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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

またまた嘉手納統合について

 海兵隊再編でいろいろ動きがありますが、日本のメディア報道を見ていていつも感じることは、ワシントンの視点が欠けているのではないかなということです。しかも、そのアメリカ情報も、日本の事情も多少は考慮している国務省や国防総省の対日セクションの話ばかりが(おそらく日本外務本省や在ワシントン日本大使館あたりを経由して)重視され、米政府全体の冷徹な計算がきちん伝えられていないようにも感じられます。
 海兵隊再編は基本的に、米政府の意思で行われていることです。予算総額を削減したい議会と、戦力の効率的な運用を目指したい国防総省(軍)との綱引きで米政府の方針が決定されます。なので、アメリカの政府と議会内の事情を見なければなりません。そういう視点で見れば、アメリカのやろうとしていることはわかりやすい話なのですが、なんだか日本では「アメリカが方針を変えた」ようなイメージになっている気がします。

 2月27~28日、東京で日米外務・防衛当局の審議官級協議が行われ、アメリカ側は海兵隊再編構想を日本側に説明(通達?)しました。当初、沖縄海兵隊から戦闘部隊中心に約8000人をグアム移転する予定でしたが、約4700人に縮小し、残りは各地でローテーション配置する計画となっています。配置先はオーストラリア北部、フィリピン、ハワイで、オーストラリアは決定済み、フィリピンもすでに交渉が始まっていて、おそらく合意するものと見込まれています。岩国基地への一部配置換え案もありましたが、日本側は今のところはダメということになっています。
 沖縄海兵隊は約1万8000人ですが、これで約1万人に減ります。第3海兵遠征軍(3MEF)司令部や、即応部隊である第31海兵遠征部隊(約2200人)も残留します。
 さて、これらはアメリカ政府から出された案で、しかも日本側にも好都合ですから、そのまま決定となるでしょう。ですが、日本側の求めではなくて、あくまでアメリカの都合です。ここが重要な点です。アメリカはとにかく、対テロ戦で膨れ上がった国防費を大幅に削減することが決まっています。すべてはそこから出発しています。

 1月26日、国防総省は2013会計年度(12年10月~13年9月)から5年間の国防予算削減計画を発表しました。5年間で計2590億ドル(約20兆円)という巨額の削減幅です。すでに今後10年間で国防予算を総額4870億ドルも削減することが発表されていますが、その約半分ということですね。
 兵器でいえば、たとえば航空自衛隊が導入を決定したF35ですが、米空軍は今後5年間に予定していた179機の調達が先送りされます。ただでさえ開発経費が高騰し、開発スケジュールに遅れが出ている最新鋭戦闘機ですが、ステルス機開発はアメリカが先行していて、死活的なステルス機競争という局面でもないので、とりあえず後回しということです。
 いまや戦場の主役となっているグローバルホークも、新規調達計画を中止。MV22オスプレイの調達機数も減らしました。新型潜水艦の調達も先送りされています。
 その他、空軍の戦闘機部隊を削減したり、海軍の艦艇を早めに退役させたりして部隊の縮小を図りますが、なんといっても大きいのは、地上部隊の大幅削減です。
 米軍は今後5年間で、陸軍8万人、海兵隊2万人を削減します。これで陸軍の総兵力は約49万人、海兵隊は約18万人になります。
 削減戦力のなかでも大きいのは、アフガン駐留軍の撤退にともなう削減と、ヨーロッパ駐留の陸軍2個旅団の撤収ですが、その一方で、当面は在日米軍、在韓米軍の兵力は維持されます。
 この動きを、「中国の軍拡に対抗した米軍のアジア太平洋シフト」と解説する向きがありますが、これは正しくは「アジア太平洋エリアでの兵力削減を後回しにする」ということで、いずれこちらの兵力削減も遡上に乗るでしょう。
 アメリカは今後、常に世界中に張り付くというカネのかかるやり方を改め、大幅に削減した兵力を緊急展開能力でカバーする戦略に変えます。海外展開先として考えられているのは、中東&東アフリア、南アジア&インド洋、東アジア&西太平洋(南シナ海含む)なので、そちらへの展開能力を、少ない兵力で効率的に行える態勢作りということを目指します。

 そこでもっとも中心となる拠点として、沖縄とグアムを2大前方拠点としていこうというのが、米軍の基本戦略です。米軍は沖縄を、北朝鮮や中国だけに向けた戦力拠点として考えているわけではありません。
 在韓米軍が存在しているので、北朝鮮に即応するために海兵隊が沖縄にいる必要性はそれほどありません。沖縄海兵隊の抑止力は、なんといっても台湾防衛のためですが、フィリピンに拠点が出来れば、沖縄だけということではなくなります。もちろん沖縄の地理的重要性は依然ありますから、それなりの戦闘部隊は残しますが、即応部隊さえ残してあれば、第2陣以下はむしろグアムに配置したほうが海兵隊全体の脆弱性は軽減されます。

 また、南シナ海を睨んで、中国海軍への牽制ということは考えているでしょうが、実際のところ、中国軍と米軍の海軍力には雲泥の差があり、米軍予算が削減されたとしても向こう半世紀は余裕で米軍優位の状況が続きますので、それほどシビアな状況にはなりません。

 他方、日本にとっての米軍のプレゼンスを考えると、日本防衛の抑止力としては、配置戦力がどうのという問題よりも、「米軍が日本にいる」という事実が重要です。沖縄の場合も同様で、「米軍が沖縄にいる」ということで、中国軍は手を出せません。極端な話、嘉手納に米空軍がいれば、沖縄本島は安全です。
 日本の離島防衛に米海兵隊の抑止力が必要だとの議論もありますが、それもどうでしょうか。たとえば尖閣諸島に中国軍が上陸したとして、米海兵隊が上陸奪還戦を行うなどという局面は、軍事的に考えられません。制海・制空権を確保すれば、中国軍は撤収せざるを得ません。石垣島が攻略されたらやっかいですが、これも海兵隊が対処するというよりは、自衛隊で対処すべきですし、そのくらいなら実際できるでしょう。
 米軍のプレゼンスの低下は、抑止力の低下につながるのは事実ですが、世界最強の米軍がそこそこいれば、抑止力は担保されます。とくに嘉手納の空軍は強力であり、空母部隊も即応態勢にありますから、現状は米軍側の圧倒的優位にあります。抑止力にはまだまだ余裕があり、抑止力の現状レベルを維持することを前提にする必要はありません。
(以前も書いたことがありますが、軍事バランスという用語がどうも誤解されている気がします。現在、東アジアで米軍と中国軍の戦力が同レベルで均衡しているために平和が保たれているということではありません。拡張志向の中国軍よりも、現状維持志向の米軍が優位だから平和が保たれているのです。中国軍の戦力が米軍より優位になると、状況は一挙に危険水準に入りますが、そういう事態は近未来にはないでしょう)

 今回、グアム移転の規模が減った最大の理由は、移転費用が縮小されたからです。国防総省が2月13日に発表した2013会計年度(12年10月~13年9月)予算案では、グアム移転経費が2590万ドル。前年度要求は1億5592万ドルでしたが、昨年末に議会で全額削除されています。
 アメリカはとにかく移転費を日本政府に拠出させる腹積もりですが、日本側もさすがに、なし崩しに膨れ上がる要求には抵抗しています。
 ですが、中長期的には、いずれ米軍はグアムを展開拠点にします。これは冒頭指摘したように、少ない戦力を効率よく即応態勢シフトにするための戦略です。これはアメリカ側の事情であり、日本側の事情は無関係です。
 海兵隊の再編問題も、とにかく今後5年間の2万人削減が出発点です。今回の削減幅は欧州駐留陸軍などが先行されましたが、米軍の海外エンゲージメントは大幅縮小の方向ですから、おそらく次の5年間ではさらに海兵隊が削減されるでしょう。海兵隊はますます、少ない兵力を効率的にまわすことが要求されます。
 今後、まずはグアム移転4700人の移転費が問題になります。米政府は「やりたいけど、費用が足らない」ということで、日本側に要求してくるでしょうね。すんなり支払わなくても、そのうち米議会は通すと思うのですが。

 普天間はますます固定化まっしぐらですね。辺野古移設なんて、米側ももうアテにしていないでしょう。
 私自身は、かねて書いてきているように、嘉手納統合がベストと思っています。米議会から話が出ているのは、これも予算削減が背景にあるのですが、せっかく向こうから出てきた話なので、これに乗っかったほうが得だと考えています。
 嘉手納統合案に対しては、部隊が増えれば騒音被害が増幅するとの地元の反対がありますが、これはなんともいえません。空軍も含め、前方拠点が沖縄、グアムの2枚になれば、平時における空軍の運用が削減される可能性は非常に高いと思っています。
 要は米軍施設をひとつずつ減らしていくのが重要で、残った施設でどう運用するかは米軍側の問題です。現実問題として、海兵隊へリ部隊が移転してきたからといって、騒音がそのぶん増えるとはいえません。空軍の運用が減れば、それは戦闘機よりヘリは静かですから、全体としては騒音が減る可能性が高いと思います。ただし、いろいろ両国政府で交渉したところで、運用は結局は米軍の都合で行われるので、将来的に変更される可能性がありますから、断言はできません。
 沖縄の方はとにかく県外移転ということで、心情的には理解できるところが多々ありますが、現実問題として、散々指摘されてきたように、ヘリ部隊だけ遠隔地配置ということはあり得ません。移転するなら戦闘部隊とのセットしかないですが、海兵隊としては、まずは台湾、さらに東南アジア、南アジア、中東、東アフリカへの出撃拠点ということですから、戦闘部隊の拠点を方向違いの日本本土へ移転することなど考えていないでしょう。とくに第一の戦略目標である台湾有事抑止を考えた場合、ちょっとあり得ない選択だと思います。
 沖縄の方の心情はわかりますが、沖縄に海兵隊がいるかぎり、ヘリ部隊の県外移転はないでしょう。そうすると、解決策は海兵隊の全面撤退しかないという話になります。
 私自身はそれもアリだとの考えですが、現在の日米関係のなかで、そんな話が現実的とはとうてい思えません。米軍の県外移転を要求するのは沖縄の方の正当な権利だと思いますが、それなら海兵隊の全面撤収を要求すべきでしょう。海兵隊全面撤収に触れずに、ヘリ部隊だけの県外移転しか言わないのは、たいへん失礼ながら、ちょっとどうかなと思っています。
 海兵隊が沖縄に留まることを前提とすれば、もしも普天間返還を最重要視するなら、辺野古移転か嘉手納統合しか、現実的には道はありません。どちらかを選ぶとすれば、私は嘉手納でいくべきとの考えです。
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  1. 2012/02/29(水) 18:49:40|
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ウィキリークスが「影のCIA」の内部文書を公開

だそうです。
 今回、標的になった「ストラトフォー」は、私たちの業界では超有名なアメリカの民間調査サイト企業ですが、「影のCIA」というよりは、私から見ると「格安のニュース評論サイト」に近い感じです。イギリスの「ジェーンズ・インフォメーション・グループ」のほうが情報が豊富ですが、あちらは高額すぎて、個人にはちょっと敷居が高いですね。
 ウィキリークスの発表によると、今回、「ザ・グローバル・インテリジェンス・ファイルズ」と題して公開されるのは、ストラトフォー内部から流出した約500万件の電子メールとのこと。これらのメールは2004年7月から2011年12月のものだそうです。
 今回、調査提携メディアとして「25社以上が参画」とのこと(サイトには現時点では24社しか表示されていませんが)。公電リークで決裂した国際的なトップ・メディアは今回は見当たらないですが、ざっと見ると、まあまあ有名どころとしては、「L’Espresso」と「La Repubblica」のイタリア勢が目を引きます。あと、私が比較的馴染みがあるのは、パキスタンの英字紙「Dawn」あたりですね。意外なところでは、なぜかアメリカの「Rolling Stone」なんかの名前もあります。
ストラトフォーに関しては、かのハッカー集団「アノニマス」が今年1月、「ストラトフォーのサーバーへの侵入に成功し、約100人の職員のメールを入手した」「近く公表する」と発表していました。これがウィキリークスに流された可能性があります。

 さて、この件で「やはりウィキリークスは凄い」と思われた方もいらしゃるかもしれませんが、私の見方を言えば、凄いのはウィキリークスではなく、アノニマスでしょう。
 まだ正確な情報ルートがわからないので、アノニマスからウィキリークスに情報が流れたと仮定しての話ですが、もしそうだとすると、この事件が画期的なのは、今回は内部告発ではなくて、ハッキングによる情報奪取であるということです。ウィキリークスは基本的に「内部告発者頼み」のメディアで、それ自体はそれほど画期的な存在とはいえません。
 ウィキリークスが米外交公電リークをやったときに「これからは情報公開の時代が来る!」と期待した論調もありましたが、内部告発者頼みではそういうわけにはいきません。ウィキリークスはネット上でのただのメディアのひとつにすぎません。
 ハッキングで情報を盗み出したアノニマスのような存在こそが、画期的です。今回はウィキリークスが公開メディアに選ばれましたが、別に他の方法でも構わないわけです。コンピューター内に保存してあったデータが、悪意の第三者に抜き取られるということ自体が、新たな脅威といえます。
 また、これは以前も書いたことがありますが、流出データ500万件という数字こそが、新しい脅威の時代を象徴しています。デジタル時代には、ネットワークのどこかの一穴が破られるだけで、膨大な量の機密情報がごっそり盗まれるということになります。これはまさに新しい脅威の時代といえます。
  1. 2012/02/28(火) 10:36:21|
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ラジオでシリア情勢解説

 先週金曜日に大阪・毎日放送ラジオ「たね撒きジャーナル」に電話出演させていただき、シリア情勢に関して解説させていただきました。放送は関西だけでしたが、ユーチューブにアップされていました。
▽前編 20120224 [1/2]たね蒔き「世界は見殺すのか?シリアで起こっていること」
▽後編 20120224 [2/2]たね蒔き「世界は見殺すのか?シリアで起こっていること」

 あと、昨日、ダマスカス中心部のアル・メサト広場の政治治安局の本部前でデモが出ました。
▽政治治安局の前でデモ 
 省庁街のこの場所は、ダマスカス市民にとってはちょっと怖い場所でもあります。そんなところでデモというのは、かなりの勇気が必要なことです。

 ところで、今まさにアサド軍の砲撃にさらされ、毎日何十人もの人が殺害されているホムスのバーバ・アムル地区ですが、そこからこんな映像が先ほどアップされました。
▽戦火の中の新憲法国民投票パロディ
 国民を殺し続けながら、対外的な民主化偽装のために新憲法の国民投票という茶番が行われたシリアですが、バーバ・アムルの男たちが、それをネタにふざけてます。
 バース党の担当者役が持つ投票箱に、男たちが「賛成票」の代わりに使用済みの砲弾の破片を入れ、報酬代わりに新たな弾薬をもらって帰る。それをシリア政府テレビのレポーター役が大々的に報じるという寸劇です。有権者役の男たちの中には、どう見ても大怪我している人もいますね。なにもそんな身体でフザけなくても・・・。
 花火で偽ロケット弾を作ったり、段ボールと配水管で偽戦車を作ったり、パンク修理用具のジャッキで機関銃ゴッコしたり、茄子の手榴弾とオクラの弾帯で武装したふりをしたりと、ホムスの男たちは以前から面白ビデオをたくさん作ってきましたが、こんなときまでフザけるとは・・・凄い奴らです。ちょっと笑っちゃいました。

 ホムスの面白過去映像を少し探してみました。
▽花火で挑発
 昨年6月。本当にシャビーハに向かって花火で挑発してます。

▽タマネギ砲
パイプとガススプレーで、タマネギやリンゴを弾にした特製RGPを作ってるところ。昨年7月。

▽ガラクタ武装団
 昨年6月。

▽煙突バズーカと花火で挑発
 昨年5月。治安部隊を挑発しているところ。

▽治安部隊に偽砲
 昨年6月。本格的な戦闘の場面なのに・・・
  1. 2012/02/27(月) 13:41:42|
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シリア人記者の死

 先日、米仏記者がホムスで死亡したニュースを当ブログでもお伝えしましたが、バーバ・アムル地区で映像撮影・発信をずっと行ってきたラミ・サイードさんも砲撃で死亡していました。
▽<シリア>「市民記者」の遺志継ぎ ネットで惨状訴え(毎日新聞・2月26日 和田浩明カイロ特派員)

 下は、サイードさんが死亡直前に撮影していた自分のコメント。「もう自分も死ぬかもしれない」と言っています。
▽死去直前のサイード氏

 ホムスの自由シリア軍の1部隊は、彼の名を称えて「ラミ・サイード大隊」と名乗っています。
▽ラミ・サイード大隊(2月25日)

 下はサイードさんに関するアルジャジーラの番組です。
▽ラミ・サイード追悼番組

 こちらはアル・アラビーヤから。彼の撮影した映像集です。
▽サイードさんの撮影した映像集

 下はサイードさんの最期の様子です。
▽ラミ・サイードの最期

 ところで、ホムスの映像をいろいろ見ていたら、こんなものもありました。
 下は砲撃で負傷した少女。見ていて心が抉られますね。こういうことは、けっして許してはいけないです。
▽ホムスで負傷した少女(バーバ・アムル 2月5日)

 下は同じバーバ・アムルで死亡した少女。もう「酷い」としか言いようがありません。
▽死亡した少女 (※残虐なシーンがあります)
  1. 2012/02/26(日) 12:42:21|
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英仏のシリア潜入レポート

 イギリスのメディアも、シリア報道に力を入れてきています。
▽英チャンネル4のホムス報告

 こちらも秀作。まだ政府軍の大攻勢に晒される前のホムス・バーバ・アムル地区での渾身の潜入レポート。フランス独立プロダクション「マグネト・プレス」の女性ディレクター、ソフィア・アマラ女史のドキュメンタリーです。撮影は昨年12月ですが、2月11日に独仏共同TV局「ARTE」で放送。昨日、英語字幕付きがユーチューブでアップされました。
▽1 week with the "free syrian army" 前編 Arte reportage
▽1 week with the "free syrian army”後編

 ところで、関西圏だけですが、明日金曜日の21時30分ぐらいから、毎日放送ラジオ「たね蒔きジャーナル」に電話で出演させていただく予定。シリア情勢について解説させていただくことになっています。
  1. 2012/02/23(木) 19:25:00|
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シリアで米仏記者死亡

 シリア軍によるホムスなどへの砲撃が激化し、昨日は100人以上が殺害されました。また、本日は、ホムスを取材中の外国人ジャーナリスト2人も殺害されています。
 死亡したのは、英紙『サンデー・タイムス』特派のアメリカ人女性記者マリー・コルビンさんと、フランス人カメラマンのレミ・オシュリクさん。コルビンさんはかつてスリランカ内戦を取材中に片目を失ったという歴戦の戦場ジャーナリスト。オシュリクさんはまだ28歳と若いですが、リビア内戦の写真で2012年の世界報道写真展の一般報道部門1位を受賞した世界トップクラスの戦場カメラマンです。
▽レミ・オシュリク氏の大賞受賞作品
 2人は反体制派がホムスに臨時に設置していたプレスセンターにいたところを砲撃され、逃げる途中でロケット弾の直撃を受けたとのこと。ホムスということは、レバノンから入ったのでしょう。海外のジャーナリストたちは果敢ですね。

 2人の記者は運悪く亡くなりましたが、もとより覚悟の上のことでしょう。私もボスニアで経験ありますが、攻撃される側に身を置くということは、まあダメなときはダメだということぐらいはわかっているものです。
 昨年夏に私がレバノンのシリア国境地帯を取材したときには、まだまだシリア軍のコントロールが厳重で、外国人記者が潜入できるような状況ではありませんでしたが、昨年12月頃から、欧米のジャーナリストがどんどん入るようになってきています。それだけシリア軍のコントロールが追いつかなくなってきているということですね。
 さて、それなりに危険ではありますが、今が潜入のチャンスであることは確かです。
  1. 2012/02/22(水) 21:55:41|
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金正男はいま何を?

 昨日、日新報道の敏腕編集者・倉内慎哉さんの主宰する勉強会にて、話題のベストセラー『父・金正日と私 金正男独占告白』(文藝春秋)の著者である東京新聞の五味洋治さんのお話を伺いました。同書は今更ご説明の必要もないでしょうが、金正男への直接取材および多数のメールのやりとりを綴った大スクープです。
 五味さんはいまや北朝鮮ウォッチャーの羨望を一身に集めている方ですが、お話を伺ってわかったのは、氏は単に幸運からスクープをモノにしたわけではないということ。朝鮮半島問題と中国に関しては、長年の深い取材の蓄積が背景にあったのですね。見習わなければならないなあと深く自省いたしました。
 ところで、宿泊費が払えずにマカオのホテルを追い出されたと報じられている金正男ですが、さて今はどこで何を考えているのでしょうか?
 彼は80年代半ば頃からしばらく、父親の下で帝王教育を受けていたらしいのですが、90年代半ばに海外に出されて後継ラインから外れたようです。北朝鮮では事実上「なかったもの」とされていた先妻の子でしたから、父親との確執の物語があったのでしょう。藤本健二さんの書いているものなどを見ても、金正日は本妻にべったりでしたから、当然ながら正哲と正恩ばかりを手元に置いて育てていたのですね。金正日は、正恩後継を彼が13~15歳くらいのときから心に決めていたのかもしれません。
 ただ、あの独裁体制を存続させた金正日ほどの策士ですから、単に本妻の子ということだけではないでしょう。独裁体制をいかに存続させるかということを考え抜いて、まだティーン・エージャーだった頃の正恩を選んだものと思われます。4月に朝鮮労働党の代表者会が開催されることが正式発表され、総書記ポストに就任するのではないかとの観測が流れています。あの若さですから、このまま権力が安定すれば、北朝鮮の人々は今後何十年もまた独裁の下で苦しむことになります。それはちょっとあまりにも可哀想だなと思うのですが・・・。
  1. 2012/02/22(水) 12:33:30|
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シリアSNS参戦記その2

 JBPRESSで連載2回目になる下記の拙稿を掲載していただきました。
▽「もうアサドは怖くない」シリア国民の覚醒をリアルタイムで目撃したシリア革命:SNS参戦記(その2)(JBPRESS)
 独裁に怯えていた国民が、いかにして「拒否する群集」に変身したのか? その経緯を詳しく紹介してみました。連載まだ続きます。よろしくお願いします。

 また、編集部発の「今週のJBpress」にて、前回の拙稿を採り上げていただきました。
▽「今週のJBpress」世界中の独裁者が怖れるもの、昔は米国、今ネットカダフィ大佐の後を追うのかシリアのアサド大統領
 要所が簡潔に、わかりやすくまとめられています。こちらもぜひどうぞ。

 シリアでは、センターのセンターであるダマスのマッゼ地区でも大規模デモ&弾圧がありました。ホムスでは政府軍の攻撃が続いています。
 他方、ユーチューブではイドリブなど北部の町を中心に、反乱軍の映像がかなり出てきています。CNNなど欧米のジャーナリストが続々とトルコ南部ハタイ県から、シリア北部に密入国しているようです。トルコは国境管理が厳しい国ですが、黙認ということでしょう。
 シリア側の国境管理も厳しいはずですが、裏ルートが確立している模様。潜入取材、今なら出来そうですね。各局報道局Pの皆様、当方明確に反乱軍側ですが、ご用命ございませんでしょうか? 多少は撮影スキルもあります(営業です)。
(そういえば、昨年末頃にユーチューブに、日本人ジャーナリストらしき人物がホムスの反体制デモを取材している様子がアップされていて、当ブログでも紹介したのですが、私の知る限りでは、それらしい人物のシリア潜入レポートがまだありません。ちょっとどういうことかわかりません)

 ところで、今回のJBPRESS連載2回目では、いちおう「本当にフェイスブックをやってますよ」ということも証明しておこうと、ウォール画面を口絵として使っていただきました。
img_2a8ed14b6950d1ba744c746ca59f6e4b20017_20120222114805.jpg





  1. 2012/02/20(月) 12:58:41|
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TVにて北朝鮮語る&シリア番組視る

 普段は広く浅く安全保障系全般を守備範囲とする雑食ライター・編集者をしておりますが、このところすっかり「中国サイバー戦」「北朝鮮」「中東」の3ネタに専念しております。これだけでも「無節操にあちこち手を出してるね」と言われることが多いのですが、自分としてはテーマが得意分野に絞れているほうで、比較的仕事がしやすい状況にあります。

 さて、昨日、金正日生誕70年の日ということで、平壌では記念行事が行われましたが、それで昨日のTBS「ひるおび」にて、VTRコメントを採用していただきました。テーマは金正恩体制でした。
 漏れ伝わる情報を総合すると、やはり北朝鮮は今年も食糧不足が深刻なようです。米朝協議、米韓軍演習、さらに4月には金日成生誕100年と続きますが、3~4月は食糧がもっとも枯渇する時期なので、ひと波乱ありそうな予感がします。

 ところで、少し前のエントリーで「日本の大手メディアはシリア問題にあまり関心がない」というようなことを書きましたが、昨日、NHK「クローズアップ現代」でシリア特集をやっていて、拝見しました。さすがNHK、グッドジョブです。とにかく国際社会全体でアサド打倒を後押しすべき局面なので、日本は遠い国ではありますが、少しでもアサド政権の非道ぶりを世に知らしめることは重要ではないかなと思っています。

 シリア問題はかれこれ1年近くウォッチングしてきましたが、メディア業界人の端くれとして、どのように伝えればいいのかを少し考えました。
 ひとつ思うことは、まず何が問題であるのかを明確にすることが重要だなということです。シリア問題の本質とは、「独裁を国民が拒否したら、独裁者が国民を殺しまくっている」ということです。
 反体制派内部の確執とか、諸外国の思惑とかは当然あるのですが、メディアの方々と話していると、そちらに興味をもたれている方が少なくありません。どんな問題も複雑な要素が絡み合っているのは事実なのですが、まずいちばん重要な構図というものを、明確にすることが前提であろうと思います。それ以外の話はそれぞれ一要素にすぎないことで、言ってみれば枝葉の問題にすぎません。
 なぜそう思うのかといえば、この11ヵ月間、当ブログでもしばしばご紹介したようなデモや弾圧の現地映像をずっと見てきたからです。デモのシーンには人々の心の叫びが溢れていますし、弾圧シーンには、国民がどんな目に遭わされているかという現実がストレートに記録されています。こういうことは、報道だけで政治情勢や犠牲者の数字だけをフォローしていても、実感としてなかなかわかりません。
 従来、そういうことは現場にいないとなかなか実感できないことでした。ところが、ユーチューブの登場で、今では遠い異国にいながら、現場を擬似体験できるわけです。ユーチューブの映像はもちろんそれぞれは現場のほんの一断面に過ぎませんし、それぞれ一方的な視点のものに過ぎないわけですが、あれだけの分量になると、これはもう「ほんの一部」の「一方的」なものとは言えません。
 もちろん私たち日本人には、あまり関係ない話ではあるのですが、あれこれ難しい話はともかく、あの映像をなんとか広く紹介できないものかなと思います。これも少し前のエントリーで紹介しましたが、先日のCNNの特番が強烈だったのは、これまで以上に現地発の映像を多用していたからだと思います。

(報道で使われる「弾圧」という言葉も、イメージが全然弱いと思います。弾圧というと、放水車で蹴散らしたり、捕まえて3日くらい勾留したりすることも含まれますが、シリアで行われていることは「非武装の住民たちが政府軍に一方的に殺害されている」ということです。ここ数ヶ月でようやく反乱軍の反撃も始まりましたが、そんなものはほんの一部です。報道だけ読んでいると、そのあたりのことがわかりづらいですね。あの大量のユーチューブ映像を見ていただければ、わかることなのですが・・・)

 ところで、ネット情報ですが、ラスタンで「500人の兵士が反乱軍の合流」との情報がありました。こういう数字は誇張されるのが常なので、なんとも言えませんが、反乱軍が急速に増強されていることは事実と思われます。
 国連総会で批判決議が採択されました。事務総長もアサド退陣を働きかけています。国連人権高等弁務官は、アサドを国際刑事裁判所にかけろと言っています。アラブ連盟と国連の平和維持軍構想は、シリアが当然拒否しました。
 今後の目標は、▽反乱軍の強化 ▽国境安全地帯の設置 ▽反体制政治組織の一本化と国際的認定 ▽反乱軍を政治組織の下で再編、といったところですね。そこまでいければ、外国の支援がいっきに進み、反乱軍も強化され、独裁政権には大きなダメージとなるでしょう。毎日国民が殺害されているわけですから、とにかく急ぐべきです。
  1. 2012/02/17(金) 12:03:04|
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警察国家というもの

 前エントリーで、JBPRESSに寄稿させていただいたことをお知らせしましたが、JBPRESSでは、記事の横に、該当記事がリンクされたツイッターを紹介する欄があります。私はツイッターをやっていないので、あまり馴染みはないのですが、拙文を採り上げていただいているわけなので、パラパラ拝見しておりました。
 すると、ある方が「この筆者は、日本にいれば安全なのに、匿名でフェイスブックに登録するのはおかしい」というような意味のことを書かれていました。採り上げていただくことはとてもありがたいことですし、べつに批判するつもりはまったくないのですが、「なるほど日本では、そのあたりのことからなかなかわかっていただけないのかな」と、ちょっと考えてしまいました。

 もちろん、日本にいる私は、シリアのムハバラートに身元が割れようと、痛くも痒くもありません。可能性極小ですが、シリア現地取材の機会がないとはいえなかったので、当初はあまり大っぴらにはしていませんでしたが、今ではブログで散々「アサド死ね!」的なことを書いてきていますので、もう逃げ隠れするつもりもありません。
 しかし、私が当初から実名でフェイスブックで反体制派コミュニティに参加した場合、シリアやレバノンの知人がムハバラートに目をつけられる可能性がありました。
 私は1984年以降、何度かシリア、レバノン両国を訪問していて、それなりに知己がいます。当ブログでも以前書きましたが、知人の中には今回のことで治安局に逮捕され、長期拘束された人もいます。別の知人には、従兄弟が逮捕され、拷問死体で帰ってきたという例もあります。
 現在、シリア国内の知人とはある安全な方法で連絡していますが、騒動前の過去の通信記録などから、私と知人たちとの関係がムハバラートに露呈しないという保証はありません。そして、万が一露呈した場合、下手をすれば彼らの生命にかかわる問題になります。知人の多くは政治活動とは無縁ですが、そんな彼らを危険に晒すわけにはいきません。
 このあたりはおそらく「北朝鮮みたいなもの」と言えば、わかっていただけるのではないかなと思います。仮に私が北朝鮮内に親しい知人がいて、以前から連絡をとりあっていたとして、それで今「金正恩死ね!」と書けば、私自身は平気ですが、知人は消されてもおかしくないでしょう。
 私など一介の末端フリーライターにすぎませんが、シリアでは、今の時期に外国人との接触だけでも現地では危険です。しかも、私は『軍事研究』『ワールド・インテリジェンス』という媒体の出身ですが、これは現地のムハバラートからみると、「日本政府のスパイ」とカン違いしてもおかしくない話になります。
 実際、私は昨年夏にレバノンを取材した際、ある機会に情報省の幹部と会うことがありましたが、私が何の気なしに上記雑誌の名前を口にしたことろ、「オマエは日本軍の諜報員か!?」と散々尋問に遭ってしまいました。レバノン情報省だったからどうってことはありませんでしたが、もしも相手がヒズボラあたりだったら、かなり面倒になっていたと思います。冗談みたいと思われるでしょうが、本物のスパイがうようよしているアラブの世界では、そんなこともあります。
 あちらでは今、それこそ、いつ殺し殺されるかわからない状況だということが、なかなか実感として伝えられないのが少々もどかしくもあります。
  1. 2012/02/15(水) 13:11:23|
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シリア反体制派フェイスブック参戦記

 オンライン・ニュース『JBPRESS』に下記の記事を寄稿しました。
▽FBに怒りの声「ジハードに立ち上がるべきだ」
 これは「シリア革命 SNS参戦記」と題した連載の第1弾です。シリアでいま起きていることの解説を、フェイスブックのシリア反体制派コミュニティを通じた1年間のウォッチング経験を元に書いていこうと思います。
 シリア情勢については、もちろん国際メディアの報道はフォローしてきましたが、それに加えてフェイスブックのコミュニティに参加したことで、多少は反体制派内部の視点を知ることもできたと思います。
 当ブログで何度か言及してきたように、日本では大手メディアがあまりシリア問題に関心を示しませんが、大きく採り上げていただいたJBPRESS様に感謝です。
 私自身は、他のどんな問題よりも、多くの人が現在進行形で殺害されている問題にいちばん関心があります。思えば戦場取材もテロ問題研究もそうでしたし、そういう意味では今は中東情勢です。少しでも人々に関心を持ってもらえるよう、微力ながら努力したいと思っています。
  1. 2012/02/13(月) 04:48:00|
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シリア問題で注目のCNN効果

 シリア情勢が急速に動いています。国際社会の動向に関しては、国連とアラブ連盟を中心に、アメリカやロシアを含めて毎日のように新たな動きが出ていますが、いずれにせよアサド退陣に向けての流れは定着しました。やはりアラブ世論を背景にしたアラブ連盟がアサド退陣を打ち出しているのが大きいですね。
 現在のシリア情勢はほぼ以下の状況です。
※ホムスでアサド政権軍が無差別砲撃継続中。さらに大規模攻撃を準備中。数日中にもさらなる大規模虐殺が行われる可能性が高まっています。
※ザバダーニなど他の町でも、反乱軍の多い地区を政府軍が大規模弾圧作戦を進行中。
※南部ダラア、北部イドリブなどで、反乱軍の反撃が継続中。
※昨日、アレッポで治安局を狙った車両自爆テロで死者多数。
※昨日、シリア全土でかなり大規模な反政府デモ
※反乱部隊の中で、昨年から反乱部隊「自由シリア軍」を率いてきたアサアド大佐と、1月に反乱軍に加わったムスタファ・シェイフ中将で主導権争いが勃発。シェイフ中将は「最高革命軍事評議会」設置。最初は格下のアサアド大佐が反発していましたが、国民評議会や支援国がシェイフ中将に急接近したため、アサアド大佐が妥協。国民評議会の仲介で、協力することになりました。全体の代表をシェイフ中将が、現場の作戦指揮をアサアド大佐が受け持つようです。
 ちなみにシェイフ中将はこれまで治安担当の北部地域副司令官でした。アサアド大佐はたまたまこれまでの反乱軍の中で最高位だっただけで、ゲリラ戦の指揮官としてはほとんど評価されていません。国民評議会ともたびたび揉めていて、反体制派陣営でも少し困った人でした。シェイフ中将の働きに期待です。国民評議会、地域調整委員会、最高革命軍事評議会が連携し、諸外国に公式に認められれば、支援ルートがいっきに動き出す可能性があります。

 あいかわらずKYなロシアがアサド支持に動いていますが、国際社会はすでにロシア抜きでアサド包囲網に動いています。ロシアが拒否権を持つ国連安保理はダメでしたが、国連総会、国連人権高等弁務官事務所、国連人権理事会などが一致して反アサドを鮮明にすれば、アラブ連盟のお墨付きもあり、国際的な反アサドの流れができます。カダフィのときのように、国際刑事裁判所がアサド追放の法的基盤に使われる可能性も高いですね。
 シリア国内ではアサド軍がもうなりふり構わぬ虐殺モードに入っていますので、今後も多大な犠牲が出るでしょう。それでもシリア国民は、反アサド活動を強める一方です。フェイスブックのシリア反体制派の世界では、「もう平和的解決などと言っている事態ではない。ジハードに立ち上がるべきだ!」といったニュアンスの書き込みがここ数日でもいっきに増えた印象があります。
 欧米はアラブ世界の要請があって初めて動ける状況になるので、一日でも早く国連総会や国際刑事裁判所でアサド非難を固め、世界のほとんどの国が外交関係を停止し、アラブ連盟を旗頭に有志連合を編成してアサド政権に圧力をかける必要があるでしょう。
 また、結局のところはアメリカ政府がどうするかという話にもなっていくわけですが、アメリカ政府を動かすのは、米世論。米世論を動かすのは米メディア、とくにTVメディアですが、そこで注目されるのは、CNNが最近、シリア関連ニュースをかなり前面に出してきていて、しかもその内容がどんどんアサド批判一色になってきていることです。
 つい先ほども、CNNインターナショナルがホムス砲撃について30分の特集を流していました。まとめたかたちではまだネットにアップされていませんが、以下は最近のニュースの一部です。
▽Men, women and children trapped in Syria2月9日)
▽Syrian attacks escalate (2月10日)
▽New blasts in Homs (2月10日)
▽The perils of everyday life in volatile Syria(2月10日)
 とくに本日の特別番組は、ユーチューブにアップされた内部からの情報にも大きく頼った非常にエモーショナルな作りでした。CNNにしては珍しく、悲惨な死体やケガ人の映像もかなり使われました。絶望的な状況のなか、ホムスの住人が「国連はこれを望んだのですか?」「誰か助けて!」と叫んでいます。私なんかちょっと泣きそうになるほどのレポートでしたが、これはアメリカのお茶の間に、そうとうな衝撃を与えるでしょう。

 ただ、このくらいの現地映像はすでに昨年春にはネットに出回っていましたので、なにか「今さら感」を感じますね。これまで「確認できない」との理由で、これらの映像は部分的にしか使用されず、情報的にも全部ウソのシリア政府公式発表に遠慮した報道が続いていました。それがなにか急に「アサドはひどい!」「シリア国民が可哀想!」な雰囲気になっていますが、当ブログでずっとお伝えしてきたように、アサドはもう1年間も国民を殺害しつづけてきました。
 そういえば、昨日、米国務省がホムスの衛星写真を公表し、駐シリア大使が「砲撃はアサド政権軍によるもの。反体制派のしわざではない」とざわざわ説明していました。
 かの国の人々とホンネで話した経験がある人であれば、アサド政権側の言うことは全部偽情報だということは自明のことで、あとは反体制派側の情報から偽情報や誇張をどう見分けるかというだけの話になることは最初からわかりきっていたことと思うのですが・・・。
 
  1. 2012/02/12(日) 00:24:33|
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北朝鮮分析総まとめ

 昨年末の金正日死去から、北朝鮮情勢の分析をいくつかの媒体でやらせていただいたわけですが、その総まとめとして、本日発売の『軍事研究』に、「金正日急死! 金正恩体制誕生! 問題は核弾頭付ノドンだ! 三代目・金正恩の権力構造」という記事を寄稿しました。
 私の見立てとしては、金正恩体制はけっこう脆弱だと思っています。ですが、94年に金日成が死んだときも、「金正日体制は早晩崩壊する」と見立てていましたから、先のことはわからないわけですが・・・。
 年末年始の怒涛の報道で、なんとなく今は北朝鮮ネタ疲れの空気もありますが、これから米韓軍の大演習があり、北朝鮮側もなんらかの反応をみせるでしょう。もうすぐ2月16日には金正日の誕生日ですが、4月には15日の金日成誕生日と同25日の朝鮮人民軍創設記念日があります。
 また、毎年もっとも食糧事情が逼迫するのは春先ですから、この春が新体制の行方を占う、ひとつの山場になりそうな気がします。
  1. 2012/02/10(金) 13:12:30|
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シリア ホムス砲撃映像

 ホムスの砲撃の映像です。言葉もありません。
▽ホムス爆撃
▽砲撃下で子供たちが脱出
▽負傷した少女
▽無差別砲撃の犠牲者(アル・ラスタン(※死体の映像があります)
 シリア政府は「軍は砲撃などしていない」と発表しています。ロシアのメディアも「ホムス住民に電話したら、自由シリア軍のならず者たちの攻撃だと言っていた」と報じています(→ロシアの声)。
 シリア政府のウソはまあわかりますけど、ロシアのメディアは頭がおかしいのでしょうか?
  1. 2012/02/07(火) 22:48:01|
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NHK番組をめぐる放射線バトル

 昨年12月28日にNHKで放送された「追跡!真相ファイル 低線量被ばく 揺らぐ国際基準」に対して、原子力推進派のグループから抗議・要望書が提出されました。(→こちら)
 同番組は私も見ました。室井佑月さんをゲストに呼んで、NHKにしては珍しい反原発サイドの内容でした。組織の意向と違うスタンスに挑戦するという姿勢自体は、私は嫌いではないです(NHKでは他にも深夜枠やEテレ枠ではこうした番組ちらほらやってますね)。
 さて、この抗議・要望に対して、放射線危険派と安全派でバトルになっているようです。
▽原子力をダメにする原子力関係者・・・自らを否定することになる(武田邦彦先生のブログ)
▽NHK番組に噛みついた原子力ムラ「反省の色なし」(『サンデー毎日』2月7日発売号)

 で、片や以下・・・
▽NHKの放射能デマ「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」(池田信夫先生ブログ)
▽BPOはNHKの捏造を調査せよ(同)
▽NHKは低線量被曝について正しい番組を放送せよ(同)

 どちらの先生も、けっこう攻撃的な書き方をしますね。私自身はどちらも一面識もない先生ですが、池田論に1票です。
 池田先生のブログは、他にもなかなか興味深いものがいろいろあります。
▽「集団線量」というナンセンス
▽被害妄想が被害を拡大する
▽福島で健康被害は出ない
▽「年間線量」という非科学的な基準
▽「内部被曝」という都市伝説

 こうした問題は、医学・科学の素人にはどうしても判断できませんので、それぞれがいろいろな専門家の意見を聞いて判断するしかありません。私の周囲にも「武田先生のブログだけ読んで放射線危険派になっている」ような人がちらほらいたりするので、放射線が怖くてしかたないという方は、是非とも池田先生のブログの併読をお薦めします。
 逆に私も含めて安全派は、危険派の方の意見も聞くべきなのは言うまでもないことです。ただですね、「原子力ムラ」とか「御用学者」とか書いてるのはちょっと最初からアレなので、あまり参考にならないかも・・・。

(追記)
 自分と反対意見の方の話も聞かねば・・・と思って武田先生のブログを拝見したら、よくわからないエントリーを目にして、ちょっと困惑しています。
▽瓦礫引き受けに関する考え方(1)・・・なぜ、瓦礫を引き受けてはいけないのか?(武田邦彦先生ブログ)
 うーむ、いくら読んでもわかりません。というか、私には難解すぎて途中で読むのをあきらめました。
 正直、私にはやっぱりこちらのほうがわかりやすいです。
▽瓦礫を拒否するエゴイズム(池田信夫先生ブログ)
  1. 2012/02/07(火) 10:30:32|
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沖縄海兵隊グアム移転について

 沖縄海兵隊のグアム移転を一部先行することになりました。日本のメディアではあたかも「普天間移設の交換条件」のごとく語られていたので、違和感をもった方もおられるかもしれません。
 しかし、部隊配置などは、米軍は自分たちの都合ですべて決めます。普天間移設問題は、べつに現状維持でも米軍側はたいして困らないわけです。それより、米軍の全体的な再編が必要ですから、それをつつがなく進めるというだけの話です。
 周知のとおり、米軍再編の目的は経費削減で、それ以外ではありません。少ない予算で効率的に米軍の世界展開を再編することだけが考えられています。とにかく経費削減ですから、その再編経費も、在日米軍に関してはなるべく日本側に出させたという目論みがあります。
 大雑把にいえば、沖縄に関しては3つのことが日米で合意されていました。「普天間の辺野古沖への移設」「海兵隊戦闘部隊のグアム移転」「嘉手納以南の基地返還」です。次はまず、さっさと嘉手納以南の返還を実現すべきでしょう。
 普天間に関しては、このまま固定化の可能性がきわめて高いです。辺野古移設はもう無理ではないかなと思います。私は当ブログで再三書いてきたように、普天間問題ではいわゆる嘉手納統合派なのですが、このニュースを受けて、新聞各紙は「普天間固定化の可能性が高まった」とは書きますが、なぜどこも嘉手納統合案を書かないのでしょう? 

 ついでに言及すると、この1月に米オバマ政権が打ち出した新国防戦略ですが、アジア太平洋重視があたかもアジア太平洋での米軍のプレゼンスの強化のような解説は、違うのではないかなと私は思っています。
 これもアメリカの最大の狙いは、国防経費の削減です。もちろんその背後には、「外国のためにもう米軍将兵の犠牲は出さない」という限定的軍事介入への戦略転換があります。
 とにかくアメリカはイラクに続いてアフガニスタンからも撤退し、以後、中東・中央アジアから大きく手を引くことになります。ただし、いざとなれば即応介入できるように、最小限度の機動部隊とハブ拠点は確保しておきたい。それが新国防戦略です。米軍のアジア方面への前方拠点が、ハワイ、グアムになります。沖縄は中継ハブとして、常駐部隊は縮小しますが、ハブ拠点機能は残します。在韓米軍も現時点では据え置きですが、近い将来、削減されるでしょう。
 オーストラリア北部に海兵隊を置きますが、それも前方拠点ですね。べつに大部隊を常駐させるわけではありません。中東・中央アジアへの前方拠点ですが、当然、対中国前方拠点でもあります。
 たしかに中国海軍は増強されているので、せっかく米軍再編するなら、ついでに中国海軍対策シフトとなります。それで米軍削減が極東ではゆっくりなわけですが、べつに中国海軍を脅威と考えているわけではないと思います。というのも、米中の戦力はまだまだ差があり、少なくとも向こう半世紀くらいは安泰と思われるからです。

「普天間移設は、日本から海兵隊を減らすための交換条件」
「アメリカの新国防戦略は中国の脅威に対抗するもの」
 こういうのは、いずれも思い込みだと思います。

(追記)
 そういえば、1月半ば、民主党沖縄県連の喜納昌吉代表代行が嘉手納統合案を提案し、野田首相が「選択肢の一つ」と答えたところ、すぐに三市町連絡協議会(三連協)から非難の嵐が起きています。
 現在、対立軸は「県外・国外移設」(沖縄側)vs「辺野古移設」(政府・与党&野党自民党)で、それ以外はタブーになっています。沖縄側では嘉手納統合案はちょっと言い出せない雰囲気ですが(国民新党の下地幹郎幹事長だけが孤軍奮闘している感じですね)、政府・与党&野党自民党のほうで「辺野古移設もしくは嘉手納統合」としておいて、どうせ辺野古移転は無理なので、その後で「県外・国外移設もしくは普天間固定化」vs「嘉手納統合」という構図にすればいいのではないかなと思うのですが。
 本日、下地議員がテレビで発言していて、なるほどと思いました。
「とりあえず政府は辺野古移設の日米合意を撤回し、普天間移設を仕切り直すべき」
「このままでは普天間が固定化される、ではなく、すでに普天間は固定化されていると認識すべき」
  1. 2012/02/06(月) 14:36:52|
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「サイバー攻撃」を知る本

 本日発売の『週刊エコノミスト』の書評欄「旬のテーマを読む」に寄稿しました。テーマは「サイバー攻撃」です。
 昨今、世の中を騒がせているサイバー攻撃ですが、じつはその実態を知るための情報源は非常に少ないのが実情です。
 とくに国家同士のサイバー戦に関して言えば、米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の年次報告が基本データになり、若干の補足情報が米国防総省の中国軍に関する年次報告などにある程度。ただし、米中経済安全保障調査委員会の報告は、米軍やCIA、FBIなどの内部資料が使われているわけではなく、解放軍報などのオープンソースを丹念に分析している程度なので、米当局が持っているディープな情報まではわかりません。
 その他、最近は国家情報長官室の国家防諜室のレポートや、いくつかの民間シンクタンク、セキュリティ会社、防衛企業によるレポートが出ていますが、それもそれほど量が多くはありません。いずれにせよ、いちばん詳しいはずの米当局の情報がほとんど出ていないわけです。
 ということで、編集部から「3冊挙げてくれ」との注文だったのですが、圧倒的に『世界サイバー戦争』(徳間書店)がお薦めです。リチャード・クラーク氏とロバート・ネイク氏の共著。書き分け共著ではないので、おそらくクラーク氏の情報協力を受けてネイク氏がまとめたものと思われます。
 このクラークという人物は、もともと国防総省の情報マン。クリントン、ブッシュ両政権で長年にわたり、大統領府のテロ対策の調整官をしていた人物で、私たちテロ・ウォッチャーの間では、9・11テロに関する政権批判本『爆弾証言~すべての敵に向かって』の著者として有名です。
 また、共著者のネイク氏は、外交問題評議会フェローで、サイバー・セキュリティ問題の専門家ですね。
 このクラーク氏は、ブッシュ政権下でサイバー・テロ対策担当大統領特別補佐官も務めていたので、サイバー戦の実態をよく知る立場にいました。いわば政府の〝中の人〟で、その著作ですから、資料的価値が非常に高い。豊富な実例が引用されていますが、この立場の人物の著作なので、いずれも「おそらく実話である」と判断していいものと考えられます。
 クラーク氏はサイバー戦の脅威を啓蒙する立場なので、書き方はかなり扇動的ですが、そこに引用されている実例は、かなり衝撃的なものです。サイバー戦の実態がここまで来ているということに、驚かざるをえません。

 サイバー戦については、上記の書籍がダントツで重要と思われますが、他に2冊とのご要望でしたので、サイバー犯罪に関する本ですが、『サイバー・クライム』(講談社)と『サイバー犯罪とデジタル鑑識の最前線』(洋泉社)を紹介しました。前者は『フィナンシャル・タイムズ』に寄稿しているジャーナリストのジョセフ・メン氏の著作。サイバー犯罪者グループとそれを追うITセキュリティ専門家&英国国家ハイテク犯罪対策部捜査官の戦いをドキュメントしています。
 後者は小林恭子、塚越健司、成松哲、原広、吉澤亨史の5氏のライターの共著で、サイバー犯罪の問題全般について、コンパクトにわかりやすく解説されています。

 なお、締め切りが早かったので、今回の書評には間に合いませんでしたが、アマゾンによると、今月2日、『「第5の戦場」 サイバー戦の脅威』(祥伝社新書)という本が発売になったようです。著者の伊東寛氏は元陸上自衛隊システム防護隊長で、現在はラックホールディングス株式会社サイバーセキュリティ研究所所長だそうです。まだ拝読していませんが、これは楽しみです。

 ちなみに、アマゾンで「サイバー戦」で検索したら、こんな強烈な本も出ていました。
『3・11人工地震テロ&金融サイバー戦争 二人だけが知っている超アンダーグランドのしくみ』(ヒカルランド刊)。著者はあのベンジャミン・フルフォード氏と飛鳥昭雄氏で、序文・解説があの船井幸雄氏という電×界の強力チーム。もちろん書評には遠慮させていただきましたが、興味のある方は止めはしません。
  1. 2012/02/06(月) 12:18:17|
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国連安保理シリア決議 中露が拒否権行使

 案の定、中国とロシアが拒否権を発動しました。
 中国は同じ非民主国家ですから、どんな国の政権でも民主化されることには基本的には反対です。が、シリアは遠い国なので、自分が先頭に立ってアサド政権を擁護する気はさらさらありません。今回は、ロシアが拒否権行使するので、それに便乗したかたちですね。
 ロシアは、シリアはもはや数少ない軍事・政治・経済的な〝勢力圏〟なので、国益としてアサド擁護の側面もありますが、それより大きなことは、西側欧米諸国に対する反感がその根底にあると思います。私は2年ほどロシアに住んだことがあるので、今でも知己がいますから、この件でも話す機会があるのですが、ロシアの場合、政権がすべて決める中国と違って、ある程度は国民世論を背景にした政策をとる必要があるようです。
 で、ロシア国民の多くは、やはり「欧米にノーと言える指導者」が好きなわけですね。ロシアの場合、政府もそうですが、国民もアサド擁護の雰囲気だそうです(雰囲気と書くのは、そうした世論を証明する調査があるわけではないからです)。
 そんなことで日々殺害されているシリア国民を見捨てるのかと思いますが、見捨てるのですね。
 なお、ロシアのメディアはやっぱり親アサドの論調が多いです。ただし、今のロシア人は普通にインターネットを見てますので、アサド政権が酷い弾圧・虐殺を行っていることは知っています。それでも、反欧米のルサンチマンというか、一種の愛国カタルシスのために、他国での虐殺を擁護してしまう人々なわけです。
 中国やロシアが拒否権を持っている国連安保理には何事も期待できないですね。

 ところで、昨日、モスクワでは大規模な反プーチン・デモが行われました。他方、ロシアにはシリア人も多く住んでいて、彼らは彼らでモスクワで反アサド・デモをやっていますが、シリア大使館前でのデモはロシア当局によって禁じられているそうです。
  1. 2012/02/05(日) 10:05:30|
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シリアで政府軍が市街地無差別砲撃

 ホムスでアサド軍が市街地への無差別砲撃を開始し、いっきに200人以上の住民が殺害されました。これまで国際社会の反応を恐れて小出しの弾圧を続けてきたものが、開き直って大虐殺方針に転じたということでしょう。
 アサド政権は口先と行動がともないませんが、いちおう国際社会の反応は気になるらしく、住民の殺戮はこれまではどちらかというと隠れてやってきていましたが、ここ1カ月ほど離反兵続出傾向にあったため、もはやなりふり構ってはいられなくなったのだと思います。
 反政府側もこれで悠長なことを言っていられなくなります。これまでは国際社会の監視を強化し、その間に国内の反政府運動の機運を盛り上げ、政権内部の離反を誘発しての政権転覆を狙っていましたが、もはやそれでは遅すぎます。反体制派の主流派はこれまで、外国の軍事介入を拒否する立場をとってきましたが、大虐殺を止めるには、なんらかの外国の軍事介入が必要になってくるでしょう。
 空爆に至るかどうかはまだ先の話ですが、まずは沖合に欧米軍の艦艇を出し、トルコ国境にトルコ軍を集結させ、飛行禁止区域を設定して多国籍軍の戦闘機を飛ばすといった措置が必要かと思います。反政府各派のなかでも、そういった介入を要請する声が大きくなってくるものと思われます。
 おそらく、まずはアラブ連盟が主役になりそうです。アラブ連盟はすでにアサド退陣の行程表まで決定していますから、アラブ連盟の名前で外交的な介入が行われます。ただし、アラブ連盟にはたいして軍事力がありませんから、アサド政権には何の影響も与えられません。その後、どうするかですね。
 国連安保理では、もはや悪の代理人みたいなロシアがアサド擁護の立場を崩さないため、有効な決議は難しい状況です。なので、アラブ連盟が主導し、NATO有志が支援するタテマエの有志連合軍の編成しか手はなさそうです。アラブ連盟自体は役に立ちませんが、いちおう手順を踏んで行程表まで採択したのは、こうした流れが予想されていたのかもしれません。
 日本政府は、アラブ連盟支持を鮮明にし、もしも有志連合が動き出した場合には、それも全面支持するとともに、できることは何でもしていただきたいと思います。
  1. 2012/02/04(土) 13:04:06|
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北朝鮮崩壊シミュレーション

 週刊アサヒ芸能増刊で不定期で出版されている軍事ムックのシリーズに、昨年より何度かお世話になっています。今週月曜発売の最新号『激変と動乱の北朝鮮軍と中国軍』(→アマゾン)に下記の記事を寄稿させていただきました。
▽中国「網軍」
▽コラム サイバー戦の基礎知識
▽中国はネット世界でも人海戦術
▽北朝鮮崩壊シミュレーション
▽北朝鮮新体制の人脈を読み解く
▽コラム 北朝鮮の「冷や飯組」
(上記・記事タイトルは長いものが多かったので簡略表記しました)

 上記のうち「▽中国はネット世界でも人海戦術」は中国の諜報機関の概略を解説したものですが、今回、記事の口絵写真に珍しい写真が使われています。諜報機関「国家安全部」の上海市内部局である「上海市国家安全局」の職員の身分証です。
 これは私ではなく、編集部が探してきたものですが、私も初めて見ました。日本の警察バッジに似てます。諜報機関だから偽装身分で徹底しているのかとも思っていたのですが、そうでもないのですね。

 ところで、中国網軍情報と北朝鮮指導部動向分析は、ここのところ専門に追いかけてきた分野ですが、今回、やってみて個人的に面白かったのは、北朝鮮崩壊シミュレーションです。こういうものを予測するのは、純粋な分析作業としては現時点では不適当ですが、読み物としてはアリではないかということでオファーいただいた次第です。
 いろいろなパターンが想定できますが、今回、少ない紙数でだいぶ端折ったところはあるものの、以下のような流れを考えてみました。
▽北朝鮮食糧事情悪化→▽金正恩政権が対南挑発→▽南北緊張→▽北朝鮮軍が休戦ラインの韓国側拡声器拠点を砲撃→▽韓国軍反撃→▽対南政策をめぐり、北朝鮮指導部が対立(戦線不拡大派の張成沢派vs軍部強硬派→▽中国の働きかけで北朝鮮自重→▽米軍が密かに作戦計画5026(限定的空爆)と作戦計画5028(限定的武力衝突対処)準備→▽米空母など増派→▽韓国国家情報院が「北朝鮮が密かにウラン濃縮を進め、核ミサイル完成間近」の情報を入手→▽米軍が作戦計画5030(内部崩壊誘発)を発動→▽米韓軍の大規模上陸演習、偵察機侵入、対北宣伝、サイバー心理戦など→▽北朝鮮の食糧事情悪化→▽北朝鮮内で政権のトップ2である張成沢と李英鎬・総参謀長に対する批判続出→▽北朝鮮で食糧暴動多発→▽張成沢失脚、李英鎬が権力掌握、金正恩は完全に傀儡化→▽李英鎬が禹東測・国家安全保衛部第1副部長を逮捕→▽北朝鮮国内統治崩壊→▽中国が金正男への政権委譲を画策→▽反・李英鎬派のクーデター。反乱軍指揮官は金格植・前総参謀長。金永春・人民武力部長と呉克烈・国防副委員長が支持→▽北朝鮮軍が内戦→▽反乱軍が優勢に→▽米軍が作戦計画5029発動(核爆弾・核物質の確保など)→▽米韓特殊部隊が北朝鮮核施設を急襲→▽対外強硬派が実権を掌握した北朝鮮軍が、対南攻撃を準備→▽米軍が作戦計画5027(全面戦争)を準備→▽米軍大規模増派→▽北朝鮮軍先制攻撃→▽作戦計画5027発動。米韓軍反撃→▽中国軍が国境地帯に進駐→▽平壌攻防戦。金正恩北部山岳地帯へ避難→▽平壌陥落。反乱軍の主要指揮官たちが自決→▽金正恩は中国に亡命。米韓軍が北朝鮮主要部を占領。北部・西部の国境地帯は中国が占領・・・・・
 本記事では紙数の関係でカットされましたが、元原稿ではその後のことも書いていました。以下のような想定です。
▽指揮系統が消滅した北朝鮮軍で、極秘のノドン部隊が生き残った→▽じつは核ノドンがすでに完成していた→▽指揮官が自らの判断で自決と核ノドン発射を決意→▽核ノドンが日本に向けて発射される・・・・

 以上、思いきり想像をたくましくして書いてみましたが、あながち絵空事と断言できないところが北朝鮮問題の怖いところではあります。実際のところ朝鮮戦争が勃発しても、戦うのはあくまで北朝鮮軍と米韓連合軍であり、戦争そのものには日本はほとんど関係がないですが、拙著『北朝鮮に備える軍事学』はじめ、これまで何度か言及してきましたように、北朝鮮崩壊の最後の瞬間に、ノドンが日本に向けて発射される可能性があります。事前に発見・破壊することは無理ですし、ミサイル防衛での迎撃もアテにはなりません。
 とにかく日本の防衛当局が全力で取り組むべきはノドン対策です。近い将来、核弾頭が本当に開発・実戦配備されるでしょう。そうなったら、日本の安全保障は崩壊です。
  1. 2012/02/02(木) 12:23:40|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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