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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

シリア激戦写真その1

 この数日でシリア反体制派のSNSで流れていた写真です。
 SNSでは連日、凄まじい写真が大量にアップされています。なかでも子供の遺体や重傷者の写真は心を抉られるものがありますが、今回は除きます。
 誰が撮影したのかわかりませんが、ほとんどは現地のアマチュアと思います。欧米人の職業カメラマンなら大きな賞を受賞するレベルといっていいです。もちろん彼らは個人の名声のために撮っているわけではないでしょうが。
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 自由シリア軍兵士。アレッポ。
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 負傷した自由シリア軍兵士。撮影場所不明。
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 負傷した自由シリア軍兵士。ハマ。
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 戦場に住む母子。ジョーバ(ホムス南西のレバノン国境近く)。
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  1. 2012/09/30(日) 10:27:19|
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ソマリアのイスラム勢力、最大拠点を失う

 9月28日、ケニア軍(「アフリカ連合」軍)がソマリア南部の要衝である港町キスマヨへの強襲上陸作戦を開始し、29日に同地を支配していたイスラム武装勢力「アル・シャバブ」(青年)を駆逐しました。すでに首都モガディシオからもアル・シャバブは完全に撤退しており、これにより、ソマリア南部を広く支配していたアル・シャバブの勢力弱体化は決定的になりました。
 ソマリアではもう20年以上も内戦が続いていて(※20年前の取材はこちら⇒「(その1)ソマリア内戦」「(その2)ソマリア避難民」)、とくに近年はアルカイダ系人脈に連なるアル・シャバブがその元凶となっていました。
 最近ようやく状況が好転し、この9月10日には、新たな大統領にハッサン・シェイク・モハムドが選出され、少しは安定化の希望が見えてきたところです。ちなみに、国内で指導者選出が行われたのは、1991年以来とのことです。
 参考までに、下は私が昨年11月時点のデータで作成したソマリアの勢力図です。緑色が当時のアル・シャバブの支配地。南部をほとんど支配していたことになります。
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(『激変2012年!地図でわかる世界情勢』洋泉社より)



  1. 2012/09/30(日) 02:46:27|
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ロシア人が撮ったシリア軍参謀本部襲撃の現場

 26日の参謀本部襲撃の場面。政府軍側から撮影。爆破の痕はけっこう激しいです。
▽ロシア人が撮ったシリア軍参謀本部襲撃の現場(キャプションもロシア語ですが、たいしたことは書いてません)
 ダマスカスの中枢がこうなるとは、自由シリア軍の攻撃力がかなり強化されている証ですね。
 自由シリア軍はまた、アレッポ最終攻撃作戦の発動を宣言しました。しばらく激しい戦闘が続きそうです。
  1. 2012/09/28(金) 20:09:45|
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ビンラディン襲撃の押収データ

 ディスカバリー・チャンネルの「ビンラディン襲撃作戦 押収品の全容」を興味深く視聴しました。米軍特殊部隊がビンラディン邸から持ち出したPC5台、ハードドライブ10台、USBメモリ、書類などからわかったアルカイダの真の姿(の、もちろんその一部)を紹介しています。
 ビンラディンはアルカイダの方針をめぐってザワヒリと主導権争いがあったようです。ビンラディンはあくまで対米テロを志向。対するザワヒリはアルカイダ戦闘員の現場を知っているため、それは無理と判断。中東・中央アジアでの活動に絞っています。ビンラディンはアルカイダ幹部との連絡はキープしていて、それなりに詳細な情報のやりとりもしていましたが、戦闘部門の作戦とは事実上、切り離されていたようですね。
 ただ、ビンラディンが正しかったこともありました。ビンラディンは最初から、攻撃はアメリカに絞ることを主張しており、市民を巻き込む無差別爆弾テロには「イスラムの同胞の血が流されれば、自分たちはやがて孤立する」として反対。結果はビンラディンの言ったとおりになりました。
 組織としてのアルカイダは、CIAが思っていたよりずっと細かく組織されていたようです。戦闘部門だけでなく、財務部門、サービス部門、組織管理・運営部門などが整備されていて、非常に細かい予算の記録がありました。ちなみに、支出額は作戦準備・実行、あるいは訓練の予算よりも、いわゆる人件費がもっとも多額になっています。
 アルカイダは豊富な資金源があるわけではなく、けっこうカツカツだったこともわかりました。主な収入源はパキスタン北西部などでの勝手な徴収。つまり「追い剥ぎ」だったようです。
 ビンラディン邸からはビデオ映像も押収されましたが、アルカイダの宣伝映像や軍事教則などは一切なく、家の中の様子を写した「ビンラディン家のホームビデオ」ばかりだったそうです。また、どういうソースなのかは番組では明示していませんが、ビンラディン家は妻たちのトラブルがあったようです。ビンラディン邸では3人の妻が同居していましたが、ビンラディンと同衾するのは29才のいちばん若い妻ばかり。62歳と54歳の妻の間で深刻な問題が生じていた形跡があるとのこと。一夫多妻もたいへんそうです。

 番組ではアメリカ側の動きも解説していました。
 ビンラディン追跡は、オバマ政権になってCIAに強力に指示が下されたこと。アフガニスタンの基地内での自爆テロでCIA要員多数が殺害された事件の後、CIAがいわば弔い合戦に本気になって取り組んだことなどが紹介されています。
 対テロ戦に関しての情報で面白かったのは、ビンラディン殺害後、アルカイダ幹部が次次とパキスタン北西部でCIAの無人機で爆殺されていったカラクリです。
 番組によると、ビンラディン襲撃で押収したデータの中に、メンバーの携帯電話番号があり、アメリカ側はそれで簡単に幹部たちの居場所を特定できたといいます。なるほど、とは思いますが、そんな情報をテレビで公開していいのかな? あるいは、ホントはそんな単純なカラクリだけではないのかな?
 そのうち再放送があるかもしれませんので、そのときはぜひお薦めです。
  1. 2012/09/28(金) 11:10:32|
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自由シリア軍の手作り武器工場

 アルジャジーラのレポート(アラビア語)。これは面白いですね。
▽自由シリア軍の手作り武器工場 (アルジャジーラ)
 場所はアレッポ。部隊は「タウヒード旅団」。こうして武器を実戦使用に完成し、アレッポ郊外の政府軍の飛行場攻撃までをレポート。やはりアルジャジーラは取材力がありますね。

(追記)
 もっとありました。
▽手作り武器(アルジャジーラ)
  1. 2012/09/27(木) 23:00:14|
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故・金正日が国家安全保衛部に金正男暗殺指令

『朝鮮日報』によると、金正日生前の2010年7月、国家安全保衛部の工作員が、中国で金正男を暗殺する指令を受けたものの失敗していたことが判明しました。今年6月に韓国に潜入し、9月12日に逮捕された、この工作員の供述です。
 当時、国家安全保衛部の指揮官は、禹東測・第1副部長。金正日の直接の指揮下にあたりますが、制度上は張成沢・党行政部長の指導下になります。ただ、金正男暗殺ともなれば、間違いなく金正日の承認があったでしょう。金正日はすでにその頃、正恩への世襲プロセスを着々と進めていて、2010年9月には正恩を朝鮮人民軍大将とし、世襲を公表しています。
 ところで、北朝鮮はその2カ月後の2010年11月、延坪島砲撃で韓国との緊張を著しく高めますが、国家安全保衛部ではその直後、柳京副部長が2010年12月から2011年1月にかけて韓国を秘密訪問し、南北首脳会談開催などの対話促進で合意したものの、帰国直後に銃殺されるという事件が起きています。柳京副部長の自宅から多額のドル紙幣が発見され、スパイとして処刑されたなどといった情報が流されていますが、対南融和を望まない軍強硬派による陰謀説、あるいは金正恩世襲プロセスの邪魔になったと判断した張成沢黒幕説などもあります(真相はわかりません)。
 ちなみに、上記の柳京処刑の裏側のついて報じた『朝鮮日報』今年7月28日付によると、韓国当局は、柳京はかつて小泉訪朝を当時の田中均・外務省アジア大洋州局長とお膳立てした謎の人物「ミスターX」だったと見なしているそうです。これも真相はわかりませんが、ミスターXの正体については、これまで諸説ありました。
 朝日新聞の船橋洋一氏の著書『ペニンシュラ・クエスチョン』では、国防委員会幹部の軍人で、金哲(キム・チョル)と名乗る人物だったとされています。
 重村智計・早大教授(元毎日新聞記者)の著書『外交敗北』では、国家安全保衛部第一副部長の金チョルという偽名の人物だとされています。
 コリア・レポートの辺真一編集長は『ワールド・インテリジェンス』第3号での私の取材に「ミスターXは軍人。軍を代表する立場で、軍から出向のかたちで金正日の側近となっているような人物だろう」と解説しています。
 いずれにせよ、金正恩世襲が本格化した2010年夏から2011年初頭にかけて、北朝鮮内部では水面下で凄まじい権力抗争があったことが窺えます。

 ところで、このところきな臭くなっている日中韓の領土問題などに関し、韓国メディアも関連記事を連発しています。韓国ならではの視点で、なかなか興味深いものがあります。
(以下、最近の『朝鮮日報』日本版の注目記事)

▽自民総裁選:安倍氏が首相になれば韓中両国との関係は?

▽中国に押された日本、軍備増強の可能性

▽独島:「日本の測量船に衝突・撃沈せよ」盧武鉉前大統領が指示

▽尖閣の次は離於島、中国が紛争地域化の動き

▽フィリピン「中国無人機、領空侵犯なら撃墜も」

▽独島:橋下氏の「共同管理発言」に日本極右派が反発

▽尖閣:「日本は戦後最も好戦的」=米紙

▽大統領選:3候補、日中対立に無関心

▽空母配備急いだ中国、周辺国に武力誇示

▽【社説】独島・離於島問題に臨む大統領候補らの力量は

▽【社説】中朝日ロのミサイル大国に囲まれた韓国
  1. 2012/09/27(木) 16:47:16|
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イッシーではなくゲルです

 昨夜、地元のバーで自民党総裁選がちょっとだけ話題に。女性陣が「イッシーのほうが良かったー」と言うので、石原さんか石破さんかわかりづらかったのですが、石破さんでした。イッシー? 巷ではそんな愛称もあるみたいですが、言うまでもなく軍事マニア業界では「ゲル」ですね。
(「いしばしげる」を変換すると「石橋げる」になるとの伝説でゲルと呼ばれるようになったとのこと。軍事マニアの間ではオチョクリ的な意味合いでも使われていましたが、愛称としてもいいんじゃないかと思いますね)

 石破議員、そんな国民人気を背景に幹事長就任です。さて、安倍政権誕生の際は、どうするのでしょう?
 ちなみに、昔はこんなことを言ってました。いや、それはあくまで当時のことだから別に構いませんが、ネタとして紹介。

『日本の防衛7つの論点』(宝島社:2005年)より
私「もしも次の内閣改造のときに、幹事長か防衛庁長官かどちら選べと言われたら、どうしますか?」
石破氏「迷わず防衛庁長官ですね」
私「ホントですか?(以下略)」

『戦後裏外交史』(洋泉社:2010年)より
(私の一連のインタビューの最後に)
石破氏「自民党が政権を奪還したら、私は一度、外務大臣をやってみたい。日本は今まさに岐路に立っているんです。こんなやり甲斐のある仕事はないですよね」
(以上、引用)
  1. 2012/09/27(木) 12:55:34|
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シリア軍参謀本部襲撃

 自由シリア軍による政権中枢攻撃作戦。政府軍参謀本部で2回の爆発があり、報道では警備兵4人が死亡、14人が負傷。激しい銃撃戦も起きたそうです。政権幹部たちも、さすがに震え上がっているはず。こういうのを続けて、幹部たちがビビって国外に逃げてしまえばさっさと片がつくのですが・・・。

 ところで、昨夜はジャーナリストの常岡浩介さんと安田純平さんのトークライブに行ってきました。やはり陰謀論的情報がネットでは結構流れているらしく、その否定に多くを割いていました。インフォメーションとエビデンスを混同している人が多いということでしょうか。
 シリア国営通信の大本営発表(=インフォメーション)によれば、シリア全土で政府軍圧勝とのことですが(ずっとそう言ってきましたね)、実際にはダマスカス中心地で銃撃戦(=エビデンス)。自由シリア軍側の「あと×ヶ月でアサドは打倒」もどうかと思いますが(これもずっと言ってます)、少なくとも攻守の勢いは明らかですね。
 政府軍のヘリの撃墜も増えています。高性能携帯SAMが出回っているというインフォメーションはないのですが、自由シリア軍は政府軍の23ミリ対空機関砲なんかを奪取しています(下写真がエビデンス)
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 いつまでも陰謀論に付き合っているのもバカらしいので、シリア革命の動向フォローを再開しようと思います。
  1. 2012/09/27(木) 04:16:00|
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中国紅客連盟のサイバー攻撃

 反日デモに合わせて、予想どおりに様々なサイバー攻撃を受けている日本ですが、本日発売の『サンデー毎日』の記事「サイバーテロ集団 中国紅客連盟の実態」にコメントを採用していただきました。
 中国紅客連盟は中国の老舗のハッカー集団で、いってみれば中国版アノニマスのような存在です。多くはアノニマス同様、民間のハッカーですが、創設者や古参メンバーには、軍や公安部との関係の深い人物も多くいます。
 今回行われたサイトの書き換えのようなものは、まあたいしたことはない話ですが、じつはそれとは別に、軍のサイバー部隊などは、日本の様々なインフラ・システムにかなりの不正プログラムを仕込んでいる可能性があります。こうしたものは徹底秘匿されるので、有事の日まで実態を掴むのは非常に難しいですが、すでにかなり侵食されているとの前提で考えるべきです。
 実態は誰にもわかりませんが、やられていないと楽観できる根拠もありません。
  1. 2012/09/25(火) 21:38:28|
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尖閣問題その2

 今度は台湾です。それぞれがジャブを出しつつ牽制し合っている状況ですが、ジャブ応酬のつもりが、結果、じわりじわりと追い詰められています。
 あちらは日本政府による国有化に反発しています。日本政府は「石原都知事の暴走を抑えてやったのに」と思っているのでしょうが、あちらの意識では、「日中両国が領有権を主張している無人島を、日本政府が急に強引に正式に編入した。きっと軍事化するに違いない」といったところでしょう。中国側なら迷いなくそうするでしょうから。
 どうせジャブを出すなら、この機会に相手の挑発を口実にぜひ「船だまり」くらいは作ってしまえばいいのに、と思いますね。どちらにせよジャブの応酬ですから、ドサクサに少しでも実績を重ねないといけないのに、現実は、相手がドサクサに「領海侵犯」の実績ばかり挙げています。
 タテマエの主張とかも大事でしょうが、戦争まではどうせまだまだ遠い距離にいる現在、「ドサクサの実績作り」競争は敵方の圧勝で進んでいる気がしてなりません。
  1. 2012/09/25(火) 21:23:32|
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パチンコ砲

 面白い、と言うと不謹慎ですが、これはなかなかです。武器不足のための苦肉の策ですが、それなりに効果はあるかも(?)
▽大型パチンコ砲
 映像アップは昨日付。他に何の説明文もないですが、投稿者が「アル・ファルーク」名なので、アル・ファルーク旅団の一部隊かも。

 ついでに、先週SNSで話題になった写真。
FSARENT_convert_20120925203342.jpg
 自由シリア軍の武器のレンタル屋さんだそうです(もちろん本物ではないです)。この写真が出た直後、対抗して「レンタル戦車屋」の写真をアップした自由シリア軍の別の部隊もあったのですが、ちょっとSNSをフォローしている間に元ネタを見失ってしまいました。
 以前も拙ブログやJBPRESSの寄稿記事で、面白映像を紹介したことがありますが、この明日をも知れぬ状況下で、シリアの人はこういうオフザケを続けているところが凄いなと思いますね。
 
  1. 2012/09/25(火) 20:42:54|
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尖閣戦争(?)に勝者はない(と思う)

 尖閣問題は百家争鳴。なかには真面目に尖閣戦争を検討しているものも少なくありません。そこで、本日発売の『週刊朝日』に「武力衝突シミュレーション 尖閣を制するのはどっちだ?」という記事を寄稿させていただきました。
 特集内の短記事なので細かなシミュレーションをしたわけではないですが、結論としては、ガチの軍事衝突となれば、どちらも尖閣を制圧できないのではないかなというものです。まあ、どのあたりで手を引くかという政治判断次第でしょうが。
 もっとも、日中ほどの大国になると、軍事衝突はそんなに簡単には起こらないと思います。ということで、末尾に付記した付け足し文のほうが、じつは本当に書きたかったことでした。
「現実には、相手がどれだけ理不尽な行動に出てきても、武力攻撃の発動には非常に高いハードルがある。現代の国際社会では、先に相手に人的な危害を加えたほうがワルモノになるからだ。
 したがって、開戦に至らない緊張状態の中では、先に強硬な行動に出たほうが得だ。尖閣問題でいえば、先に人間を上陸させたほうが、外交戦略上は圧倒有利になる。日本側は、何がなんでもそれだけは阻止しなければならない」
  1. 2012/09/25(火) 11:18:15|
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シリア内乱を巡る誤った言説を正す

私の生業はライターで、レポートは本来なら取材内容と分析力で勝負すべきもの。他の言説とどちらが説得力があるかは、読者の判断に委ねるというのが、まあ普通なのですが、シリアの問題は、今も毎日人々が殺され続けている、きわめてリアルな問題です。独裁者に殺害された人々のためにも、観念的で誤った言説をスルーはしません。
 なぜか日本(とロシア)にだけ多いアサド擁護論・反体制派悪玉論への反論を、字数制限はありますが、それでもできる限りきっちり書いておこうと思いました。
 そもそもあまり中東情勢に興味のない方には、さらにまったく興味のないマニアックなテーマでしょうが、JBPRESSに下記の記事を寄稿させていただきました。あまり積極的なアクセスはないかもしれませんが、シリア情勢に興味を持った方がネットで目にしていただく機会があればと願っています。
▽「悪玉なのは反体制派の方」? シリア内乱を巡る誤った言説を正す(JBPRESS)
 攻撃的なタイトルは編集部につけていただいたものですが、内容は、まあその通りです。陰謀論で固まっている人はしょうがないですが、とりあえず「無党派層」にアピールできればいいかな、と考えています。

(追記)
 アサド政権悪玉論と自由シリア軍悪玉論のどちらの情報がより正しいか?を判定する簡単な方法を書き忘れていました。どちらに殺害された子供、女性、老人(つまり明らかな非戦闘員)の映像が多いか?を比べることです。動かぬ証拠ですから、これがもっとも手っ取り早いですね。
 で、アサド政権による犠牲者・・・・優に500人分くらいはすぐに集められますね。
 片や自由シリア軍による犠牲者・・・・あれれ、1点も見つからない。あ、路上の爆弾テロのがありましたが、あれはおそらくイスラム過激派の犯行で、自由シリア軍はああいう連中は認めていませんね(FSAは犯行をアサド政権の自作自演と見なしていますが、それはあまり説得力がないことは上記レポートでも書いたとおり)。
 さて、どこか私の知らないサイトにあるのでしょうか? 反体制派も酷い!との主張があるなら、せめて子供たちの虐殺証拠映像の5点か10点くらいはないと話になりませんね。
  1. 2012/09/25(火) 01:48:36|
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アレッポの外国人義勇兵

 アサド政権はしばしば「反体制派の中心は外国人のイスラム過激派のテロリスト」と宣伝しています。
 実際、海外からの義勇兵はいます。が、その数はたいしたことはありません。いまや反体制派の総兵力は3~5万人と推定されますが(カウントされていないので、どうしても推定値に幅があります)、まあせいぜい数百人です。
 それでも、なかなか報道されていない外国人義勇兵について、非常に興味深い現地ルポが出ました。
▽Syria: the foreign fighters joining the war against Bashar al-Assad(英紙『ガーディアン』:9月23日)
 同記事によると、義勇兵には義憤に駆られて馳せ参じたビギナーと、イラクやイエメン、アフガンやチェチェンでの戦闘経験豊富なイスラム兵士と両方いるそうです。記者はチェチェン人、トルコ人、サウジ人、パレスチナ系ヨルダン人、イラク人、パキスタン人、タジク人などなどと会っています。
 義勇兵はいくつかの民兵組織に分散していますが、その代表的なのが、「アフラル・アル・シャーム」(シリアの自由人)と「ジャブハト・アル・ヌスラ」(ヌスラ戦線)。後者はしばしば爆弾テロで犯行声明を出している組織ですね。こうした外国人義勇兵を、シリア人兵士は「トルコの兄弟たち」と呼んでいるそうです。
 チェチェン人はたいてい年長者で、戦闘服に山岳ブーツを履き、戦闘に慣れているとのこと。トルコ人は元兵士で、西側の兵隊の格好。タジク人とパキスタン人はいかにも貧しい身なりだったそうです。
 イラク戦争後にファルージャで米軍と戦い、イラクのアルカイダに入ったイラク人もいました。彼はシリア人の反体制派兵士の技量がダメダメなのを嘆き、「IEDと狙撃をもっと重視しないと」と言っています。なるほど米軍を狙った手口ですね。これはアサド政府軍からみれば「テロリスト」になるわけです。
 シリア人反体制派との衝突もあるようです。
 一例として、トルコ国境でのアル・ファルーク旅団とのイザコザの例が挙げられています(同記事ではアル・ファルーク旅団を「自由シリア軍のなかでもっとも統制され、武装レベルの高い部隊」としています)。イスラム外人義勇兵部隊(指揮官はシリア人)がトルコ国境にアルカイダの旗を掲げたため、アル・ファルーク旅団(これも基本的にはサラフィスト部隊)が「トルコ経由の必需品補給に悪影響するからやめてくれ」と言ったところ、外人義勇兵部隊のエジプト人幹部に「そのために我々はここにいる」と言われたそうです。
 記者が接触したアル・ファルーク旅団の指揮官のひとりによると、外国人部隊が略奪したのを止めたこともあるそうです。

 こういう連中が入ってきているのも事実です。反独裁の義勇兵はいいのですが、イスラム過激派とか山賊まがいの連中は迷惑ですね。怪しい輩がまったくいないというわけではないので、公平を期すために紹介しました。
 ただ、何度も書きますが、こうした話はシリア全土で行われている独裁VS民衆蜂起の中では、ハレーションのようなごく一部の話です。これで「反体制派はみんなこう」とか短絡的に思い込むと、陰謀論まっしぐらパターンに陥りますのでご注意ください。
  1. 2012/09/24(月) 21:07:41|
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日本人をみな殺しにせよ?

 現在発売中の『週刊現代』の尖閣記事に、米軍の対応予測に関してコメントを採用していただきました。
 今週のW現、ガンガン攻めてます。
 特集20ページで「日本人よ、戦いますか 中国が攻めてくる」と大特集。「実は人民解放軍より自衛隊のほうが強い、だが・・・・」「日本人をみな殺しにせよ(本気です) 中国 ニッポン撲滅キャンペーンの現場から」「消えた習近平 その真相は胡錦濤に軟禁されていた」・・・。
 私は日中軍事衝突のシミュレーションの記事で話を聞いていただいたのですが(まあ私自身は自衛隊が圧勝とは思ってませんが)、目が留まったのは、やはり「日本人をみな殺しにせよ」の記事。北京のデモの密着取材で、これが面白い。こういうのは解説中心の新聞より週刊誌の文章のほうが読み物志向なので臨場感はありますね。
 デモ参加者のひとりのコメント

「(略)このところ不況で仕事なんかねえよ。『工体』(サッカー場)で叫ぶには(入場料が)25元かかるが、“鬼子”(日本人の蔑称)の大使館前で叫ぶのはタダじゃないか。かつ英雄視されるからスカッとするのさ」
(続き)
 この男に「釣魚島(尖閣諸島)は中国のものだよな」と水を向けると、「ああ、もちろんだ」と頷いた後、「実際はそうんなもの興味ねえよ!」と、小声で吐き捨てた。(以上引用)
だそうです。 
 ちなみに、日本大使館前のデモのプラカードに「殺光日本人」(日本人を殺し尽くせ)というのがあったそうです。
 それと、当初はデモを黙認していた当局が、デモ禁止通達した日に、5人のデモ参加者が日本大使館に突入を図ったシーン

 すると公安は、3人ひと組で一人の活動家を羽交い絞めにし、まるでリンチにかけるように、シルバーの金属製警棒でボコボコに殴りつけた。(以上引用)
だそうです。
 さすが中国共産党、外にも内にも甘くはないですね。
  1. 2012/09/24(月) 13:37:37|
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シリアのキリスト教徒の不安

「シリアでマイノリティのキリスト教徒はアサド支持」との見方をときどき目にしますが、そんなことはありません。
 こんな動きもあります。
▽キリスト教徒の反体制派部隊
 9月18日。ダマスカス郊外。自らを「神の信奉者旅団」と名乗っています。

 また、CNNではこんな特集も放送されました。
▽Christians in Syria fear uncertain future(9月20日。CNN)
「将来、私たちはどうなるか不安です」と、キリスト教徒は言います。
 ひとつには、政権側が宣伝しているように、新政府がスンニ派過激派政権になった場合、迫害の不安があります。これは事実でしょう。
 もうひとつは、もしCNNに政府批判を話したら、自分はタダではすまないという恐怖があります。これは映像コメントにはなりませんが、「そのくらい察しないと・・・」という話です。
 番組ではキリスト教徒の女性政治家とか、アサドと一緒に写った写真を持つマアルーラの住人とかが登場していますが、このへんの人は「これまでアサド支持を公言してきたから、アサドが倒れると自分はまずい立場になるかも」という不安もあるでしょう。これもコメントにはなりませんが、これもそのくらい察しないと・・・。
 まあ、いずれにせよ不安は不安でしょう。たしかに苦しい立場なのはわかりますが、もうこの事態になれば、さっさと転向宣言したほうがむしろ将来は安全だと思うのですが・・・。
  1. 2012/09/23(日) 16:36:53|
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シリア亡命TVキャスター

 7月にフランスに亡命したシリア国営テレビの有名な女性キャスター、オーラ・アッバスさんが、CNNの名物記者クリスチャン・アマンプールの番組に登場しました。
▽シリア亡命TVキャスターのインタビュー(CNN)

▽シリア著名女性キャスターの転向宣言
 こちらは7月の転向宣言時の映像。

 彼女は婚約者と家族を残して亡命しました。苦渋の決断だったと思いますが、それはTVキャスターとして、これ以上、嘘の言葉を伝えることで、自分自身が殺人者と同じだと感じることに耐えられなくなったからだと言います。
 それまで1年半、この決断が出来なかったのは「恐怖」のためだったと言います。

 独裁体制に生きるというのは、こういうことです。留意すべきは、独裁体制下の人々は本当のことを話してなどいないということです。
 今も、「アサド大統領は正しい」「反体制派はテロリスト」と語る人がシリアにもいます。けれども、そういう人の大多数は政変後、「あんなの本心じゃない。だけど、あのときはそう言うしかなかった」と言うはずです。独裁体制で生きるとはそういうことです。

ところで、アルアラビーヤによると、アサド大統領の実姉で、7月に殺害された黒幕アシフ・シャウカトの妻だったブシュラ・アサドが、子供たちを連れてドバイに逃げたそうです。政権側の人々も、もう恐怖でいっぱいなのでしょう。
  1. 2012/09/20(木) 09:34:59|
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戦闘車を手榴弾で破壊?

 反米デモのニュースでなんとなく報道量が減ってますが、シリア内戦はあいかわらず凄まじい勢いです。下記は昨日出回った映像。
▽戦闘車を手榴弾で破壊?
遠距離撮影であまり鮮明でないのでよくわかりませんが、自由シリア軍の兵士が政府軍の歩兵戦闘車らしき車両を手榴弾か何かで破壊した場面のようです。音声によれば、アレッポと言っています。
 ただ、この兵士はずいぶんのんびりと無防備に近づいているように見えます。こういうものなのでしょうか? 過去の戦場取材でも、こうした場面は見たことがないので、私にはよくわかりません。
  1. 2012/09/18(火) 18:53:02|
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尖閣問題 情報分析と国家戦略

 また中国の監視船団が尖閣海域に来ましたね。日本が譲歩しても、相手はもう止まりません。絶対に領海に入れてはいけません。ここで一歩引けば、それが既成事実化します。次はもっと来るでしょう。たとえ小競り合いになっても、現状維持の強い姿勢を貫くことが重要と思います。
 とにかく実効支配を緩めてはいけないです。何度も書いていますが、実効支配はもの凄く重要です。たとえば、いくら日本の領土だと主張しているからといって、今、自衛隊が北方領土や竹島に侵攻すれば、日本は国際社会で事実上「侵略者」と見なされ、孤立します。相手が実効支配しているからです。
 国際社会はすでに、紛争は武力でなく交渉で解決するのが正しいというタテマエなっています。尖閣はいま現在、日本が持っています。これを侵犯する者は国際社会で認められません。現状維持に挑戦する者は、世界平和の敵と見なされます。
 反日デモの暴走に対し、いま政府が国有化したことを批判する声もあるようですが、私はむしろ手ぬるいくらいとの考えです。遅すぎるほどと思っています。政府の国有化が火に油を注いだという見方は結果論であり、そうしなければますます中国側の暴走が過熱していた可能性もあります。
 日本政府は反日デモなどにビビらず、粛々と国土防衛を実行すべきです。中国が監視船を出してくるなら、海上保安庁の巡視船の大船団を展開すべきでしょうし、もしも中国海軍が進出してくれば、海上自衛隊を出すべきです。紛争になるとの懸念があると思いますが、日本は尖閣を実際に支配していて、譲る気はないとの決意を行動で示さないと、中国はさらに攻勢に出てきますから、さらに不利な条件で紛争になる可能性が高いと思っています。

 反日デモで私たち日本人全体が敵視されたからか、尖閣問題は日本の側でも議論がかなり過熱気味です。私の周囲でも中国人批判(中国政府批判でなく)する人が増えている気がします。中国総領事館に発炎筒を投げ込んだ輩まで出てきました。そこで、一歩引いて状況を考えるため、尖閣問題に対する国家戦略と情報分析の流れを簡潔にまとめてみたいと思います。

 まず、国家として「何を目的とするか?」を明確にする必要があります。
「日本の安全保障と国益の確保」となりますね。
 では、そのために必要な施策は何か?・・・これが国家戦略になります。
「日中関係を安定させる」+「尖閣の実効支配」の両立・・・これとしましょう。
 そのために必要な施策を「尖閣を現状維持とする」としましょう。
 日本政府はそのため、長年、尖閣問題はなるべく動かさないように務めてきました。尖閣は日本側の実効支配下にあり、現状維持でも「日本の安全保障と国益の確保」という最上位戦略に合致していたからです。
 しかし、中国側が現状維持を否定し、具体的な行動に出てきました。まず、この時点で本来は施策の見直しが必要です。
 ですが、政府は動かない。そこで東京都知事が動きました。中国側を刺激する動きです。
 そこで、日本政府は「日中関係を安定させる」という比較上位目的のため⇒「中国を刺激しない」という目的を定め、そのために「国有化」しました。しかし、中国はそれでも充分刺激され、ますます攻勢に出てきました。これまでのやり方では「日本の安全保障と国益の確保」ができないとの情報分析・判断が求められる局面です。
 ここで重要なのは、「日本の安全保障と国益の確保」は最上位の目的だということです。現在、次の国家戦略である「日中関係を安定させる」+「尖閣の実効支配」の両立が困難になったわけですから、そこを組み立て直さなければなりません。
 しかし、これはどちらかを放棄せよということではありません。最上位の戦略のため、やはり可能なかぎりの両立を目指すべきものです。
 そこで情報分析と判断がきわめて重要になります。上記のどちらかは、放棄せざるとも多少のリスクを覚悟せねばなりません。また、両命題ともに、「どの辺りまでのリスクなら許容できるか」を見極めなければなりません。
 たとえば、尖閣を守るためといって、全面戦争になっていいのか? ダメですね。
 あるいは、日中関係を丸く収めるために、尖閣をとられてもいいのか? これもダメです。
 では、何がベストの道か?
 これは日本の事情だけでは考えられません。中国側の事情をよく分析する必要があります。
 中国はここまで出てきた以上、尖閣を放棄するということはないでしょう。濃淡の波はあるかもしれませんが、今後も自国領土と主張し、侵犯を繰り返すことになります。
 日本側としては「尖閣を死守すること」と「中国との全面対決を避ける」ことが必要になります。戦略とは、それを第一に目指して施策を考えることです。
 現在の政府の方針は、中国との対決を避けることが優先され、尖閣を死守するための施策が後手にまわっているように思えてしかたありません。それに対し、中国の側は、いくら中国国民世論が沸騰しているからといって、相手の実効支配に軍事力で挑戦するまでにはまだまだ高いハードルがあるように見えます。もっとも、時間の経過とともにこの垣根はだんだん低くなっていきますから、日本は今のうちに早急に実効支配強化策を施し、ハードルを強固な壁にすべきと思います。

 というわけで、私は現時点では、海上保安庁が尖閣周辺の領海を完全に封鎖し、中国船を絶対に領海に入れないようにすべきと考えます。と同時に、中国船団の襲来を口実に、前回記述したように、海保等による尖閣諸島の実効支配強化の具体的な措置をとるべきと考えます。
  1. 2012/09/18(火) 17:47:19|
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早くもピークを過ぎた中東「なんちゃって反米気分」デモ

 日本でも市民運動が左翼セクトに乗っ取られ、大衆求心力を喪失して萎んでいった例は多いですが、アルカイダやヒズボラが前面に出てきたことで、イスラム社会全体に流行した反米機運には逆効果になっているようです。
 また、当初は「アメリカ人が反イスラム映画を作った!」ということで盛り上がっていた反米感情も、じつは「コプト教徒(エジプトのキリスト教異端派)が作ったしょぼい動画」ということがわかってきて、なんだか肩透かしな感じになっているようです。
 地域ごとに温度差は違うので、すぐに収束となならないでしょうが、いわゆるイスラム社会全体の反米運動は下火になりつつあると見ていいのではないかと思います。もともと根拠もあやふやな気分的暴動だったということです。
 柳田民俗学でいうところのハレ(非日常)=すなわち「祭り」ということだったのかもしれません。中国の反日デモにもそういう部分がありそうに思えるんですが・・・。
  1. 2012/09/18(火) 11:50:56|
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警察庁拉致問題対策室廃止

▽消えた「拉致問題対策室」(荒木和博BLOG 9月17日)
 これは知りませんでした。警察庁警備局外事情報部外事課の特命班「拉致問題対策室」が、今春、廃止されていたそうです。
 2007年出版の拙著『日本の情報機関』p103の図表「警察庁の対外インテリジェンス部門」から、「拉致問題対策室」を取り消します。

 ところで、昨日は小泉訪朝10周年。昨夜、NHK「ニュース9」に横田夫妻が出演されていました。10年間、何の進展もなく、本当にお気の毒に思います。
 滋さんは「制裁強化では動かない。妥協して交渉の道を探るべきだ」という意味のことを訴えておられました。今後の方針転換も必要かもしれません。

 ところで、拉致問題に関してしばしば「日本の首相が毎年代わるからいけない」との主張を目にしますが、本質ではないと思います。首相が誰になろうと、政権がどう代わろうと、拉致問題交渉は日本政府として継続して進めるべきですし、そんなことを口実にされるようではダメだと思います。
  1. 2012/09/18(火) 09:05:01|
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反米デモとアルカイダ

「アラビア半島のアルカイダ」が、リビアでの米領事館襲撃が「米軍に幹部が殺害されことの報復だった」との声明を発表しました。同事件が用意周到に準備されたものとの見方もいろいろ出ていて、その中にはアルカイダの犯行だとする根拠の薄い見方もあったのですが、どうも現在浮上している情報だけでは判断できません。
 もしも、そもそもリビアやエジプトで始まった反米デモが、アルカイダ工作員による仕掛けだったとしたらたいへんな大謀略ということになりますが、そこまでは現時点では考えにくい気がしますが。
「アラビア半島のアルカイダ」はさらに、「もっと米国公館を襲撃し、米国人外交官を殺害せよ」と呼びかけています。また、パキスタン北西部を本拠地とするアルカイダ本体は、すでに世界的に影が薄くなっていましたが、こちらもチャンスとばかりに、反米行動を呼びかけています。
 ただ、アルカイダ本体はもはやアラブ社会でそれほど求心力がないので、アルカイダが前面に出ることによって、反米デモに逆にブレーキがかかる可能性もあります。あるいは、ブレーキをかけるためにアメリカ側がアルカイダ仕掛け説を流してたりして・・・・勘ぐりすぎですね。
 アルカイダのアイマン・ザワヒリはまた、シリア政権を打倒せよとも呼びかけていますが、その際、「アメリカはアサド体制を擁護している」と指摘しています。いろいろな点で、余計なコメントが多い人物です。

 謀略といえば、反米デモのきっかけになった映像の制作者ナクラ・バスリ・ナクラ氏を、ロサンゼルス保安官事務所が任意聴取したとのこと。彼は2010年に銀行詐欺で有罪となり、5年間の保護観察処分を言い渡されていたという札付きの人物だそうです。
 また、この人物はエジプトのキリスト教異端派「コプト教」の信者だそうです。コプト教徒はエジプトでイスラム主義者と血みどろの抗争を繰りひろげてきた人々です。こちらもなにやら裏のありそうな話ではありますが・・・。
  1. 2012/09/16(日) 12:09:46|
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尖閣で逆襲のチャンス

 つい先日書いたことと同じことをまた書きます。中国国内の反日暴動によって、日本側にはチャンスが広がっています。
 中国国内で日本の公館や日本企業が襲撃されました。これで「仕掛けたのは中国側」になるので、日本は早急に強硬な対抗策をとれます。重要なのは、「日本が国有化したから中国が対抗した」という構図ではなく、「中国側が公船を侵入させ、反日暴動を黙認したから、日本は対抗措置を余儀なくされた」という図式にもっていくことです。まず、海保のための何らかの設備(通信機器、補給設備など? あるいは民間人が海に飛び込んで溺れることに備え、救急救命のための設備とか?)を設置し、その保守の名目で海保要員を上陸させておくというのはどうでしょうか? そのあたりから、なし崩しに船舶接舷施設などを作ってしまうとか。
 あちらは、日本側が何をやってもそれを口実に反日行動に出ますから、この際、実効支配強化を速やかに実行しておかないのは損ではないかなと思います。
 中国側の公船の侵入、さらには予定される漁船団の行動などは、要するに既成事実化です。日本側は現在、実効支配という圧倒的なアドバンテージを持っていますが、既成事実化競争で後手にまわっていると、いずれ同点に持ち込まれてしまうでしょう。
 中国政府は既成事実化を図っていますが、その一方で国民のヒートアップを抑制しなければならない難しい立場にあります。反日暴動は共産党独裁政権の国民管理を弱体化させるからです。
 相手の足下を見るというのは、上品な行為ではありませんが、利用するものは利用したほうが得です。中国政府は対外関係がどうあれ、内政上の事情で、いずれにせよ暴動やデモの収束に動かざるをえません。日本側は、そこにつけこまないのは損だと思います。
 ただ、攻撃対象とされる日系企業は、大きな損失を被る可能性があります。もともと中国進出はリスクの高い案件ですが、さすがにちょっとお気の毒ではあります。

 BBCやCNNをみても、トップニュースは世界中に拡大中の反米デモで占められ、日中問題はずっと後のほうですが、すでに「日本領土に中国侵入」ではなく、「二国間の領土問題が過熱」というスタンスで報じられています。CNNでは、「日本側は経済への悪影響を懸念して手をこまねいている」と、日本側に不利な印象で報じていました。
 日本としては、この機会を利用して粛々と既成事実を積み、実効支配レベルを着実に上げていくことが重要と思います。

・・・・・と思うわけですが、日本政府はおそらく何にもせず、中国に口先で抗議するだけでしょう。となると、結果的に中国側がいっきに既成事実強化を成功させたという話になります。
 中国側はまたやるでしょう。ずっとやるでしょう。尖閣を中国側が手に入れるには、かぎりなく武力行使的な実力行使が必要なので、そこまではできないと思いますが(甘いですかな?)、権益を同格で要求するぐらいのところへは持っていかれそうな勢いです。
  1. 2012/09/16(日) 10:12:18|
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なめんなよ白人デモ&暴動

 これはまったく予想外でした。ユーチューブで流されたイスラム侮辱動画(映画というより、単なる動画ですね、これは)を引き金に、イスラム圏全土で反米デモが急速に拡大しています。
 反米といっても、米政府はそんな動画に責任はありませんから、イラク戦争の頃に吹き荒れた反米言説の隆盛とは違い、政治的な動機というより、気分的な「暴動」に近いものです。ウォール街占拠デモや世界各地で頻発する気分系のデモに通じる時代の流行かと思いますが、スーダンでは無関係のイギリスやドイツの大使館まで襲撃されています。宗教の問題になっていますが、その根底には人種差別の問題がある気がします。要するに「キリスト教徒=白人に対する反感」の暴発といっていいと思います。
 キリスト教徒の白人がイスラムを侮辱した⇒白人どもは許せん、ということなのでしょうが、これは意外と根が深いと思います。日本では白人の総数が相対的に少ないので、白人が日本人を下に見下すといった空気はほとんど感じられませんが、イスラム圏では明らかに白人が地元アラブ人(あるいはイラン人、トルコ人、パキスタン人なども)より上位の人種と認識されています。つまり、地元の人々は白人に見下されていると感じていて、心の底には誰もが大なり小なり反感を持っています。
 今回のデモや襲撃は、それで何か状況を好転させるいうことは考えられないので、米政府が火に油を注ぐような実力行使などをしなければ、ひとしきり流行した後はやがて収束していくものと思いますが、ここしばらくは流行現象として拡大しつづける可能性が高いでしょう。
 いまや制度としての人種差別は先進国ではなくなりましたが、社会の深層からそれが消えたわけではありません。たとえば、欧米に留学したアラブ人の男子は、相当イケメンでも白人のギャルたちにモテモテとはなりません。9・11の首謀者だったハリド・シェイク・ムハマドも、実行班リーダーだったムハマド・アタも、欧米留学組ですが、もしも留学先でギャルにモテモテで、一切の心理的差別を受けない留学生活を送っていたら、テロリストになったかどうかはわからないと思います。
 何年か前にロンブー淳さんのラジオ番組に、9・11テロをテーマに呼んでいただいたとき、好きな曲をリクエストしてよいということだったので、当時流行していたカール・ウルフの曲を選んだことがありました。彼はレバノン出身でドバイ育ちのネイティブ・アラブ人で、後にカナダに移住して成功したR&Bシンガーです。従来、アラブ系の俳優やミュージシャンは欧米の芸能界では異形扱いのポジションだったものですが、カール・ウルフは完全にイケメン系シンガーとして認知されていました。私は、アラブと欧米の垣根を取り払うには、カール・ウルフのような存在こそが希望であると思っています。
(ちなみに、私たち日本人はもちろん東洋人の風貌ですから、アラブ系よりもっと異形のポジションになります)
 いずれにせよ、今回の反米デモは気分的なものなので、大規模動員をかけられるほどのエネルギーというのは、そう長くは続かないと思います。根っこの部分はしぶとく火種が残るでしょうが・・・。
  1. 2012/09/15(土) 02:01:02|
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駐リビア米国大使殺害の犯人はアンサル・アル・シャリーアか?

 駐リビア米国大使館襲撃の犯行グループとして、「アンサル・アル・シャリーア」(イスラム法の支持者)の名前が浮上しています
(他にも、新興イスラム・グループ「囚われのオマル・アブドルラーマン旅団」が攻撃に加わっていたとの情報もあります。盲目のエジプト人イスラム法学者であるアブドルラーマンは、イスラム過激派の対米テロ提唱者の先駆者で、90年代にアメリカで逮捕され、終身刑収監中の人物)
 ベンガジのアンサル・アル・シャリアは、カダフィ政権崩壊後に誕生した有力なイスラム原理主義組織。指導者はムハマド・ザハウィなる人物。リビアでは他の町にもいくつかアンサル・アル・シャリーアが誕生しており、いくつかは緩やかな連携関係にあるようです。
 イエメンにもアンサル・アル・シャリーアという組織があり、こちらは事実上、有力軍閥化しています。イエメンのアンサル・アル・シャリーアはアルカイダとも関係があるとみられていますが、ベンガジのアンサル・アル・シャリーアがアルカイダと直接の関係があるのかどうかはわかりません。

ところで、件の「映画」の一部がユーチューブに出てたのを拝見しましたが、率直に言って「あれ、映画なの?」というレベル。あんなものが国際情勢にこれだけの悪影響を与えるとは・・・・
  1. 2012/09/13(木) 09:29:22|
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尖閣に施設作るチャンス

 国有化なんて、なんの実効支配実績になりませんが、その程度のことでも敵が仕掛けてきているので、それに対応するとの口実でなんでもいいから施設を建設し、実効支配を強化すべき局面ではないかなと思います。重要なのは、敵の「実力行使」を口実とすること。国際社会では、実効支配を実力で「変更」しようとする側が不利になります。
  1. 2012/09/13(木) 07:59:26|
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駐リビア米国大使殺害でシリアに悪影響かも

 ベンガジ事件。ムハンマドをいじるなどは論外ですが、大使を殺されてはアメリカでアラブ民主化支援に慎重な意見が優勢になるかも。シリア情勢にも悪影響が出るかもしれません。
  1. 2012/09/13(木) 07:47:05|
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シリア反体制派の特殊作戦

 昨年春の早い段階で、シリア反体制派SNS内で「バシャールとマーヘルの2人を殺せば、国民は死ななくてもいい」という書き込みを見たことがあります。そこで、「なんとか暗殺作戦ができないものか」との議論が少し起きましたが、「非現実的だ」として、まもなく話題から消えました(「バシャールに死を!」といったスローガン的な書き込みはずっとあります)。
 ところが、ここ数ヶ月、「バシャールを暗殺すべし」との主張が非常に増えてきています。とくに、7月にアサド政権の最高幹部4人の爆殺事件の後、その傾向は顕著になっています。
 もっとも、ネットに書くのは誰でもできますが、実行はそう簡単なものでもあるまいというのが大方の見方でした。しかし、反体制派の一部は着々とそうした特殊作戦の準備を進めていたようです。
 現在発売中の『ニューズウイーク日本版』が、そうしたシリア反体制派の特殊作戦について書いています。日本語版のタイトルは「アサドに近づく暗殺者の影」。元記事のタイトルは「A Campaign of decapitation in Syria」です(decapitationは「斬首」のことですが、この記事の場合は「政権中枢の人物だけを抹殺する」ことを意味します)。
 記事中に解説されていますが、現在の状況をみると、この特殊作戦は非常に有効だと思います。「暗殺」と聞くと、なにやらダーティな犯罪のイメージを持つ人もいらっしゃるかと思いますが、「大量殺人犯が、脅迫した周辺の人間に大量殺戮を命じている」状況ですので、下っ端を殺すよりも、責任のない、もしくは希薄な人間の殺害を減らすためにも、よほど正当性があります。
 好記事ですので、ぜひお薦めします。
 英文元記事はネットにもあります。
▽A Campaign of Decapitation in Syria
 同誌のマイク・ギグリオ記者は、反体制派の各派、さらには暗殺作戦部隊のメンバーまで取材しています。グッジョブ!

(追記)
 道楽Q様から当エントリーにいただいたコメントに対するコメントをアップしようとしたのですが、なぜかどうしてもうまくアップできないので、こちらに貼ります。

 政権中枢の内部の実態はよくわかりませんが、私が知人から聞いているところと、反体制派SNSをみるかぎりでは、人々はあまりバシャールを「アラウィ派の利益代表」とは見ていないように思います。「アサド家とその取り巻き」に対する敵意が顕著で、当初からバシャールとマーヘルとシャウカトが死ねばオーライ的な感覚の人が多かったです。バシャールが死んでも体制内の誰かが跡を継ぎますが、体制内からの離脱が発生して、勢力はいっきに弱体化するような気がします。希望的観測かもしれませんが。
  1. 2012/09/12(水) 14:13:25|
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シリア情勢のまとめレポート

 JBPRESSに下記の記事を寄稿しました。
▽「国民が殺され続けているシリア、ついに知人のアハマドさんも」(JBPRESS)
 アハマドさんというのは、ちょっと前に当ブログでも言及したシャビーハに射殺された人です。ミダーン在住で、私とは非常に近しかった人物です。
 すでに拙ブログで言及してきた情報分析の総論のようなものですが、皆様ぜひともよろしくお願いします。
  1. 2012/09/10(月) 00:44:47|
  2. 著作・メディア活動など
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ラジオ告知

 朝早いですが、11日(火)の07時40分頃から10分強ほど、ニッポン放送の「あさラジ」に出演します。9・11以後の11年間で「世界の脅威」がどんな具合に変化したかを、ざっくりとお話させていただきます。
  1. 2012/09/09(日) 23:39:51|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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