖閣の共同管理を提案したというような報道があって、日本の一部には領有権の棚上げ歓迎論も出てきて、対する側から「固有の領土を棚上げとはけしからん」との反論も出たりしましたが、現実問題としては、日本側内部の「棚上げ派VS実効支配強化派」ではなく、中国の一貫した尖閣併合路線に対しての「黙認派VS実効支配強化派」という構図になります。
 中国側は尖閣への野心を「行動」で示しています。今後しばらく、軍事衝突に至らない線でのチキンゲームで、実績を積み上げてくるでしょう。
 棚上げなどというのはもう幻想だと認識し、日本側も「軍事衝突に至らない線でのチキンゲームで、いかに実績を積み上げるか」を真剣に考えるべき局面かと思います。

(追記)
 現在発売中の「週刊アサヒ芸能増刊 日本の領土防衛の真実 2013年 2/20号」(⇒アマゾン)にコラムを2本寄稿しています。「尖閣を守りたいなら『平時の既成事実化競争』に負けてはならない」と「『もし日本と中国が戦えば~』シミュレーションは、なぜ『自衛隊の圧勝』論と『中国軍に敗退』論に分かれるのか?」の2本です。
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  1. 2013/02/05(火) 22:00:22|
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ムスダン、KN08、プルト型小型起爆装置、濃縮ウラン型、水爆をいっきに進める可能性も

▽核実験超える挑発示唆 北朝鮮、米の譲歩狙いか(産経/共同)
「米の譲歩狙いか」の意味がよくわかりませんが、それはさておき、同記事によれば、朝鮮中央通信が「敵対行為に対するわれわれの選択は想像を超えたものになる。核実験以上のこともしなければならないというのが最終結論だ」との論評を発表したとのことです。
 核実験以上のこと??? やはり移動式発射基の中距離弾道ミサイル発射実験のことでしょうか?

 また、こんな報道もあります。
▽ウラン、プルトニウム同時も=北朝鮮核実験、水素爆弾も-ヘッカー氏(時事)
 ヘッカー米スタンフォード大教授が「ウラン型とプルトニウム型の2発を同時に行う可能性がある。水素爆弾もあり得る」と発言しています。2ヵ所同時説は李明博大統領もそうした見方をしていますね。
 そうであれば、北朝鮮はいっきに核ミサイル武装に向けて、いっきに勝負をかける気だということになります。外交カード論を仕掛けて国際社会を欺き、時間稼ぎに成功した北朝鮮の心理戦が勝利したということでしょうか。
  1. 2013/02/05(火) 21:35:33|
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やはり中距離弾道ミサイル実験も同時強行?

▽米韓、北朝鮮核実験とミサイル発射に警戒(TBS)
 JNNの取材に対し、米韓の国防当局者が「射程6000キロ程度の移動式弾道ミサイル(KN08)が核実験とあわせて発射される可能性が高い」と証言したとのことです。
 これは、1月18日付『ニューヨーク・タイムズ』が「KN08を国内各地に移動させていることをアメリカ当局がキャッチした」と報じたことと関連しているものと思われます。
 北朝鮮はすでに「アメリカに対する防衛力の向上」を口実に軍事的な活動をすることを公言していますから、この機会に「やれることはやっておこう」とする可能性は確かに高いですね。
 KN08が本当に飛ばせるものかどうかは不明ですが、もしも完成しているなら、それはもちろん実験しておきたいところでしょう。また、ムスダンもまだ発射実験をしていませんので、こちらも発射を強行する可能性は非常に高いと思います。さらに、ノドンの再実験もあるかもしれません。
 ムスダンもKN08も、軍事パレードでの映像以上の情報はなく、仕組みも性能も推測するしかなかったわけですが、これで正体が多少わかるかも、です。
 また、仮に発射実験を行なうとすれば、具体的にどこで、どんな実験になるかも注目です。

(追記)
 今回の核実験準備やミサイル発射などに対して、韓国メディアではあいかわらず「緊張を高め、アメリカを交渉に引きずり出し、平和条約と経済援助を得るのが目的だ」というような論調が多いですね。日本でもそうした見方はむしろ主流派となっています。
 無論、そうした「穿った見方」があってもいいとは思います。が、情報分析の観点であれこれ検討してみたのですが、どうしてもその根拠は非常に希薄だとしか思えません。
 これは何度も書いてきたことですが、また書きます。
 金正恩政権がアメリカに独裁政権を認めさせて平和条約を締結したいということと、できれば経済援助を得たいということは、金正恩政権の利益になることですから合理的ですが、他方、軍事的緊張を高めることは金正恩政権にはマイナスですし(国内の引き締めという見方もありますが、北の体制からすると、そちらは強権で比較的どうとでもなります。それより、米韓と戦争になれば、軍事力に劣る金正恩体制は存続すら危うくなります)、経済援助など、そこそこもらっても核ミサイル開発経費よりずっと小額ですから、理由にもなりません。
 対米交渉目的アピール説(=外交カード論)は、つまりは北朝鮮性善説に拠っていますが、多分に分析者の願望が入っている気がしてなりません。
金正恩政権のサバイバル戦略としてもっとも合理的なのは、「軍事的緊張⇒米朝交渉⇒平和条約」ではなく、「核ミサイル武装⇒米朝交渉⇒平和条約」です。しかも、政権防衛上もっとも重要なのは核ミサイル武装のほうであって、平和条約などはべつになくとも構いません。それはあったほうが政権にもベターですが、それが政権維持を担保する最重要要件とはなりません。条約など、状況や条件次第で破棄され得るものですし、北朝鮮に内乱が生じた場合などもどこまで適用されるか保証はありません。
 その点、政権側に物理的な対米核抑止力があれば、北朝鮮は米軍に怯えなくてもよくなります。金正恩にとって、手が届くところにまでに来た決定的な戦略兵器を得ることなく、対米交渉など本音では考えていないでしょう。軍事的緊張だとか、対米アピールなどはむしろ、核ミサイル開発にとっては逆効果です。できれば放っといてもらいたいことでしょう。そこは目的と手段をきっちり見極める必要があると思います。
 国際社会は(むろん日本政府も)、北の交渉戦術に騙され、時間稼ぎを許してしまった挙句に、核ミサイル武装一歩手前まで許してしまいました。北朝鮮は何が何でも核ミサイル武装を最優先しているとの認識で、対策を練る必要があるのではないでしょうか。
  1. 2013/02/05(火) 02:44:39|
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革命的人民解放党・戦線(DHKP/C)とは

 在トルコ米国大使館前の自爆テロは、極左組織「革命的人民解放党-戦線(DHKP-C)」によるものだそうです。
 なんとも懐かしい名前の登場です。だいぶ昔に書いたことあるなと思い、デスクトップ検索をしたら、2005年の『軍事研究』の「ワールドワイド・インテリジェンス」欄用の元原稿に発見しました。
 以下、当時の原稿です(ギリシャの極左組織と合わせての記事だったのですが、ギリシャの部分は割愛します)。

 レバノンから送還されてきた日本赤軍“コマンド”がいずれも五十~六十代なのを見ると、時の流れをつくづくと感じてしまうが、それでも、彼らの“同期生”である老テロリストたちが世界ではいまだに活動しているというニュースを紹介したい。
 ひとつは、トルコの「革命人民解放党=戦線」(DHKP-C)のメンバー十四人が、イスタンブール警察により逮捕されたという事件で、彼らは、(2005年?)三月八日の「世界女性デー」の会合を襲撃する計画を立てていたというものである(三月二日付アナトリア通信)。テロ・グループのうちの二人は、隣国ギリシャで訓練を受け、作戦に加わるために入国していたという。
 同組織はもともと、冷戦時代にNATOの前線基地となったトルコで、都市部の左翼学生運動が中心となって結成された組織で、源流組織の創設は一九七〇年にさかのぼる。七二年に源流細胞が組織された「アルメニア解放秘密軍」(ASALA:現在は活動停止)や七四年結成の「クルド労働者党」(PKK)といった“名の知られた”過激派たちより、先輩格にあたるともいえるだろう。
 当初は「トルコ人民解放党=戦線」名で発足したが、内部分裂を経て七八年に、より過激な「革命的左翼」(通称・デブソル)としてテロ路線に邁進。とくに八〇年代を通して軍部の将校多数を襲撃した。
 九〇年代に入ると、攻撃目標をもっぱら米国関係者に変更。九四年に現組織名に改称してからは、ときおり思い出したように、観光産業や資本家を襲撃する程度に留まっていた。
 学生活動家だった幹部たちもやはり高齢化を迎えていることと思われるが、老いたりとはいえ、極左組織を侮ってはいけないと思わしめる事件を、九六年に起こしている。
 同年一月、富豪として知られる実業家オスデミル・サバンチを、イスタンブールの完全防備の事務所ビル内で暗殺。さらに同年六月から九月にかけて、イスタンブールの国家警察本部などをLAWロケット砲で攻撃したのだ。
 経済成長が著しいトルコ社会で、極左組織が台頭する要素はもはや皆無に等しいが、テロ組織に対する警戒は緩めてはならないということだろう
  1. 2013/02/03(日) 07:29:49|
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ウラン型実験で全面対決へ?

「本当は核実験をやる予定はなかったのに、アメリカの横暴のせいで自衛のための核武装強化を余儀なくされた」といった意味のことを北朝鮮が言い始めました。
 案の定ですが、この言い方からすると、「もともと平和利用の発電用だったウラン濃縮も、アメリカのせいで軍事転用に追い込まれた」と繋げる気なのかもしれません。
 これまで私は、端緒についたばかりのウラン濃縮は、もうしばらく平和利用の建前を掲げて、その間に高濃縮ウラン量産体制をひそかに整備したほうが北にとっては得策だと思うので、今度の核実験はプルトニウム型の起爆装置小型化実験ではないかと推定していたのですが、ウラン型にいっきに踏み込み、ウラン濃縮の軍事利用をカミングアウトする可能性を無視できなくなってきました。
 既存のウラン濃縮施設の本当の規模と稼動状況がわかりませんが、ある程度、目処が立っているなら、それはプルトニウム生産ラインの復活(原子炉+再処理)よりも、ウラン型メインのほうが今後の展開が有利になるかもしれません。
 しかし、仮にそうだとすると、これまで「平和利用だ」と主張してきたものを覆すわけですから、過去の路線の継続であるプルトニウム型の実験とは違い、ホンネ全開の対米対決モードに突入することになります。「ならず者国家」度のアップにともない、国際社会の圧力はいっきに高くなりますが、北はこのまま核武装国家としてアメリカと渡り合う覚悟を決めたということでしょうか。 

(追記)
 昨日、「ひるおび」呼んでいただきました。アルジェリア人質事件の関連でした。
  1. 2013/02/01(金) 17:56:04|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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