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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

シリア軍に反乱の兆し?

 1週間くらい前から、南部ダラアでデモ鎮圧に動員されている軍のなかで、弾圧参加を拒否する動きが出てきたとの噂がSNS内で流れていましたが、ここ数日、アルジャジーラなどの海外メディアも採り上げるようになってきました。どうやらもともと南部担当の第5師団の将兵に反乱の兆しがあるようです。
 第5師団の主力が、マーヘル・アサド指揮下の第4師団と戦闘状態になったとの噂も流れていますが、現時点では未確認。未確認情報といえば、マーヘルが負傷したとの噂もかなり盛んに流れていますが、これは現時点では信憑性が薄いようです。
 その他にも、第1師団にも反乱の動きがあるとの噂も出ていますが、こちらも未確認情報です。いずれにせよ、反政府派SNS内では「期待」もあって、そんな噂がものすごい勢いで飛び交っています。
 希望が見えるのは、ダラアで約200人、バニアスで約30人のバース党員の集団離党があったことです。ダラアではこれまで地元出身議員の辞職もありましたが、こうした動きは萌芽だけでも独裁国家では画期的なことです。
 ただ、現時点では客観的にはまだまだ軍の大勢も政府側に留まっています。リビアのような内戦状態になる気配は今のところはありません。
 
 他方、これまでデモ鎮圧の先頭に立ってきた治安警察「アムン」は、あまりにフル回転しすぎたために、メンバーが疲弊し(多くのアムン要員はバスや車両でずっと寝ているとのこと)、勢力も分散したため、組織だったデモ弾圧活動がかなり鈍化してきているとの情報があります。独裁政権とすれば、忠誠度の高いアムンを前面で使うほうが安心なのですが、そういうこともあって軍を動かさざるを得ないようです。独裁政権側も確実に追い詰められつつあるわけです。

 本日の金曜日も、全土でデモが呼びかけられています。イスラム地下組織「ムスリム同砲団」もデモ呼びかけを公言したため、国際メディアではそのことが大きく報じられていますが、民主派SNSの動きをみると、シリアの反政府勢力のなかで、ムスリム同砲団はけっして主流ではありません。

 ダラアでは治安部隊が町の水道施設を破壊したため、深刻な水不足に陥っていましたが、降雨があったとのことで、反政府側はまた盛り上がってきました。
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  1. 2011/04/29(金) 13:38:35|
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雑誌記事の信憑性についての私見

 いわき市の友人と話していて、被災地の人々の不安が少しわかりました。とくに放射線の危険性について、さまざまなメディアがさまざまなことを書いていますので、いったい何を信じればいいのかが、私を含めてほとんどの人はよくわからないのではないかと思います。
 前回のエントリーに、放射線の測定に関してたいへん参考になるコメントをいただきました。放射線測定に関して私自身はよくわからないのですが、メディア業界には長いことおりますので、記事の読み方について少々私見を書いてみたいと思います。以下はあくまで私の個人的な見方であることを、まずお断りしておきます。

 まず、私は雑誌の記事を読む際に、「断定調の煽りタイトル」の記事は基本的には、頭からは信用していません。私の知る限り、多くの雑誌ではタイトルは編集長個人の専管事項となっているのですが、編集長はどうしてもセールスの責任を負っていますから、できればなるべく「煽りタイトルを打ちたい」との潜在願望を持っています。
 ですが、編集長個人は各事象について専門知識がありませんから、担当編集者からのプレゼンを元に、最大限に許される範囲を考えてタイトルをつけます。その際、編集長はもともと長年にわたる現場記者の経験をみんな持ってますから、過去の自分の経験に基づいた思い込みのバイアスが必ずかかります。
 よくマスコミの偏向報道路線に関して、スポンサーへの配慮とか、社上層部からの圧力とか、あるいは伝統的な社論だとかが指摘されますが、私の知る限り、雑誌の報道方針はそういうものよりもむしろ、そのときの編集長個人の私的な考えが優先されているように思います。
 ということで、思いっきり煽ったタイトルは、右でも左でも要注意というのが、私の考えです。よくタイトルは思い切り煽った断定調なのに、記事を読んだらそうでもないというケースがあります。読者とすれば肩透かしを食ったような気になりますが、それは往々にして担当編集者の誠意であったりします。編集者は、編集長がつけたタイトルを補強するような記事を作るのがいちばん楽なのですが、良識でそれに抵抗を試みるわけです。
 付けられたタイトルが実態と合わない場合、編集者が編集長に直談判して、タイトルがソフトに変更されることもありますが、編集長の器量によっては、なかなか言えないことも多いようです。
(私が写真週刊誌の新人編集者だった頃、とくに「殺し」の記事などでしばしばそういうことがあったのですが、デスクが素晴らしい方で、「意見があるなら編集長に談判しろ」と言ってくれたおかげで、何度も編集長に掛け合ったことがあります。当時の編集長は私とはあまりソリが合わない人だったのですが、「なんだコノヤロー」と言いつつも新人編集者の話をきちんと聞いてくれる度量のある人でした)
 なので、肩透かし記事のほうが概して良い記事である、という皮肉な結果になったりします。

 もうひとつ私が注目していることは、「ブレる雑誌が良い雑誌」ということです。雑誌の路線は概して編集長が決定するので、これは編集長個人の資質ということもいえるかと思うのですが、最初からある方向に立場をとり、それをいつまでも堅持するというよりは、号によって見方が変わるとか、極端にいえば同じ号でも記事によって見方が変わっているほうが、一般論としてはインテリジェンス度が高いと思います。
 よく人を評価する際に「あの人はブレない」などということが肯定的に評価されますが、インテリジェンス的には、それは「思い込みのアンカリングにとらわれ、バイアスのかかった分析・評価して出来ていない」ということになります。(なので「学ぶにつれて抑止力の意味がわかった」と素直に表明した鳩山前総理は、インテリジェンス的には適切な対処をしたともいえるわけです)
 人は誰しも、偏った情報をもとに偏った分析を行い、偏った判断を下します。なので、本当は編集長が「自分の考えは本当に正しいのか?」と自問しながら誌面づくりするぐらいがいいと思うのですが、同期のライバルを押しのけて編集長に上り詰めるような方はもともと優秀な方が多いので、「自分の考えは正しい」という自信を持っていたりします。なのでブレない誌面づくりになるのでしょうが、そうすると往々にして「結論ありき」の記事が増えます。
 これもあくまで一般論になりますが、組織人は組織の路線に感化されやすので、社論と同じ考えを踏襲しているということもマイナスです。最初からバイアスがかかっている確率が高いからです。天邪鬼が必ず正しいとは限りませんが、「疑問を持つ」という視点は非常に重要ではないかなと思うわけです。
 なので、右でも左でも自己主張全開の雑誌や記事は、その意見自体は私はあまり参考にしません。けれども、ではそういう雑誌や記事に意味はないのか?ということ、そうではなくて、そういう偏向的なメディアのほうが、往々にして「こだわりの取材力」を持ち、有益なファクトを提示していることがあります。バイアスがかかっていることを計算して、そうしたファクトを掬い上げることは情報収集として非常に有益であることが多いです。
 結局のところは、そうしてさまざまなデータを集め、自分なりに判断するしかありません。ですが、その自分の判断自体も「間違っているのではないか?」と自問することが必要なのではないかな思います。

 新聞についてもひとこと述べるとすれば、雑誌に比べて新聞が慎重なのは、「誤報を避ける」ためであることが、もっとも大きな理由と思います。新聞は公器として、雑誌より厳しい社会的責任をかけられているからです。よく記者クラブがどうのという話をされる方がいて、もちろんそういう弊害は実際に存在するのですが、そういうことより、裏ドリのない情報を発信できないために、各紙同じような内容になる傾向があります。ゲリラ・ジャーナリズムは自由なぶん、誤報は比較にならないほど多いと思います。
 もちろん、それでも多種多様な情報源があるというのは良いことだと思います。情報をどう判断するかは、受け手の問題です。

 最後に、冒頭で紹介した前エントリーにいただいたコメントの一部をこちらに貼ります(コメント欄はアクセスしてくださる方が少ないので)。匿名の方ですが、ありがとうございます。

※以下、コメント欄から転載

 測定値の隠蔽ですが可能性は低いでしょう。例えば、こちらのサイト(http://book.daa.jp/radiationgraph.html)で放射線量と距離の関係をグラフ化できます。グラフを両対数で表示すると、放射線量の低い地域を除き、ある程度直線に乗ってきます(例:http://book.daa.jp/0319.jpg)。これは、放射線量が距離のベキ乗で減衰していることを表します。
 もちろん、原発の近傍では特に天候や地形の影響が大きいため、放射線の強度は同心円状にはなりません。しかし、仮に大量の放射性物質が環境に放出され、それを東電が隠蔽しても、各所の測定値からすぐに矛盾が指摘されると思います。
 測定値について、東電、文科省、日本の大学および研究機関を始め日本発の数値が信用ならないとお考えなら、米国エネルギー省が航空機から測った値などもあわせてご覧になると良いと思います(例:http://plixi.com/p/94943807)。この際、重要なのは実測値とシミュレーション値を混同されないことです。
(以上、転載終わり)
  1. 2011/04/27(水) 17:23:03|
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ソマリア海賊を裁判員裁判に???

 なんだかシュールな不条理劇みたいです。
 3月5日にオマーン沖で商船三井運航(バハマ船籍)のタンカーを襲撃したソマリア人の海賊3人が、とっ捕まって日本に送られていたのですが、今月1日に東京地検が海賊処罰法で起訴。で、そのうち1人は20歳未満だったために、東京家裁に送致されました。
 ソマリア海賊を家裁送致というのもシュールですが、昨日、家裁は「刑事処分が妥当」(!?)との判断で東京地検への逆送を決定。これで地検が起訴して、仲間2人とともに裁判員裁判になります。ということで、無作為に選出される一般の裁判員が、ソマリア海賊を少年の更生の観点も含めて判断するというシュールな展開になるわけです。被告の海賊少年は、きっと何のことだか理解できないと思いますね。

 他にも不思議な事件の第一報。
 昨日、タイ北部のチェンライの郊外で、車両で移動中だった日本人旅行者2人と同行のタイ人ガイドが、車外で銃撃戦となり、日本人1人が射殺されたとのことです。詳細はまだ不明ですが、日本人旅行者が銃撃戦??? どういうことなのでしょうか????
  1. 2011/04/27(水) 05:23:52|
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いわき市の友人と話しました

 いわき市在住の高校時代の同級生と電話で話しました。ガソリン不足の頃は市外に避難していた人も多かったようですが、子供の学校の新学期に合わせるように、今では多くの人が自宅に戻っているようです。
 ただ、いわき市は避難区域外ですが、地元の人はやはり放射能汚染が心配なようです。とくに子供たちへの影響に不安があって、学校での線量検査と校庭などの土壌の除染を今すぐやるべきと主張する人もいるとのことでした。
 福島県庁は昨日、県内の小中高校など計55校に積算放射線量測定器を配布したと発表しましたが、こうした措置をいわき市でも、県や国の対応に任せておいては手遅れになるから、市を挙げて即座に最優先でとりかかるべきとの意見が出てきているわけですね。誰もが不安を感じている状況なので、なかなか意見の統一は難しそうです。友人も、これまでみんなが一枚岩で助け合ってきたのに、対応のしかたに対する意見の違いで今後、まとまりが危うくなるのではないかと少し危惧していました。

 ところで、昨日、政府と東京電力の事故対策統合本部が初めて20キロ圏内も含めた「放射線量マップ」を公開しました。それをみると、おそらく水素爆発からその後しばらくの頃の風向きの影響だと思うのですが、北西方向に汚染が広がっていて、そちらの住民の方は本当にお気の毒ですが、いわき市はたまたま汚染度はそれほどひどくはないようです。
 汚染の状況がよくわからない初動の段階で同心円の避難区域を設定するのは正しかったと思いますが、もう1か月半が経過し、汚染状況がある程度判明してきたので、対処に関する区域設定はもう少しきめ細かくしてほうがいいのではないかなと思います。このマップがどれほど詳細な調査に基づくものなのか私にはよくわかりませんが、北西方向では避難区域を広げたほうがいいと思うし、それ以外の方角ならだいぶ狭めてもいいようにも思えるのですが、どうなのでしょう? 

 昨日、お付き合いのある雑誌がいくつか送られてきたので、ぱらぱらと拝読すると、ある雑誌には「東電が『避難区域が拡大すると補償金額が増える』との理由で、原発内のとんでもなく高い本当の放射線測定値を隠蔽していた」とのスクープが掲載されていました。が、別の雑誌には「専門の測定機器と放射線専門家とともに原発前まで突入したが、全然たいした数値ではなかった」とのルポが掲載されていました。どういうことなのでしょうか?

 千葉県で、出荷制限のほうれん草を、農家と市場がグルになってコッソリ出荷していたとのニュースがありました。これはダメですねえ。でも、厳重注意と回収要請だけだそうです。
  1. 2011/04/27(水) 04:53:18|
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シリア反政府デモの非暴力路線

 昨日、南部ダラアのデモ弾圧に戦車部隊が投入された映像が、国際メディアに広く流れました。ヨルダンの携帯電話回線を使ってユーチューブに流された映像のようです。
▽軍隊投入その1 4月25日 ダラア(以下同)
▽軍隊投入その2
▽軍隊投入その3
▽軍隊投入その4
▽軍隊投入その5
▽軍隊投入その6(戦車に石投げてますね)
 SNSによると、軍の一部に反政府側に寝返ったグループも出てきたとの情報が盛んに流れていますが、流出映像からはまだそこまでは確認されていません。
 それにしても、シリアの反政府側は、一切武装せずに非暴力デモに徹しています。じつはSNS内ではデモ当初から、過激な武装蜂起を扇動する声がありましたが、それは政権の思う壺だとして自制を求める声が多くありました。なかでも、一連のネット活動を通じて人々から信頼を得ている人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のレバノン支部の担当者が、懸命に自制を呼びかけていることが大きいようです。
 陰鬱な映像が多いなか、こんなシーンを発見しました。バニアスという町で、勇気ある人々が軍の装甲車の前に立ちはだかっている映像です。女性もたくさんいますね。
▽装甲車に立ちはだかる人々
 他方、こんな映像も入ってきました。一連のデモが大衆レベルに広がった局面として、第3の町ホムスの中心部の広場で、2万人規模の座り込みがあったのですが、それを治安部隊と体制派民兵が襲撃したときの映像です。
▽ホムスのデモ弾圧
 で、人々を暴力で蹴散らした後、体制派民兵が広場で気勢を上げています。
▽ホムス弾圧後に広場で気勢を上げる体制派民兵
  1. 2011/04/26(火) 13:47:41|
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『大地震で壊れる町、壊れない町』

 もう9年も前になりますが、2002年に別冊宝島REAL『大地震で壊れる町、壊れない町』という本をプロデュースしたことがあります(⇒アマゾン)。軍事と通じる危機管理関連の企画ということで、私が企画構成・編集&アンカーを担当することになった次第で、実際の取材と基礎原稿執筆はすべてサイエンス方面にも詳しいジャーナリストの村上和巳さんにお願いしました(私が当時から神奈川県在住だった影響で、無意識のうちになんとなく神奈川エリアを重点的に採り上げた本になっちゃってますが)。
 同書では将来に大地震が予想される海溝型地震のひとつに「宮城県沖地震」も採り上げましたが、当時の研究によると、同地震の特徴は「発生頻度が高い」「規模は平均M7・4~7・5クラスで、東海や東南海地震などと比べると比較的小規模」とされていました。発生間隔は平均38年、短いときで26年。前回の地震が1978年だったので、2000年時点の判定で「今後30年以内の発生確率は98%」とされていました。
 このように発生自体は予想されていたわけですが、M9級は想定外です。三陸沖南部から茨城沖まであれだけの規模で動くということは、おそらく誰も予想していなかったことです。
(追記⇒発生確率98%とのことで、編者としては同書で警鐘を鳴らしたつもりだったのですが、予想規模をはるかに低く見積もったことで、結果的に「充分な備え」を検討する妨げになった責任を感じています)

 今後、その巨大地震の影響を他の震源域が受けることが懸念されますが、とくに気になるのが、信越地方の活断層と、南関東の活断層です。とくに南関東直下型地震は、最近、茨城県南部あるいは茨城・千葉沖あたりを震源とする余震が続いていますので、要注意かもしれません。

 ところで、同書でも指摘したのですが、東海地震の想定震源域にある静岡の浜岡原発は断層のごく近傍に建設されていて、しかも活断層のひとつもそう遠くないところにあります。なのでかなりの耐震補強が必要なのですが、福島のケースと同様の安全神話の呪縛によって、どうもその措置が充分にとられていない可能性が指摘されています。稼働を続けていくにしても、耐震措置の強化は早急に再検討したほうがいいのではないかと思います。

 蛇足ですが、昨日の選挙でこんな結果も出ています。
柏崎刈羽原発周辺の有権者は現実的判断4月25日 産経
共生派の多数変わらず=「原発城下町」の地方選【統一選】4月25日 時事
原発反対派、目立った伸長みられず4月25日 読売
石川・志賀町議選 反原発の元職がトップ当選4月25日 朝日
 同じ題材のニュースなのに、読売・産経・時事と朝日では180度ニュアンスが違うのが興味深いですね。まあ、よくあることですが。

(追記⇒アマゾンをみたら、定価¥1200だった同書の中古品が2点出品されていて、安いほうでも¥3750、高いほうはなんと¥7750も付けられていました。ダメダメ編集者・著者の私にとって、自分の作品が中古市場で定価を上回るなんてたぶん初めての経験です。
 同書は内容的にはしっかり作っていると自分では思うのですが、出版がたまたま9・11テロ後の時期と重なったこともあって、実は出版当時はセールス的に惨敗。ほとんどワースト記録というホロ苦い思い出の作品でした。それが今日、これだけの震災に直面したことで、こんな古い本でも読みたいと思ってくださる方がいるのでしょうか。たいへん有難いことです)
  1. 2011/04/25(月) 15:04:00|
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がんばれ「いわき市」!

 私の故郷である福島県いわき市が、原発問題で大きなダメージを受けています。今後さらなる被害に遭う可能性もありますが、風評被害にも苦慮しています。
 なんとか避難区域の指定からは免れましたが、政治問題化しました。
いわき市の強い要望なかった…枝野氏が発言訂正4月25日 読売
 もちろん、もっと大変なのは避難区域にお住いだった方々です。
避難区域から引っ越せない…業者の拒否相次ぐ4月24日読売
 ところで、福島県の農業は、非常に深刻な状況にあります。
福島県本宮市のシイタケを出荷制限=いわき市は解除-政府04/25 時事
東日本大震災:暮らしどうなる?/17 「安全」でも、売れぬ野菜4月6日毎日
 また、そんなに多くはないと思うのですが、下記のような陰鬱なことも、現実にあります。
「放射能うつる」といじめ=福島から避難の小学生に-千葉04/15時事
人への風評被害は人権侵害、法務省が緊急声明 4月22日読売
 上記記事に紹介された法務省文書によると、実際に福島県からの避難者に対するホテルの宿泊拒否、ガソリンの給油拒否、避難先の小学校でのいじめなどがあったとのこと。やりきれないですね、こういうの。

 ところで、福島では漁業のほうも深刻です。現時点で、小女子は出荷NGですね。平目の検査はOKだったとのこと。
 いわき市特産の目光はどうなるのでしょうか? 小女子や目光は子供の頃からよく食べました。もともと大衆魚でしたが、いつの間にか目光が特産品として扱いがぐっとアップしていたのに少し驚いたことがあります。
 少々話は脱線しますが、いわき市といえば、じつは鰹ですね。別に特産ではないのですが、私の地元ではとにかくよく食します。土佐のように火に炙ったりせず、ひたすら刺身です。年配者が多い宴会などでは、ひたすら鰹の刺身にビールだけなどということもあります。
 ということで、明るいニュースも。
いわき、カツオ漁を5月再開へ 「復旧の先駆けに」/04/24共同
 ちなみに、地域によっても人によっても違うのでしょうが、私の地元の場合、薬味は大蒜が定番です。
 まだまだ先は長いですが、どうか良い方向に向かいますように。
  1. 2011/04/25(月) 13:50:34|
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デモ弾圧の残虐映像について

前エントリーで、シリアでのデモ弾圧を地元の人々が撮影した様々な映像を紹介しましたが、その後も非情な「虐殺」は継続していて、そうした現場からの凄まじい映像が続々と配信されています。
 いずれも非常に残虐で激しい映像ですが、凄まじいリアリティの映像です。これを命がけで撮影し、命がけでネットにアップした方に敬意を表したいと思います。私からすると、前エントリーで紹介した「▽ダラア近郊イズラアのデモ虐殺その1」などは、ピューリッツァー賞以上の価値あるものに見えます。非常に残虐で激しい映像ですが、こういった映像を命がけで撮影し、命がけでネットにアップしている方々に少しでも応えるため、ひとりでも多くの方に目にしていただきたいと思います。新聞で「シリアで死者100人」などという文字を見てもたいていの人は何も感じないと思いますが、それはどういう意味なのか、どれほど残虐な現実があるのか、こうした映像でリアルに知ることができます。
(なお、中には遺体の損傷をことさら詳細に撮影している映像もありますが、それは何も残虐趣味ということではなくて、ホローポイントあるいはダムダム弾のようなものが使用されているのではないかと指摘するためのもののようです。反政府SNSでも話題になっていますが、私の知る限り、通常の自動小銃弾でも人間の脆い肉体にはかなりの損傷を与えるので、ちょっとそれらの映像だけでは私には真偽は判断できませんが・・・)
 3月にデモが始まったばかりの頃は、恐々と撮影している映像には、何のことだかよくわからないものも多かったのですが、最近は現地の人も上手くなって、しっかり撮影できるようになってきました。SNS内でも撮影方法の指導があって、場所や時間、状況などのナレーションを同録で録音している人も増えてきました。SNS内では、「オレの映像がアル・ジャジーラに使われた!」「CNNで使われたぜ!」などといったコメントも出てくるようになりました。
 実際、映像を見ても、もの凄く多くの人が携帯電話をかざしていることがわかります。ちょっとやりすぎな感じの人もいますが、丸腰で銃弾に立ち向かっている現地の人々にとって、唯一の武器であり、唯一の希望の綱でもあるのが、こうして彼らが命がけで撮影し、ネットにアップしている映像なのだと思います。

 デモ弾圧に、本格的に軍が出動しているようです。首都郊外での治安部隊の弾圧は、アサド大統領の母方の従兄弟で、以前に当エントリーでも紹介した政商ラミ・マフルーフの兄のハフェズ・マフルーフ将軍が指揮しているとのことです。ハフェズ・マフルーフは治安部隊の首都エリアのトップです。
  1. 2011/04/25(月) 02:50:21|
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シリア「血の金曜日」映像

 シリア政府の妨害によるものと思われますが、一時期はちょっと流出映像が下火になったものの、昨日の金曜の全国デモ弾圧の映像がかなり大量に流れています。もはや秘密警察も映像流出阻止まで手が廻らなくなってきたようです。
 目についたところから紹介していきます。

 比較的ソフトなところからいくと、まずはシリア全土でのデモの様子です。
▽ダマスカスのデモ
▽ダマスカス郊外アイン・アル・フィイジェのデモ
▽アレッポのデモ
▽ホムス近郊タルカラのデモ
▽デイル・アル・ゾールでのデモ
▽ハマのデモ(かつて大虐殺のあった町です)

 以下は治安部隊です。
▽ホムスの治安部隊
▽ホムス治安部隊2
 初めて本格的な軍の映像も出ました。
▽ダラア近傍アル・へラークで軍出動(戦車も出動準備していますね)
▽同その2(続き)

 次は、多少緊迫した状況の映像です。
▽ホムス銃声
▽ムアラトゥ・アル・ヌウマンでデモに発砲したらしき男が袋叩きに(説明文によれば、アサド派ヤクザ組織「シャビーハ(死霊)」のメンバーとのこと)
▽ダラア・銃声の中のデモ(なにかダラアの男たちはもう動じない感じですね)
▽ダマスカス中心部アルミダンのデモ弾圧(催涙弾撃ってますね)

 さて、いよいよかなり緊迫した状況の映像です(多少ハードなシーンもあります)
▽バイヤーダでの銃撃(銃撃の中、撃たれた仲間を救助する男たちもいます)
▽デモ弾圧(当初は「石投げvs放水車」だったのが、そのうち⇒催涙弾⇒直接射撃⇒流血、となっていく様がわかります)
▽ダマスカス郊外ザマルカでデモ弾圧(犠牲者を搬出)
▽ダマスカス郊外ムアッダミエ・アシャミのデモ弾圧
▽ムアッダミエ・アシャミのモスクで狙撃の犠牲者を治療
▽ムアッダミエ・アシャミの病院で狙撃の犠牲者
▽ホムス郊外バイヤドのデモ弾圧と犠牲者
▽ホムスの病(犠牲者が続々運び込まれてきます。少年もいますね)
▽ハマの犠牲者
▽デモ弾圧の犠牲者(遺体)

 やはりもっとも緊迫したのは、南部ダラアとその周辺エリアです。以下はもの凄い映像です。これらは現実ですので、私自身はしっかりと知っておきたいですが、かなりハードな映像であることをお断りしておきます。
▽ダラア近郊イズラアのデモ虐殺その1(長い映像ですが、これほどシリアのリアルを捉えた映像はないと思います。こんなことが現実にいま起きていることに戦慄します)
▽同上その2
▽同上その3
▽同上その4
▽ダマスカス郊外アル・ハジャル・アル・アスワドのモスクで犠牲者たち(こちらもかなりショッキングな映像です)
  1. 2011/04/23(土) 15:18:04|
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コメントの削除

 数日前、コメント欄になにやらワンクリック詐欺らしき怪しいのが紛れ込んでおりましたので、削除しました。
 また、ここしばらく拙ブログと無関係の内容を連投されておられる方がいらっしゃいます。どなたがどのような主張をご自分のサイト等で主張されても当方は関知いたしませんが、微力ながらここは当方の個人ブログですので、当方エントリーに関係のない投降は、今後は何卒ご遠慮お願いいたします。
  1. 2011/04/23(土) 12:32:07|
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シリア大虐殺の懸念

 シリアでは、金曜日の礼拝後の全国規模の反政府デモで、多数の死傷者が出たようです。これだけ反政府街頭活動が高まった勢いで、少しは軍の中から反政府派支持が出るかなと期待したのですが、アサド政権がそこはがっちりと押さえています。
 政権は弾圧姿勢を堅持していますので、今後、かなり大規模な流血の事態になっていく可能性があります。軍が完全に弾圧側に立っている状況では、エジプトやリビアのようにはいかないものと思われます。ユーチューブに流れている映像を見ると、シリア国民は本当に丸腰で反乱の声を上げ、治安部隊に一方的に「虐殺」されています。それでも人々は前進を続けます。ちょっと凄いなと思います。
 それにしても、そうしたシリア国内の緊迫した状況と、それを伝える国際メディアの温度差が気になります。一昨日だか、アサド大統領が非常事態令解除の大統領令を出したことで、「懐柔を図っている」などとノー天気な報道が流れていますが、おそらくシリア国内では、体制側の人でさえ「懐柔を図っている」などということを信じている人はいないと思います。反政府側にも偽情報は少なくないですが、シリア政権側がオフィシャルに流す情報はすべて嘘といって過言ではありません。なので、そういうのを報道材料にしてもしょうがないですね。
 シリアで進行していることは、独裁政権と、体制打倒を叫ぶ国民との死闘になっています。革命か、流血の大弾圧かのどちらか以外、もはや妥協の道はないように思います。
  1. 2011/04/23(土) 05:21:59|
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戦場カメラマンの死

 ベトナム戦争の時代と違い、現代の戦場カメラマンにとって、実は戦場を撮影するチャンスというのは、そう頻繁にあるわけではありません。戦場写真を撮影するために戦場を探し、戦場に到達し、戦闘に瞬間に居合わせるというのは、かなりの努力を要し、しかもそれなりの「幸運」が必要になります。現代の戦争はほとんどのケースで厳しい取材規制が敷かれていて、めったに戦闘の最前線に身を置くようなチャンスはありません。
 その点、現在のリビア戦線というのは、小火器中心の武装で、取材ウェルカムの反政府勢力に従軍できるという、近年まれにみる戦場写真撮影チャンスポイントです。現在、リビアから日々配信される写真や映像というのは、単なる兵士たちの肖像などというものに留まらず、対空砲やロケット弾を発射した瞬間とか、砲弾の破片が着弾した瞬間などといった、実に刺激的な「決定的瞬間」が多くあります。
 当然ながら、撮影者も危険と隣り合わせになります。撮影した作品を見れば、どれだけ危険な状況だったのかは一目瞭然。現在、リビアで撮影しているカメラマンたちは、それこそ最前線で生命を賭けた撮影をしています。

 そんなリビア最前線を取材中だった2人の著名な戦場カメラマンが、4月20日に砲撃を受けて死亡しました。イギリス人のティム・ヘザリントン氏(40)と、アメリカ人のクリス・ホンドロス氏(41)です。
 へザリントン氏は以前のエントリーで紹介したドキュメンタリー『レストレポ~アフガニスタンで戦う兵士たちの記録』の共同制作監督・撮影者です(⇒過去エントリー/北方領土、FBI、アフガニスタン)。同作品で昨年度のサンダンス映画祭グランプリ受賞作を受賞したほか、アカデミー賞ドキュメンタリー部門候補にもなっています。戦場の息遣いが伝わる作品です。
 また、同じアフガン最前線での米軍兵士を撮影した写真で、07年の世界報道大賞を受賞しています。こんな写真です⇒(ガーディアン紙のサイトより
 ホンドロス氏はイラク取材などで知られる戦場カメラマンで、05年にはロバート・キャパ賞を受賞しています。こんな写真です⇒(ナショナル・プレス・フォトグラファーズ・アソシエーションのサイトより
 私は活動時期が重なっていないので面識はないのですが、ご冥福をお祈りします。

 ところで、一昨日、突如としてなぜか拙ブログに普段の10倍以上のアクセスがありました。解析をみると、だいぶ前にリビア軍について解説した拙エントリーが、ヤフー・ニュースに紹介されていました。さすがメジャーなサイトの動員力はすごいですね。
 当ブログでは主にシリア関連の情報をフォローしているのですが、リビア情勢に関しては、以前『ワールド・インテリジェンス』でも紹介させていただいたことがある下記サイトが非常に参考になります。⇒(軍事板常見問題・リビア内戦特設Q&A
 また、上記サイトからのリンクで知ったのですが、中東情勢の最新動向について、下記のサイトがたいへん参考になります。アラビア語メディアを含む中東メディアの日々のニュースを詳細に解説しているブログです。執筆者の野口雅昭氏は元外交官で、かの著名アルピニスト野口健氏の父君のアラビストとのことです。⇒(中東の窓
  1. 2011/04/22(金) 21:13:47|
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シリア映像

▽4月8日 ダラアで救急車が狙撃される
▽4月8日、ダラアで撃たれたデモ隊
▽4月8日、ダラアでデモ隊側
▽4月9日、ダラアで倒れた男性をアムンが袋叩き
▽4月9日、ダラアでアムンがデモ武力鎮圧

  1. 2011/04/11(月) 17:16:59|
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ぺルーのフジモリ一家

ペルー大統領選、フジモリ氏長女が決選投票進出めぐり接戦(ロイター)
だそうです。
 
 ケイコ氏個人というより、フジモリ・ブランドの人気回帰でしょうね。フジモリ元大統領は、在職中の軍特殊部隊による民間人殺害事件に関与したとして禁固25年の判決を受けた人物で、大統領在職中に責務を放り出して日本に亡命したり、日本で政治家を目指したりの往生際の悪さで、一時は国民人気も下火になっていたのですが、ペルー国民の中にそれでもフジモリ人気が復活してきたということです。
 ペルーはかなり民主主義が進行した国で、国民世論の大きな振れが、そのままダイレクトに最高権力ポストに反映されます。現職大統領の不人気からダークホースが躍進し、期待の新大統領が誕生しますが、その権力者もまもなく馬脚を現して失速します。まるで日本の総理大臣ポストみたいですが、ペルーの場合は、高い知名度を武器に、いったん国民に見捨てられた政治家が奇跡の復活を成し遂げたりしています。
 たとえば、フジモリ氏が大統領に当選した90年、ペルー国民のほとんどはアラン・ガルシア前大統領をボロクソに罵倒していたものですが、2006年になんと再び大統領職に返り咲いています。「とにかく今の大統領とその後継者だけはもうごめんだ!」⇒「昔、彼はひどい大統領だったが、今の大統領よりはマシだった」となるのでしょう。
 ケイコ・フジモリさんは、いまやすっかり貫禄の大統領候補ぶりですが、子供の頃に会ったことがあります。
peru14.gif
 90年の初の大統領選時に取材したフジモリ家の食卓です。右2人目が当時のケイコ・フジモリさんですね。
 大統領選の当日、宿泊していたリマのクリヨンホテルの同じフロアにたまたまフジモリ選対本部があって、廊下で迷子になって泣いていた次男のケンジ君(右から3番目)を見つけ、抱っこして選対本部に連れていき、お姉ちゃんのケイコちゃんに渡した記憶があります。ケンジ少年もいまや30歳になり、姉の政党から今回の総選挙で国会議員を目指しているそうです。あのチビッコがねえ・・・と思うと、オレも歳とったなーとつくづく思い知らさます。
  1. 2011/04/11(月) 13:49:44|
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シリア反体制派のインタビュー記事2件

 リビアやコートジボアールが緊迫しているため、国際メディアにあまり報じられていませんが、シリアでは首都近郊のドゥーマ、ダラア、ラタキア、ハマなどを中心に、民主化デモが続けられていて、その規模は日増しに大きくなってきています。支配層が密かに資産を海外に持ち出そうという動きも報じられています。
 民主化運動は確実に広がっているのですが、決定的に足りないのは指導者です。民主派あるいは反体制派に、まだこれといったキーマンが現れていません。アサド政権はデモ参加者を次々と逮捕する一方で、政治的譲歩の演出として比較的穏健派の釈放も進めています。こうして釈放された活動家たちのなかから、今後、活動の中心を担う人材が出てくるかもしれません。
 そんななか、4月3日に釈放されたシリアの女性人権活動家スヘイル・アタッシさんのインタビュー記事を、5日付のロイター通信が5日付で報じました。
INTERVIEW-Freed Syrian activist says Assad reform not serious
 アタッシさんは3月16日、ダマスカスのマルジェ広場で、獄中にある弁護士・人権活動家のアンワル・ブンニさん、ジャーナリストのアリ・アブドラさん、それにダラアでアサド政権打倒のスローガンを落書きして逮捕された15人の少年を含む政治犯の釈放を求めるデモに参加していたところを逮捕されています。こうした勇気ある人々が、なんとか結集できればいいのですが。
 ついでに、あのリファアト・アサドの息子で、やはり84年にイギリス亡命したリバル・アサドのインタビュー記事もありました。
Syria risks civil war, warns president's cousin
 リファアトやその息子が何らかの役割を果たせる余地は、今のシリアにはほとんど存在しないと思いますが、念のためフォローしておきます。
  1. 2011/04/06(水) 04:58:18|
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シリア映像ユーチューブ・チャンネル

 アサド政権が前農相を首相とする新内閣を発足させました。非常事態宣言撤回を検討するようなそぶりも見せています。こうした動きに、主要メディアでは「政権が民主派に譲歩を示し、事態収拾を図っているが、先行きはまだ不透明だ」というような解説が多いですが、シリア国民はおそらくほとんどの人が「政権が譲歩を示している」とは考えていないと思います。
 アサド政権が打ち出した策は、エジプトのムバラク前大統領が打ち出し、民主派勢力に歯牙にもかけられなかったものと同様のレベルです。エジプトでは当時すでに首都の広場に民衆が集結し、声高に政権打倒を叫ぶ声が国際メディアにも流れていたので、ムバラクの案などあっという間に吹き飛んでしまいましたが、シリアではまだ国際メディアが自由に取材できていないので、そのあたりのフォローが遅れているだけだと思います。
 状況を左右するのは、まずは独裁政権の秘密警察の「恐怖」の強さです。中東アラブ諸国といっても、国によってその恐怖には大小の違いがありますが、シリアは最恐怖国のひとつといえます。かの国では、現在のように街頭に人々が出て「反政府」を叫ぶ光景が出現したというだけで、革命的な大事件です。
 シリアでは国民が武装していないので、反政府デモといってもみんな丸腰ですから、治安部隊もまだ本物の無差別銃撃にまでは乗り出していません。そのため死者の数は比較的低めに抑えられているのですが、公安警察「アムン」がデモ参加者を片っ端から逮捕していて、それなりにコワモテぶりを見せつけています。
 そんななか、人々は多くの町で今日も街頭行動を続けています。流れは完全に民主派勢力にあり、もうアサド政権は長くもたないと思います。ただ、軍が比較的独立色の強かったチュニジアやエジプトなどと違い、シリアの軍や治安部隊はアサド政権の私兵のような性格のものなので「反乱」があまり期待できません。その部分で、今後の見通しが不透明であることは確かです。
 アサド政権が倒れるということは、中東情勢にきわめて大きな影響を与えます。シリアはヒズボラやハマスを支援し、イランとならぶテロ支援国家(反米国家)として政治的に重要な立場にあるからです。その独裁政権が倒れるということは、チュニジアやエジプト、リビア以上の大事件になります。
 シリアでの民主化デモは、日増しに拡大してきています。アムンがネット監視に本格的に介入してきたらしく、ここ数日、SNSなどで混乱も見られますが、ユーチューブの下記のチャンネルで最新動画がアップされています。おそらく海外拠点です。
(最近、SNSや民主派のサイトには怪しいサイトや書き込みがかなり増えていて、アムン側のサイバー攻撃も行われている気配があります。以下に紹介してリンクを貼るサイトはすべてユーチューブのチャンネルなので、それ自体はおそらくアクセスしても安全ですが、そこからさらにリンクを辿っていこうとする方は、ウイルスに充分ご注意ください)

▽シリアン・フリー・プレス

▽イスラム1TV

▽2011シリア革命


▽収集資料

▽SyrBouazizi

 あと、以前に紹介した下記がやはり充実しています。
▽シャム・ニュース・ネットワーク

 こうした映像は、まさに現地の人々が置かれた状況をそのまま伝えてくれます。なかには非常に生々しい流血のシーンもありますが、それこそリアルなものです。
 かつて湾岸戦争の頃には、機械的な爆撃映像が米軍から配布され、テレビゲームのようだと言われました。家庭のテレビに流れる大量のそうした映像は、リアリティの欠片もないと批判もされました。
 こうした映像に必要なことは、メッセージ性でも映像技術でもなく、ましてや芸術性などでもなく、とにかくリアルさということに尽きます。携帯電話で人々が撮影した映像がユーチューブで世界中に瞬時に流れるということは、世界中が現場を擬似体験できるということです。きわめてリアルであり、それはたいへん有意義なことだと思います。
  1. 2011/04/04(月) 13:28:21|
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アサドが襲撃された?

 昨日の金曜日、予定どおりダマスカス近郊のドゥーマなど、各地で反政府デモが起こりました。当局は治安部隊に徹底弾圧を指示した模様です。いろいろ映像がありますので、おいおい紹介していきます。
 と、その前に、一昨日(30日)のですが、CNNが臨時ニュースで「アサドがデモ隊に襲撃された!」とやっていました。ユーチューブにアップされていたので、リンクしておきます。
▽アサド襲撃?
 うーん。これだけだと、まだ「襲撃」というほどのものではないなーという印象です。
 ですが、同国ではアンタッチャブルな絶対君主=アサド大統領に群衆が殺到し、警備が破られたのは事実。シリア民主派のSNSからは、この映像がシリアの人々に衝撃をもって受け止められていることがわかります。同じことが金正日に起きたら・・・と想像すれば、その衝撃度が推測できます。
  1. 2011/04/02(土) 13:43:34|
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アサド大統領の従兄弟の銀行強盗映像

 シリアの無法集団「アル・シャビーハー」が数年前に銀行強盗をしたときの、防犯カメラの映像がありました。
▽シリア銀行強盗
 アサド大統領の従兄弟のヌメイル・アサドがリーダーとして参加しています。帽子を目深にかぶって自動小銃を持っているヒゲの男がそうですね。いかにも「アサド一族」の風貌です。前のエントリーにも書きましたが、ヌメイルはその後、いったんは逮捕されますが、3日後になぜか脱獄し、そのままのうのうと暮らしているようです。脱獄といっても、たぶん事実上の放免だったのでしょう。
  1. 2011/04/01(金) 11:47:22|
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『正論』に寄稿しました

 本日発売の『正論』に「ここまでやるか!中国のネット監視」という記事を寄稿しました。
 中国版フェイスブック革命は、当局の徹底した封じ込めで、どうやら今回は不発に終わりそうな様子です。街頭行動には、いわば「群集心理の爆発」が必要ですが、それを中国当局はなんとか「恐怖」で封殺しました。しかし、すでに5億人近くにまで膨れ上がっているサイバー空間の言論を完全に封じ込めることは、たぶん中国当局がどれだけネット監視に血道をあげても、最終的には不可能なのではないかと思います。
 そのため、中国政府は今後、ネット世論の批判圧力に晒されていくケースがどんどん増えていくと思います。今後、国民の反発を買うような不正・失政があれば、まずサイバー空間で「不満」が増幅され、「群集心理」が爆発することになるでしょう。ネット上のムーブメントはリアル世界の行動とは別、という見方もありますが、そこは「不満+群集心理」vs「恐怖」の力関係次第ではないかなと思います。
 今回は具体的な動機付けに乏しいデモ呼びかけだったので、「恐怖」が「不満+群集心理」を大きく上回りましたが、将来的には、一党独裁という政治形態であるかぎり、反乱の機会は何度でも訪れるのではないかと思います。
 今回は極端に大掛かりな予防線を張ったことで、デモの萌芽から潰すことができましたが、革命第一世代・第二世代が指導していた時代と違い、現在・将来の共産党指導部では、「恐怖」をいつまでも持続させることは難しくなっていくことも予想されます。たとえば、もしも現在、89年当時のような大規模な学生デモが天安門広場を埋め尽くしたとしても、小平や楊尚昆のように軍を投入して血の弾圧が出来るような肝の据わった「独裁者」がいるか?といえば、胡錦濤や習近平ではまずムリではないかなと思います。
 それこそコワモテの強権体制だった中東の政独裁権があっという間にガタガタになっていった現状をみると、ひとつきっかけががあれば、意外に脆く崩れる可能性が高い気がします。中国国民は「食えている」からそれはないとの見方もありますが、「格差」や「言論の抑圧」は十分に不満のネタになり得ると思います。
  1. 2011/04/01(金) 10:22:50|
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ラタキアで暴れまくる無法集団

 ラタキアで暴れまくり、デモ隊を銃撃している「アル・シャビーハー」(死霊たち)について前に書きましたが、彼らの映像がありました。
▽チンピラ集団「アル・シャビーハー」
 衛星チャンネル「アル・アラビーヤ」も使っていた映像なので、本物だと思います。
 しかし、それにしても、もう何なんでしょうね、この連中。武装暴走族???それにしては武装がマジです。
 前のエントリーで、「反政府派であるはずのリファアト派と繋がるグループが、デモ隊を襲撃するのは何故?」という質問をいただきました。現時点で、私の調査では、以前のエントリーに書いた「リファアト派のレバノン民兵『赤い騎士団』とアル・シャビーハーが繋がっている」という情報は確認されておりません。が、そういう噂がシリアの民主派SNS内では盛んに流れています。地理的関係やアラウィ派系無法集団繋がりという点から考えても、両者が繋がっている可能性はそれなりに高いのではないかと、私自身は推測しています。
 少々専門的な内容になりますが、私の理解している範囲で、リファアト派なるものを解説してみようと思います。
 リファアト派という政治勢力はもはや存在していないと思うのですが、もともとリファアト人脈の中核は、レバノン利権マフィアとでもいえるアウトロー勢力でした。
 リファアト・アサド元副大統領は例のハマの大虐殺をやった人物で、粗野で冷酷、かつ腐敗した指導者だったというのが、シリアでの大方の評価です。アラウィ派の身内至上主義で、多数派のスンニ派からは非情に評判が悪い人物でもあります。兄のハフェズ前大統領はその点、アラウィ派だけでなく、自分に忠誠を誓うバース党幹部ならば、スンニ派でも重用しました(トラス国防相などがそうですね)。ハフェズも非情な秘密警察統治を行った独裁者でしたが「リファアトよりはマシ」というのが大方の国民の認識だったと思います。
 それと、兄弟の決定的な違いは、兄ハフェズがソ連(KGB)べったりだったのに対し、リファアトは反ソ派だったということがあります。つまり、ハフェズがアラブ社会主義(つまりバース党の表向きの綱領)を標榜していたのに対し、リファアトは悪くいえば剥き出しの拝金主義、よくいえば自由主義な面がありました。
 イスラムの宗教的な面では、リファアトのほうが圧倒的に世俗派です。リファアトはヤクザの親分のような感覚で、徹底して身内優先だったので、取り巻きの多くも同郷のアラウィ派でしたが、それは別に宗教的なアラウィ至上主義ということではありません。アラウィ派は厳密にいえばシーア派の異端派ですが、それほど戒律に厳しくなく、かなり世俗的な部分があります。
 かといって、リファアトはアラブ民族主義からも遠いところにいます。結局、リファアトは権力ポストにいた頃から、シリア裏社会の大ボスというような立場でした。
 ところで、80~90年代のシリアの裏社会は、誰もがレバノン利権に群がっていました。電化製品や自動車などの密輸もありましたし、武器密輸もやっていましたし、おそらく間違いなく偽札製造もやっていましたが、圧倒的に大きかったのは麻薬です。レバノン・マフィアは、レバノン中央政府が入れないベッカー高原で、大麻とケシの栽培をかなり大掛かりにやっていたと思われます。ヘロイン精製もまず間違いなくやっていましたが、規模でいえばおそらく大麻のほうが主流商品だったと思います。
 リファアトだけではありませんが、シリアの有力将軍たちは、シリア軍によるレバノン武力支配を利用し、その利権のキックバックをかなり大々的に享受していたことは疑いないと思われます。
 前述したレバノンのアラウィ派民兵組織「赤い騎士団」も、アラウィ派政党「アラブ民主党」の軍事部門ではありますが、実質的にアウトロー集団だったということなのだろうと、私は考えています。ということで、チンピラ集団「アル・シャビーハー」とも繋がりがあったのではないか、という推測になるわけです。
 アル・シャビーハーは映像を見てもわかるように、とにかく武装した無法集団です。他の映像でも、シリア警察官と殴り合いしている映像などが出ています。幹部が銀行強盗で逮捕され、数日後になぜか簡単に脱獄したなどという未確認情報話もあります。
 要するに、シリア国内でも厄介者なわけですが、それでも官憲が取り締まれないのは、アサド一族が背後にいるからで、そうした特権はやはりアサド独裁あればこそ。リファアトと人脈的にはおそらく近いのでしょうが、民主化などもってのほかと考えてもおかしくはありません。
 おそらく今回のラタキアでの狼藉については、表立って国民弾圧に動きたくないアサド政権の公安警察から、アル・シャビーハーに、水面下で相応の報酬が渡っていると思います。
  1. 2011/04/01(金) 02:50:27|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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