fc2ブログ

ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

金正恩=張成沢が手をつけた北朝鮮軍部掌握

 昨年末時点でトップ4だった人物が全員更迭された北朝鮮軍部ですが、それでは現在、指導部はどうなっているのでしょうか?
 まず、最高権限はもちろん金正恩ですね。で、その次が軍部ではないですが、張成沢でしょう。金正恩と張成沢の意向に忠実に動いているのが玄永哲・軍総参謀長ですが、彼は自分では何かを決定する権限はないでしょう。玄永哲をはじめ軍部上層部を監視しているのが崔竜海・軍総政治局長ですが、彼は張成沢の完全な子分といっていい人物です。
 今回失脚した金正覚は、これらの傀儡将官たちよりは実績・実力で一歩抜きん出ていた人物ですが、要は力を持ちすぎてロイヤルファミリーに警戒されたということかもしれません。
 そうすると、他にも「力を持ちすぎた将官」は粛清される可能性があります。筆頭は金元弘・国家安全保衛部長あたりでしょうか。
 彼も金正日晩年期から急速に重用された人物で、軍内秘密警察だった軍保衛司令部司令官、軍総政局副局長を経て、金正恩体制下で前の実力者(昨年末の軍部トップ4だった第1副部長)が排除された後に国家安全保衛部長に就任しました。今回更迭された金正覚とともに、金正恩体制発足後の軍内粛清で功績があったとみられています。
 北朝鮮では、秘密警察畑の実力者で長生きした人はあまりいません。最高権力者に警戒されるからです。彼あたり次は危ない気がしますね。
 秘密警察畑といえば、少し違いますが、軍の諜報謀略機関のトップである金英徹・軍偵察総局長あたりも、急速に実力を付けて来た人物なので、権力抗争を生き抜けるかどうか、逆にわかりません。11月、金英徹は大将から上将に降格されましたが、まさにその微妙なポジジョンを表しています。
 なお、やはり実力者で、次のエースと目されていた崔富日・軍作戦局長も、11月、大将から上将に降格されています。また、前述した玄永哲・軍総参謀長は、今年7月に大将から次帥に昇格したばかりですが、10月に再び大将に降格されています。結果、次帥で実権ポストを握っている人物は、前出の崔竜海・軍総政治局長くらいなものになりました。金正恩は少し次帥乱発気味でしたが、軍部上層部の粛清をほぼ終わらせたので、元に戻したということでしょうか。
 このあたりの采配は、金正恩が細かく考えているとも思えないので、おそらく張成沢の入れ知恵なのではないかなと思います。

 ところで、先週だったか金正恩が国家安全保衛部を訪問したとのニュースがあったと思いますが、同部および軍偵察総局による対韓工作は、相変わらず活発に行われています。
 4日前のニュースにこんなものもありました。
北朝鮮の「暗殺道具」、韓国当局者がCNNに公開(CNN 11.26)
 ペン型毒針は昔からの定番ですが、懐中電灯型銃は初めて見ました。金元弘も金英徹も忠義ぶりをアピールするために、さらに韓国でのテロに一所懸命励んでいくかもしれません。
スポンサーサイト



  1. 2012/11/30(金) 20:36:57|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

情報インフラ遮断の狙いは何か

 シリアではダマスカス中心部~国際空港の幹線道路が戦場となり、空港が閉鎖されています。空港が自由軍の手に落ちれば包囲網がまた大きく進むことになりますが、政府軍もそこは全力で守備しますから、そうは簡単にはいかないかもしれません。
 とにかく自由軍の攻撃がダマス中心に向かってきているため、ダマス市内では現在、市民生活が成り立たないほど多くの検問所が設置され、市民の移動が遮断されています。
 また、昨日より国内のインターネット通信網、携帯電話、一部の固定電話が遮断されています。それにより、とくにユーチューブでの映像発信が滞っています。ネットではこの間、政府側のプロパガンダが大量に流されているので、政府側が宣伝戦に出たのか、あるいは情報を遮断して徹底した無差別殺戮を行ったり、それこそクラスター爆弾などを大量に使用したりするつもりなのか、そのあたりの意図はまだよくわかりません。
  1. 2012/11/30(金) 08:57:56|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

北朝鮮人民武力部長 金正覚から金格植へ交代

 金正恩政権がまた大胆な人事を行いました。人民武力部長を、金正覚から金格植に交代です。
 金正覚は4月に人民武力部長に就任したばかりですが、わずか半年での更迭となりました。これで、昨年末の金正日の葬儀で霊柩車に付き従った軍部トップ4人は、全員が第一線から弾かれたことになります。かなり強引な人事が続いているといっていいでしょう。
 なお、金正覚は2007年3月から、軍内の強力な監視機関である朝鮮人民軍総政治局第一副局長となり、金正恩体制発足後も軍内粛清で中心的役割を果たしていた人物。別格の張成沢以外では北朝鮮指導部でもトップ級のポジションにいましたが、半年での更迭はおそらく失脚に近い扱いになっているものと思われます。
 他方、サプライズはやはり金格植の復権ですね。金格植は野戦指揮官畑の軍部強硬派の大物で、元総参謀長でしたが、一時降格されて第4軍団長となり、延坪島砲撃事件などを指揮しています。
 軍部強硬派の最右翼の実力者でしたが、昨年末の金正日の葬儀委員会名簿から漏れ、完全に失脚したものとみられていました。それが今月、再び大将にカムバックし、その直後の完全復活です。
 張成沢とは合わない人物かと思っていましたが、どういう経緯で復権がなったのかはわかりません。先に失脚した(現在、温泉施設で軟禁中と報じられましたね)李英鎬・前総参謀長のライバルだったので、李英鎬の失脚が関係しているのかもしれません。
 あるいは、テポドン発射や核実験などを金正恩は本当に考えていて、対外緊張激化が予想されることが関係しているのかもしれませんが、そのあたりも部外者にはわかりません。
 韓国の聯合ニュースや中央日報によると「金第1書記が自身に対する忠誠心を基準に、軍首脳部を入れ替えている兆候が明確」「70~80代が中心となっていた軍団長級幹部の30%以上が入れ替わり、40~50代が前面に登場するなど、大々的な世代交代が行われた」ということです。
  1. 2012/11/29(木) 22:43:07|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

今回ばかりはなりふり構わず、シリア書籍企画にて求む!版元様

 シリア情勢は世界レベルでもたいへん重要な問題だと思うのですが、どうも日本の人々には馴染みが薄く、残念なことに、あまり関心をもたれていません。
 私はすでに公表したように、妻がシリア人で、親族が今もシリア国内に多数居住しているということで、今回の革命は最初の段階からフォローしています。それで現在、シリア内戦の真実のドキュメントをなんとか書籍化したいといろいろ企画を考えてはいるのですが、力不足のために実現できないでいます。
 私自身、長く出版プロデュース的な仕事もやってきていますので、ネタ的になかなか難しいのは充分に理解していますが、いずれにせよこのテーマは自分の義務と考えています。
 なので、今回ばかりは、なりふり構ってはいられません。
 どんなかたちでも構いませんので、興味のある版元様がおられたら、是非ともご検討をお願いいたします。
(もっとも、「アメリカとイスラエルの陰謀だ」「ゲリラは外国人テロリスト」「アサド大統領は改革派」というような立場では勿論できませんが)

 ところで、本日のシリア関連のニュースに、以下のような話がありました。自由シリア軍がSA-7を制圧した政府軍基地から押収した映像を、数日前に当ブログで紹介しましたが、さっそく戦果を上げたようです。
▽シリア反体制派が政府軍機を撃墜、対空ミサイル活用か(CNN日本版)
▽シリア反体制派、政府軍ヘリを初めて撃墜 ネットで公開(朝日新聞)
 後者は記事中、対空ミサイルでは初となっていたところを、タイトルで端折って「初めて撃墜」になっていますね。もちろん対空機関砲ではこれまでも多数撃墜しています。
  1. 2012/11/29(木) 12:18:59|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5

アラファト遺体発掘

▽アラファト氏遺体から検体採取=ポロニウム毒殺説で調査-パレスチナ(時事)
 話題になっているこれですが、どうもよくわかりません。
 そういえば、今年7月、こんなエントリーを書きました。
▽アラファトに放射性物質毒殺説?
 そもそもの情報の出方が怪しい話ですね。あのスーハ夫人が絡んでいるとなると、ますます怪しく思えます。まあ調べればいずれ白黒つく話ですから、やはり続報を待ちましょう。

 本人の責任ではありませんが、死してなお注目を集め続けるアラファト氏。
gw14.gif
 1991年 ヨルダンにて。よく喋るし、眼力はたしかに凄かったです。
  1. 2012/11/28(水) 07:56:41|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

来年1月8日にテポドン発射?

 先日、朝日新聞が報じたテポドン発射準備ですが、どうやら準備しているのは事実のようです。
▽北朝鮮 12~1月にミサイル発射可能性=韓国軍高官(聯合ニュース)
▽北朝鮮、数週間以内にもミサイル発射可能か 衛星写真に兆候(CNN)
 CNNによれば、デジタルグローブは「数週間以内にも発射可能な状態になる可能性がある」と分析。他方、韓国軍高官は聯合ニュースに対し、「12月から1月に発射する可能性が高い」と伝えています。
 そこまで準備しているなら、おそらくやるつもりなのでしょう。技術的な面はおそらくクリアしていると思われますので、いずれ機会をみてリベンジというのは既定路線だったと思います。
 もっとも、通常、発射の1ヶ月前までには国際海事機関(IMO)など関係する国際諸機関に通告するのが通例なので、現時点で通告していないということは、12月中に発射される見通しは少ないと思います。おそらく、技術的な部分で万全を期すために、ある程度慎重に時間をかけて準備するのではないかなと思います。
 ちょうど韓国が明後日29日に大型ロケット「羅老」で衛星打ち上げを予定しているので、それを受けて北朝鮮は「南朝鮮がよくて共和国がダメというのはおかしい」という理屈で打ち上げ計画を発表するつもりかもしれません。
 打ち上げはおそらく1月以降になると思いますが、タイミング的には、「記念行事」に位置づけるのが内外に理由付けがしやすいので、1月8日の金正恩の誕生日、あるいは2月16日の故・金正日の誕生日の前後が有力な気がします。
 ところで、本当にテポドン発射計画が通告された場合ですが、再び日本は前回同様、怒涛のPAC-3大騒動になるのでしょうか? 失敗続きの韓国の「羅老」だって同じようなものなのですが、こちらは騒動になりませんね。
 やはりなんといっても「テポドン」のネームバリューは格が違うということでしょう。「ナロ」と言われてわかる人は、日本にはほとんどいないと思いますし・・・。

(追記)
 テポドン発射となれば、ちょっと前のエントリーで書いたように、今度こそ北の核実験⇒核ミサイルで日本射程内へ!ということも考えられるわけですが、そう考えると、自衛隊最高指揮官が野田総理なのか安倍総理なのか、はたまた石原総理なのか・・・ではいろいろ対応が変わってきそうですね(まあ安倍総理なのでしょうが)。
 また、先般の自民党総裁選が違った展開になっていれば石破総理などというのもあったわけですし、はたまた将来的には橋下総理というのもありそうだし・・・。あるいは、ちょっと前なら菅総理か鳩山総理だったりしたわけですし・・・と思うと、誰が総理大臣かで国民の安全は結構大きく左右されるものなのだな、と改めて実感です。
  1. 2012/11/27(火) 21:56:25|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

週刊朝日でアイアンドーム紹介記事

 本日発売の『週刊朝日』で、アイアンドームの紹介を中心に、ガザ紛争について寄稿しました。
  1. 2012/11/27(火) 10:08:19|
  2. 著作・メディア活動など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

20ヶ月前に予想できた「クラスター爆弾で子供殺害」

▽シリア政府軍が公園を砲撃か 子ども8人死亡(CNN日本語サイト)
 本日は、上記のニュースが欧米主要メディアで大きく報じられています(砲撃というのは翻訳ミスで、戦闘機からのクラスター爆弾の爆撃と報じられています。死者数はその後、10人となっています)。
 元の動画はこちら。かなりショッキングな映像です。
▽子供10人殺害の現場
 アサド政権のやることは、こんなものです。とにかく「酷い」の一言に尽きます。
1127SR2.jpg

1127SR3.jpg

1127SR4.jpg

1127SR5.jpg

1127SR1.jpg

1127SR6.jpg

 ただ、アサド政権が政権維持のためだけに自国民をいくらでも殺戮するだろうことは、もう20ヶ月も前にわかっていたこと。「子供」というキーワード(と、今回は「クラスター爆弾」というキーワードも)に敏感な欧米メディアは、今更な感じで「アサドは酷い」とさも驚いているような報じ方ですが、アサドが酷いのは、昨年3~4月頃に殺戮の映像が怒涛の勢いで発信されだしたときに、充分に認識できていたはずのことです。

 反米論者に言わせれば、欧米メディアは偏向的ということらしいですが、シリア社会と20年以上それなりに関わってきた者から見ると、アサド政権の言うことなど「口先だけ」「全部ウソ」というのは常識中の常識。なのに、「ネット映像など、どこまで本当かわからない」「反政府派にも問題がある」などというアサド側のプロパガンダの影響を受けて、欧米の報道も充分に本質を伝えていたとは言えないと思います。
 エビデンス重視のプロフェッショナルな姿勢といえば聞こえはいいですが、インフォメーションからインテリジェンスを導き出すのは、報道の重要な要素でもあります。中東とは関係の深い欧米ですから、専門家の中にはきちんと分析していた人はいくらでもいたと思いますが、それが充分に報道に活かされていなかった部分があったようにみえます。

 とにかく、事態がここまで進んだ以上、もはや一刻も早くアサド政権を倒すことが最優先です。今、フランスがいい動きを見せていますね。
▽シリア反体制派に緊急支援=仏(時事)
 ただ、これからは時間との戦いということにもなってきます。急がなければ、それだけ犠牲者が増えます。クラスター爆弾など、序の口だと思います。アサド政権は追い詰められていますから、今後ますます持てる兵器のすべてを投入して無差別殺戮を実行する可能性がきわめて高い状況です。

 ちなみに日本はこんな感じ。
▽治安悪化でゴランPKO撤収へ 自衛隊派遣、17年(共同)
 今や優先順位からいってもUNDOFなんてあまり意味がありませんから、撤収はいいと思うのですが、同記事中にこんな解説もありました。
「国際社会などから、日本が中東和平への関与に消極的だとの指摘が出る可能性も否定できない」
 ぜひ、日本政府にもシリア国民連合に資金援助をお願いしたいところですが・・・。

(オマケ)
自由シリア軍サイドの写真を2点紹介
1127SRPH1.jpg

1127SRPH2.jpg
 国際社会が今やるべきことは、自由シリア軍への強力な支援です。そして、そのことを通じて、彼らの一部でも「暴走」しないように誘導することです。
  1. 2012/11/27(火) 09:23:59|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3

PFLP-GC(&日本赤軍)はアサド軍の隷下組織

 下は、反政府軍に制圧された東グータのリハン地区にあったパレスチナ解放人民戦線総司令部派(PFLP-GC)の本部建物。近隣の政府軍基地の制圧とほぼ同時に、こちらも制圧されました。
 ここはPFLP-GCの軍事キャンプで、30年にわたり、シリア政府軍・工作機関の指導の下、パレスチナ人の若者たちを訓練してきた場所です。アサド政権とのこの緊密な関係ぶりからも、PFLP-GCが完全にアサド軍・工作機関の一部だったということがわかります。
 PFLP-GCは長年、かの日本赤軍を庇護していたパレスチナ組織ですが、それはつまり日本赤軍自体もシリアのテロ支援ネットワークの末端組織に過ぎなかったということを表しています。
「アラブの大義」などと言っても、ウラ側はそんなものです。
▽陥落したPFLP-GC本部
1126SR1.jpg
  1. 2012/11/26(月) 18:07:30|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

ダマスカス攻防戦の勢力地図

 シリア情勢はいよいよ首都決戦になってきましたが、下は最新の「首都の勢力地図」です。
map1.jpg
 本日、アサド派のフェイスブックのページにアップされました。自由軍を「テロリスト」と書いているので、政府軍側作成資料です。
 緑が政府軍制圧エリア。茶色がテロリスト(と書いてあります)制圧エリア、青が拮抗・混在エリア(戦闘中)、グレーはほとんど戦闘になっていない山・原野です。また、地図中の黄色の線は、いちばん取り合いになっている主要道路です。
 中心部はまだまだ政府軍が強いですが、東部はほとんど反政府軍が押さえていますね。現在、南部に反政府軍が攻め入って激戦を繰りひろげている様子がわかります。この南部の激戦地を反政府軍が制圧できればいいのですが、なかなか難しいようです。
 アラビア語でわかりづらいので、スケールが違いますが、参考までに、先月時点でのWikipediaの「Battle of Damascus (2012)」という項目で発表されていた地図を貼ってみます。
MAP3.jpg
 うーん、ちょっとわかりづらいですね。ネットで英文表記の地図を探したのですが、あまり良いものが見つかりません。
 ついでに、こちらも参考までに、ダマスカス地方(ダマスカス市+郊外県)の略地図です。
MAP2.jpg

 他方、下はWikipediaの「Cities and towns during the Syrian civil war」という項目にあった今月最新情報でのアレッポ攻防戦地図です。
MAP4.jpg
 こちらは赤が政府軍、緑が反政府軍。それに黄色がクルド人勢力の支配エリアだそうです。大雑把なものですが。
(それにしても、さすが情報戦重視のシリア内戦だけあって、Wikipediaでもかなり詳細に情報がアップされています。興味のある方は、ちょっと詳細すぎて大変ですが、上記の各項目フォローを是非どうぞ)
  1. 2012/11/26(月) 17:55:42|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

焼け出された従姉妹一家

 まずは速報です。ダマスカス中心部から東に約15kmの東ゴータにあるシリア政府軍のマルジ・アル・スルタン基地を、自由シリア軍が制圧しました。同基地は首都近郊では2番目の主要基地で、とくに空軍のヘリ部隊の本拠地でした。東ゴータはすでに数ヶ月前から自由シリア軍が攻勢をかけ、広く制圧していましたが、これでほぼ首都決戦の本拠地が確保されたことになりそうです。
▽Syrian rebels 'capture air base near capital'
 ちなみに、ゲリラ側の主力部隊は、ダラアから攻め上ってきた部隊らしいです。これから首都に陣取っている共和国防衛隊+第4機甲師団の主力部隊と戦うことになりますが、どうやら首都決戦を担う自由シリア軍の中核は、ダラア出身部隊になりそうな様子です。
 
 ところで、そんなわけで首都内部でも攻防戦が拡大していますが、それで市内に住む従姉妹の自宅が、政府軍の無差別砲撃の中の一撃を受け、大破しました。この従姉妹は先日、シャビーハに射殺されたアハマド伯父の娘にあたる人です。
 幸いなことに一家に負傷者は出なかったのですが、家族全員で義母の家に避難しました。
 この義母の家は、私もシリアに行ったときはいつもお世話になる妻の実家なわけですが、幸いなことに今のところは比較的安全なエリアにあります。それで今は、一族の避難場所になっています。
 一族には私の妻を含めて海外居住者が多く、現在、残された女性・子供の国外脱出を図っていますが、いろいろ障壁が多く、なかなかうまくいってない状況です。もちろんすでに国外に脱出した人も何人もいますが。
  1. 2012/11/26(月) 11:21:16|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ヤクザに学ぶ尖閣バトル

JBPRESSに、下記の記事を寄稿しました。
▽中国の領海侵犯には尖閣上陸で応じよ~今は「尖閣をどう守るか」を具体的に考えるべき段階(JBPRESS)
 単なる一私案ですが、こういう話がほとんど見られないこの国の認識というのはいかがなものか?との問題提起のつもりです。
 現在、中国は北京の外交ルートでは「軟着陸」みたいな話を日本側カウンターパート(つまり外務省チャイナスクール)に蒔いているようですが、現場(東シナ海)では着々と既成事実化を進めています。まるで経済ヤクザの企業乗っ取りみたいなやり口です。
 それに対し、なんで日本側が無防備なのかがよくわかりません。東京=北京で「和平交渉」を進めつつ、現場ではこちらも実力行使すればいいのに・・・と普通なら思うと思うのですが。
 そこで私が推奨したいのは、ヤクザ業界でいう「専有屋」作戦です。表立っては「平和的に」「あくまで交渉で」とか言いながら、なんのかんのと理由を後付けして、とにかく尖閣に上陸して、なんでもいいから実績を作ってしまう。それを小出しにして、だんだん常態化させる。なし崩しってやつです。とにかく居着いてしまえば、既得権になります。
 まあ、いろいろやり方は考えられますが、とにかく実効支配の「実」についての議論や行動の話がほとんど見られないのは残念です。
  1. 2012/11/26(月) 08:37:16|
  2. 著作・メディア活動など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ハマス 1996

 ガザを初めて訪問したのは1984年。町中にはイスラエル軍が展開していて、かなり緊迫した雰囲気でした。その後、湾岸戦争やインティファーダの頃にも行っています。最近は現場取材から離れているので、とんとご無沙汰していますが。
 その中で、ハマス幹部のインタビューを現地で一度だけしたことがあります。1996年、カッサム旅団による自爆テロが頻発していた頃でした。
 当時は自治政府がスタートしてまだ2年。ファタハが主導する西岸地区は、へブロンなど一部を除いて比較的平穏でしたが、ガザは相変わらずの混沌状態。ハマスはイスラエルと激しく敵対していて、公然活動を許されていませんでした。
 私が取材したのは、そんなハマスのガザ地元組織の数少ない実名活動家で、公式スポークスマンだったマフムード・ザハル氏。もともと医師ですが、ハマスの共同設立者の一人で、当時はどちらかというとハト派=現実派とみられていました。
 なお、当時はハリド・メシャルがいたハマスのヨルダン支部が強硬派の総本山で、ここがイランやヒズボラと関係を持ち、イスラエルでの自爆テロに深く関わっていると噂されていました。
 もっとも、ザハル氏はその後、2003年に自宅を爆撃されて息子を殺害され、それ以降、むしろタカ派色を鮮明にしていきます。2004年のハマス最高指導者アハマド・ヤシン師暗殺を受けて、ハマス最高幹部となり、2006年から07年までパレスチナ自治政府外相にも就任しています。
 彼はカッサム旅団と深い関係を続け、もう一人の息子もカッサム旅団の幹部でしたが、その息子も2008年に殺害されています。ザハル氏は現在も、強硬派の有力指導者のひとりとして活動しています。

 以下、そんなザハル氏への1996年時点のインタビューの一部。『軍事研究』97年1月号の拙稿「超過激イスラム原理主義 ハマスとヒズボラ」の一節です(当時、レバノンでヒズボラ幹部へのインタビューもしていて、その合わせ記事でした)。
 古い話ですが、ハマス初期の雰囲気が伝わるかもしれないので、参考までに一部再録します。前エントリーでご紹介したCNNのアマンプールさんのインタビューとは比べものになりませんが、私もイスラム原理主義組織の取材を本格的に始めたばかりだったので、何卒お許しください。

(以下、一部引用)
ーー原理主義とは何か?
「原理主義などというものは存在しない。あれはキリスト教徒の概念だ。我々の望みはイスラムに拠る共同体に回帰することで、イスラム復古運動と呼ばれている。欧米のキリスト教徒たちが我々を排他的な過激派と決めつけるために、原理主義などという刺激的な言葉を使っているのだ」
-ーアラファトが進めているパレスチナ独立ではなく、全世界のイスラム化が望みなのか?
「その質問はバカげている。もちろん我々はイスラムを信じているが、他の宗教を否定はしない。他の宗教を信じる人たちは、その信念に基づいて国をつくればよい。
 もちろん世界にイスラム教徒が増えたり、イスラム社会が広がれば、イスラム教徒としては純粋に嬉し
いが、かといって他の土地のことに口を出す権利を我々は持っていないし、またそのつもりもない。我々は信心深いイスラム教徒であり、我々の暮らすパレスチナの地にはイスラムを中心とした社会をつくりたい。ただそれだけだ。
 もちろん我々は本来、現在のヨルダン川西岸地区とガザ地区だけでなく、イスラエルが存在するすべての土地が故国パレスチナだと思っている。しかし、現実にはそのすべてを奪還するのは難しい。そういったことでは、アラファトのやり方すべてに反対しているわけではない。
ただ、彼は認識が甘いと思う。イスラエルは狡猜で、アラファトのやり方では現在の自治地域においても、結局はイスラエルに牛耳られる仕組みしか生まれない。そしてイスラエルは、パレスチナがイスラム国家になることを決して容認しないことは確実だ。だから現実的に和解はあり得ない」
ーーハマスはイランと連携しているのか?
「イランはシーア派で、我々はスンニ派だ。基本的に考え方が違う」
ーー資金はどこから得ているのか?
「パレスチナの住民から寄付を得ている。また、我々は世界各地に支部がある。エジプトにもサウジアラビアにもヨルダンにも、そしてアメリ力やロンドンにも、だ。そういった支部を窓口にして、様々な人から寄付を受けている」
ーーハマスの意思決定機関は?
「イスラムには独裁という考え方はなく、必ず合議制をとる。最高機関は高位聖職者の評議会である『マジリス・シューラ』で、ハマスもそうだ。外国人のなかには、イスラエルに囚われているアハマド・ヤシン師を最高指導者と単純に考えている人もあるが、我々には個人としての最高指導者というものは存在しない」
ーーハマスのマジリス・シューラはどこにあるのか?
「厳しい弾圧を逃れて国外にある。どこかは言えない」
ーーヨルダンの支部が独走しているのではないか?
「ハマスはマジリス・シューラの下に指揮系統がされた組織であり、そういうことはあり得ない」
ーーアル・カッサム旅団がハマス上層部から乖離して独走しているのではないか?
「そんなことはない。アル・カッサム旅団は広範囲におよぶ様々なハマス組織のなかの軍事部門で、当然、マジリス・シューラの管理下にあり、完全に把握されている」
ーー自爆テロ作戦もマジリス・シューラの命令か?
「それはない。異教徒によく誤解されていることだが、イスラムではどんな理由があっても自殺は禁止されている。この点は、我々とシーア派の考えは大ぎく違う。
 自爆攻撃を行うパレスチナの若者たちは、例外なく肉親をイスラエルに殺されている。個人的な怨恨が、彼らをこのような絶望的な行為に走らせている。我々は決してそれを命令したり勧めたりはしないし、むしろ悲劇だと思っている。
 しかし、彼ら若者たちのその思いを誰が止められようか。イスラムは慈悲の教えだ。やめなさい、と諭すことはできても、やめろと強制することはできない」
(以上。一部引用)

(追記)
 当エントリーで、まかわ様より「自爆テロは作戦ではなくて個人の行動なんですか… 意外でした。」とのコメントをいただきました。
 自分では考えもしませんでしたが、なるほどこのまま書きっぱなしではよろしくないな、と気づきました。若干、補足説明させていただきます。
 インタビューの言葉は、相手がそう語ったという以上のものではなく、「事実」とは限りません。
 当時のカッサム旅団の自爆テロは、私は間違いなく組織的な作戦だったと考えており、ザッハル氏のコメントは、単に彼個人の見解であったか、もしくは「外国人記者」向けの公式見解だったと思っています。
 このときの私の心証では、ザッハル氏は対外スポークスマンとして、とくに外国プレスに対して、「ハマスはガチガチの狂信者集団ではない」というアピールを意図していたことは確かだと感じました。他の部分でも、ごまかしている部分はもちろんあるでしょうし、私自身、そのへんの機微を反映するようなインタビューをしたいと考えていました。
 当時、カッサム旅団の自爆テロが頻発していて、世界では顰蹙を買っていましたが、パレスチナ抵抗運動や反シオニスト系の人々の一部では「英雄視」されていました。あるいは、パレスチナ寄りの人々の間では「イスラエルのせいだ」というような紋切り型の解説がしばしば見られていました。
 ですが、私自身はハマスの自爆テロにまで理解を示すような反シオニスト系メディア言説に激しく疑問を感じていたので、このように自爆テロ否定の言質をハマス幹部が明言したということは、よかったなと思っています。おそらくハマスの内部にも超過激派から穏健現実派までさまざまな考えの人がいて、いろいろ揺れていたということはあったんだろうと思いますが…。
 ともあれ、インタビュー記事におけるカッコ内の言葉は、単に対象がそう語ったというだけのことですので、そこはご了承いただきたいと思います。
  1. 2012/11/25(日) 15:50:29|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

アマンプールvsメシャル

 一昨日にリアルタイムで視たのですが、CNNの「アマンプール」で、クリスチャン・アマンプールさんによるハリド・メシャル氏(ハマス政治局長。事実上の強硬派ナンバー1)へのインタビューが見事だったので、一言記しておきます。
 メシャル氏はどうせいつもと同じ「歴史的にイスラエルはダメ」「悪いのはイスラエル」論を話したがっていましたが、そんなことを聞いても面白くないところ、アマンプールさんはぐいぐいと核心に迫っていきます。「どうすればハマスは攻撃をやめるのか?」「ハマスの行動は、ガザの被害に責任はないのか?」「イランとの関係は?」……。
 こうしたことを、欧米のアンカーマンにありがちな「相手を責め立てる」言い方ではなく、ともにより良い現実的な解決法を考えようというような雰囲気で、しかしそれでも媚びることなく毅然とした態度で訊いていくのですね。
 また、単に御説を伺うといった姿勢ではなく、間接的に問題の核心をメシャル氏に悟らせるかのような話の展開ぶりがグッジョブです。メシャル氏のほうも、紋切り型のコメントでは説得力がないことを理解しているようで、彼なりに逃げずにきちんと答えています。なんというか、内容のある良いインタビューでした。
 私などがあれこれ説明するより、公式サイトにアップされたので、是非お薦めします。
▽Hamas leader tells Amanpour his group wasn’t behind bombing
  1. 2012/11/23(金) 23:43:35|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

北朝鮮がミサイル発射実験か?

 韓国主要各紙によると、金寛鎮国防部長官が11月22日、陸軍第3軍司令部にて「北朝鮮が大統領選挙を前後して挑発する可能性がある。その時は厳しく対応する」と発言したとのことです。
 朝鮮半島では、ちょうど2年前の今日が延坪島砲撃事件の日。韓国では記念式典が行われるが、南北間で口撃の応酬になっています。

 そんななか、アメリカが偵察衛星で、北朝鮮のミサイル発射実験場で長距離弾道ミサイルの発射準備らしき動向を捉え、日韓両政府に通報したそうです。
 朝日新聞によると、「11月初め、平壌市山陰洞にある兵器工場からミサイル部品とみられる貨物が、平安北道東倉里のミサイル発射基地の組み立て棟に運び込まれた。衛星写真が捉えた貨物の形状は、4月に北朝鮮が発射した長距離弾道ミサイルと一致するという。4月は貨物の運び込みから約20日後に発射していることから、今月末には発射が可能になる計算だ」とのことです。

 北朝鮮は核とミサイルの開発に関しては、政治的日程というよりは、軍事的・技術的な開発タイムスケジュール優先でやってきているのですが、テポドンに関しては、ほぼ技術的には準備が完了しているわけなので、あとはタイミングを見計らっているところかもしれません。
 仮にここでミサイル発射をやって、米韓の制裁を受けたら、それを口実に今度はいよいよ核実験という可能性も皆無ではないと思います。そろそろ小型起爆装置の実験をやってもいい頃ではないかなという気がします。
 北朝鮮の核やミサイルに関しては、今春のような具体的な実験のニュースがないと、なんとなくストップしているような錯覚に陥りがちですが、彼らは常に一貫して核ミサイルの技術開発に邁進しているということを忘れてはなりません。
  1. 2012/11/23(金) 11:54:18|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

シリア勢力地図

 現在、だいたいこんな感じです。
sha1.jpg
 赤軍が政府軍、緑軍が反政府軍です。
 といっても、ダラアやアレッポ、ダマスカス郊外県など、赤軍エリアでも緑軍のゲリラがかなり浸透している場所が多くあります。また、逆に緑軍エリアでも、赤軍の空爆攻勢で青息吐息のところもあります。
  1. 2012/11/23(金) 11:00:29|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

自由シリア軍の携帯式地対空ミサイル

 これまでも「噂」はいろいろ出ていましたが、ようやく証拠映像が出てきました。
 自由シリア軍が、旧ソ連製携帯SAMの「SA-7グレイル」(9K32「ストレラ2」)を奪取しました。以前、グレイルの映像は一度流れていて、当ブログでも紹介していますが、撮影地点などの証拠性がよくわからない動画でした。今回は間違いないです。
▽自由シリア軍が入手した携帯式地対空ミサイル・その1
▽自由シリア軍が入手した携帯式地対空ミサイル・その2
1122sr2.jpg
1122sr1.jpg
 映像で確認できるのは1基だけですが、「100基入手!」と言っていますね。確認はできませんが。
 この部隊は「第313部隊」と名乗っています。アレッポ西側にあるアサド政府軍の最精鋭部隊「第46大隊」の基地を自由軍の混成部隊が1ヶ月半も攻撃して、やっと制圧したばかりですが、そこで押収したものだということです。
 旧式なので、ミグにどれだけ有効かといえば正直難しいと思いますが、ヘリなら落とせるでしょう。かなり旧式なので、ちゃんと作動するかどうかも少々心許ないですが、第46大隊の正規の装備品だったなら、たぶん有効なのではないかなと思われます。
 ついでに下は、第313部隊の戦闘の様子について、オリエントTVのレポートです。
▽第313部隊の戦い
1122sr3.jpg
  1. 2012/11/23(金) 02:13:06|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ダマスカスでもロケット弾攻撃

 反体制派統一組織「シリア国民連合」を、国際社会が次々と承認しています。アサド政権はいずれロシアとイランとその他少数の国以外、相手にされなくなる方向にあります(中国はいまやこの泥船から足抜けしたがっていますね)。
 また、内戦の戦況も、北部、南部、東部で自由軍がかなり優勢に進めていて、いよいよ首都ダマスカスが決戦場になりつつあります。アサド軍もダマスカス防衛に集中していますが、首都東部からはホムスなどからの自由軍が、南部からはダラアの自由軍が多数進出してきています。ただ、レバノン近くのザバダーニ方面からの街道はアサド軍がまだしっかり掌握していて、自由軍の侵入をほぼブロックしているようです。
 要するに、シリア政府系メディアの大本営発表とは異なり、実際にはアサド政権包囲網が内外で着々と進行しているわけですが、それで追い詰められたアサド軍が、いよいよなりふり構わない軍事行動に出てきました。
 アサド軍はまずは戦車や榴弾砲による砲撃で市街地を攻撃。これが自由軍の対戦車兵器の標的になると、次は航空機による攻撃。これも対空機関砲の標的になると(それと最近、濃霧が多いことも影響しているようですが)、今度はロケット弾を使ってきました。
 西部でのロケット弾攻撃のシーンを昨日の当ブログで紹介しましたが、今度の標的はいよいよダマスカス近郊です。西南部のダラヤが攻撃されています。
▽政府軍がダマスカス近郊をロケット弾攻撃
1121sr1.jpg
 ダマスカス近郊でこのような兵器が使用されたのは初めてではないかと思います。もう完全なる国民への無差別攻撃ですね。
 世界の注目がガザに集中している間に、今のうちに持てる戦力を使ってしまおうということかもしれません。最後はホントに化学兵器まで使用しかねません。

 ついでに、こちらはシリア国民連合から仲間外れにされたイスラム過激派の「ヌスラ戦線」がの戦果の映像。
▽ヌスラ戦線が政府軍ヘリを撃墜
1121sr2.jpg
 撃墜といっても大破ではないので、政府軍兵士6人がそのまま拘束されました。撮影者は非常に興奮していますね。ヌスラ戦線ですから、捕虜の運命は非常に厳しいものになるでしょう。
  1. 2012/11/21(水) 14:12:00|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

シリアの義父の死

 世界の耳目はガザに集まっていますが、シリアでも殺戮は続いています。
▽シリア政府軍によるロケット弾発射シーン
1120SR1.jpg
 15日に投稿されていた動画です。ラタキア近くのヘッフェという町に対し、政府軍が無差別攻撃しています。兵士たちは楽しげですが、やっていることはひどいものです。

 さて、シリア情勢に関する私の情報源のほとんどは、反体制派のネット発情報で、なかでも比較的証拠性の高いユーチューブ投稿動画の裏付けのある情報を重視しています。
 また、シリア情報のソースをずっとチェックしていると、さまざまなサイト(報道メディアを含む)の癖のようなものが、だいたいわかってきます。誤報や誇張はどんなソースにも含まれますが、そのあたりの癖を勘案し、参考情報とするようにしています。
 他方、シリア国内に住む知人らから直接話を聞くこともありますが、情報面ではあまりたいした話はありません。ただ、知人がいるということは、情報収集に対する自分のモチベーションにはなっています。

 ところで、もともと国際テロ・インテリジェンス・情報戦などをテーマとしてきた当ブログですが、このところすっかりシリア内戦関連サイトになっています。事情があってこれまで公表してきませんでしたが、それには個人的な理由があります。
 拙ブログでは以前、私が28年前からシリアを何度も訪問していたことを書きましたが、それだけでありません。実は私の妻はシリア人で、そのためシリアという国とは、それなりに長い年月、否応なく関わってきました。
 このあたりの恐怖感は日本の人にはなかなかわかっていただけないかもしれませんが、きわめて強力な秘密警察国家のため、現地の親族の保安上、これまでそのことは公表できませんでした。
 しかし、現地がアナーキーな状況になり、親族の諸事情の変化もあって、最近になって、秘密警察による保安上の懸念が大幅に緩和されてきました。
 そこで、そろそろ公表しても構わないかなと思案していたところだったのですが、そんな矢先の先週末、シリアの義父が急死しました。病死ですが、内戦のために治療を受けられないなかでの死でした。
 もっとも、内戦で殺害された親類もいます。ちょうど山本美香さんが殺害された頃、当ブログで私は、ダマスカス在住の知人の老人がアサド派民兵に射殺されたことを紹介しましたが、その人は私もよく知っている伯父でした。
 もっとも、こうしたことはなにも妻の家族だけの話ではありません。シリアではほとんどの人が同じような、あるいはもっと凄惨な体験を持っています。
 義兄や義弟たちも、いろいろひどい目に遭っています。うち1人などは、何ヶ月も秘密警察に拘束され、ひどい扱いを受けています。今でも幼い甥や姪たちは、死体の山と砲撃の恐怖の下で暮らしています。ひどい状況ですが、そんな話を私はもうずっと前から聞いています。
 通りはいつ銃弾や砲弾が飛んできてもおかしくない危険な状況ですが、知り合いの聖職者に頼んで、とりあえず義父の葬儀らしきものはやってもらったそうです。シリアではものすごく恵まれている幸運なことだそうです。なんともやりきれません。
  1. 2012/11/21(水) 03:47:31|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

イスラエルVSハマス

 JBPRESSに下記の記事を寄稿しました。
▽中東情勢最大の危機が到来! イスラエル軍が戦線拡大する本当の狙いとは
 上記入稿後、つい先ほど入ってきた速報では、ネタニヤフは地上部隊投入を一時保留することにしたようですが、まだ現時点では継続的な停戦はたぶん難しいでしょう。まだまだハマスのロケット弾攻撃が続いていますが、思いのほかハマス側の反撃が続くので、イスラエル軍は攻撃を緩めないと思います。

 ところで、シリアの反体制派SNSでは、もちろんイスラエル非難の声も多いのですが、ここ数日、ハマス非難がものすごく増えています。ハマスのせいでイスラエルVSパレスチナに世界の注目が映ってしまったことに対して、ハマスはイランの口車に乗って余計なことをしたと思われているからです。真相はわかりませんが、結果的にシリア革命の大きな邪魔になったのは事実ですね。

 ところで、ちょっと気づいたのですが、私は、パレスチナでもシリアでも、はたまた尖閣でも北朝鮮でも、さらにはオスプレイでも原発でも、いわゆる左翼系というか進歩的文化人系というか、あるいはリベラル派というような方々と、なぜかたいてい真逆の意見になってしまうようです。べつにわざとやってるわけではないのですが・・・。

 ところで、もう1ヶ月も前にJBPRESSさんの寄稿した尖閣問題の記事が、いまだにアクセス数第3位にランクインしていました。やはり領土問題は関心が高いのでしょう。できれば中東問題にももっと関心を持っていただきたいのですが、なかなか難しいですね。
  1. 2012/11/21(水) 01:35:10|
  2. 著作・メディア活動など
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5

中国側の領海侵犯には尖閣上陸で応じよ

▽接続水域に30日連続=中国公船、4隻入れ替わり―尖閣沖(ウォールストリート・ジャーナル日本語サイト 11月 19日)
 接続水域だから合法だ、というのはタテマエで、明らかに領有狙いの実績積み上げですね。実際、領海にもしばしば侵入していますが、そういうことをさせてしまっているということは、もはや実効支配しているとは言えないでしょう。
 尖閣問題について、「日本が実効支配しているのだから、敵の挑発に反応するだけ損」といった見方もありますが、領海侵犯されても実力行使しなければ、そもそも“前提”が成立していないことになります。
 中国公船はこうして接続水域でのプレゼンスを恒常的なものにしましたから、次はいよいよ領海内プレゼンス恒常化を狙ってきます。そのとき、では海保は実力行使、つまりまずは威嚇射撃をすべきでしょうか?
 領土を守るということはそういうことで、それもタテマエとしては正攻法なのですが、損得勘定としては、別の対応のほうが結果的に得ではないかなと思います。
 たとえば、日本側が威嚇射撃などすれば、相手も威嚇射撃で応じることになります。相手は「ここは中国領だ」と宣言していますから、必ずそう応じるとみるべきです。どちらも戦争は望んでいませんから、いったんそこで矛を収めるとすると、日中ともに1点ずつの得点ですが、結果は「国境紛争が決定」の事実だけが残ります。
 それよりも、領海侵犯で中国側が1点加えたら、日本側はそれに応じて、尖閣に上陸するという1点を加えたほうが得です。たとえば、魚釣島に海保あたりの職員を上陸させる。中国船が領海侵犯すれば当然、海保の巡視船の活動が強化されますが、そのバックアップのためのなにかの調査とかの名目を適当に作ればいいでしょう。日本の右翼活動家をどんどん上陸させて、その取り締まりという口実もアリです。
 いずれにせよ、それを中国側の領海侵犯のたびにやる。中国側がそれを阻止しようとすれば、武力攻撃しかありませんが、いきなりそこまではやれません。
 となれば、両者ともに1点加算としても、結果として「日本側が島内で活動した」という実績が残ります。そのうち、日本側の人員の上陸をなし崩しに恒常化し、なし崩しに船溜まりやヘリポートの建設につなげていきます。中国側の領海侵犯もそうですが、いっきにやると問題になるので、こういうことは少しずつ“なし崩し”が重要です。
 こうしたことが、何もない無人島の領有権を争う際には、決定的な実績になります。

 先般の反日デモの様子をみて、「中国側を刺激しないほうがいい」との言説をよく見かけます。商売としてはそれもいいかもしれませんが、このまま放置すると、尖閣は諦めることになると思います。
  1. 2012/11/19(月) 09:05:17|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:0

市場で殺戮(死体多数注意)

 デルゾールの市場で、政府軍の攻撃で多数の市民が犠牲になりました。
▽市場で殺戮(死体多数注意)
(※あまりに凄惨なため、静止画は自粛します)
 おそらく砲弾の直撃でしょう。これはひどい状況です。最初は11月9日にアップされていたものが、昨日、英語字幕付きで再アップされました。毎日大量の映像がアップされますので、最初のオリジナル版のときは気づいていませんでした。
  1. 2012/11/18(日) 20:35:52|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:0

極至近距離着弾の瞬間

▽極至近距離着弾の瞬間
1114SR1.jpg
 11月6日に撮影されていた映像が、昨日ネット発信されました。撮影者は亡くなったようです。

▽爆撃直後に母親を探す少年
1114SR2.jpg
 11月14日。ミスラバ。

▽大火傷の少女
1114SR3.jpg
 11月13日。ダマスカス郊外県アル・バラリエ

▽家族が狙撃される?
1114SR4.jpg
 11月13日、ダマスカス。シャビーハが通行中の家族を狙撃との説明文がありますが、状況はこれだけではよくわかりません。ただ、銃声がして、家族が慌てて逃げたということ。狙撃手がいる町中での移動は全力疾走が必要。昔のサラエボみたいです。

▽対戦車ミサイルを押収
1114SR5.jpg
 自由軍が政府軍の対戦車ミサイル「9M14」(マリュートカ/NATO名「AT3サガー」)を押収。政府軍の戦車や陣地を急襲するには非常に有効な兵器なのですが、自由軍兵士たちは興奮してかなり雑な扱いですね。
  1. 2012/11/15(木) 13:06:08|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

徴兵かシャビーハか?捕虜の運命

 自由軍の武装強化を示す映像が、続々と発信されています。
▽自由軍が戦車を戦闘に投入
1112sr1.jpg
 11月12日。イラク国境に近いブカマル。自由軍の戦車が、政府軍の狙撃兵が陣取っている建物を砲撃しています。
▽ブカマルの戦闘
1112sr2.jpg
 同じ戦いのダイジェスト映像。自由軍の戦車が砲撃。

▽自由軍が政府軍兵士を探索
1112sr3.jpg
 11月12日。ハサケ県ラスアルアイン。町の中心地を制圧したアル・カーカー旅団が、政府軍兵士&シャビーハの残党狩りを行なっています。
 前半の場面では、私服姿の4人の男たちが投降しています。捕虜たちは、自身の身分について尋問を受けていて「自分はただの徴兵兵士だ」と主張しています。
 というのは、同じ捕虜でも、徴兵兵士なのかシャビーハなのかで、扱いが大きく変わるからです。まず、徴兵兵士は強制的に兵隊になったと見なされますが、シャビーハは実質的に志願傭兵ということで、より厳しい扱いを受けます。ただし、徴兵兵士ではほとんど聞いたことがありませんが、シャビーハの捕虜の場合、ときおりシャビーハと自由軍現場部隊の間で、捕虜交換が行われることがあります。
 いずれにせよ、こうした内戦では、捕虜となったときの恐怖はたいへんなものだと想像できます。私もかつて、グルジア共和国の南オセチア紛争で、敵対勢力に民兵が拘束された瞬間を目撃したことがありますが、恐怖に慄き泣き叫ぶその姿は、尋常なものではありませんでした。
 上映像の後半では、別の建物に隠れていた私服の男が、最初は「私はあんたらの味方だよ」と言っていたところ、自由軍のひとりが彼がシャビーハだと気づき、激高します。映像は途中で途切れているのですが、最後のほうは、おそらくボコボコにされかかっている場面です。

 現在も反体制派は、政府軍将兵に離脱を呼びかけています。それに応じて自分から離脱した兵士は、迎え入れられます。もっとも、以前はそのまま自由軍に合流していましたが、最近は政権側のスパイも混じっているということで、強いコネがない場合には、多少警戒されることも多いようです。
 他方、そうではなくて、戦闘中に投降した場合の捕虜は、徴兵兵士でも厳しい扱いを受けます。命令とはいえ、市街地を砲撃したり、無差別狙撃をしたりして、子供や老人まで殺害していたのですから、怨念の対象となるのは避けられません。実際、すでに何万人もの政府軍将兵が、身の危険を冒して反政府軍に合流し、命がけで独裁者と戦っています(しかも相当数がその戦闘で命を落としています)から、今でも政府軍に残留している兵士は、半ば志願兵と見なされ、だんだんとより厳しい見方をされつつあります。
  1. 2012/11/13(火) 16:19:46|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

シリア政府軍がイスラエルを挑発

▽イスラエル「報復」攻撃 シリア軍の大砲を直撃(東京新聞 11月13日)
 ゴラン高原の「国境」はシリア側、イスラエル側双方から行ったことがありますが、もともと互いの軍が目の前に見える位置にあります。丘陵の上にイスラエル軍基地があって、麓のシリア軍前方拠点を見下ろすかたちです。
 両軍の衝突が起きないように存在しているのが、国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)、そこに96年から我が自衛隊が派遣されています(現時点で47名)。

 今回のイスラエル軍の攻撃は、シリア政府軍から砲撃を受けたことに対する報復で、通常の軍事的措置になります。問題は、シリア政府軍がなぜイスラエル側を砲撃したかということでしょう。
 シリア政府軍はすでにトルコ領内を砲撃して、トルコ軍の報復攻撃を受けたことがありますが、それはトルコ領内を聖域とする反政府軍を攻撃するためでした。しかし、ゴラン高原は「境界線」をイスラエル軍がきっちりガードしており、シリア反政府軍が活動拠点としているわけではありません。
 やはり懸念されるのは、民衆蜂起で追い詰められたアサド政権が、独裁政権の正統性を打ち出すために、「アラブの大義」を持ち出して、イスラエルを挑発することです。かつて湾岸戦争の際、サダムがイスラエルに執拗にスカッドを撃ち込んだのと同じ発想です。
 現時点ではほんのジャブ程度ですが、今後、さらにアサドが追い詰められていくと、イスラエル挑発がエスカレートしていく可能性があるかと思います。
  1. 2012/11/13(火) 09:41:55|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

シリアTVのコメント捏造と内戦の経緯

 下は、本日発信されたドゥーマの反体制派が作成したビデオです。
▽シリアTVのコメント捏造と内戦の経緯
 話しているのは、ドゥーマの住民。彼は昨年の民衆デモ開始時にアムン(総合治安局)に暴行されましたが、その一部始終を政府系TVの取材クルーに話しました。ところが、その映像素材の一部を切り取り、歪曲して、あたかも別のグループによって暴行されたかのように編集されて放送されました。
 独裁政権のTVですから、日常的に行なわれている当たり前の捏造ですが、使われた本人が全否定していますね。
 上記ビデオはまた、当初は非武装の平和的なデモだったのを、アサド政権がひどい暴力で圧殺したことから、内戦化が進んできたことを、実際にドゥーマで撮影された映像素材の数々から示しています。
 シリアでこの20ヶ月で起きたことは、要するに、こういうことです。
  1. 2012/11/11(日) 16:57:35|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5

市街戦最前線

 まず速報です。未確認情報ですが、ダマスカスの政権中枢部であるメッゼ地区に自由軍が侵入したとの情報が流れました。戦力ではまだまだ政府軍が優位にあると思うのですが、事実ならば戦局が大きく変転するかもしれません。続報を期待したいと思います。

 さて、いまや首都中心部も含めて全土で激しい戦闘が行なわれていますが、市街戦の最前線でも、彼らは映像を撮影し、発信し続けています。当事者の映像ですから、これまで私たちがTVニュースで見慣れていたような取材班撮影素材と比べると、臨場感が桁外れにリアルですね。
▽至近距離に着弾
1110SR2.jpg
 11月9日。おそらくドゥーマ。
 至近距離に着弾したのに、この人は笑ってます。戦場ではいろいろなタイプの人がいて、怒る人、無表情な人、冷静な人、へらへらする人と様々です。
 そういえば、以前、戦場カメラマンだった頃、私は最前線で銃砲撃戦の中にいるような極限状況になると、なぜかヘラヘラ笑ってしまうタイプでした。この映像の兵士は余裕なのかもしれませんが、私の場合は、要するに恐怖と緊張が異常に高まりすぎて、精神的にちょっと変な反応をしちゃっていたのでしょう。

▽路上銃撃戦
1110SR3.jpg
 11月9日。ダマスカス市内。路上銃撃戦というより、路地裏銃撃戦の様相。敵が迫ってきて退却した場面で終わっています。

▽マネキン兵士
1110SR4.jpg
 バイアス報道ばかりのロシアのメディアですが、最前線映像取材はかなりきっちりやっています。こちらはアレッポの高層建物上の政府軍の機関銃拠点を女性レポーターが紹介。マネキン人形のダミー射手も登場!

 こうした中、犠牲者は今日も増え続けています。
 下は写真のみ。11月9日。アル・クサイルです。
1110sr1.jpg
  1. 2012/11/10(土) 17:11:38|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

私用連絡

 本日、まったく白紙の謎の葉書が拙宅に届きました。炙り出しでもありません(笑)。葉書なので、おそらく生物兵器テロでもないと思われます。
 たぶん自動印刷ミスと思いますので、お心当たりの方にお知らせします。
  1. 2012/11/09(金) 11:21:46|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

自由シリア軍の戦力強化が進む

 自由シリア軍の戦力強化を示す映像が続々とアップされています。
▽ハマの自由シリア軍行軍
1109SR1.jpg
 たいした人数です。かつて花火や手作りパイプ玉葱砲で対抗してた頃もあったのに、よくぞここまで頑張ってきたものだと、その忍耐力には感嘆しますね。
▽おそらく上映像の続き
1109SR6.jpg

▽ミサイルその1
1109SR2.jpg
▽ミサイルその2
1109SR3.jpg
 自由シリア軍が制圧した東ゴータの防空基地「イフタリース基地」。防空軍第2軍第01600連隊の対空ミサイル基地だそうです。まあ、これを使用できるわけではないでしょうが。

 他方、政府軍による空爆も継続中。下はその現場から緊迫のレポートです。
▽爆撃下のレポート
1109SR4.jpg
 11月5日。ホムスのアル・フーリ。爆撃下で決死のレポート。流血シーンありませんし、英語字幕付きなので、皆様ぜひ御覧ください。

 下は自由シリア軍側の作成映像です。
▽反体制派の広報ビデオ(※衝撃映像アリ:注意)
1109SR5.jpg
 SMC(シリア・メディア・センター)が8日に投稿した反体制派広報ビデオ。メッゼ攻撃など最新映像も使っています。アサド政権に対する怒りがよく伝わりますが、ちょっと衝撃のシーンがあります。
  1. 2012/11/09(金) 09:52:51|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

首都決戦へ(アラウィ派の脱出始まる)

 ダマスカスの知人によると、最近、首都中心部への攻撃が相次いだことから、バース党員のアラウィ派住民が海岸地方に続々と逃げ出しているそうです。首都決戦で自分たちが危うくなることを真っ先に感じたのでしょう。
 とくに、昨日の大統領宮殿への初めての攻撃(外れて近くに着弾)は、ダマス市民に大きな衝撃を与えています。
 これまで、首都攻防戦のカギを担っていた中心勢力は、北部からの街道の要衝になるドゥーマに展開する自由軍でした。ダマスカス郊外県出身者に加え、ホムス県から激戦経験者が多数入っています。
 それに加え、今回のマッゼ攻撃を行った南部のダラアの部隊が北上してきました。ダラアの自由軍も、いまや歴戦の部隊です。この2大勢力に、各地から集合した諸派が加われば、首都包囲までは至らなくても、首都潜入はかなり容易になります。
 これに対し、政権軍は精鋭部隊の共和国防衛隊と第4機甲師団をダマスに呼び戻し、対抗しようとしています。両部隊が首都中枢を固めれば、戦力的には政府軍に敵いません。
 ただ、首都籠城戦になれば、いまや全国的に裾野が広がった自由軍は、地方での戦闘をかなり有利に進めることが可能になるでしょう。シリア軍はもともと、クーデター防止のために意図的に軍内格差策をとっていて、一般師団は共和国防衛隊・第4機甲師団よりかなり戦力的に脆弱で、しかも忠誠度も低い幹部人事になっています。
 ダマス攻防戦と同時に全土で自由軍が攻勢をかければ、政府軍基地のさらなる陥落と、それによる武装強化が期待できます。一般部隊からの離反も加速するでしょう。
 こうした展開を予想したうえで、今、SNSでも議論されているのは、アサド派がダマスを撤収し、北西部海岸地方のアラウィ派地域に立て篭もる可能性です。まるでカダフィ末期のようですが、これもまったくあり得ない話ではありません。

 そこでちょっと心配なのは、反体制派SNSの論調に、最近、アラウィ派批判が急速に拡散しつつあることです。反体制派の主流派はこれまで、アサド政権が宗派対立に持ち込もうとしたのに対抗し、アラウィ派批判を抑えてきました。それで実際、アラウィ派コミュニティへの直接攻撃の回避に成功してきていたのですが、スンニ派住民が子どもたちまで大量虐殺に遭ったことで、憎悪のエネルギーが急速に膨張しているように感じられます。
 自由軍によるアラウィ派民間人の虐殺などといった事態が発生したら、それこそイラク化になるので、革命軍はなんとか踏みとどまっていただきたいと切に願います。
  1. 2012/11/08(木) 13:22:32|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ

プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




最近の記事

最近のコメント

カテゴリー

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

RSSフィード