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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

シリア空軍情報部を攻撃

 つい先ほど、自由シリア軍がダマスカス郊外の空軍情報部の施設を攻撃した場面の映像が、ユーチューブにアップされました。攻撃といっても、それほど大規模な総攻撃ではなく、単なる奇襲のヒット&ランだけですが、あの悪名高き空軍情報部へのアタックですから、それなりに「権力中枢に迫った」攻撃ではあります。
▽シリア空軍情報部への攻撃
  1. 2012/03/05(月) 15:41:16|
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日本版「NSC」の民主党最終提言

 民主党のワーキングチームが検討していた日本版NSC創設に向けた最終提言案の内容が判明しました。産経新聞によると、以下のとおりです。
■メンバー・権限
 メンバーは首相、官房長官、外相、防衛相、国家戦略担当相、安全保障・危機管理担当官房副長官。月に2回、非公開の会議を開催 ▽安全保障と外交戦略について関係省庁間で調整する権限を持つ
■事務局
 新設の「安全保障・危機管理担当官房副長官」は官房長官を補佐し、内閣官房の安全保障、危機管理、情報の3部門を監督する ▽「安全保障担当官房副長官補」も新設。事務局は100人程度
■下部組織
 関係省庁の審議官・局長級の「合同安全保障会議」を置き、政策を総合化する。島嶼(とうしょ)防衛や北朝鮮対策など中・長期的に取り組む課題に関する分科会も設ける
■インテリジェンス
 情報活動について内閣情報調査室に防諜を主体とした研修を積極的に導入し人材育成に努める▽内閣情報分析官を20人程度に増員し、他国から得られた情報を評価するシステムを構築する
■サイバー・セキュリティー
 サイバー攻撃に省庁横断で防衛するための単一の指揮命令系統を確立させ、侵入経路などをリアルタイムで特定できるようにする

 順番に見ていきましょう。
 まず、
▽メンバーは首相、官房長官、外相、防衛相、国家戦略担当相、安全保障・危機管理担当官房副長官
⇒まあ、このあたりは形式的なものです。新設の安全保障・危機管理担当官房副長官が実質的なところをとりまとめるのでしょう。安全保障・危機管理担当官房副長官は、おそらく現在の安全保障・危機管理担当官房副長官補のラインの昇格という位置付けになりますので、外務省系ではなく、警察・防衛の縄張りになるでしょう。霞ヶ関の力関係からすると、おそらく警察系ということになるのではないかと思います。

▽安全保障と外交戦略について関係省庁間で調整する権限を持つ
⇒これができればいいですが、霞ヶ関の長年の慣習がありますから、難しいでしょうね。結局、日本の安保政策は外務省の誘導に従って官邸が決裁し、防衛省その他に通達するという基本パターンは踏襲されるものと思われますが、そうなると防衛・警察系のポストとなると思われる安全保障・危機管理担当官房副長官が音頭をとる日本版NSCは形式だけになってしまう可能性がありますね。

▽新設の「安全保障・危機管理担当官房副長官」は官房長官を補佐し、内閣官房の安全保障、危機管理、情報の3部門を監督する
⇒安全保障・危機管理担当官房副長官補より1階級昇格ですが、官僚トップの事務担当官房副長官と同格になるかといえば、おそらくそうはならないので、実質的にはあまり変化はないかもしれません。
 実権はともかく、これまで内閣危機管理監は官房副長官補よりタテマエ上は格上でしたが、今度は格下になります。
 さらに内閣官房の「情報」も監督するということは、内閣情報官の上司ということになります。情報コミュニティの情報は内閣情報官がとりまとめ、それが安全保障・危機管理担当官房副長官から日本版NSCに上げられるということでしょう。
 なお、格付け順位とすれば、首相⇒官房長官⇒関連諸大臣⇒政務担当官房副長官⇒事務担当官房副長官⇒安全保障・危機管理担当官房副長官(関連諸省庁の事務次官はタテマエ上はこの辺と同格な感じでしょうか。実際には事務次官のほうがエラいとは思いますが)⇒内閣危機管理監⇒内閣情報官ということになりますね。
 
▽「安全保障担当官房副長官補」も新設。事務局は100人程度
⇒安全保障を安全保障担当官房副長官補、危機管理を危機管理監、情報を内閣情報官が担当という棲み分けでしょうか。まあ実際には危機発生時は首相、官房長官、官房副長官が前面で仕切りますから、危機管理監の役割はそれほどはないでしょうが。たぶん安全保障・危機管理担当官房副長官は警察庁キャリア、安全保障担当官房副長官補が防衛省キャリア、危機管理監と内閣情報官が警察庁キャリアという布陣でしょうね。ここで私自身の考えを言うと、内調を国際部門に特化して、内閣情報官を外務省キャリアにしたほうがいいと思うのですが。
 事務局100人。これが実現できれば大進歩ですが、実際にはなかなか難しいかも。とりあえず40人くらいでいいいので、第一歩を進めていただけれないいなと希望します。ただし、単に肩書き配分で選ぶのではなく、ちゃんとした実力者を配置してもらえれば、ですが。

▽関係省庁の審議官・局長級の「合同安全保障会議」を置き、政策を総合化する。島嶼(とうしょ)防衛や北朝鮮対策など中・長期的に取り組む課題に関する分科会も設ける
⇒これは是非実現していただきたい話です。最初は形式だけでも、まずはこれも第一歩が重要です。とにかく日本政府にいちばん欠けていたのは、これですね。

▽情報活動について内閣情報調査室に防諜を主体とした研修を積極的に導入し、人材育成に努める
⇒ずいぶんスモールな提言ですが、実際にもっとも急ぐべきは防諜、というか情報保全の問題ですね。
 日本の場合はとくに公務員と政治家からの情報漏れを防止する法律導入が急務です。秘密保全法案をめぐっては、わがメディア陣営から大きな反対論が出ていますが、要は内容次第なわけで、私はむろんメディア側の人間ではありますし、なかでも国家機密方面のネタをメシの種にしている立場ですが、何らかの秘密保全法は必要だと考えています。捕まったら、まあしょうがないです。

▽内閣情報分析官を20人程度に増員し、他国から得られた情報を評価するシステムを構築する
⇒現状からは大幅アップではありますが、分析官ひとりひとりには限界があるので、本来ならここはどーんと100人くらいい欲しいところですね。要らない国会議員をどーんと減らして、予算をこちらに振り向けてほしいものです。

▽サイバー攻撃に省庁横断で防衛するための単一の指揮命令系統を確立させ、侵入経路などをリアルタイムで特定できるようにする
⇒これも急務ですね。警察庁と防衛省を中心に、経済産業省、外務省、法務省、財務省、総務省などの担当部局が一丸となって対処する態勢が不可欠です。今の日本は警察中心ですが、防衛省でサイバー部隊を育成し、そこが主体となるくらいのことが必要と思います。

 いずれにせよ、本来はこのくらいのことは最低限必要なのですが、政局をみると残念ながら実現化の可能性はあまりない気がします。日本の場合、まず応急処置が急ぎで必要なところから手をつけざるを得ないでしょう。
 ということで、今回の提言からは、まずはサイバー対策の部分をぜひともやっていただきたい。それと、日本版NSCの話とは違いますが、前述した秘密保全法。このあたりが先でしょうね。
  1. 2012/03/05(月) 14:33:51|
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尖閣支配の既成事実を

 私は自称・現実主義者なので、竹島と北方領土はなかなか難しいと思っていますが、日本が実効支配している尖閣に関しては、以前も書いたことがありますが、日本政府がなぜ中国に過剰にビビっているのかホントに不思議でなりません。
▽政府「尖閣は日本の領土」 中国名発表に抗議 (日経新聞 3/3)
 日本政府はまさかこれだけで充分と思っているのでしょうか? 口先で抗議してもしかたありませんね。実効支配が揺るがないうちに、既成事実を積み上げることが絶対に必要です。なんでもいいから政府の建造物を建設し、自衛隊の無人施設を建設し、総理大臣が上陸すべきです。
 それは中国政府は激怒して経済制裁のようなことを仕掛けてくる可能性はありますが、そんなものは一過性です。日中間の経済関係は相互的なもので、あちらにも損になることは続きません。外交ルートでいろいろ脅迫めいたことも言ってくるでしょうが、毅然と撥ねつければ済むことです。
 これらがひとつ積み上げられるほど、「敵」にとっては干渉のハードルがどんどん上がっていきます。今ならそんなに難しいことではないですから、さっさとやるべきです。
▽知事、尖閣視察は公務と認識(沖縄タイムズ 3月3日)
 仲井真知事が昨年4月、極秘で尖閣諸島を上空視察したそうです。極秘にする必要ないです。上空視察でなく、上陸すべきです。日本政府はむしろ奨励すべきですね。なぜやらないのでしょうか? 以前も書きましたが、当の中国のほうが不思議に思っているのではないかと思います。
  1. 2012/03/04(日) 23:55:29|
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シリアで必要なのは反乱軍への武器支援

 シリアではマーヘル・アサド指揮下の第4機甲師団の突入により、ホムスのバーバ・アムル地区の自由シリア軍が壊滅し、現在は市街地の掃討と大量逮捕・処刑が行われているようです。自由シリア軍は大幅な戦力低下が避けられません。マーヘル軍はアル・ラスタンでも大規模な砲撃を開始しています。ひとつの街ずつ、着実に壊滅させていくのでしょう。
 この流れでいくと、シリアでは凄まじい犠牲の果てに、反体制派が敗北することになります。

 さて、それを防ぐ方法を国際社会がいろいろ話し合っていますが、アサド政権はそれこそ自身の生存をかけて戦ってますから、外国に何か言われたぐらいで旗を降ろすことはないでしょう。もう交渉で何かが変わるというようなレベルではないと思います。
 では、国際社会はもうシリア国民を見捨てるしかないのでしょうか?
 いまや一刻も早く、反乱軍に武器と弾薬を供給し、内戦化させるべき局面だと思います。
 平和的な解決法は、もうちょっと考えられない状況だと思います。
 たとえば、数日前のエントリーで英「フィナンシャル・タイムズ」翻訳記事を紹介しましたが、ここがちょっとヌルいなと思った部分がありました。
  
「むしろ諸外国は経済・外交ルートを通じてアサド家に圧力をかけるべきだ。一族はもう二度と世界的に受け入れられないということをはっきり伝えるのだ。
 だが、平和的な圧力の支持者は、正直でなければならない。現段階では、経済制裁と国連の非難決議は恐らく、自身の存亡をかけて戦っているシリア政府の残虐行為を止めるには、効果が出るのが遅すぎるだろう。
 このほか、難民のための避難区域設定や救援物資を届けるための「人道回廊」の確保など、やはり一見平和的に見える対策は、実際には軍事力の行使が必要になる。サウジアラビアが主張するように反政府勢力に武器を供給すれば、間違いなく対立を煽ることになるだろう」

 いったいどっちなんだ?といった内容ですね。
 よく聞く論調に「最悪の場合は内戦化か」というフレーズがありますが、今は虐殺が進行中のレベルなので、もう内戦化しかないだろうと思います。最終的にどちらの場合の犠牲者が多くなるかは、やってみなければわかりませんが、いずれにせよ大量死はもう避けられないという現実を直視すべきで、その場合、虐殺は内戦よりも「最悪」だと思います。

 それでも犠牲者を少しでも少なくするには、最終的には一刻も早いアサド政権の自壊を目指すべきですが、そのためには国内の潮目が劇的に変わることが必要です。それは外国の圧力程度では実現されません。反乱軍の台頭が必要ですが、シリアには反乱兵士もそれなりに出てきていますし、国民皆兵の国なので、基礎的な軍事訓練経験のある反乱軍予備軍は大量にいます。マンパワーはあるので、あとは必要なのは武器です。
 国際社会が反乱軍を大々的に武装化すれば、外国地上軍の派遣をしなくても、状況は激変します。政変後の混乱、たとえばアラウィ派住民に対する報復などを回避するために、軍事支援の段階から、政変後の国際平和維持軍の駐留などを根回しすることは不可欠ですが。

 というか、おそらくその方向で話は進むのではないかなと思います。しかも、すでにその布石は打たれていますね。サウジとカタールが武器支援を言い出していますが、当然、英米仏それにトルコあたりとすり合わせてのことでしょう。アラブの国をタテマエとして前面に出し、欧米とトルコがそのお手伝いをするという筋書きではないかなと思われます。 
  1. 2012/03/03(土) 13:28:48|
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震災から1年

 磐城高校時代の同級生で、地元で復興プロジェクトのボランティアをやっている友人と話しました。いわきでも津波被害はあったのですが、地元でも話題は原発一色で、津波の被害者や復興事業へのケアが遅れている(忘れられている?)そうです。
 震災に関してはさまざまなメディアが大きく報じ続けていますので、とくにこちらで報告するようなこともありませんが、いわきの友人たちからいろいろ話を聞くなかで、ちょっと気になった点を2点述べてみます。

 まずは、やはり迷惑しているのが、放射線汚染を扇動する一部のメディアです。地元でももはや失笑の対象ではあるようですが、それでも幼児を抱えるお母さんたちなどには不要な不安を与えているとのことです。
 いわきは中通りなどに比べると幸いなことにずっと線量は低いのですが、やはり気にはなりますから、正しい情報をみなさん渇望しています。煽りはなるべく謹んでいただきたいものです。風評被害でも瓦礫問題でも迷惑ですし。

 もう1点は、これは一部の話なのでしょうが、カルトの話です。震災で各地にボランティア団体が出来ましたが、その一部にカルトが触手を伸ばしています。私が直接聞いた話は、カルトというよりヒーリング系の詐欺グループでしたが、他人の不幸、他人の善意に付け込む手口は許せません。ボランティアの皆様、気をつけてください。

(追記)
 上記エントリーで、放射線問題を扇動するメディアに批判的な書き方をしましたが、さまざまな意見の方もおられると思うので、少し補足します。

 インテリジェンス(情報収集と分析)の基本ですが、情報(インフォメーション)にはさまざまなノイズ(雑音情報)が含まれていて、それらを都合よく繋ぎ合わせる(チェリー・ピッキングといいます)と、どんなストーリーでも作成することができます。きちんと分析できれば、その過程でノイズは削除できるのですが、分析者に先入観(認識バイアス)があると、分析が機能せず、結果、自分の先入観を補強するストーリーが永遠に再生産されていきます。
 私のみるところ、そうしたケースが非常に多く見られます。とくに情報収集(コレクション)に優れたメディアが、分析を誤っているケースが多々あります。情報収集力で勝負してきたので、分析に慣れていないのですね。
 インテリジェンスにおいて「情報収集」と「分析」はまったく別種のもので、情報収集に優れているからといって、分析が優れているわけではありません。メディアそのものはエキスパートでははく、エキスパートの情報・分析を紹介するのが本務です。とくに日本のメディアは官公庁と専門家の情報・意見を紹介するのが基本業務で、それを批判する声もありますけれども、それ自体はべつに間違ってはいません。
 よく欧米メディアが自身の分析を掲載しますが、それは分析の訓練を積んだエキスパート記者がいるからです。
これはシステム上はどちらが優れているというわけではないのですが、問題は、他者の分析を選別する選択眼です。エキスパートでない人間には、どのエキスパートの分析が正しいのか判断できないし、そもそも誰がエキスパートなのかもなかなか見分けがつきません。
 ただし、エキスパートでなくとも、ある程度は情報の見分け方というのがあって、たとえば多種類の情報の精査(クロスチェック)を丹念にやることなどによって、ノイズはある程度除去できます。今の放射線扇動のような雑な報道は、ノイズでも新情報ならスクープとして評価されるパターンに慣れているメディアがはまりやすいワナのようにみえます。
 メディアは常に、自分はエキスパートではないことを自覚すべきですが、実際にはなかなかそういうふうにはいきません。スクープ記者は圧倒的に嗅覚に優れている方が多いですが、そういう方はどうも分析も勘に頼ってしまうことが多いように思います。私自身、スクープ記者の真逆のダメダメ記者でしたが、それでも長年取り組んできたいくつかの分野ではそれなりの自信を持っていて、ついノイズを拾ってしまっている可能性はあります。
 ただ、それでも今の放射線問題に関していえば、私自身たいして分析の訓練を積んでいるわけではありませんが、出身地の問題なので、それなりに真面目にさまざまな専門家の議論を拝見してきた結果、放射線危険扇動派の分析は、意識的な情報操作と無意識的な偏向により、多くの点で間違っていると考えています。
 ちなみに、誤解なきように申し添えると、再三書いていますが、私は原発自体は脱・原発派(条件付きの減・原発派)です。いわき出身ですが、東電からカネもらったこともないですよ。
  1. 2012/03/03(土) 03:37:58|
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北方領土問題で糠喜び?

▽北方領土「最終決着させたい」 プーチン首相が会見(朝日新聞 3月2日)
という話が出て、さっそく以下。
▽プーチン発言を歓迎=藤村官房長官(時事 3月2日)

 また同じような“希望的観測外交”になってしまわないか懸念されます。プーチンは「2島返還する」とはひとことも言っていないですね。日ソ共同宣言の有効性は認めていますが、それはあくまで平和条約締結後という条件付きの2島返還です。
 プーチンが何を言い出すかわかりませんが、その見通しが不明なのに都合よく糠喜びしても意味ない気がします。

(追記)
 新聞各紙の報道を拝見しましたが、まるでプーチンが「2島返還で決着をつけたがっている」かのような印象ですね。プーチンの腹積もりは現時点では推測するしかないですが、少なくともプーチンは一度もそんなことは言っていませんね。
 過去の交渉の失敗を「4島一括に固執した日本側の責任」と言い出していますが、それなのに「こちらは2島返還したいと思っていたのに」とは言っていません。「4島一括に固執した日本側の責任」と言ったということは、それはきっと2島は返還したかったということだ・・・などというのは、日本外務省の希望的観測に基づいた一方的な解釈にすぎません。
 以前も当ブログで書きましたが、ロシア側が日ソ共同宣言を認めるというのは、外交上明言はしていませんが、在日米軍基地撤退が平和条約の条件だという理屈を準備してのことです。非現実的なことはロシア側もわかっているので、単なる言葉上の話にすぎません。ロシア側は日ソ共同宣言に基づいた平和条約(つまり、2島先行返還)はもう考えていないと思います。
 この点、日本側の報道だと、「ロシア側は、日本が4島一括の帰属回復に固執しているせいで平和条約交渉が進まないと考えている」ということしか伝わってきませんが、仮に日本が2島放棄しても「それなら2島は返しましょう」とはならないのではないかと思います。理由は単純なことで、ロシアの既得権益だからです。
ここちょっと強調したいのですが、日本では「4島一括vs2島先行」で議論していますが、私の知る限り、ロシアではせいぜい「領土問題の存在を認めるvs認めない」あたりのレベルの話です。
 これは私の当てずっぽうな勘でしかありませんが、プーチンは日ソ共同宣言の存在は認めつつ、「領土問題棚上げの準平和条約」あたりを繰り出してくるのではないでしょうか。日本側が呑めるはずもないので、平行線。で、「領土問題棚上げの包括的特別友好協定」みたいな感じので交渉継続、といったところでしょうか。
 ただ、今回の発言の件は、大統領返り咲きに際してのタテマエみたいなもので、ほとんど上辺だけという気がしないでもありませんが・・・。
  1. 2012/03/02(金) 18:35:49|
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シリア・レポート第3弾

 JBPRESSに寄稿したシリア・レポート第3弾です。今回、個人的な話も少し詳しく書いています。
▽アサド政権よ、これでも弾圧はないと言うのか シリア革命:SNS参戦記(その3)(JBPRESS)

 日本でも最近ようやくニュースになってきましたね。独裁政権とはどういうものか、その本質がようやくわかってきていただけたという感じでしょうか。
  1. 2012/03/02(金) 02:01:12|
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当事者意識の温度差

 JBPRESSに興味深い記事がありました。英紙『フィナンシャル・タイムズ』の翻訳です。
▽シリア不介入という選択の正当性(JBPRESS)

 シリアの虐殺を止める外国の軍事介入は是か非か、という論考で、非常にクールな大人の対応を説いています。たしかに傾聴すべき指摘がいくつもあります。

「(外国の官僚や政治家は)ただ『殺戮を止められるか』と問うだけでなく、『次に何が起きるか』と問わなければならない。さらに、『ある悪を阻止するために介入することで、将来もっと大きな悪を生み出してしまう可能性はあるか』と問わなければならない」
「どんな外部の介入についても、問わねばならない重大な問題は、単に殺戮を止められるかどうかだけでなく、平和裏かつ持続可能な政治的解決に有利になるよう情勢を決定的に変えられるかどうか、だ。もし形勢を一変できなければ、外国による介入は紛争を激化させてしまうだけになる恐れがある」
「感情的な反応は、必ずしも正しい反応ではないのだ」

 執筆者は、虐殺を止めたいとすること自体は「善」だと前提したうえで、感情的で短絡的な軍事介入に否定的な見解を示しています。
 こうした見方は、一面であたっていると思います。とくに紛争の現場で、感情的に判断し、行動して逆効果ということはしばしばあります。
 ですが、それでもあえて、現時点では「虐殺を止めるために、国際社会は今すぐに武力でアサド政権を粉砕すべし」というのが、私の考えです。この温度差は、おそらく当事者意識の差によるものと思います。
 どんな国の人でも、もしも自分の国で同じようなことが起きていたら、後のことはまた後で考えるとして、とにかく今起こっている殺戮を止めることを希望するでしょう。外国人がそう思わないのは、つまりは他人事だからにほかなりません。
 上記記事中、執筆者はホムスで死んだ米国人女性記者の反体制派寄りのスタンスについて、現場で目撃している人間としての自然な感情だとしていますが、問題は「感情」ではなく「当事者意識」なのだと思います。
 とはいえ、実際のところ世界中の人々にとって、シリアの出来事は他人事なので、それはしかたないと思います。ただ、私は比較的若い頃から海外を旅し、暮らし、それなりに各国の地元の人々と生活レベルでの交流があったので、むろん当事者ではありませんが、それでも皮膚感覚として「外国の人の話だから」というふうに感じません。ましてこれまでの取材活動で中東の人とは今でも交流がありますから、個人的にはむしろ近い存在です。単にそれだけのことですが。

 先日、ラジオに電話出演させていただいたことは当ブログでもご紹介しましたが、その際、パーソナリティの方から「海外に波及する最悪のシナリオ」について質問をいただきました。海外への波及ということでしたので、イスラエルやイランなどの中東情勢への影響についてお話しましたが、「最悪のシナリオ」を「海外への波及」というくくりで質問されたことに、一瞬たいへん戸惑いました。私の中では「最悪のシナリオ」は「このまま人々が虐殺され続けること」であったからです。パーソナリティの方はリスナーの目線に話題をキープするのが仕事であり、伝えるプロとしてこうした質問を選択したわけですが、この温度差も当事者意識の違いであって、それはしかたのないことなのでしょう。

 明日付で、同じJBPRESSにて私の「反アサド政権」全開の記事がアップされる予定です。上記フィナンシャル・タイムズ記事とぜひ併せてお読みいただければ幸いです。
  1. 2012/03/01(木) 14:30:19|
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北朝鮮の食糧危機

 つい先ほど流れたニュースです。朝鮮中央通信が北朝鮮外務省報道官名で発表したところによると、先の米朝協議の結果、アメリカが北朝鮮に24万トン以上の食糧支援をするかわりに、北朝鮮が寧辺のウラン濃縮施設の稼働停止、核実験、長距離ミサイル発射実験の一時停止をすることに合意したということです。IAEA要員による監視も認めるとのこと。
 アメリカ国務省も同様の合意を発表しており、さらに寧辺の黒鉛減速炉の無能力化でも合意したといいます。

 米韓合同軍事演習に北朝鮮側が猛然と抗議している最中の合意発表です。北朝鮮はそれほど食糧事情が逼迫しているのでしょう。まだ発足したばかりの金正恩体制にとって、いちばんのアキレス腱は「食糧危機から国民の不満が政権批判に向かう」ことですが、実情はかなり追い詰められている可能性があります。

 さて、北朝鮮にとって、一時的にもこれらの措置はどれほどダメージになるのでしょうか。懸案のウラン濃縮は、公表している寧辺の施設はウラン濃縮がストップします。これより先に米メディアにリークされていた情報では、北朝鮮は技術的な問題から、すぐに停止はできないが、新たなウラン追加はしないというような提案をしていたそうですが、いずれにせよIAEA査察官が入っている状況では、実質的な濃縮活動は難しいでしょう。
 ただ、以前も書いたことがありますが、北朝鮮は寧辺以外の場所に秘密のウラン濃縮施設を建設している疑いが強くあります。そこは手付かずになります。

 核実験の一時停止は、プルトニウム型爆弾の小型起爆装置が完成していない状況からは、まだ技術的な壁を乗り越えられず、実験可能が状況に達していないのか、あるいはかなり完成度の高いものが実現されているが、実験はしばらく待ってもいいと考えているのか、そのあたりはわかりません。いずれにせよ、小型起爆装置の開発はこれまで通り続けるはずです。

 ミサイル実験の一時停止は、これも次のフェーズに技術を上げるところで、いまだ開発に手こずっている可能性が高いでしょう。ただ、発射実験は一時停止しても、研究開発そのものは継続することは間違いありません。

 寧辺の黒鉛減速炉の件はよくわかりません。現時点で、プル二ウムを継続的に生産できるのはここだけなので、プルトニウムのさらなる生産はしばらく後回しでいいという判断でしょうか。ここまで来ているので、いまさらプルトニウム型の弾道ミサイル配備の夢を諦めることはないと思うのですが。もしかしたら、起爆装置設計が容易な濃縮ウラン型をメインにしていこうということかもしれません。
 ただ、この件に関して、アメリカ政府が「北朝鮮はプルトニウム型爆弾の開発停止に合意した」としているのは、まだ情報を見極める必要がありそうです。北朝鮮がそのあたり玉虫色の言い方をしたのを、アメリカ側が強引な解釈をしている可能性もあります。

 報道では、これで6カ国協議再開かと期待するふうなものもありますが、これまでの経緯からすると、あまり有効性のないタダの時間稼ぎに終わる可能性が高い話です。希望的観測から、これだけのことで「金正恩体制はハト派」とか短絡するわけにはいきませんね。
北朝鮮の真意は推測するしかありませんが、今春の食糧危機を乗り切るための一時的な方便にすぎないのではないかなという気がします。
  1. 2012/03/01(木) 01:38:59|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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