ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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ウィキリークス情報とイラン=北朝鮮関係

 ウィキリークスが公表をはじめた米国務省公電のなかに、今年2月24日付けで国務省から在モスクワ米大使館に宛てられた文書があります。そのなかに、北朝鮮とイランの軍事協力関係について米ロ両国の高官による会議の内容が含まれていました。
 それによると、同会議の席上、アメリカ側は「北朝鮮がイランに射程2500キロの新型弾道弾BM-25×19基を輸出したとの情報がある」と主張。対するロシア側は「同ミサイルは発射実験が成功していないので、違うのではないか」と反応していたとのことです。
 事実はまだわかりませんが、少なくともアメリカのインテリジェンス機関はそうした情報を入手していたということなのでしょう。BM-25というのは、いわゆるムスダンのことですね。ムスダンはたしかにまだ発射実験はしていませんので、その実用性は未知数ですが、北朝鮮があれだけ自信満々にパレードに登場させるくらいですから、それなりに完成度が高い可能性が高いとみていいでしょう。
 北朝鮮の最新のミサイル技術がイランに渡った可能性が高いということは、イランの最新のウラン濃縮技術が北朝鮮に渡った可能性もあるのではないでしょうか。北朝鮮のウラン濃縮は、やはり今後の焦点です。放置すれば必ず核ノドンが作られると思います。

 なお、今回のウィキリークス公開予定文書ですが、在日アメリカ大使館発のものが5697点。うち機密扱いが227点あるそうです。今後、そのなかからいくらかスクープ情報が出てくることになろうかと思います。
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  1. 2010/11/30(火) 10:41:09|
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公安テロ資料流出で警視庁は捜査員名簿を認めるべき

 本日発売の『週刊朝日』に「息子の<伝説>作りに戦争を仕掛ける親バカ・金正日」という記事を執筆しました。独裁政権の世襲は本人たちにとってはそれなりに命がけの事業なので、親バカというのはもちろん揶揄ですが、いずれにせよ金正日の強気な姿勢は、「自分の目の黒いうちに、息子世襲のためにできるだけのことはやっておこう」ということだと思います。
 真偽不明の未確認情報ですが、中央日報が昨日報じたところによると、今年1月に金正日は金正恩をともなった軍幹部の会議で、西海5島の奇襲上陸訓練を指示していたといいます。これが事実なら、まさに金正恩のレジェンド作りというわけです。
 もっとも、西海5島のことなどは枝葉の問題で、本命は核ミサイル開発ですね。派手な砲撃の映像に政府もマスコミも目を奪われていますが、ウラン濃縮こそいま現在の喫緊の課題ですので(とくに日本にとっては)、そこは警戒していくべきかと思います。

 ところで、例の第三書館の本ですが、個人情報を掲載された在日イスラム教徒数人の申し立てにより、出版・販売の差し止めを命じる仮処分が出ました。とりあえず早急に手が打たれたことは良かったと思います。
 しかし、本来ならここは警視庁が素早く動くべき局面です。すべてを認めなくても、警察官の個人名簿のところだけでもホンモノと認めて、出版禁止に動くべきでした。仮に出版社側がそこだけを墨塗りにして再出版すれば、別の一部をホンモノ認定すればよいかと。そんな根競べ競争に経済的に耐え得る中堅出版社はありません。

 警視庁では、他国機関の情報が含まれる文書については認めることはできないなどと言っているようですが、事情が事情なので例外は必要です。フランスもアメリカも、文書に出ている内容はたいしたものではありませんし。まあ、アメリカなどは例のウィキリークスでそれどころではないでしょうが。
 それより、警視庁内部では、これをつつくと何が出てくるかわからないので、まだ刑事事件にしないで内部調査だけにしておきたいという思惑があるのではないでしょうか。
 外務省でもかつて、例のレフチェンコ事件で発覚したKGBエージェントの外務省職員=コードネーム「ナザール」について、最後までその正体を含め、情報を隠し通しました。当ブログでも指摘したことがありますが、防衛省でも、ミトロヒン文書で発覚した元駐ソ防衛駐在官のスパイ容疑者の存在について、まったく調査した形跡すらありません。組織外の個人情報のダダ漏れは放置するくせに、組織内のことは隠そうとするようです。
 いろいろ事情はあるのでしょうが、そこは臨機応変にやることも必要ではないでしょうか。そもそも、警視庁の中では、こんなことをやりそうな人間の目星くらいは、だいたいついているのではないでしょうか。警視庁の腰の重い対応ぶりからすると、かなり上層部の幹部が関与しているのではないかと勘ぐりたくなります。
  1. 2010/11/30(火) 09:58:03|
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第三書館が流出資料出版の軽挙

流出の警視庁データ?出版、実名・住所を掲載(読売新聞)
情報流出、公式に認めず対策も出来ず…警視庁(読売新聞)
 これは完全にアウトですね。警視庁もこうした事態に至っては、一部だけでも本物と認めて対処するしかないのではないでしょうか。
 私たちはこういう微妙な問題について出版物に書く場合、当然ですがさまざまな配慮をします。個人情報はその最たるもので、私もこれまでイニシャル表記や伏字表記、墨塗り表記の記事を結構書いてきました。法的な問題もありますが、やはり他人のことを書く際には最低限のマナーがあるわけです。
 第三書館という元極左系の出版社だそうです。そんなに儲かりそうでもないですし、何を考えているのでしょうか。
  1. 2010/11/28(日) 10:56:00|
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北朝鮮暴走は「外交カード」ではない

 北朝鮮の最近の一連の動き「核実験準備」「軽水炉建設」「ウラン濃縮」「黄海の島砲撃」などに関し、「アメリカを振り向かせる外交カードだ」とか「瀬戸際外交だ」とかの解説がメディアでは多いですね。気になっていろいろ読み込んでみましたが、どう考えても違うんじゃないかなあと思います。
 当ブログでも書きましたが、北朝鮮がアメリカと交渉したいのは、「制裁解除」&「体制保証」ですね。自分たちが以前から言ってきたことで、それはそのとおりなのでしょう。
 ですが、アメリカと直接交渉しても、核開発を放棄しないとそもそも第一歩が始まりません。核開発を止めたふりをしたことはありますが、実際には止める気は毛頭ないですから、アメリカから「制裁解除」&「体制保証」を得られるとは考えてないはずです。
 2006年に北朝鮮が核実験を実行したとき、かつての枠組み合意、6カ国協議が結局は北朝鮮のタダの時間稼ぎだったということが露呈しました。「北が危機を煽るのは、援助を引き出すための外交カードだ」という分析は目的と戦術を読み違えた分析で、インテリジェンスとしては本質的に間違っていたわけですね。
 北朝鮮は自分たちの体制維持のためにはアメリカ本土まで届く核ミサイルを開発することが最低条件だと考えています。それは揺ぎなき最優先課題ですが、実際、独裁政権の維持を担保するいちばんの策であることも事実で、その意味で非常に合理的な施策ではあります。
 北朝鮮の外交カードは、その最優先課題に邁進するためのカムフラージュだということが、過去の行動から容易に導かれます。それで時間稼ぎする合間に得になることがあればそれに乗っかりましょうという、なかなか上手い商売です。
 現在、北朝鮮にとって、アメリカと交渉して得になることなどありませんから、「アメリカに振り向いてもらう」必要はないです。核ミサイル開発が軌道に乗っている今、むしろほっといて欲しい局面でしょう。
 このあたりの視点の違いは、外交の面から見る立場と、軍事・インテリジェンスから見る立場の違いなのかもしれませんが、現在の北朝鮮はアメリカにかまってもらいたくて暴走しているのではなく、やはり27歳の後継者では今後が心もとない金正日と軍幹部が、強盛大国を目指して今のうちにやれることはやっておこうということだろうと思います。
  1. 2010/11/25(木) 09:19:26|
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ムスダン発射と核融合?

 産経新聞が「北、ムスダン発射準備」と報じました。ムスダンは旧ソ連製の潜水艦発射型弾道ミサイル「SS-N-6」をもとに地上発射型に開発した中距離弾道弾で、数年前から「謎の新型ミサイル」情報として噂されていたものですが、2007年の軍事パレードで初めて登場したものです。先日の軍事パレードでは車載された実物の映像が公開されました。
 液体燃料型の単段式ロケットで、推定射程は3000~4000キロとみられています。沖縄までラクに届きますし、3000キロ説の産経記事ではグアムは射程外になっていますが、4000キロ説であれば届くことになります。なかには5000キロいけるのではないかとの説もありますが、実際には誰もわかりません。
 ムスダンの発射実験はこれまで行なわれていません。元のSS-N-6のロケット技術を使っていますが、地上発射型になっていますし、ちょっと大型化されてますし、形状も少し違うので、北朝鮮軍としても実射実験は重ねていきたいところでしょう。これが軍事の当然の要求で、実験そのものはそれほど政治的な意味があるわけではありません。そのタイミングはもちろん政治的配慮がなされるでしょうが。
 産経のスクープ記事では、「数ヶ月以内」に発射実験を行う準備が進められているそうです。ソースは「情報筋」としか書いてありませんが、米韓軍のインテリジェンスからの情報であれば、米韓軍はどうやってそんな情報を得たのか非常に興味深いですね。テポドンのように地上施設があって、そこで準備が始まれば偵察衛星でわかりますが、ムスダンは車載なので、基本的にはノドンのように地下に隠し、外に出して発射ということになろうかと思います。
 また、実験前には軍の関連通信が増えるので、その解析から発射の予兆を掴むこともある程度は可能ですが、それも実験が迫ってきてからの話です。なので、数ヶ月前から徴候を掴むのは、なにか特殊な情報収集ルートがあるということなのかもしれません。ちょっとそのあたりはよくわかりません。

 よくわからないといえば、水爆計画です。
 北朝鮮は今年5月12日に「核融合実験に成功した」と発表し、「そんなの無理だろ」「嘘っぱちだ」と大方の専門家やメディアに嘲笑されていました。ところが、6月21日付の『朝鮮日報』によると、「韓国原子力安全技術院が韓国北部の江原道に設置している測定所が、5月14日に通常の8倍のキセノンを検出した」と報じたのです。
 これもよくわかりません。核融合には高度な起爆技術と核分裂級の高エネルギーが必要と思っていたのですが、なにか関連の実験でも行なったのでしょうか。
 ただ、技術的な壁は高いのでしょうが、北朝鮮が「核融合」と言っのであれば、彼らは本気で水爆を作る気かもしれません。北朝鮮は嘘つきだと誰もが知っていますが、意外と有言実行の国でもあります。悪辣なことをやっておいて「“やった”ことを“やってない”と嘘をつく」のは毎度のことですが、「“やらない”ことを“やる”と嘘をつく」ことはあまりありません。ウラン濃縮にしろ、「やる」と宣言してからきっちりやっていますし、今回の砲撃も「そちらが訓練をやるなら断固報復する」と宣言したとおりのことを実行しています。拉致問題の再調査のように”言うだけでやらない”こともありますが、国のメンツが関わる“宣言”は、それなりに重視しているのでしょう。
 そういえば、以前に「東京を火の海にする」と宣言したこともありましたね。少なくとも「東京を火の海にできる戦力」を実現する決意はあるでしょう。すなわち核ノドンですね。
  1. 2010/11/25(木) 08:33:16|
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北朝鮮軍砲撃の理由

 昨日、TBSの夕方ニュース「Nスタ」にお招きいただき、北朝鮮軍の砲撃に関して少しですが解説させていただきました。
 また、本日15時より、TBSのCS放送「ニュースバード」の番組「ニュースの視点」に出演させていただき、同事件についてお話させていただく予定になっています。21時から再放送もあります。

 さて、今回の事件と例のウラン濃縮施設をアメリカの視察団に公開した件などについて、「アメリカを交渉の場に引きずり出すためのカード」という見方の方が多いですが、私は少し違う印象を持っています。
 今回の砲撃に関しては、北朝鮮は軍事をやっているのだろうなという印象です。もともとあの海域は、韓国側が設定した北方限界線がぐっと北朝鮮の領土近くまで攻め入っているかたちになっていて、両国の最大のホットポイントになっています。
 島嶼部には韓国軍のレーダーが設置され、北朝鮮海軍の西海海軍の本拠地である南浦、温泉空軍基地、第3/第4軍団司令部、さらには遠く平壌までが監視されています。また、韓国側は上陸侵攻作戦のスペシャリストである精鋭の海兵旅団を配置していています。
 北朝鮮側も精鋭の部隊を配置していて対抗しています。
 以前から軍事衝突が絶えない場所でしたが、99年に北朝鮮側はぐっと南方の海上に海上軍事境界線を設定し、韓国側が実効支配している海域も自国の勢力圏だと無理やり主張しはじめました。その後もたびたび北朝鮮側のワタリガニ漁船や哨戒艇が南下し、韓国側との小競り合いが発生しています。
 こうした小規模の軍事衝突の場合、しばしば北朝鮮側がコテンパンにやられて逃げ帰るということが起こります。そうすると、北朝鮮側は時間を置いて報復に出ます。たとえば99年に北朝鮮側が大きな被害を受けた銃撃戦の際は、3年後の2002年に報復しています。即座の報復による危機は臨まないものの、軍事的な報復はきっちりやらないと面子にかかわるということなのでしょう。

 で、今回の契機は、昨年11月の銃撃戦だろうと思います。そのとき北朝鮮側は哨戒艇が大破し、ほとんど一方的にやられて逃げ帰っています。この事件の責任をとって、金明国(キム・ミョングク)総参謀部作戦局長(70歳)が大将から上将に降格されています。
 今年3月の韓国哨戒艦「天安」撃沈は、おそらくその報復と思われます。主導したのは、金英徹(キム・ヨンチョル)軍偵察総局長(65歳/上将)とみられますが、当然、北朝鮮海軍中枢も、さらには金正日も承知していることでしょう。一部報道で、「金正男が訪中した金正日に対し、『金正恩がやった天安撃沈はよくない』と諌言した」との未確認情報もあり、天安撃沈は金正恩がやったとの見方もありますが、そこまでの真偽はわかりません。
 ただ、今年に入って、金正恩世襲プロセスの布石として軍幹部の人事がかなり動いていて、新たな軍指導部がこうした強硬な動きを担っています。彼らは皆一様に出世をとげていて、金正恩新体制移行プロセスで優遇されています。
 たとえば、現在の北朝鮮軍を取り仕切っているのは、李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長(67歳)です。平壌防御司令官から昨年2月に上将から大将に昇格するとともに総参謀長に抜擢。わずか1年半後に次帥に昇格。党政治局員兼党中央軍事委員会副委員長に就任しました。並み居る70~80代の先輩らをゴボウ抜きしての大出世であり、記念写真でも最前列中央の金正日の隣席に位置するなど、完全に頭ひとつ抜けた存在です。
 3月の天安撃沈事件直後の今年4月、金正日は将官級およそ100人もの大量昇格を行っています。天安撃沈事件で降格されていた金明国が大将に復活。李炳鉄(リ・ビョンチョル)空軍司令官や鄭明道(チョン・ミョンド)海軍司令官らも大将に昇格しています。天安撃沈が「よくやった」ということですね。金正恩の直接の司令かどうかはわかりませんが、金正恩への求心力に使われたということはまず間違いないのではないかと思います。
 今年9月には金正恩や金敬姫の大将就任がありましたが、同時に玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)第8軍団長と崔富日(チェ・ブイル)副総参謀長も大将に昇格しています。金正恩が党中央軍事委員会副委員長でデビューしたときには、大将になったばかりの鄭明道、李炳鉄、崔富日、さらに上将にすぎない金英徹も委員に就任し、金正恩を支える立場となっています。崔富日は直後の軍事パレードを指揮し、その存在感が大きく強化されています。
 こうした軍の新リーダーたちは、金正恩後継プロセスと連動して、軍の活動をきっちりアピールする方向を明確にしているのだと思います。
 今年の3月の天安事件以降、黄海で米韓軍が繰り返し演習を行うなどしていることに対し、北朝鮮側は再三にわたって警告してきました。これは北朝鮮側からすると、米韓側からの挑戦的な挑発行為にほかなりません。もっとも、米軍と事を構えるわけにはいかないので、韓国軍単独で挑発的な訓練が行われた際には、今度はそれなりの報復をすると決めていたのでしょう。
 ただし、天安事件で韓国世論が熱くなっているときはまずいので、少しホトボリが冷めた頃にということでしょうね。ただ、金正恩世襲プロセスで軍人事が動いているなかですから、それほど悠長には待ってられないということでの今回のタイミングだったのかと思います。
 もっとも、また哨戒艇を越境させるだけでは、ロクに敵に打撃を与えられずに再びすごすごと逃げ帰る醜態を晒す可能性もあります。今度再びそんなことになったら、せっかく手に入れた軍幹部ポストも危うくなります。
 ならば、いっそ思い切って島に砲撃を、と。しかし、戦争にはならなくらい限定的な感じにしよう、と。そうすれば、先に挑発したのは韓国側だといってなんとか収められるだろう、と・・・だいたいそんな考えだったのではないかと思います。
 北朝鮮側は今回の件に対しては、あくまで韓国側の挑発に対する報復という立場を崩さず、これ以上の拡大は望んでいないと思われます。いずれにせよこれで北朝鮮国内では、金正恩大将を中心に結束した軍が韓国に一撃を食らわした快挙ということになります。



 北朝鮮側は今回の件に対しては、あくまで韓国側の挑発に対する報復という立場を崩さず、これ以上の拡大は望んでいないと思われます。いずれにせよこれで北朝鮮国内では、金正恩大将を中心に結束した軍が韓国に一撃を食らわした快挙ということになります。

 ところで、前述したように、ウラン濃縮の件でも、施設を米視察団に公開してことで、米朝対話を狙ったカードだという見方がありますが、ちょっと違うのではないかと私は思っています。
 要するに、北朝鮮は軽水炉建設とのセットで、平和利用ということで押していけると踏んだのだと思います。対米交渉はメイン・テーマではなく、やはり念頭にある最大の目標は核武装強化だと思います。対米交渉の狙いというのは、制裁を解除し、体制保証を引き出すことですが、核開発途上にそれが実現しないことぐらいは北朝鮮も理解していると思います。対米交渉は核ミサイル完成までは、しょせんは時間稼ぎではないでしょうか。
 ここでも北朝鮮は、要するに外交ではなくて軍事をやっているのだと思います。
  1. 2010/11/24(水) 10:48:09|
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アルカイダのテロ計画が近い?

 11月20日、「アラビア半島のアルカイダ」は、宣伝用英字ネット誌「Inspire」で、イエメンからアメリカに向かう航空機に仕掛けた2件の爆弾テロ未遂事件に関する犯行声明を発表し、▽同テロ計画では4200ドルしかかからなかったこと▽今後はこうした格安のテロに方針を変えること、を宣言しました。
 でも、なぜわざわざそんなことを宣言したのでしょうか? 今後のテロ方針なんて、テロリストはまず秘匿するのが原則です。しかも、なぜ英文で??
 もしかしたら、次の大規模テロを偽装する作戦かも。連中の考えそうなことなので、油断はできませんね。
  1. 2010/11/22(月) 05:20:10|
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北朝鮮「ウラン濃縮」の危険度

 11月20日、『ニューヨーク・タイムズ』電子版が、北朝鮮から帰国したロスアラモス国立研究所元所長のシーグフリード・ヘッカー米スタンフォード大学教授が、同国訪問中にウラン濃縮施設を見学していたと、同教授の証言を元に報じました。
 同記事によると、ヘッカー教授が見たのは数百基の遠心分離機で、「ウルトラ・モダン・コントロール・ルーム」で管理された、驚くほど洗練された施設で、それを見た教授は「卒倒した」といいます。教授は未確認ですが、北朝鮮側の説明では「すでに2000基が稼働中」とのことでした。
 北朝鮮のウラン濃縮に関しては、最初は2002年10月にケリー米国務次官補(当時)が訪朝した際、北朝鮮側から濃縮ウラン計画の存在について非公式に仄めかされたことで注目されました。
 その後、北朝鮮側は一貫してこの計画について否定してきましたが、▽パキスタンのウラン型核爆弾製造をリードしていたアブドル・カディル・カーン博士とかつて協力関係にあったこと、▽同じくウラン型核爆弾製造を目指すイランと強固な協力関係を続けていること、▽ウラン濃縮プラント建設に使える大量の高強度アルミ管を北朝鮮が密かに輸入していたことが発覚したこと、▽北朝鮮が提出したそのアルミ管のサンプルから濃縮ウランの痕跡が検出されたこと、などによって北朝鮮が密かにウラン濃縮計画を進めているのではないかとの疑念が指摘されてきました。
 ただし、これらはいずれも状況証拠であり、ウラン濃縮説そのものは確認された情報ではありませんでした。北朝鮮のブラフではないかとの見方もありましたが、いずれにせよ真偽の判定は不可能な情報だったわけです。ちなみに当ブログでも3年半ほど前に、北朝鮮ウラン濃縮説に信頼すべきインテリジェンスが見当たらないことを記事にしています(→該当エントリー)。

 ところが、北朝鮮側は昨年4月にIAEA査察官を国外退去させると、同6月にウラン濃縮計画の着手を表明。さらに9月には、ウラン濃縮の実験段階がほぼ完了したと発表しました。
 これらの北朝鮮の主張は確認されたものではなく、本当に北朝鮮がウラン濃縮に乗り出したのかどうかはわからなかったのですが、今回のヘッカー教授の証言で、それが事実であることが初めて確認されました。
 北朝鮮は現在、寧辺に軽水炉を建設中であると公表しましたが、おそらくこのウラン濃縮を正当化するためのものであろうと考えられます。たしかに低濃縮ウランは軽水炉の燃料として使われますし、プルトニウムをあまり生産しない軽水炉であれば、平和利用目的と強弁するにも好都合ですから、なるほどうまく考えたなと言えます。
 ですが、ウラン濃縮施設はそのまま高濃縮ウランに濃縮度を高めることも可能です。核兵器開発が命綱の北朝鮮にとって、ウラン濃縮が平和目的限定などということはあり得ません。
 ニューヨーク・タイムズ紙も書いてましたが、ひとつ気がかりなのは、昨年4月にIAEA査察官が国外退去した時点では存在しなかった施設が、わずか1年半の間に建設されたという迅速さです。周知のとおり、現在、北朝鮮は国際社会の経済制裁下にあり、とくに核開発関連の資材の輸入は厳しく監視され、ブロックされています。そんな状況で、どうやってその施設を建設できたのでしょうか。
(※追記/ヘッカー教授がスタンフォード大学のサイトにアップした報告書によれば、場所は寧辺とのこと。また、同レポートには、北朝鮮の担当者が「(同施設について)ほとんど自分たちで国産したが、日本の六ヶ所村とオランダの施設を参考にした」と語っていたということです)

 現時点では推定でしかありませんが、イランの協力を得ていた可能性があります。仮にそうなると、さらに気になるのは、イランが今年、従来型の遠心分離機より数倍の濃縮効率を持つ新型遠心分離機を開発したということです。
 イランは現在、すでに9000基近い遠心分離機をウラン濃縮施設で稼働させていますが、新たに建設中の新施設に新型の国産遠心分離機を設置することを表明していて、今年4月には「従来型の6倍の能力の遠心分離機の実験に成功した」と発表しました。6倍というのは誇張された数字の可能性が高いですが、それでも最低でも2~3倍の能力強化は実現されたものと欧米の専門筋は判断しているようです。
 その最新型の装置が北朝鮮にそのまま移転されるということはないと思いますが、この分野ではかなり技術力を上げてきているイランの核技術者の協力があったとしたら、北朝鮮は今後、さらに驚異的なスピードで高性能のウラン濃縮プラントを増強していく可能性があります。

 困ったことに、北朝鮮は豊富なウラン鉱脈が存在します。北朝鮮が今後、軽水炉での平和利用目的と強弁してウラン濃縮をさらに加速すれば、兵器級濃縮ウランの製造が具体的タイムテーブルにのってくるのも、時間の問題です。
 北朝鮮はすでにプルトニウム型の核爆弾を完成させていて、少なくとも外国軍の侵攻に対しての防御力としては新段階に防衛力を強化させています。ただし、当ブログで何度も指摘してきたように、プルトニウム型核爆弾の起爆装置の構造はきわめて複雑であり、ノドン・ミサイルの弾頭に搭載できるまで小型軽量化することは、それなりに高い技術的ハードルがあります。
 それに対して、構造がはるかに簡単なウラン型核爆弾では、必要量の兵器級高濃縮ウランさえ入手できれば、それをノドンに搭載することはそれほど難しくはありません。北朝鮮がいま現在、最大の国家的目標としているのは核ミサイルの開発ですから、ウラン濃縮は前述したように、当然そのための措置と考えるべきです。
 それはまさに、ノドンの射程にすでに入ってしまっている日本にとって死活的といっていい重大問題です。
①軽水炉建設→②平和利用との名目でウラン濃縮→③こっそり高濃縮ウラン製造→④核ノドン配備、というシナリオが、今まさに現実のものになろうとしています。
「北朝鮮の脅威」というのは、核実験やテポドン発射実験などによって、もうなんとなく「またか」という雰囲気になっていますが、今度はこれまでとは比べものにならないほど、きわめて深刻な状況になりつつあるのだと思います。
  1. 2010/11/22(月) 00:27:52|
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北朝鮮の裏ビジネス

11月18日、米財務省は北朝鮮の不正な経済活動を行っているとして、2つのダミー機関を経済制裁リストに追加することを発表しました。
「朝鮮大聖銀行」と「朝鮮大聖貿易」で、いずれも金正日の外貨獲得特務機関である「39号室」の傘下組織です。すでに39号室は今年8月に経済制裁リストに加えられていましたが、今回は北朝鮮がなにやら核開発で不穏な動きをするなかでのアメリカ側からの追撃となります。
(ちなみに、今年8月にはその他にも、偵察総局および金英徹偵察総局長、武器輸出会社「青松連合」も制裁リストに加えられています。偵察総局は韓国哨戒艦「天安」撃沈事件の黒幕と疑われている工作機関。青松連合は同事件に使われたのと同様の魚雷の輸出に関わっている軍のダミー会社ですね)
 
 今回、『ジェーンズ・ディフェンス・ウイークリー』に掲載されたことで注目を集めている第3回核実験徴候については、今のところ情報が限定的なのでどういうことか判然としませんが、北朝鮮は先代の金日成時代から一貫して「ワシントンに届く核ミサイル」開発を目指して邁進してきました。政治的な制限より、間違いなく軍事合理性を優先させて、技術的に必要とあれば躊躇なく実験を繰り返すはずです。
 次回の実験が、前回実験の起爆装置の若干の性能改善程度であればまだいいのですが、仮に1トン以下のノドン弾頭用の小型起爆装置による起爆実験が成功したりすると、何度も当ブログでも書いてきたように、日本の安全保障はアウトです。
 そして、それは近い将来に実現される可能性が極めて高いものです。核ミサイル開発は北朝鮮のまさに国是であり、アメリカはおろか、中国の圧力程度でもそれは止められないと思います。日本政府・防衛省は、北朝鮮が核ノドンを完成させることを前提に、防衛政策を再検討することを急ぐべきだと思います。

 ところで、39号室や朝鮮大聖銀行、朝鮮大聖貿易などはどのような活動をしてきたのか、古い情報になりますが、2006年発売の『ワールド・インテリジェンスvol③』に書いた関連記事がありますので、参考までに以下に転載します。


「ドル紙幣偽造、麻薬・タバコ密造、戦略物資不正取引 ~北朝鮮「不法ビジネス」の系譜」

ついに北朝鮮の不法ビジネス締めつけに乗り出したアメリカ。音を上げた北朝鮮はミサイル連射&核実験を強行。さらに経済制裁へ!

動き出した米政府

 北朝鮮がミサイル連射や核実験を強行した背景に、アメリカの金融制裁がある。アメリカ政府は現在、ドル紙幣偽造問題や麻薬密売に絡むマネーロンダリング問題についての追求を、本気になって推進している。
 発端は2005年8月、米財務省、FBI、CIAの合同タスクフォースが東海岸のニュージャージー州や西海岸のロサンゼルス港で疑惑の船舶を一斉捜索し、偽ドル密輸に関与した87人を逮捕したことだった。このとき押収された偽ドルは額面でなんと約450万ドルという巨額だった。
 さらに、同年9月15日には米財務省が、北朝鮮がマネーロンダリングに使っていたマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」の米金融機関との取引禁止措置を発動。これを受けてバンコ・デルタ・アジアでは取り付け騒ぎを防止するために当該口座を凍結した。同行には北朝鮮のダミー口座が15(うち11は偽名)あったといわれている。
 続いて米財務省はさらに、2005年10月には北朝鮮企業8社に対し、大量破壊兵器関連部品の不正調達に関わったとして在米資産凍結を打ち出した。財務省はすでに同年3月に北朝鮮企業3社の資産凍結措置を発表していたので、これで計11社への制裁ということになった。
 これに困ったのが北朝鮮政府で、同2005年11月の6カ国協議会合で「金融制裁措置を解除しないと6カ国協議に応じない」という姿勢を打ち出したが、アメリカ側はこれを突っぱねた。同年12月には、米政府はアメリカのすべての金融機関に対し、北朝鮮の不正資金のマネーロンダリングに関与しないようにとの勧告を通達した。財務省勧告ではハッキリと、「北朝鮮は通貨偽造、麻薬密売、偽造タバコ密売を行なっていて、その収益をマネーロンダリングしている」と断定していた。
 これを受け、これまで北朝鮮と取引してきた多くの金融機関が軒並み北朝鮮との取引を停止した。北朝鮮との取引を停止した金融機関は、フランスやシンガポールなど20カ国近くにも及んだ。
 こうした事態を受け、マカオで事実上の北朝鮮工作機関として公然と活動していた「朝光貿易」は、2005年12月19日までにマカオの事務所を撤収し、中国の珠海に移転した。朝光公司の最大の任務は、「不正資金をバンコ・デルタ・アジアなどを通してロンダリングすること」だったが、それができなくなったわけである。
 マカオではその他にも「高麗貿易」「ダエッキシム社」「チャンロク貿易」「キムガク貿易」「ミョンギ公司」「萬徳輸出入社」「龍興輸出入社」「テボ社」「シンハム社」「スウェル社」のなど約100社の北朝鮮ダミー会社が活動していたが、そのほとんどがやはり珠海などに移転したようだ。

北朝鮮の「裏ビジネス」担当部署とは

 ところで、こうした不正ビジネスで北朝鮮はいったいいくらを稼ぎ出しているのだろうか?
 たとえば、北朝鮮製の偽ドル紙幣「スーパーノート」に関して2005年12月に米財務省がまとめたところでは、スーパーノートが初めて登場したのは1989年で、それ以降、現在までに合計で約4500万ドル相当が押収されたという。しかも、2004年の1年間だけで押収額は1300万ドル相当に上っている。
 また、2006年1月27日付米紙『ウォールストリート・ジャーナル』は、元米情報機関員を採用して独自の調査を行なった「フィリップ・モリス社」の調査結果に基づく情報として、北朝鮮の偽タバコ製造・密売の収益を推定している。それによると、北朝鮮はタバコ偽造で年間8000万~1億6000万ドルもの巨額の収益を上げている可能性が高いという。
 さて、それでは北朝鮮のどういった機関がこうした裏経済の工作を担当しているのだろうか?
 これについてもやはり確実なところはわかっていないのだが、現在、おそらく金正日の私的外貨獲得特務機関として機能している朝鮮労働党中央委員会書記局所属で党本部1号庁舎に置かれた「39号室」と呼ばれる組織が、その大元締めになっているものと推測される。不正な非合法活動による外貨収入の多くが、今では金正日の個人金庫ともいうべきこの組織に集まるようになっている模様だ。
 39号室の運営は、資金調達・運営・管理を担当する権英祿と、物資調達を担当する朴用武の下に2つの班に分かれている。物資調達班は「ダエッキシム」という会社を運営しているという(『コリア・レポート』2006年1月号)。
(※追記/2010年2月、39号室の金東雲室長が解任され、金正日の高校の同窓生だった全溢春第1副室長が昇格しています)
 なお、39号室では、対外取引の際に大聖総局に所属するダミー商社「大聖貿易」「大聖銀行」「金星銀行(在ウィーン)」などを使うことが多い。マネーロンダリングで知られるマカオの「朝光貿易」(前出)ももともとは対外工作機関「35号室」(※追記/現在は軍の偵察総局に吸収)の出先機関だったが、現在では外貨獲得工作がメインとなり、39号室に所管が移ったとみられている。なお、39号室が運営するこのようなダミー商社は、少なくとも120社以上になる。
 39号室はまた、偽タバコ生産にも関与しているとみられる「大聖タバコ工場」(平壌)も所有している(偽造タバコでは国家安全保衛部も直属の商社を通じて平壌市内に「凌羅島888タバコ工場」を、人民武力部も平壌市内に「東陽タバコ工場」を所収している)。
 また、同じく金正日直属機関で対日貿易を統括する「38号室」でも、2004年の油濁損害賠償保障法改正などで通常の貿易量が減り、外貨稼ぎの道が狭められたことを受け、なりふりかまわぬ裏ビジネスに乗り出している可能性が高い。
 偽ドル札の印刷を行なっているところとしては、粛正された姜成山・元首相の娘婿で韓国に亡命した康明道が著書『北朝鮮の最高機密』のなかで、「3号庁舎所属の『101連絡所』という機関がそのひとつだ」と証言している。101連絡所は偽札だけでなく、旅券をはじめとするあらゆる種類の偽造種類を印刷しているところとのことで、統一戦線部と対外連絡部の関連機関と思われるが、同じように、3号庁舎所属機関には作戦部の関連機関「314連絡所」が設置されていて、そこでもドル札を含むあらゆる種類の偽造書類を製作しているとの情報がある(清水惇著『北朝鮮情報機関の全貌』)。
 元作戦部工作員・安明進も「3号庁舎(の工作機関)で偽札を印刷している」と証言しているので、3号庁舎所属工作機関でそうしたことが行なわれていることはほぼ間違いない。いずれにせよ、こうした組織はそれぞれダミーの商社を持っているので、それらを使って海外でマネーロンダリングなどを行なっていると推測される。
 ところで、海外での不正な取引で外貨稼ぎを行なっているところは他にもある。
 たとえば、朝鮮労働党書記局軍需工業部の「第二経済委員会」と呼ばれる組織である。ここは、北朝鮮では非常に大きな経済分野である軍需経済を取り仕切る部署だが、人民武力部の強い影響下にあり、独自に活発な外貨稼ぎを行なっている。なかでも対外経済を担当する「99号小組」と呼ばれる組織がその中心で、その傘下にある「龍岳山商事」「蒼光信用銀行」などのダミー企業を通じてかなりなりふり構わぬ活動をしている模様だ。
 また、人民武力部で軍経済を担当する「44部」も、傘下のダミー企業を通じて同様の外貨獲得工作を行なっている可能性が高い。
 秘密警察である国家安全保衛部でも、傘下の「新興貿易」などを通じて偽ドル密売などを行なっている疑いがある。

ついに全面経済制裁へ

 こうして裏ビジネスに勤しんできた北朝鮮だが、2006年に入り、経済的な苦境はさらに続いた。たとえば、同年3月30日にはアメリカ財務省が、スイスの工業用機械卸売業「コハスAG」と同社のヤコブ・シュタイガー社長に対し、在米資産凍結と商取引禁止の制裁措置をとったと発表した。
 コハス社は株式の約半分をすでに米財務省に資産凍結措置を受けている北朝鮮企業「朝鮮リョンボン総合」の子会社が所有しているという、ほとんど北朝鮮お抱えの会社である。業務のほとんどは、北朝鮮人民武力部の事実上の代理として、欧州で兵器関連部品などの調達を行なってきた。
 いずれにせよ、これで米政府が制裁を科しているのは、(2006年現在)計12団体・1個人となった。
 その後、同年7月5日のミサイル連射を受けて、制裁はさらに強化されていく。日本政府は万景峰号の入港禁止措置をとるとともに、北朝鮮と取引実績のある約300社のなかから、制裁対象の選定に入り、大型トラックを含む約40品目に規制をかけることとなった。
 マカオでは、同年7月15日までに中国銀行マカオ支店が北朝鮮関連口座を凍結。これを受けて北朝鮮では取引先をシンガポールをはじめとする世界中の小規模な金融機関に移転するとともに、ユーロ決済へのシフトを図った。8月初めにはベトナム当局も同国内の銀行の北朝鮮関連口座を凍結した。
 同年9月12日、日本とオーストラリアが経済制裁。オーストラリアは米国に倣って12団体・1個人の資産凍結、日本はそれに独自に「朝鮮東海海運」など3社を加えて、計15団体・1個人に日本国内の金融機関からの送金や預金契約などの資本取引を禁じた。
 制裁対象となったのは以下の通り。
▽コハスAG▽ヤコブ・シュタイガー▽朝鮮クァンソン貿易▽朝鮮プガン貿易▽朝鮮リョンワン貿易▽へソン貿易▽タンチョン商業銀行▽トソン技術貿易▽朝鮮国際化学合弁▽朝鮮総合設備輸入▽朝鮮東海海運▽朝鮮鉱業開発貿易▽朝鮮リョンハ機械合弁▽朝鮮リョンボン総合▽平壌情報科学センター▽ポンファン病院

 これらの企業・組織はいずれも、裏では北朝鮮のミサイル・大量破壊兵器開発に携わってきたことでよく知られた団体だった。
 上記の制裁の対象になったのは、スイス企業のコハスAGとその社長を除けば、いずれも北朝鮮の企業・組織である。今回の制裁の対象は主にミサイル・大量破壊兵器開発関連物資の調達組織がメインになっているが、これ以外にも前述したように、北朝鮮には偽札密売、麻薬密売、マネーロンダリングなどに関与している疑いのある企業・組織が各機関傘下にいくつも存在している。労働党39号室直属の「朝光貿易」(マカオ)や「朝鮮綾羅(ルンラ)888貿易」(横田めぐみさんの夫が勤務していた)などが有名だ。
 では、他方、在日の企業ではどのような企業が挙げられるのか? こちらも、前述したように、国内には北朝鮮との取引実績のある会社が300社程度あるが、そのなかでも朝日貿易をメインに行なっている専門の会社が約90社程度あり、そのなかのとくに20社程度は明らかに怪しいビジネスに関与している疑いがあるといわれている。
 公安当局によると、現在もっとも注目されている会社が2つあるとのこと。東京・湯島の商社「明昌洋行」と神戸の商社「東亜技術工業」。いずれも朝鮮総連系で、たびたび不正輸出で摘発を受けている貿易会社である。
 2006年10月9日、北朝鮮が核実験を強行したことで、同13日、日本政府は北朝鮮への強行な独自制裁を決定した。▽北朝鮮船舶の入港禁止、▽北朝鮮からの輸入禁止、▽北朝鮮国籍保有者の入国原則禁止、である。
 国連安保理では経済制裁を含む制裁決議が成立し、アメリカが主力となって船舶検査もスタートする。北朝鮮はいよいよ逃げ場がなくなってきたといえる。
(軍事研究2006年11月号別冊『ワールド・インテリジェンスvol③』<特集 北朝鮮&中国の対日工作>より)
  1. 2010/11/20(土) 12:46:16|
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戦場カメラマンのなり方(後編)

 前回、戦場カメラマンになるにはどうすればいいか、紛争地での取材のしかたについて解説しました。私などは全然成功したわけでもないのに、非常におこがましいことを書き連ねましたが、「戦場カメラマン なり方」などのキーワード検索で当ブログを目にしていただく方も結構いらっしゃるので、少しでも参考になればと思い、私のわかる範囲で書いてみました。
 今回はビジネス面などについても少し書いてみます。たとえば、仮に戦場写真の撮影に成功したとして、ではどうやって雑誌に売り込んだらいいのでしょうか?
 これは非常に簡単なことで、直接お目当ての雑誌の編集部に電話なりメールなり手紙なりで連絡し、「これこれの写真を撮ってきたのだが、見て欲しい」と売り込めばいいのです。いちばん確実なのは直接電話で話してしまうことですね。どこの雑誌も基本的には独自のネタを欲していますので、普通に企画を持ち込めば、テーマにそれなりの独自性やニュース性があれば、話も聞かずに断られるということはあまりありません。雑誌編集部側は、よほどネームバリューのある人でもないかぎり、人ではなくて内容で掲載を判断します。コネがあってもなくても、結果はあまり変わりません。
 初めての売り込みの際は、もし可能であれば、「グラビア担当のデスクの方をお願いします」とか言って、なるべくベテラン編集者と最初に接触したほうが有利です。雑誌の編集部はたいてい、各編集者がそれぞれ独立して企画を立案するのですが、概して新人よりはベテランのほうが企画を通す力があります。
 ちなみに、よほどスクープ性のある特殊なネタは別ですが、通常、雑誌はページ単価で予算を考えます。1pあたりのギャラや経費というのがだいたい決まっているので、何ヶ月もかけ、何十万円も身銭を切って取材した写真でも、近所で1時間で撮影した写真でも、原則的にはギャラは一緒です。ただし、担当編集者によっては自分の裁量で多少は動かせるようで、人によっていくらか幅があることがあります。その点でもベテラン編集者のほうがベターですね。
 出版不況の現在、ギャラはどこもかなり安くなってきています。1誌掲載だけなら、大手週刊誌でも1Pあたり最高でも5万円くらいがせいぜいではないかと思います。マイナーな雑誌だと1Pあたり2万円以下なんてこともザラです。飛行機代すら元がとれません。
 戦場写真だけでメシを食うのは、まず不可能だと思います。なので、フリーのカメラマンであれば、①日頃はさまざまな仕事をこなし、ときどき紛争取材に行く、②海外のエージェントに登録し、世界市場に打って出る、③テレビ(映像)をメインにやる、といった道を選択することになります。
 現実問題として、ニュース系では世界市場で食えているような日本人のフリーランスはほとんどいません。たいていは①か③ですが、それでも日本ではほんの一握りの人しか実現化できていません。

 もっとも、戦場カメラマンという職業で経済的に一本立ちするのは至難の業ですが、単に雑誌デビューするだけなら、それほど難しくはありません。「戦場」はそれだけでニュースバリューがあり、競争相手も非常に少ないため、採用される確率は決して低くはありません。たとえば日本国内のフォトルポルタージュを採用してもらうとしたら、それなりに深い取材ときっちりした写真が要求されることがほとんどですが、戦場写真はそれに比べると格段にハードルは低いです。
 もちろん写真が上手いほうがいいですが、戦場写真はあくまで報道のひとつですので、それよりもニュース価値が問われることが多いように思います。題材の選択とタイミングが重要で、「今だからコレ!」という価値が重要になります。
 今はネットでリアルタイムで戦場から写真を送付することが可能なので、ニュース性のあるタイミングであれば、企画の採用率が格段に上がります。現場から知らない編集部にいきなり売り込みは難しいので、日本に売り込みを代行してくれる仲間がいると便利です。
 それぞれの雑誌ごとに企画会議の日とか締め切りの日とかが違うので、そういうことも知っておくとビジネス上は有利です。また、どんなにいいフォトルポルタージュをものにしていたとしても、同じテーマで過去数ヶ月内に記事が掲載されていたら、まずその雑誌は無理ですから、そういうチェックもしておいたほうがいいかと思います。

 戦場カメラマンになるコースですが、写真学校で撮影技術を学ぶことも非常に有意義なことですが、独学で立派な写真を撮られている方もたくさんいます。コマーシャルの世界と違って、師弟制度で世に出るということはほとんどありません。
 今活躍されている方は、カメラマンというより、最初からジャーナリストとして現場取材の実績を積み重ねられた方が多いように思います。また、自分がそうだったから言うということもあるのですが、新聞や雑誌の記者・編集者経験は、取材方法や企画立案の訓練として、たいへん有意義であると思います。
 
 企画の立て方は人それぞれで、こうすべきという定石があるわけではないのですが、私が心がけていたのは、「タイトルを考えて取材・撮影する」ということでした。どの雑誌にどのようなかたちで掲載するかというイメージを取材中から想定し、自分で記事タイトルを仮定して、それに必要な取材をするわけです。
 慣れてくれば、1回の取材でも複数の雑誌を想定して複数のテーマで撮影したり、記事のシミュレーションを考えながら必要なカットを積み上げていく、などということも考えると効率がいいかと思います。
 戦場ルポに欠かせない写真とすれば、まずは軍隊です。ゲリラでもいいですが、そこが戦場であることを表現するには、武器を持った人間、軍服を着た人間が必要です。
 なので、兵士に従軍というのがまず基本型になります。従軍しないで戦場を単独で動くことは、援助機関に同行する方法以外では、なかなか難しいと思います。実際の戦闘写真でなくても、軍隊・ゲリラの従軍写真はそれなりに画になります。一例として、古い写真ですが、ニカラグア・ゲリラの従軍写真をリンクしてみます(→該当エントリー)。何ヶ月も内戦の取材をしても実際の戦闘シーンは皆無だったのですが、それでもゲリラ兵士は被写体としては画になる存在です。
 戦闘シーンは、まず最前線に辿り着くことが難しいですし、さらに戦闘時とうまく取材タイミングが合わないとダメなので、運も必要です。私も戦場取材はいろいろやりましたが、本当に軍隊同士のドンパチの真っ只中に身を置けたというのは、ボスニア戦線だけです(→該当エントリー①  該当エントリー②)。
 前回エントリーで少し触れましたが、鉄則は「勝ってるほうに従軍」です。兵士が武器をぶっ放している瞬間は迫力写真が撮影しやすいですが、撃たれているほうは着弾場所やタイミングが事前にわかりませんから、撮影は非常に難しいです。そんな状況では撮影する余裕はほとんどないですし、なにより撮影者が危険すぎます。
 兵士以外では、戦場にいる可哀想な人たちを、より可哀想さを引き立たせるように撮影することも必要です。死体、負傷者、難民、老人、母子、泣く子どもなんかですね。これらの取材がメインであれば、従軍でなくとも、国際赤十字や援助機関同行などでも取材できます。軍隊の従軍許可はけっこう面倒なので、手配はこちらのほうが簡単なことが多いです。
 ただし、こうした撮影は、心理的にはかなりシンドイものがあります。以前、ソマリア難民の子どもを撮影した写真をアップしましたが(→該当エントリー)、こういう場面で本来ならもっときちんと画作りを計算して、もっと悲惨さが強調されるように撮影できるようでないと、戦場カメラマンは務まりません。
 あるカメラマンさんから聞いたのですが、日本でだいぶ以前に起こったある悲惨な災害現場で、遺体や泣き叫ぶ遺族を強引に黙々と接写し、人々から罵声を浴びていたカメラマンがいたので見てみたら、ベトナム世代の著名な戦場カメラマンだったそうです。
 以前、スーダンの難民キャンプで、「禿鷲とうずくまる難民少女」の写真がピュリッツァー賞を受賞し、「なぜ少女を助けないのだ」と物議をかもしたことがありました。(http://iconicphotos.files.wordpress.com/2009/08/kevin-carter-vulture.jpg?w=700&h=466)
 その南アフリカ人の写真家は後に自殺していますね。原因はよくわかりませんが。戦場カメラマンとしては、あそこで禿鷲が翼を広げる瞬間まで待つくらい神経が図太いほうがいいのかもしれません。

 戦場カメラマンだけで生活することはきわめて難しいと前述しましたが、そのため、現在は写真よりも、映像取材をメインとするジャーナリストが増えています。テレビの世界も制作費がだいぶ減ってはいるのですが、それでもまだ雑誌に比べれば大きな予算があるので、そちらでビジネスとして成立させることは可能です。
 めったにあることではありませんが、9・11テロ後のアフガン戦の北部同盟側従軍取材と、イラク戦争時のバグダッド取材のときには、先行する実力派の独立系制作会社が堂々の実績を挙げたおかげで、現地映像素材のギャラが破格に高騰したことがあります。そういうバブルは過去にもこの2回しかありませんでしたが、日本ではテレビ局の正規撮影クルーが前線にあまり出ないので、日本中が注目するような大きな戦争が起これば、そういうときだけひと稼ぎするチャンスもあります。
 ただ、私もかつてテレビ業界でENGカメラマンをしていたから思うのですが、スチール写真と違って、独学だけではテレビ局が採用するだけの映像素材を撮影するのは非常に難しいという気がします。
 商品化に耐えうる映像素材を撮影するには、それなりの専門的なノウハウが必要で、それはプロの現場で鍛えられるのがベストだと思います。まさに職人の世界ですね。スチールの戦場カメラマンから映像の世界に転進した方もいらっしゃいますが、皆さんそれなりにきっちりと勉強されています。
 なので、必ずしも写真をやりたいのではなく、とにかく紛争地取材、海外取材をやっていきたいのであれば、まずはテレビ局か制作会社に就職することも検討されたらいいのではないかと思います。必ずしも希望通りの仕事ができるとは限りませんが、そこで技術を学んでフリーになるという道もあります。
 現在活躍されている方は、個人で仕事をするというより、仲間で制作会社を作ったり、既存の制作会社と専属契約したりして仕事にあたるというケースがほとんどです。スチールと違って、映像の世界はさまざまな局面でチームプレーが必要になりますので、協調性や仕事上のコミュニケーション能力も重要です。
 また、映像のほうがさらにテーマ性が絞られてきますので、企画力が求められますが、そうしたものもオン・ザ・ジョブ・トレーニングで学ぶのがベターかと思います。
  1. 2010/11/19(金) 11:21:08|
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尖閣ビデオ流出者をめぐる賛否

 尖閣ビデオ流出者の評価をめぐって、ちょっと面白い現象が起きています。本日発売の『週刊文春』がかなり否定的な記事を掲載しました。本人に取材したわけではないので、私はそこまで罵倒はしませんが、だからといって、あたかも英雄視するのはおかしいのではないかと、やんわりと当ブログで指摘してきました。
 本来、こういう事態では、国家の規律崩壊を指弾するのは右系(国士系)で、内部告発を擁護するのは左系(リベラル系)なので、右系の文春の態度はわかりやすいのですが、今回はたまたま告発者の敵が中国であり、民主党政権だったこともあって、左右がなんだかねじれてしまっています。中国憎し&民主党憎しの方々の中には、本来はスパイ防止法推進派的な立場であるにもかかわらず、この深刻な情報漏洩事案を擁護している方も結構見受けられるのですね。
 左系陣営でも、情報公開推進の立場から評価する声もありますが、なんとなく「戦う男たち」を美化したり、旧軍青年将校的な臭いを警戒する雰囲気もあって、こちらもなんだかすっきりしない感じになってます。
 なかなか興味深い現象で、誰が何を書くのか、次の各論壇誌が楽しみになってきました。
  1. 2010/11/18(木) 23:26:26|
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新防衛大綱と国家安全保障室

11月17日、新「防衛計画の大綱」のたたき台となる民主党外交・安全保障調査会の提言案の内容が各紙で一斉に発表されました。11月中に政府に正式に提言され、それを基に今年中に新防衛大綱策定が予定されています。
 今度の民主党案で特徴的なのは、まずは陸自のリストラです。全体的な人員削減が考えられていますが、そのかわり、九州・沖縄地方を増強します。要は西方シフトですね。
 その考え自体は現大綱でも謳われていたのですが、今回は時代遅れの基盤的防衛力構想を完全に払拭し、「動的抑止力」という考えを導入しています。
 基盤的防衛力構想というのは、どこから攻撃されてもいいように「まあ、独立国ならこのくらいの戦力はあったほうがいいよね」という漠然とした考えでテキトーに基幹部隊を全国各地に配置しておいて、有事にはそれを元に各自が瞬時に戦力アップ(そもそもそれをどうやってやるのかよくわからないのですが)ができる態勢にしておくというような考え。日本全国に陸自の駐屯地を配置しておく理由になっていました。
 冷戦時代は対ソ戦が防衛計画の柱でしたから、陸自は北海道に大部隊を配置していたのですが、有事にはあまり関係のないような南東北とか信州とか中京、近畿、四国とかにも同じような編成の部隊を平均的に配置するという、非常に効率の悪い体制になっていました。
 これはどうもうまくないんじゃないかという考えはかなり以前からあったのですが、そこで問題となったのが、地元対策です。もともと日本政府がお願いするかたちで地方に駐屯地を作らせてもらい、その代わりに自治体に交付金を支払ったり、若者の雇用を確保したりといった恩恵を与えていたので、駐屯地を抱える地域、とくに北海道の関係自治体は自衛隊経済にかなり頼るようになっています。なので、今さら駐屯地閉鎖なんて約束が違うじゃないかと。
 それで、駐屯地の数を減らさずに実員削減ということで対処してきたため、陸自の現場は現在どこも深刻な人手不足に陥っています。陸自の関係者からはそれで「これ以上の人員削減は国防を破綻させる」と反発が大きいのですが、そもそも論から言えば、駐屯地削減で対処するのが筋でしょう。
 日本国民は特定地域の財政や雇用のために防衛経費を負担しているのではありません。地域経済を支えることは必要ですが、それは別のかたちで行うべきものではないでしょうか。
 陸自のリストラでいちばん反発するのは、経済基盤の弱い北海道の自治体です。なので、今回の民主党案でも、北海道の陸自の大幅削減はせずに、他の地域を重点的にリストラすることになっているようです。しかし、北海道に駐屯地はもうそんなに必要ないです。演習場と若干の管理部隊は残してもいいと思いますが、戦闘部隊そのものはリストラやむなしでしょう。それはイッキには無理でしょうが、北海道でも何か代替策を考えるべきです。
(たとえば、北海道の陸自だけ、人民解放軍みたいに自力で事業ができるようにして、北部方面総監に田中義剛さんを任命したらどうでしょう。いや、もちろん冗談ですが)

 今度出てきた「動的抑止力」というのは、平たく言えば、平時には警戒・監視を徹底して行い、有事には全国の部隊を統合的に機動展開させて対処するという態勢を作りましょうという考えです。通信や移動の技術が向上したことで、こうしたことが以前より可能になってきたという背景があるのですが、それ自体は正常な方向性だと私は思います。とすると、やっぱり駐屯地はそんなにあちこちに要らないですね。

 民主党案では、人件費削減案も盛り込まれています。早期退職者を後方部門専従として再雇用するかわりに、後方部門専従自衛官の給与体系は割安にすること、調達部門の自衛官を給与・手当ての低い事務官に身分換えすることなどが提案されています。
 もっとも、戦闘部門の自衛官がなんだかんだと受け取っている諸手当ても、民間企業からみるとものすごく優遇されていますから、あれももう少し仕分けしてもいいように個人的には感じますが。

 民主党案でいちばん注目されているのは、武器輸出3原則の見直しで、これはまだ議論が決着していないようですが、私からみると、民主党案でも不充分に感じます。
 武器輸出なのに「平和構築や人道目的に限定する」とか「人を直接殺傷する能力や可能性の低いものに限定する」とか、あいかわらず奇麗事が多いですね。武器は武器であって、そういう区別はあまり意味がないと思います。

 海外派遣に関しては、停戦合意がなくても国連安保理の要請があればPKOに参加できるとするとか、武器使用基準を世界標準に見直すとか、他国要員も救援できるようにするとか、ようやくあたりまえのことができるようになるようです。

 インテリジェンス関連分野では、首相官邸に「国家安全保障室」(仮称)を創設するという提案が注目です。かつて安倍政権の失速とともに葬られた国家安全保障会議(日本版NSC)案の復活ですが、それよりも小規模なものになりそうです。
 官房副長官もしくは首相補佐官を中心とし、20人程度の専属スタッフから構成されるものが考えられているようです。この20人の力量次第ですが、うまく機能すれば日本政府の戦略不在を補う切り札になる可能性もあります。
 専属スタッフは防衛、外務、警察(+法務、財務、経産、厚労、環境、国交、総務?)などの官僚が中心になると思われますが、ぜひとも海外経験の豊富な国際派が任命されていただきたいと思います。日本の安全保障政策すべてにだいたい言えると思うのですが、とにかく内向き、ドメスティックすぎるので、永田町・霞ヶ関の論理よりもワシントンや北京の事情に精通された方に活躍していただきたいと願います。
 冷戦時代は世界は米ソが取り仕切っていましたから、日本はアメリカにぶら下がってソ連の脅威から守ってもらえばいいという気楽な立場でした。これからの世界は、良くも悪くも中国がキープレイヤーの1極になります。中国はワールドワイドなアクターというよりは、やはり東アジアのアクターですから、本来なら日本はその対抗勢力として国際政治上ももっと重要な役割を負うべき立場かと思います。
  1. 2010/11/18(木) 14:17:15|
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「尖閣ビデオ」無罪放免の情報管理への影響

 昨日、検察当局が尖閣ビデオ流出者の逮捕を見送り、任意捜査続行を決めました。おそらく起訴猶予&服務規定違反で部内処分、ということになりそうです。当ブログでは以前に「流出犯」と表記していたのですが、なにかそんなふうに書きづらい雰囲気になってきました。
 この結果は想像していなかったので、正直ちょっと驚きました。「政府が非公開を決めたものを、部内者が確信的に流出させた」ということですから、国際標準で考えると、大げさに言えば「反逆者」ということになります。独裁国ならずとも、国家反逆罪は死刑もある重罪で、今回のケースはもちろんそんな大げさなものではないですが、世論の後押しもあってすっかり「反逆のヒーロー」になっています。もちろん国家(ここでは「ときの政権」の意)と国民はイコールでないので、今回の場合は、「国家への反逆」だけれど「国民の利益に資した」ということでしょうか。国民の利益と対立する国家なんてシャレになっていませんが・・・。
 日本は民主国家で法治国家ですから、司法は法律に則って粛々と手続きしていただければいいわけですが、たとえ「反逆のヒーロー」でも、まったく無罪放免という国は、世界ではかなり珍しいのではないかと思います。

 それはさておき、今回の件で、海保の情報管理の不備を責める声が大きいですが、情報管理の観点からすると、それよりもこの無罪放免のほうが今後深刻な影響を及ぼす可能性があります。なにせ「秘密」要件が曖昧な内部情報なら、政府・所属組織の方針に反して流出させてもOKという流れができたからです。今後、国家公務員の守秘義務違反への心理的ハードルがかなり低くなるかもしれません。
 今回の件では、国家公務員法の適用では「秘密」の度合いが決め手になるということがわかりました。一般国民はおろか国会議員ですら完全には目にすることができないものが、海保という治安機関内である種の手違いがあって部内者が閲覧できる状態に一定期間置かれていたものは、「秘密」にあたらないわけですね。
 となれば、公式に秘密指定されておらず、部内の多くの職員が一定期間共有していた内部情報などは、流出させてもOKということでしょうか。ジャーナリストとしては、非常に仕事がやりやすくなるわけで、私個人の利益からすれば、歓迎すべき流れと言えます。
 もちろん公務員は内規違反で処分される可能性がありますが、国家公務員法違反にあたらないなら、ジャーナリストは安心していくらでも書くことができますね。
 ただし、国民のひとりとしては、それでこの国はホントに大丈夫か、とかなり心配ではありますが。
  1. 2010/11/16(火) 10:52:40|
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守秘義務と報道

 尖閣ビデオ流出に関して、守秘義務違反かどうかが注目されています。
 現在、日本の法律で罰せられる守秘義務違反には、まずは国家公務員法第100条があります。「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」ですね。地方公務員法第34条も同様の文言です。
 また、守秘義務にはその他にも刑法第134条とか、電波法第59条および第109条とかいろいろあって、たとえばウィキペディアの「守秘義務」の項目をみると、私も知らないさまざまな法律上の守秘義務がぞろぞろと書かれています。
 その他にも、軍事・諜報分野をテーマとする私の守備範囲でいえば、軍事機密漏洩に関する自衛隊法第96条第2項(防衛秘密)、あるいは「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」なども関係してきます。日本で守秘義務違反が深刻な事件になるケースでは、どちらかというと防衛秘密・軍事機密関連が多いのが実情です。
 しかし、公務員による情報の漏洩は、実際にはそれよりはるかに多く、とくにマスコミの現場では日常的に行われています。たとえば、逮捕・勾留された容疑者への調べで、「関係者への取材により~とわかりました」などというニュースはみんなそうです。公に発表していない内容が、警察や検察へのオフレコ取材でリークされているのです。
 これらは厳密にひとつひとつ見ると、「秘密」の解釈で公務員法違反という「犯罪」に該当するとまでは言えないかもしれませんが、問題がないわけではありません。検察、警察、自衛隊あるいはその他の省庁でも、情報の取扱に関する内規があって、明らかな法律違反ではなくとも、個別に新聞記者に非公開情報を話すなどというのは、厳密に言えばほとんどの場合、内規違反の処分対象に相当します。
 もっとも、リークの多くは、役所内では問題視されません。組織の幹部が世論対策などの意図を持って行うものだからです。
 また、マスコミ内部では太いリーク源を持っている記者ほど評価されます。逆説的に言えば、実質的な公務員法違反・内規違反の共犯者であればあるほど、優秀な記者として評価されるということになります。
 ところが、もっと優秀な記者になると、組織の利益にならない内部情報を入手できるリーク源を持っていたりします。組織にとってはあまり嬉しくない情報がそうしてスクープされます。そういうリーク源はほとんど場合、判明すれば内規違反で処分対象になりますが、実際には必ずしもそうはなりません。
 ひとつには、それを問題化することは、その情報が「事実」であることを組織が認めることを意味します。通常、組織はそれを非常に嫌いますから、組織内で「なかったこと」にされるケースがしばしばあります。内部対立やいろいろ面倒な人間関係が背景にあって、表立って問題化できないこともよくあります。
 また、組織に都合が悪い情報のリーク源は、記者もその正体がバレないように細心の注意を払って「情報源の秘匿」をします。リーク源は記者にとっては大事なメシの種ですから、温存することが利益になります。
 情報源温存のために、記者の多くは、聞いた話をすべて書くわけではありません。わざと嘘が書かれた例はほとんど聞きませんが、情報をボカすことはよくあります。いわゆる「番記者」に多いパターンですが、記者クラブを批判するフリーランスでも、実際には優秀なジャーナリストほど水面下で非公式な太い情報源を持っていたりします。
 もっとも、どうしてもある情報を書きたいときに、「もういいや」となって情報源がバレるほど書いてしまい、「あいつに裏切られた」とかトラブルになることもあります。そこは情報源も記者も人間ですから、個人的性格や人間関係の深さの程度によります。

 これらの守秘義務違反では、公務員だけでなく、それを取材して公表したマスコミ記者も、法律を厳格に適用すれば、違法になる可能性があります。
 たとえば国家公務員法第109条では、上記の第100条違反者に対する罰則規定があり、さらに同111条には第109条に該当する行為を「企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし又はほう助をした者は、それぞれ各本条の刑に処する」とあるので、情報漏洩の共犯としてジャーナリストがブタ箱に送られる可能性があるわけです。これはかの西山事件が有名ですね。
 また、自衛隊法の防衛秘密に関する守秘義務違反でも、自衛隊外部の共謀者も摘発の対象になっています。

 私自身、日本のインテリジェンス活動もフォローする、いちおうジャーナリストの端くれですから、『ワールド・インテリジェンス』でも『軍事研究』でも、あるいは拙著『日本の情報機関』や拙編『公安アンダーワールド』などでも、かなり微妙なところまで執筆したことがあります。
 一例でいえば、当ブログでも紹介した『公安アンダーワールド』の公安調査庁内部報告書掲載の件では、厳密に言えば情報提供者は国家公務員法に抵触する恐れがありました。仮に(仮にですよ!)私がそれを扇動・幇助していれば、私も同法違反ということになるわけです(同庁が同文書を公式に本物であると認めていないので、刑事事件化していませんが)。
 また、いくつかの媒体で自衛隊情報部門や公安外事警察の内幕話を書いたことがありますが、そういう場合、組織が公にしていない情報にどこまで踏み込むかは、常に悩みの種になっています。
 私は基本的にインテリジェンス活動推進派で、警察や自衛隊を批判する立場ではないのですが、おかしいと思うところは指摘すべきだと考えていますし、執筆活動で生活の糧を得ている者として、事実を読者に提供するプロ意識も自分なりに持っているつもりですから、日本の安全保障にダメージを与えず、かつ情報源や特定の個人に不利益をもたらさないかぎりで、なるべく活字化したいとの思いはあります。
 事件記者や防衛記者、政治記者のほとんどは、公務員の守秘義務違反に多かれ少なかれ加担した経験があると思います。守秘義務違反のレベルが高ければ高いほど、それを入手した記者は評価されます。もちろん、まともな記者、まともな情報源であれば、その情報の公開については、充分に事前検討するはずですが。
  1. 2010/11/15(月) 16:42:35|
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萌えに初挑戦!

 本日発売の別冊宝島『読むだけですっきりわかる 日本と世界のニュース』の執筆陣の末席に加えていただきました。AKB48やロンドンブーツ1号2号・田村淳さん等が登場し、ニュースをわかりやすく伝えるという、今テレビなどで主流となっている教養カルチャー系路線のムック版です。(→アマゾン
 私は残念ながらAKBとは絡みませんでしたが、昨年番組に呼んでいただいたこともあって、ロンブー淳さん登場ページの構成を担当させていただきました。テーマは北朝鮮世襲問題。超多忙な売れっ子芸能人の方なのに、かなり国際ニュースも勉強されていて、指摘する点も要所を押さえていて流石だなあと脱帽です。

 ところで、同誌ではなんと「萌えマンガ」の原作に初挑戦しました。テーマは尖閣問題。設定は編集部から指定されたのですが、さてそこで悩んだのが「萌えって何???」
 当ブログで書いたことがありますが、私はもともとマンガ大好きオジサンであります。が、どちらかというと「どおくまん」方面がメインなので、萌えがイマイチわかりません。で、この年齢で初めて萌えを勉強させていただきました。まあ結局は作画の先生にお任せになっちゃいましたが・・・。
 でも、不況の軍事本業界でも萌えマンガが大人気とか。諜報系萌えマンガとか考えてみようかしらん。『萌えよ、スパイ学校!』とか(パクリ?)。「スパイ」とか言ってる時点で、もう「萌え」じゃないか・・・。うーん、奥が深くてよくわかりません。
  1. 2010/11/13(土) 19:45:14|
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胡錦濤に会わないほうが良い?

 日本外務省が菅総理と胡錦濤国家主席との日中首脳会談を一生懸命申し入れているようですが、中国側がなかなかウンと言わないみたいです。それは自民党の議員さんが総理に「絶対に尖閣問題を抗議せよ!」とか迫ったりしたものだから、歩み寄りのしようがない中国側も「めんどくせーなー」とか思ってるのではないでしょうか。
 日本側は、首脳会談を行うことで何を期待しているのでしょうか?
 尖閣問題を持ち出しても、平行線になるのは火を見るより明らかです。つまり、両国首脳が領土問題で決裂するわけです。すると、「日中が領土問題で対立した」という事実だけが実績として残ります。「領土問題は存在しない」という日本の言い分なんて、世界では誰も認めてくれなくなっちゃうじゃないですか。
 なので、日中首脳会談なんて、日本にとって何もいいことがないのではないでしょうか。北方領土と違い、尖閣は今現在、日本が実効支配していますから、日本は事態を動かさないで実績を重ねればいいだけの話です。
 むしろ尖閣を動かしたいのは、中国側です。日本は毅然としてこれまでどおりに巡視船による哨戒を継続し、中国船を追い払えばよろしい。日中間ではなるべく尖閣問題の話などしないで、それよりもこのままだとあちらにどんどん持っていかれる海底ガス田の問題とかを声高に叫んだほうが、よっぽどいいと思うのは私だけでしょうか。

 北方領土でも先の大戦でもそうなのですが、日本はたいてい「そのうち何かうまいことが起こるだろう」というなんの根拠もない楽観主義で判断する傾向があるように思えてなりません。きっと胡錦濤も日本の総理に会えば、謝るしかないだろう・・・なんてこと、あるわけないですし。
  1. 2010/11/12(金) 17:50:04|
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情報漏洩の多くは内部職員から

 尖閣ビデオ問題は、なんとなく「情報流出経路」「情報管理」に世間の興味の焦点が移ってきています。前エントリーで述べたように、今回のケースにかぎれば、もともとは海保内で「機密情報」の意識がないまま広くネットワーク共有され、コピーされ、あるいは知人同士で送付し合っていたという感じなのでしょう。
「おい、おまえあの映像視たか?」
「いや、おまえ持ってんの?」
「ああ、じゃあ、やるよ」
というようなやりとりが、海保組織内で普通に行われていたのではないかと思います。
 なぜなら、当時は「機密情報」でなかったからです。その点で、今回のケースはやはり情報管理の不備というのは、ちょっとあたらないのではないかと思います。(追記/その後、海保大学内参考資料にアクセスして多くの職員が視ていたことが判明しています)

 さて、警察のほうですが、当ブログで何度か指摘してきた「外事3課長周辺によるレジュメの下書き」以外にも、もう1点、警視庁外事3課流出元説の資料について言及していなかったので、お伝えします。
 それは東南アジア出張計画についての書類なのですが、その執筆者は外事3課の警部補になっています。提出先はおそらく外3課長ですね。同出張捜査では他に警察庁国テロ課から警視1名、警部1名が同行していますから、同文書執筆者の警部補は派遣チームでは末席ということになります。
 同出張捜査については、警察庁国テロ課長は国テロ課員から文書の提出を受けます。警視庁外事3課警部補のこの種の文書が警察庁に上がることは、通常はないと考えられます。これも流出犯のトラップの可能性はありますが、普通に考えると流出元は外事3課長周辺とみるのが自然です。

 尖閣ビデオの場合、大方の予想通りに犯人は海保内部の人間でしたが、警視庁のほうも内部犯行の可能性が非常に高いです。ひとつは以前も当ブログで指摘したように、犯人がそれなりに長期間、この資料を手元に置いて計画的な流出を行っていることです。単なるハッカーなら、そんなに悠長なことは普通はしません。(追記/ファイル作成日時については偽装の可能性も出てきました。しかし、流出資料に直近のものがなかったことから、少し前に持ち出したものである可能性は高いといえます)
 流出資料そのものも、コンピュータ・ネットワーク内のデータというよりは、部内で回されたプリント資料をコピーしたような印印象のものが比較的多いように思います。(追記/その後、資料の多くは警視庁サーバーに保管されていたことが明らかになっています)
 外事3課員のデータに接することができた外部の第3者による犯行という可能性はあります。ですが、過去の情報漏洩のケースなどをみると、これほどのレベルの内部情報流出では、部内の人間による意識的な流出が圧倒的に多いといえます。

 海外の例をみてみましょう。
 たとえば、イギリスの例ですが、97年にMI5の内部情報がタブロイド誌『メール・オン・サンデー』に流出しました。流出元はMI5を解雇されたデビッド・シェイラー氏という人物です。
 彼はMI5では国内左翼を監視する「F部」、北アイルランド過激派を監視する「T部」、国際テロ組織を監視する「G部」の「9課(中東担当)」のリビア班に所属していましたが、現役当時に知りえた情報を、退職後に堂々と顔出しで、続々とメディアに売りました。
 とくに注目を集めたのは、MI5がストロー内相などの現職の閣僚を監視対象にしていたことや、G部時代に交流があったMI6の担当部署が、リビアの指導者ムアマル・カダフィ大佐暗殺計画にタッチしていたといった内幕話でした。彼の場合、動機は金銭というわかりやすい話です。
 イギリスのもうひとつの例は、MI6を解雇されたリチャード・トムリンソン氏のケースです。
 彼はMI6を95年に解雇されたのですが、どうも目立ちたがりの性格と元職場への恨みが重なったようで、MI6の内幕を暴露する手記の出版を画策。それが英国内で出版差し止め処分となったため、その対抗措置として99年にインターネットにMI6の海外駐在員の全個人リストを公表したのです。
 これはMI6に大打撃を与えました。その後、彼はロシアの出版社から手記を発表しています。
 イギリスではもう1件、通信傍受機関である「政府通信本部」(GCHQ)でも情報漏洩がありました。2003年のイラク戦争直前、『オブザーバー』が「GCHQがNSA(米国家安全保障局)から、ニューヨークの外国国連代表部の通信の盗聴を要請されていた」とスクープしたのです。これは、GCHQの現職の中国語翻訳官だったキャサリン・ガン女史が、同紙に渡した内部情報がもとになっていました。
 彼女はたまたまNSAからGCHQに送られたメールを見たのですが、情報漏洩の動機は純粋に「イラク戦争に反対」という信条からのものだったようです。

 他方、アメリカの場合は、まさに現在、膨大な数の機密資料がウィキリークスに流出して大問題になっていますが、情報の流出源は特定されていません。ウィキリークス側が情報源に繋がる情報を完全に守っているため、自分で名乗り出るようなことがない限り、情報源はおそらくこのまま隠されることになるでしょう。(追記/今年5月、自分でウィキリークス投稿を自慢していた米陸軍上等兵が逮捕されていますが、この人物がほとんどすべての情報源ではないかと現在は報じられています)
 アメリカにもそういった暴露系サイトは以前からあって、たとえばニューヨークの建築家ジョン・ヤング氏が運営する「クリプトム」なども、再三FBIから圧力を受けていたのですが、頑として撥ね付けていました。ちなみに、ヤング氏は『ワールド・インテリジェンスVol⑧』で取材に応じていただいています。
 もっとも、アメリカは近年、かなり機密情報的な領域まで非公式にメディアに公開する傾向にあります。有名な『ワシントンポスト』のボブ・ウッドワード氏の一連の著作もそうですし、NSAもジャーナリストのジェームズ・バムフォード氏にちょっと羨ましいほどの便宜を与えています。なんでそうなるかというと、どのみちある程度の情報は漏れると考えているからではないかと思います。
 匿名の情報発信者として注目されたのは、04年に「著者・匿名」というクレジットで出版された『帝国の傲慢』という本です。これはアメリカ政府のテロ対策を徹底的に批判する内容でしたが、米政権中枢やCIAの内幕話が満載だったため、出版直後から「謎の覆面筆者は誰だ?」と話題になりました。
 この覆面筆者はまもなくCIAを退職して自ら身元を明らかにしました。CIAテロ対策センターで、ビンラディン追跡ユニットのビンラディン情報分析班(通称「アレック・ステーション」班長だった幹部情報分析官のマイケル・ショワーという人物でした。
 彼の動機は、自分の主張が政権で認められず、間違った対テロ政策をとっていると考えたため、それを正したいということでした。

 日本では、99年に公安調査庁職員名簿が、『2ちゃんねる』や『デア・アングリッフ』(※管理人の河上イチロー氏も前出『ワールド・インテリジェンスVol⑧』で取材に応じていただいています)など複数のサイトに流出した事件が知られています。この名簿はその後、前述したアメリカの暴露系サイト『クリプトム』にも掲載され、公調の依頼でFBIが削除要請に動いたこともありました。
 当時、その情報源ではないかと噂されたのが、元公安調査庁調査官だった野田敬生さんです。野田さんは当時、古巣の公安調査庁と敵対関係になっていて、そのために疑われたのでした。
 野田さんは『ワールド・インテリジェンス』でもしばしば寄稿をいただいていた方ですが、野田さんはこの件については関与を否定しています。私はこの件について、その事情を知る立場にありません。
 公安調査庁に関しては、2001年出版の別冊宝島『公安アンダーワールド』が、これも本来は部外秘である某ベテラン調査官の「工作日誌」を掲載しました。
 私は当時、同誌の社外編集者として当事者のひとりだったのですが、匿名の情報提供者(後述するように、後に自身が明らかにします)も私たち編集部も、出版にあたっては特定の個人を危険に晒さないように配慮し、記事中でも個人情報に関しては伏字としました。
 当然ですが、治安へのダメージや、監視対象である極左組織の利益になることがないように注意も払っています。関係者の一部に誤解があるようですが、情報提供者は当初から、この情報の取扱に関しては非常に慎重な立場でした。
 ところが、同誌の出版直後から、ある民間の関係筋より「あれは野田氏が流出元だ」との噂が流れ、彼に対する執拗な個人攻撃が始まったので、後に野田さん自身が自衛手段として自分が情報源であることを公表し、対抗措置をとったようですが、その経緯については私は当事者ではないので、詳しくは知りません。

 いずれにせよ、このように内部情報の流出で近年話題になったケースの多くは、内部の人間が流出元となっています。このような確信的な動機の場合、情報流出はまず止めることは難しいと思います。
 内閣衛星情報センターの衛星写真のように、徹底して物理的にデータの外部持ち出しをブロックするということも場合によっては必要ですが、オフィスの中だけで仕事はできない捜査部門などでは、それも限界があるはずです。
 今回の警視庁公安部外事3課の流出資料をざっと見た印象では、とりたてて政治的な意味があるというよりは、暴露そのもののよる「外事警察組織へのダメージ」が狙いのように感じられます。外事警察内部(外事3課内に限らず)に、警察組織とトラブルになったような人などはいなかったのでしょうか。
  1. 2010/11/12(金) 11:28:29|
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警視庁公安部外事3課資料流出の犯人は?

 昨日発売された『軍事研究』に、「先軍政治の鍵は急浮上した党中央軍事委員会~金正恩世襲に向けた党/軍人事の布石」という記事を寄稿しました。先のエントリーでも触れましたが、金正恩は趙明禄・国防委員会第1副委員長の葬儀でも金正日に次ぐナンバー2の座をアピールしましたから、これから世襲プロセスはますます加速化していくでしょう。
 さて『軍事研究』今月号では、私の研究テーマのひとつでもある情報戦に関連するところで、テクニカルライター/軍事研究家の井上孝司氏の「サイバー防衛・サイバー攻撃とは何か」、軍事リポーター・石川巌氏の「三沢・ゴルフボールが17個から20個へ」、ムック企画などで何かと関連記事にタッチする機会の多いミサイル防衛に関する河津幸英編集長監修の「テポドン2号発射に出動したBMD統合任務部隊」、これも関連の記事にタッチすることが多い民間軍事会社に関するミリタリービジネス研究家・阿部拓磨氏の「民間軍事会社に依存するイラク・アフガン作戦」などなど、いろいろ勉強になる記事が目白押しです。ぜひ皆様もご一読をお薦めします。

 さて、尖閣ビデオの流出犯発覚のニュースで、世間は盛り上がっています。案外単純な話でした。情報管理の不備ということで海保や政府は世間に断罪されていますが、本来はたいした内容でもない映像素材が「門外不出の国家機密」に政治的になぜか祭り上げられたのは、かなり日時が経過した後のこと。
 その間は誰もそんな「門外不出の国家機密」になっちゃうだなんて知らなかったので、海保内では通常の参考資料として広く出回ってしまっていたわけです。海保側からすれば、「それなら撮影直後に国家機密に指定しろよなー」というのがホンネではないでしょうか。
 一旦それだけ庁内で出回ってしまえば、情報の管理は不可能です。末端の内部者がネットにアップしたのは「個人の犯罪」であり、それを政府・海保の情報管理の不行き届きと責めるのは、今回のケースに限っていえば酷ではないかと思います。
 ただし、同映像が「国家機密」になっているのを知った後に漏洩した犯人は、気持ちはわからないではないですが、決して免責されるべきではないと思います。それを世論に迎合して免責すれば、それこそこの国の「情報管理」は崩壊します。「国民の知る権利」とか「隠す政府が悪い。彼のやったことは正しい」とか言っている識者もいますが、それはまた違う話です。
 今回のケースは、組織の不正を告発する「内部告発」とはまったく違う次元の話であると思います。まあ、この映像がなんで「国家機密」になっちゃったのかは、たしかに大いに疑問ですが。

 さて、それではもうひとつの国家機密漏洩事案である警視庁公安部外事3課の内部資料流出ですが、こちらの犯人はいまだ明らかになっていません。かなり用意周到に偽装工作が行われていたようなので、なかなか漏洩ルートの割り出しは難しいかもしれません。尖閣ビデオのように、簡単に「投稿された漫画喫茶を特定」というようにはいかないでしょう。
 では、流出した資料からプロファイルするといっても、こちらの犯人は、それも自分にたどり着くことがないように、それこそ徹底的に検討しているはずですから、なかなか簡単にはいきそうもありません。
 警察庁か警視庁かということになりますが、それでいえば、どうやら警視庁の可能性が高そうです。以前のエントリーでも書きましたが、外事3課長かその周辺の人物の手による「レジュメの下書き」が含まれているからです。これが、「当時の外事3課長周辺に疑いの目を向けさせる犯人のトラップ」の可能性はありますが、それなら部外者がどうやってこの文書を入手したか、非常に線が絞られてくるのではないかと思います。
 愛知県警から警察庁に提出された資料が2点あることから、警察庁からの漏洩だとする見方もあるようですが、これらの資料は、警察組織の外事畑の関係者で広く共有されてもおかしくない種類のもので、警察庁から警視庁に流れた可能性はあると思います。前述した「レジュメの下書き」と比べ、それこそケタ違いに多くの関係者が目にした機会があったと思われます。
 ただ、警視庁と警察庁の外事部門では、とくに幹部は人事交流がありますから、元は外事3課の資料だとしても、漏洩犯が今現在、警察庁にいるという可能性もあります。ただし、警察庁へ目を向けたくないなら、愛知県警の資料を流出させた意図がわかりませんが。
 いずれにせよ、こちらの方が本来なら、尖閣ビデオ流出などよりずっと深刻な情報漏洩事案です。内容の機密性もそうですし、尖閣ビデオを違って最初から門外不出が前提ですから、それが漏れたとなれば、それこそ情報管理の欠陥という話になります。なにより犯人がまだ警察組織内の中枢部にいる可能性もあります。情報管理の観点から、それこそ徹底した捜査をすべきです。
 もっとも、アメリカなどでは、アフガン戦の機密資料が9万点以上、イラク戦のがなんと40万点もウィキりークスに流出し、大問題になっています。ネット時代の情報漏洩はもはや阻止できないとの前提で、情報管理体制の根本的練り直しが必要かもしれません。

 ところで、前述した愛知県警の資料ですが、いろいろ細かい事案まで記載されていて、面白いと言ってはマズイですが、たいへん興味深い内容でした。ちょっと驚いたのが、ここで具体的事案までは引用しませんが、偽のタレコミ情報と、氏名の酷似による要警戒対象者情報ヒットがものすごく多いことですね。
 イスラム圏の個人名は似たようなものが多いので、これはしかたないですね。しかし、それにしても怪しいタレコミ多すぎです。しかも、どうも同じ外国人の知人からの嫌がらせが多いようです。
 その度に愛知県警は出動ですから、たいへんです。それでいちいち捜査して、結果は全部シロ(不法滞在などの別件摘発はありますが)。むろん他府県でも事情は同じはず。外事の対イスラム・テロ部門は日本全国でそんなことの繰り返しを今日も続けています。これはしかたないことですが。

追記
 先ほどミヤネ屋を視てたら、尖閣ビデオの犯人がすでに以前に読売テレビに自分から連絡し、取材まで受けていたそうです。隠れる気まったくないじゃん!
  1. 2010/11/11(木) 12:52:51|
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警視庁公安部外事3課資料流出で雑誌寄稿

 本日発売の『週刊朝日』に、「ネット流出資料でバレた非効率すぎる捜査 ~警視庁のテロ対策を仕分けせよ!」という記事を寄稿しました。
 また、本日夜、大阪・毎日放送ラジオの「たね蒔きジャーナル」(午後9~10時)という番組で、同事件についてコメントさせていただく予定になっております。

 とはいえ、世間はすっかり尖閣ビデオの話で持ちきりですね。尖閣ビデオ事件でもっとも利益を得たのは、外事3課かもしれません。内容的にはずっと深刻な機密情報漏洩なのですが、なんだかすっかり霞んでしまいました。
内容が内容だけに各メディアも様子見の小出し状態だったのですが、尖閣ビデオ流出までは、じつはいろいろなテレビや雑誌が動き始めていました。それがいっきにポシャったわけです。世間の目がそらされて、警察としてはこのまま責任問題とかがうやむやになってくれることを願っているかもしれません。

 逆に、この状況をみて、第2撃があるかもしれません。流出犯がたまたま入手した部外者だったらともかく、内部の不満分子だとしたら、まだまだネタを握っているはずなので、可能性はあります。外事課員の全個人台帳とかもあるかもしれません。もっとも、自分の個人情報も漏れるからということで止めているのかもしれませんが。
 尖閣ビデオの流出犯は、おそらく海保石垣の誰かみたいですが、公安のほうはまったくわかりません。どうやら少なくとも半年くらいネタを隠し持っていたようなので(追記/これは偽装の可能性もあるようです)、最初から部外者のハッカーによる犯行とは考えにくいです。現時点で断定はもちろんできませんが、警察官の個人情報も流すなど、ちょっと常軌を逸した行動から考えると、そうとう職場に恨みを抱いた内部の不満分子(もしくは元・不満分子)の可能性が高いような気がします。
 ちょっとした不満じゃないです。クビになったとか、上司に裏切られて何かたいへん酷い目にあったとか、そのくらいの恨みがないと、ここまでは普通はやらないと思います。単なる出世競争の道具とかでは、露呈した場合に致命的になるこれほどの〝犯罪〟の動機付けとしては弱いように感じます。 
 政治的な流出テロという臭いはあまり感じません。個人的な動機ではないかと思います。APECの警備態勢へのダメージを狙ったとかいう見方もありますが、流出資料にAPEC警備にマイナスになる内容のものはありません。

 さて、冒頭に紹介した週刊朝日の記事では、今回の流出資料を見ていて、思わずツッコミを入れざるを得ないことをいくつか指摘させていただきましたが、そこには書ききれないほど、ツッコミどころが多くて絞り込むのに苦労したほどでした。なので、いくつかここに書きます。

その1。
 前々エントリーで、外事3課がアルジェリア人の元ボスニア義勇兵の人脈を重点的に捜査していたということを紹介しましたが、それは本来、2004年にリオネル・デュモンの新潟潜伏の件が発覚した頃に、捜査を尽くしておくべき対象です。
 それを2008年になってもまだやっているというのは、逆に言えばそれ以外の有力な捜査対象が見つからなかったということなのかもしれません。
 しかも、その捜査に関しては、当時フランスで出国禁止状態におかれ、捜査対象になっていた群馬県在住の中古車販売業者を捜査していたフランス治安機関の協力要請があったため、それでまた再捜査に力を入れたという流れにも見えます。つまり、もともとたいした線じゃなかったということが言えるかと思います。

その2。
 外3はなぜかヒズボラに固執しています。ヒズボラが日本でテロなんてまず考えられませんが、もしかしたら、イラン大使館員の情報が欲しいモサドあたりが吹き込んでいるのかもしれません。
 ある流出資料によると、日本でヒズボラ情報がとれる情報源がいくつかあるそうですが、それはないと思います。日本で、ヒズボラの「テロに関する情報」に繋がるルートは1本もありません。
 ヒズボラは巨大政治組織ですから、それは日本在留レバノン人でも縁者くらいはいるでしょうが、テロ部門はまったく別物です。完全にイラン革命防衛隊の特殊部隊「クドス部隊」の特殊作戦班と連携している、というか別働隊のような存在です。テロ対策の観点からヒズボラの情報源を日本で捜すなんて、いないものを捜すわけですから、不可能な話です。
 私もレバノンでヒズボラ政治部門を取材したことがありますが、テロ部門は地元のベテラン記者でもまったく情報ルートはありません。在日レバノン大使館員でも、ベイルートのヒズボラ地区長でも無理です。そんな力があるのは、モサドの専門追跡チームくらいのものでしょう。
 外3では、ヒズボラ情報をとるべく情報源開拓を推奨していますが、意味のないことだと思います。日本人の中東研究者、マスコミ記者、NGOスタッフ、ビジネスマン、そのあたりもみんな無理です。
 ヒズボラやイラン情報機関を研究することはいいことだと思いますが、外事の認識がなんだかズレているのは、警察の方々が不勉強だということでも、知力に乏しいというわけでもありません。日本国内でだけ調査しているからだと思います。
 ヒズボラがいかなるものか、南ベイルートやベッカー高原に行って、実際に調査してみればいいと思います。白人は警戒されますが、東洋人ならべつに殺されはしないと思います。もちろんジャーナリストか研究者あたりに偽装する必要はありますが。
 現在の安藤長官が調査官室にいた頃は、日本の外事警察官も日本赤軍を追ってベッカー高原とかまで入っていたと聞いています。今はテロ犯を追っているわけでなくて、単なる調査だけですから「やればいいじゃん」と普通に思うのですが。事件班でなく、分析班の人が。
 結局、日本国内だけで対外インテリジェンスをやろうとしても限界があります。まず情報の収集と分析ありきです。それで必要とあれば国内で解明作業、とこういう順番が定石のはずです。
 上部機構である警察庁の国テロは海外調査をそこそやってるはずだと思っていたのですが、それでヒズボラ対策というのがよくわかりません。税金たくさん使っているのですから(たぶん)、納税者としてよろしくお願いしたいです。私たちはレバノン行くのも全部自腹ですから、逆に羨ましいです。機密費いただけるなら、私が代わりに行きます。
 いずれにせよ、日本にいて、詳しい人を探して話を聞くという方法は、北朝鮮相手ならある程度は有効かもしれませんが、イスラム・テロに対してはまったく意味がないです。とくにアルカイダに関して、テロ対策に役立つ核心情報を持っている人なんて、日本にはいません。パキスタンのラシュカレ・タイバやパキスタン・タリバン、マグレブのアルカイダ、チェチェン人のテロ・グループ、ジェマ・イスラミアその他みんな同様です。
 そういうドメスティックな活動しかできないテロ対策機関ということが、すべての流出資料に共通して感じられるズレ感の大元なのだと思います。FBIはじめ、外国機関とも接触しているようですが、あまりに内向きすぎて、警察の方々も肩身の狭い思いをしているのではないでしょうか。

 オマケ。
 ある中東出身者の調書のなかに、彼が本国に一時帰国した際、現地の情報部から「日本のスパイか?」としつこく尋問されたという話がありました。さすが紛争本場の情報部員の考えることです。
 日本も、ホントはそんなスパイを世界各地で運営するくらいになっていただきたいものですが、現状では夢のような話ですね。
  1. 2010/11/09(火) 12:42:05|
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戦場カメラマンのなり方

 理由は言うまでもありませんが、ここ数ヶ月というもの、「戦場カメラマン」というキーワード検索で当ブログを覗いてくださる方が非常に増えています(→該当エントリー)。「戦場カメラマン なり方」で検索している人もいます。本気で戦場カメラマンになりたい人なのでしょうか?
 また、当ブログで最近、過去の戦場取材の写真をアップしましたが、それで「戦場って、どうやって行くの?」などと聞かれたことが何度かありました。
 人の生きる道は人それぞれですし、当然危険もありますから、私から決して他人様にはお薦めしませんが、真面目にそうした道を志す若い人の気持ちもわからないではありません。私自身は、戦場カメラマンというのは他人の不幸でメシを食っている究極のパパラッチだという一面の真理も自覚すべきだと思っているのですが、それでも世界の現実を知りたいとか、伝えたいとかということが自然な欲求だということも否定はいたしません。
 そこで今回は、私自身、最初はどうやって戦場カメラマンになればいいのかわからなかったので、その手順だけ簡単にご説明します。ただし、こういうものにマニュアルはなく、すべては経験によって各人が学んでいくしかないので、あくまで一例にすぎないということはご理解ください。事情は日々変化しますので、くれぐれも以下内容をそのまま鵜呑みにしないように願います。

 さて、戦場取材するためにまず必要なことは、入国ビザの入手です。これがないと入国できない国もあります。国籍ごとに要件が違っていることもあるので、できれば東京の大使館で日本人の場合を確認したほうがベターです。ただ、陸路で国境を越えるとき、隣国で意外に簡単に入手できたりすることもあります。反政府側に入る場合、密入国という手もありますが、それは現地で充分に情報収集をしてからのほうが良いです。
 紛争地帯では、一般旅行者の立場では入国ビザが降りないケースもあります。その場合は報道従事者である旨を説明して報道業務用ビザ申請となるわけですが、これはメディア所属の記者でないとなかなか難しいかもしれません。後述するプレスカードの場合と同様に、自前でメディア特派員を名乗る裏技もありますが、ビザ発給の場合はわりあい審査が厳しいです。ケースバイケースなので、一概には言えませんが。
 NGOのスタッフとして入国する方法もあるようですが、私自身はその手を使ったことはありません。イラク戦争の際には、サダム・フセイン政権支持の立場で「人間の盾」というボランティア反米活動家の身分でイラクに入国した人が何人もいました。あの手この手を考えるわけですが、こういうことはよくあることです。反米義勇兵ビザで入国したツワモノすら実際にいます。

 さて、入国した後にまず必要になるのが、記者証(プレスカード)です。たいていの国では、大統領府(首相府)、外務省、内務省(警察本部)、国防省(軍)のどこかで、外国人記者のための記者証を発行しています。ひとつの国で、複数の省庁が発行していることもあります。国連平和維持軍や多国籍軍が展開していたら、そこの司令部でも発行していることが多いです。なるべくいろいろ取得しておいたほうがいいでしょう。
各省庁に報道担当のセクションがあるはずなので、そこに出向いて尋ねてみるのが定石です。
 面倒なときは、地元のマスコミや国際的マスコミの現地支局あたりに聞いても、親切な人なら教えてくれることもあります。地元の記者と顔なじみになっておくことは、後々なにかと役立ちます。
 記者証は、軍に従軍したり、検問を突破したりするのに必要ですし、取材相手にちゃんと応対してもらうためにも、あったほうがいいと思います。それと、国によっては悪徳警官・悪徳軍人が跋扈してますので、そういう連中に対する抑止力にも少しはなります。実際のところ、この記者証を取得するかしないかで、行動できる範囲に決定的な差が出ます。
 ですが、この記者証取得が、まず最初の関門になります。たいていの国ではフリーランスという立場に記者証は発行しないので、「どこかの報道機関の特派員であること」を証明する必要があります。ですが、そんな身分がない場合、どうすればいいのでしょうか? ここでみんな初めは悩みます。
今は結構さまざまな制作プロダクションやジャーナリスト・グループがありますが、そういうところにコネがある人は、そこに一時的に加えてもらうというのが、いちばん簡単です。そこから特派されたという形式にするのです。
 日本では大手メディアがフリーランスに身分保障を与えることはほとんどないので、実績のある戦場ジャーナリストでもたいていは、自前の会社名・事務所名で現地では取材しています。
 ちなみに、欧米のカメラマンの場合は、写真通信社のストリンガー(出来高払いの契約スタッフ)登録をする人が多かったです。有名な写真通信社だと、数千人規模でストリンガーがいます。また、欧米の場合は、聞いたこともないものすごく辺鄙な田舎の地方紙とかローカルラジオとかのストリンガーの身分で動いている人もいます。現地のメディアにボランティア・スタッフのようなかたちで入り込み、その身分で取材活動をしている人も稀にいます。

 しかし、それらもある程度は実績がないと難しいので、そういう場合に日本のフリーランスの人がよくやる手は、仲間内で形式的に通信社を作ってしまうことです。正規に法人登記するまでは要らないと思いますが、最低限それなりの自社紹介サイトくらいは作っておいたほうがいいかと思います。
 なんだかインチキっぽい話ですが、日本人でフリーランスで戦場取材をしている人のほとんどの人が経験してきた道です。ただし、そこまでする以上は、きちんと取材して、きちんとレポートを発表する道義的責任が生じますので、そこは軽く考えないでいただきたいと思います。実際、もともと仲間内の互助グループだったのが、今では立派なジャーナリスト集団としてマスコミで大活躍されている事務所もあります。
 最初は勝手がわからないと思いますが、現地をうろうろしていると各国のフリーランスの人ともいろいろ出会いますので、だんだんとやり方は学べます。
 記者証の申請のためには、所属報道機関からのレターが必要です。英文の自社名を刷り込んだ用紙に、関係各位宛に「この手紙を所持する×田×太郎は弊社の記者なので、便宜供与を要請します」みたいな文面を打ち込み、責任者のハンコとサインを付けるのが一般的です。ときおり架空会社の写真入り身分証を作っている人もいますが、今はそういうのが個人で簡単に作れることがバレてますから、実際にはそんなに効力はないと思います。
 また、たいていの国の広報担当者は日本のメディア事情など知らないので、この報道機関は実在のものかどうかを確認するため、稀にですが、現地の日本大使館のレターを要求するところもあります。実績のまったくない人は、その場合はなかなか難しいかもしれません。
 プレスカードは1枚取得できれば、それが公的機関による身分証明になりますので、次の取得がかなり有利になります。また、一度雑誌に掲載できれば、そのクレジットをローマ字にしておけば、その現物もプロの証明に使えます。もっとも、エロ写真満載の週刊誌ではダメですが。
 ただし、プレスカードだけでは軍の検問を突破できないこともよくあります。軍司令部や方面司令部の通行証、あるいは政府軍以外に民兵組織などがある場合はそこの通行証などが別途に必要なケースもありますので、その都度確認したほうがいいでしょう。

 ところで、戦場取材にいちばん必要なスキルは、私は英語力だと思います。現地語が出来ればもちろんベストですが、最低限の英語力がないと、どこでも取材活動は難しいと思います。
 概して、中東や南アジア、フィリピンやミャンマーなどでは、そこそこ英語のできる人がいますが、旧ソ連圏や中南米では、ロシア語やスペイン語ができないとかなり不便でしょう。アフリカは国によってはフランス語ができないと難しいようです。英語は実際の取材もそうなのですが、現地政府の報道担当部署と交渉したり、地元メディア記者や他の外国人記者と交流したりする際にも不可欠です。
 機材は大げさであればあるほどハッタリは効きます。ビデオ撮影などの場合、私はENGカメラマンだったことがあるので、小型ビデオカメラのほうが格段に操作が難しいことを知ってますが、観光客でも持っているような小型ビデオだと、現地ではあまり優先的には扱ってもらえないことがあります。
 また、昔のF2なんかでは、よく機材のメタル部分に反射避けの黒テープを張ったりしていました。今のスチールカメラの多くは黒ベースになっているので、そんなに神経質になることはないかもしれませんが。
 それより、遠目からは武器に見えてしまう望遠レンズ、それから何と言ってもストロボ・フラッシュは危険をともなうことを知っておきましょう。

 その他もろもろの準備でいえば、戦場取材では当然戦死(殉職)の可能性がありますが、一般の海外旅行保険では戦地は除外されています。ロイズなどに特殊な保険がありますが、保険料がバカ高いので、フリーランスでそんなのに加入している人を、私は聞いたことはありません。保険はあきらめましょう。
 密林での取材の場合、できればマラリア予防薬を服用したほうがいいですが、あれは継続して飲まないといけないので、たいていはだんだんサボる人がほとんどです。私もサボってマラリア発症したことがあります。あと、行く国によっては、任意で肝炎の予防注射をやる人はいます。
 アフリカのエイズ蔓延地域に行く場合、負傷したときのために、私は使い捨て注射器を持っていったことが何度かあります。ヤク中に誤解される恐れはありますが、感染するよりはマシかと思います。あと、パスポートなどに血液型を書いた紙を挟んでおいたほうがいいかもしれません。
 ガチの戦場従軍を希望する場合は、自前の防弾ベストもあったほうがいいです。欧米のミリタリーショップ、セキュリティ用品店などで購入できますが、ちゃんとしたものは結構高額になります。その他にあったほうがいいのは、携帯電話、モバイル・パソコンなどでしょうか。
 服装は、とりあえずは民間人の服装がいいでしょう。従軍の際に迷彩服などが必要なこともありますが、戦場に到達するまでは逆にトラブルの元になります。
 戦場での動き方は、とにかく危険情報に精通した現地の人から最新情報をよく聞くこと。できれば兵士に同行するのが良いでしょう。
 味方の兵士がロケット・ランチャーを発射するときなど、間違っても後方にいてはいけません。それから、そういうときは必ず耳を押さえて口を大きく開け、爆風から鼓膜を守ってください。

 戦場での心構えとしては、たとえばテロ集団に捕まったような場合は、当然ですが、自分が生き延びることを最優先して行動しましょう。「私は記者だ!」と言っていれば危険は及ばない、というのは大間違いです。とくに悪徳ゲリラ、悪徳警官、悪徳軍人からみれば、多額の外貨を持ち歩いているうえ、身代金も狙える外国人はカモだということをよく自覚すべきです。また、小悪党とトラブルになったときのために、賄賂用の小額紙幣やタバコなどを準備しておくと良いでしょう。
 戦場に限りませんが、相手を善良な人間と思っていたら、ある瞬間に悪人に大変身!などということもあり得ます。自分は良い人間を見極める自信があるなんて思っている人は、認識を改めたほうがよさそうです。
 また、戦場ではお金目当てにガイドや運転手の売り込みもよくありますが、いきなり最初の人に決めないで、何人かじっくり話を聞いてから考えましょう。ゲリラへの仲介者を自称する人も要注意です。
 どこまで危険を引き受けるかは個人の問題なので、あくまでも自由だと私は思っていますが、自分の意思を常に自問しておきましょう。そんなに深く考えないで調子にのっていたら、気づいたら激戦地で砲弾の雨の中にいた・・・なんてこともあり得ます。はい、私のことです(該当エントリー→写真館③ボスニア戦線)。
 あと、さらにひとつ重要な注意点を挙げておきたいのですが、どんな人でも群集心理の作用は受けます。戦場では戦死なんてそんなに珍しくないので、「人はどうせいつか死ぬんだし、行けるとこまで行ってみっか!」なんて気分になりがちですが、そういうときは、自分の心理が戦場の雰囲気の影響を受けているのだということを自覚しましょう。だんだん現地に慣れてくると、さまざまなことがわかったような気になってきますが、自分は間違っているかもしれないとときおり自問してみることは、危険回避に役立つかと思います。
 最後に、つまんないことですが、後でトラブルの原因になりがちな注意点をもうひとつ。紛争地帯ではよく記者同士がつるんで動くことがあります。危険回避、取材費のシェア、寂しいから、といろいろ理由はありますが、同じ日本人フリーカメラマン同士で同じ取材をするのはやめたほうがいいです。当然ながら同じような写真を撮影することになるので、後で雑誌などに発表する際に必ずモメます。戦場カメラマン業界は、嫉妬渦巻く競争の世界でもあるのです。
  1. 2010/11/08(月) 14:23:38|
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趙明禄・国防委員会第1副委員長死去で空いたポストは?

軍ナンバー2の趙明禄氏死去=葬儀委、正恩氏が2位-北朝鮮時事通信

 11月6日、北朝鮮の趙明禄・国防委員会第1副委員長・兼労働党政治局常務委員(次帥)が心臓病のため死去したと伝えられました。葬儀委員長は金正日ですが、朝鮮中央放送が伝えた葬儀委員名簿で、全170人の委員の筆頭は金正恩になっています。政権ナンバー2ということを明確にする金正日の意思表示ですね。
 82歳で亡くなった趙明禄は、近年は体調不良であまり政治の表舞台には登場していませんでしたので、「軍のナンバー2」という表現は必ずしも現状を表しているかどうかはわかりません。公式な肩書きからすると、軍の上部機関であり、かつ国の最高指導機関である国防委員会のナンバー2ですから、軍のナンバー2というよりも、「国家のナンバー2」といっても差し支えないくらいの立場でした。いちおう序列的には金永南・最高人民会議常任委員長とかもいましたが、こちらは名誉職のようなものです。もっとも、あの国ではナンバー1だけがいて、あとは「その他大勢」なのですが。
 ともあれ、これで「国防第1副委員長」の席が空きましたね。国防委員会は副委員長のひとりについこの間、ロイヤル・ファミリーの入り婿=張成沢を押し込んでいますが、金正恩をいっきに公式なナンバー2に押し上げるなら、このポストは非常に好都合です。
 すぐにということではないと思いますが、「国防第1副委員長」はしばらく空席にしておいて、頃合を見計らって金正恩が就任なんてことも充分考えられるかと思います。現状では金正日がすぐにも死にそうな感じではないですが、仮にいつか金正恩の国防第1副委員長就任があれば、金正日の体調がいよいよアブナイということになりそうです。
  1. 2010/11/07(日) 20:43:27|
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外事3課が追ったイスラム人脈の中心人物

 警視庁外事3課の流出資料114点中、もっとも多かったのは監視対象者の個人ファイルですが、そのほとんどは、2人の男と接点があった人たちです。その2人の男こそが、外事3課がおそらく最重要キーパーソンと見ていた人物なのでしょう。

 ひとりは、群馬県で中古車販売業を営むアルジェリア人で、かつて日本に潜伏していたことが2004年に発覚して大きなニュースになったアルカイダ系フランス人テロリストのリオネル・デュモンと接点があった人物です。日本人の妻がいて日本の永住権を持っています。
 デュモンとの関係で2004年5月に群馬県警の家宅捜索と任意の事情聴取を受けた後、同年6月にアルジェリアに一時帰国。同年9月にフランスに入国したところを国土監視局(DST)に逮捕されました。
 ほどなく釈放にはなったのですが、4年にわたって出国を禁じられ、継続的な尋問を受けた後、ようやく昨年2月に嫌疑不十分で出国が認められ、日本に帰国しました。この人物は「デュモンが国際手配されているテロリストだったとは知らなかった」としていますが、彼はもともと東京・麻布のイスラム宗教施設で働いていた熱心な信者で、デュモンの在日中のイスラム人脈と深く関わっていたことから、外事3課は彼の人脈を熱心に捜査していたようです。

 もう1人の人物は、こちらはデュモンと同じく、本物のイスラム過激派といって差し支えない人物です。前述のアルジェリア人中古車販売業者とも、非常に親しく付き合っていた人物です。
 彼はゾヘール・シューラ、偽名をアブドル・バールというアルジェリア人で、ボスニア内戦中に現地のアラブ人イスラム義勇兵部隊にいたことがわかっています。デュモンともボスニア時代からの戦友ですが、この人物が少なくとも99年から2000年にかけて日本に潜入し、前出の麻布の宗教施設を根城にオルグ活動をしていたことが、今回流出した外事3課文書でわかりました。外事3課はこのシューラと当時関わった人脈を、かなり重点的に捜査しています。
 このシューラなる人物については、後にフランスで服役したこともあって、多少の情報は欧米の報道でも既出でしたが、日本での活動についてはほとんど情報は出ていませんでした。既出情報と今回の新情報をつき合わせ、この興味深い人物の足跡を振り返ってみましょう。

 ゾヘール・シューラは1973年にアルジェリアで生まれ、その後、フランスなどを経て、92年にボスニア内戦が始まると現地に渡っています。ボスニアではアラブ人主体の外人部隊であるアル・ムジャヒード隊に加わっていて、95年1月にはボスニア市民権を取得しています。
 当時、こうした経緯でボスニア市民権を得たアルジェリア人は75人。いずれももともとイスラム過激派の系列にいた人物で、アルカイダの人脈とも接点があります。アルカイダでアラブ義勇兵工作を取り仕切ったビンラディン側近のアブ・ズベイダ(現在はアメリカが拘束中)が、このボスニア義勇兵人脈と密接な関係にあったことがわかっています。なお、ボスニア市民権を得た75人のうち5人は、後に米軍に捕まり、グアンタナモ収容所で拘束されています。
 シューラはボスニアで、後にテロ・グループに加わるアルジェリア人たちと接点を持っていました。ボスニアで届けていた住居で同居人とされていたのは、後にカナダ・モントリオールを拠点として、99年にロサンゼルス空港爆破テロ未遂を起こしたグループのメンバーです。
 シューラが深く関与したこのアルジェリア人ボスニア義勇兵グループは、モントリオール細胞だけでなく、フランス北部の町ルーべでも後に数々のテロ事件を起こしていて、「ルーべ団」もしくは「ルーべ・ギャング」と名づけられています。前出のリオネル・デュモンはこのルーべ団の幹部格です。ルーべ団のリーダーはクリストフ・カズという元ボスニア義勇兵で、シューラはこの人物とも親しかったようです。
 また、トルコのモスレム支援組織「ITT」(人道援助基金)がイスラム義勇兵の財政的支援も行っていて、とくにルーべ団人脈と深い関係にありました。そのため、ボスニア戦争が95年11月のデイトン合意で終結した後、シューラはITTの支援でトルコ・イスタンブールにしばらく潜伏していた形跡もあります。
 ちなみに、このITTは今年5月にガザ支援船をイスラエル軍に急襲され、多くの犠牲者を出したことで大きく報じられた援助団体です。ITTは否定していますが、イスラエル側はITTを「ハマス支援組織」と断定しています。

 その後、シューラの詳しい足跡はわかりませんが、マレーシアでイスラム神学を学んでいたらしいとの証言があります。その頃、マレーシアを拠点にアジアの国々を出入りした可能性がありますが、そのあたりも詳細は不明です。
 しかし、おそらくその頃に思い立ったのだと思うのですが、遅くとも99年5月には日本に入国しています。日本では前述した麻布の宗教施設を根城に、仲間を増やしていっています。日本ではバディスと名乗っています。
 他方、リオネル・デュモンは96年にフランスで起こした爆弾テロ未遂&銃撃戦で国際手配された後、ボスニアに舞い戻ったのですが、97年に警察官を射殺して服役します。が、99年5月に脱走に成功。遅くとも同年9月には日本に入国しています。おそらく仲間のシューラがいるということで逃げ込んだものと思われます。サミールと名乗るデュモンのことを、シューラがイスラム仲間に紹介してまわっています。
 シューラはなかなか存在感のある男だったようで、その宗教施設に出入りしていた人々に、かなり強烈なインパクトを与えていた形跡があります。しかし、シューラが日本にいた時期は、判明しているかぎりではデュモンよりずっと少なく、翌2000年には出国しています。その後の足跡もはっきりしませんが、中国、マレーシアにいたことはわかっています。
 日本で知り合っていた日本人女性をマレーシアに呼び出して、そこで結婚しています。もっとも、シューラはその後、あまり日本人妻と夫婦らしい時間は過ごしていません。おそらく日本人の配偶者ビザが欲しかったのではないかとの見方もできますが、そのあたりはわかりません。
 しかも、シューラにはすでにボスニアに妻子がいたようです。その後、シューラはスロベニアで元の妻と合流したらしいとの情報もあります。
 シューラの消息が判明するのは、2001年です。ボスニアで逮捕され、ルーべ団との関連容疑でフランスに引き渡されました。03年頃まで拘禁され、その後、釈放されたようです。もともと欠席裁判で禁固4年の判決を受けていたとか、起訴を取り下げられたとか、報道が少し錯綜していて、そのあたりの事情の詳細はよくわかりません。ちょうどその頃にデュモンとその仲間が一斉逮捕されているので、何か関係あるのかもしれませんが、それもよくわかりません。なお、シューラはその後、今度はオランダ人女性と結婚したとの証言がありますが、これもビザ目的の可能性があります。
 その後の消息もはっきりしませんが、しばらくアルジェリアに帰国していたとみられています。2008年にボスニアに入国した後、行方がわかっていません。現在、ボスニア政府が追跡中です。

 シューラのこうした経歴をみると、たしかに怪しいものがあります。テロリストではなくとも、少なくともジハード経験者であり、警察が要注意人物とみるのは当然ではあります。
 ただし、今のところ、彼が日本でテロを計画したなどという情報は一切ありません。2003年に日本を出国し、ドイツで逮捕されたデュモンも同様です。
 シューラについては、これまで日本潜伏に関しては詳しく報じられていなかったと思いますが、デュモンの日本潜伏の件が露呈した以上、彼も当然ながら自分のことが日本の捜査当局に露呈し、当時接触した人間が徹底的に捜査されたことぐらいはわかっているはずです。
  1. 2010/11/07(日) 02:45:23|
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公安部資料の流出元&尖閣ビデオのユーチューブ流出

 件の資料ですが、どうも外事3課の人間なら入手できるものが多いようです。幹部向けの文書もありますが、ほとんど極秘文書というものではなく、レク用のレジュメなので、それほど厳重に管理されなかったのではないかと思います。
 ですが、ちょっと気になったのが1点ありました。おそらく3課長のものだと思われる文書で、所轄の公安・外事担当課長を集めた会議でのレクの下書きです。下書きなので、会議に提出されたものではないです。3課長とその補佐役の人間しか手にしないはずのものではないかと思われます。
 ただし、資料を流した人物は、自らの身元を辿られないように偽装していますから、当然ながら、その文書も直接その人物に結びつくものではないでしょう。しかし、そのあたりから流出経路が絞られる可能性はあるかもしれません。

 ところで、ネット流出といえば、ユーチューブにアップされた尖閣ビデオをさっそく見てみました。「国辱シーンが映っていた!」なんて記事タイトルをどこかの雑誌の中吊りかなにかで見たような気がしますが、まあ普通にアテてますね。どうしてこれが非公開にすべきと判断されたのか、よくわかりません。
  1. 2010/11/05(金) 03:57:12|
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対テロ捜査の翻訳問題

 警視庁公安部外事3課資料流出に関する前エントリーで「ターゲットを絞って通信傍受せよ」と書きましたが、某事情通の方から「翻訳が無理だよねえ」と指摘されました。たしかにそのとおりですね。
 これはあのCIAやFBIですら苦労している問題で、それなりに時間をかけて態勢を作っていくしかないようです。とすると、やっぱり口座照会や視察作業しかないのでしょうか。しかし、それではどうにも非効率です。やはり何らか他の端緒情報があって、それから監視というのが定石かと思います。
 大使館員がテロ支援というのは、過去にドイツやアルゼンチンでは例がありますが、日本ではちょっと考えにくいです。駐日大使館員が武器技術不正入手に関わった事例は過去にありますから、そちらのほうがむしろ可能性はありますが、それは事件の重要度からいうと、それほど切迫したものではないですし、事件捜査の流れで対処すべきものかと思います。
 それはそれとして、通訳・翻訳体制は、警備公安警察が考えなければいけない最大の問題ですね。イスラム系エスニック言語のネイティブ級なんて、そもそも日本人にはほとんどいませんし、数少ない人材は外務省あたりがすでに確保しているようです。欧米の情報機関・治安機関などはモスレム2世のバイリンガルな正規職員にかなり頼っている部分がありますが、日本ではまだモスレム2世が警視庁公安部に続々就職できるような状況ではないですね。
 となると、現状では専属でネイティブを雇用するしかないでしょうが、それなりにギャラを弾んで囲い込むしかないと思います。それでも情報漏れは発生し得ますが、ある程度はしかたないかもしれません。
  1. 2010/11/04(木) 02:17:07|
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警視庁公安部外事3課資料流出その3

 外事3課の文書ですが、情報漏洩源が特定されないような工作がされていることから、流出事故ではなく、何者かが故意に流した可能性がきわめて高いようです。07~08年当時に外3にいた内部の人間でしょうか。実員百数十名。人事異動分も入れると、さらに対象人員数は若干増えるでしょうが、とりあえずはその全員が被疑者ですね。
 警察庁や他の外事課員にも、もしかしたらこのくらいの資料を入手できた人がいるかも。そういう人も被疑者となれば、現在警察で漏洩経路捜査を担当されている方のご苦労は察するに余りあります。

 さて、その内容ですが、前エントリーで書いたように、マスコミが様子見な感じで小出しにしていたのが、本日の読売新聞がどーんと書いていました。また、毎日新聞によると、流出資料は全114点。とすると、私がググッて見たのは全点ということになります。
 私は3回くらいの検索で簡単にたどり着き、GOOGLE DOCSにアップされていたのを見ました。他のサイトはどうか知りませんが、GOOGLE DOCは昨日には削除されていました。読売はサイト削除されたのでゴーとなったのかもしれませんが、わかりません。
 それにしても、この問題が大々的に報じられてから、GOOGLE DOCS削除まで数日もかかってます。海外でもウィキリークスが問題になってますが、なかなかこういうものへの対処は難しいのでしょう。
 
 ところで、今回の資料から垣間見えたテロ対策の実態ですが、どうもなんだか少し方向違いのような気がしてなりません。要するに「いない敵を一生懸命に追っかけている」感じですね。「風車を巨人と思って突進するドン・キホーテ」とまでは言いませんが、もう少し効率的にやったほうがいいのでは、と部外者として率直に思いました。ジョン・ル・カレの『パナマの仕立て屋』は、存在しないパナマ革命組織をめぐるイギリス情報部の物語でしたが、なんだかあれみたいです。
 要するに、公安部は大げさなのですね。リオネル・デュモンの件があったので、手を抜くと多方面からツッコまれるという事情はあるのでしょうが、過剰反応に感じられるのは、イスラム・テロのウォッチャーとして私がノー天気なだけでしょうか。
 たとえば、洞爺湖サミットの頃に2人の人物を「テロリストかもしれない」と追跡し、完全監視下においてますが、まずあれだけの根拠では、とてもテロリストとはいえません。口先だけの自称シンパなんてどこにでもいますが、そういう連中までいちいち摘発するつもりなのでしょうか。
 今回の資料流出について、メディアも「手の内がバレた!」とか「APECに影響!」とか、「FBIのネタ流出したのは信用失墜だ!」とか書いてますが、それも大げさですね。手の内がバレたのは事実ですが、それほどバレて困るような内容でもないです。日本の信用失墜というほどでもないでしょう。ネットでの情報漏洩は欧米ではそれこそもっと段違いに深刻なので、この程度ではそんなに気にすることでもないと思います。
 警察サイドとしては、実質的にいちばん困るのは、捜査員の個人情報が漏れた件でしょう。外国の情報源の個人情報が漏れたのも、ちょっとシャレになってませんね。公安部が思うほどのたいしたネタ元ではないでしょうが、個人が特定されるとその人はたしかにちょっと危険ですね。
 某国大使館の給与振込み状況を監視していたというのは、その程度のことは世界中のインテリジェンス機関がやっている常識ですが、公式に表面化すると外交上はマズいかもしれません。諸外国からすると、「通信傍受すれば簡単なのに、日本の警察はそんなことしかやってない!」ほうが新鮮な驚きかもしれませんが。
 ホテル、レンタカー、銀行などとの協力関係は、公式にオープンにされるとマズいのかもしれませんが、これらも公安記者などの間では以前から周知の話ですね。

 私はリベラル派の方々のように個人情報がどうのというよりは、どちらかというとインテリジェンス活動推進派なのですが、その視点からも、効率の面でかなり改善すべき点があるように感じます。なので、今回はイスラム・テロのウォッチャーの端くれとして、「日本のイスラム・テロ対策こうあるべし!」という私論(暴論)をちょっと書いてみます。
 まず、テロリスト容疑者としては根拠が希薄な外国人を監視してるような印象なので、もう少し対象を絞るべきではないかなと思います。在日イスラム外国人の根こそぎ調査なんていうのも、費用対効果の観点からすると、労力の無駄遣いではないでしょうか。特定施設や特定コミュニティに絞ったほうがいいでしょうね。
 こうした非効率な調査になってしまう理由のひとつは、世界の対テロ治安機関では常識になっている「通信傍受」が日本の場合、ちゃんと認められていないことも大きな原因です。通信傍受は人権の問題から、世界でも議論になっているのですが、対テロ捜査では、それなりに縛りをかけるにしても、もう少し捜査機関に権限を与えないと、税金が非効率に使われる結果になります。
 私自身の考えは、そんな大量調査に予算を割くより、通信傍受と翻訳作業に予算をかけたほうが、将来的にも役立つのではないかなというものです。前述したように、某国大使館の通常の金銭の動きを追って、内部事情を探ったりしていますが、そんな遠まわしなことより「ターゲットを絞って通信傍受」というのが、世界の常識です。
 まあ、脅威の評価も適切かなあと疑問なものがあります。たとえばヒズボラのテロを警戒したりもしていますが、日本でヒズボラがテロなんて、ヒズボラ・ウォッチャーの私からすると、かなり斬新な発想です。
 海外でテロ事件が発生した場合に現地投入されるチームも非効率的ですね。FBIじゃないのだから、警察機関が犯人を捜査なんて無理だと思います。外務省内にテロ対策専門機関を作り、現地派遣の警察スタッフが合流するかたちが、効率という点では良いのではないでしょうか。
 警察の方でも海外赴任経験者の方はもちろんご承知だとは思いますが、海外での情報収集活動というのは「慣れ」が大きくモノを言います。海外の協力者にわざわざ日本から行って面談したりするより、海外に情報要員を配置し、日常的にもっと広く情報収集すべきですね。そういう経験があると、カネの使い方の勘所もわかってきます。
 そもそもこういう世界では「相手との信頼関係を作る」なんていうのより、「うまくカネを使う」ほうがたぶん近道だと思います。もっと暴論と言うと、法執行機関が法律遵守というタテマエはわかるのですが、不法滞在者を協力者対象から排除するなんてのも、逆です。アウトロー度が高いほうが、情報屋としては価値があります。もちろんそんなことは重々承知のうえでのことなのでしょうが。
 ということで、私の結論としては、「公安部に在日イスラム外国人テロ専門の調査部門があるのは非効率的。外国人に対する捜査は専門職なので、外国人主体の麻薬密輸やカード詐欺なども捜査する国際犯罪捜査部(事実上の在日外国人犯罪捜査部門)を作り、そこがイスラム・ネットワークも監視するのが効率的。人員・予算は国際犯罪捜査部に振り分けよ」ということです。イスラム・テロの脅威に直面する欧米と、そうでない日本の違いですね。
 外事でも、外1や外2の対象は実在のものですが、外3の対象は「いないかもしれない」ものです。そこは捜査機関の組織体系も調査方法も別のものと考えるべきではないでしょうか。ホントは「海外で情報収集するインテリジェンス専門機関」を別に作り、そこと連携するかたちがいちばんいいと思うのですが。
  1. 2010/11/03(水) 10:53:08|
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アメリカは頼りになるか?

北方領土、米は「日本支持」 国務次官補が明言 東京新聞11月2日

 まったく意味のない発言だと思います。「ロシアが他国領土を不法占領している」とアメリカが認定し、日本を100%支持するのであれば、日本と軍事同盟を結ぶ国として、日本と合同して領土奪還軍事作戦でもやってくれるのでしょうか。
 そうであれば多少は展望も拓けるのでしょうが、100%ないですね。アメリカはもとより日米安保適用には日本の施政下にある領土という条件を付けています。
 ロシア不法占拠を、せめて国連安保理で採択できなくてもアメリカが共同で提訴するとか・・・あり得ませんね。つまりはそういうことです。
  1. 2010/11/02(火) 18:28:54|
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ロシア大統領が北方領土訪問

 ロシアのメドベージェフ大統領が国後島を訪問し、前原外相が駐日大使に抗議しました。
外相「ロシアの真意疑う」=対抗措置を示唆-北方領土訪問時事通信

 こういう問題では、外交当局の対応もなかなか難しいでしょう。ロシアはこの問題で日本を相手になどしていませんが、日本外務省は「そうではないよアピール」を内外に、とくに日本国内に向けて発信しなくてなりません。
 そういう努力はわかるのですが、現実は現実です。ロシアは北方領土を実効支配していて、日本のものだとは露ほども考えていません。歴代ソ連/ロシア政権も、領土を本気で日本に返そうなんて考えたことは一度もないと思いますね。エリツィン&プーチン時代にあの鈴木宗男さんが頑張った2島先行返還ですが、あれも私自身は実現性がなかったと見ています。剛腕のエリツィン&プーチンでも、領土で譲歩できる国内政治状況になかったからです。
 強力な軍事力に基づく実効支配は、それだけの力があります。過去、私はこんな私見を当ブログに書いたことがあります。
 北方領土問題についての私見 
 3・5島返還論の妄想
 対中国関係での尖閣問題でも同様に、なんといっても大きくモノを言うのは実効支配の実績です。とにかく実効支配の確立が、こういう問題ではすべてといっても過言ではないと思います。
 アメリカの安保発動の約束とか、あまりアテにできるものではないです。アメリカは対日というより、対中の駆け引きをやっています。これだけ上下関係のはっきりした日米間の軍事同盟が存在し、アメリカが日本を自国の勢力圏と見なしている状況では、中国と日米同盟との軍事的な問題は、ほとんど米中間の駆け引きで決められることになります。
 イザというときのために日本が味方につけておくべきは、変な話ですが「アメリカ世論」です。「尖閣は日本の実効支配にあるのだ」ということを、アメリカの国民にきちんとアピールできる材料をどんどん積み増していくことが肝要かと思います。すなわち目に見える実効支配の積み重ねです。あの島々で陸上自衛隊の常駐はちょっとないでしょうが、何らかのさらなる施設を今のうちに建設しておいたほうがいいでしょう。海保の立寄所みたいのでもなんでもいいと思います。領土は、やったもん勝ちです。
  1. 2010/11/01(月) 17:30:43|
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警視庁公安部外事3課資料流出その2

 注目されている警視庁内部資料流出事件ですが、報道の経緯を見ていると、ちょっと変です。「こんな資料もあった」「あんなのもあった」と、時間差で小出しに報じられているのですが、何故に?
 該当の資料はネットで一斉流出しました。どんな種類の資料があったのかなどということは、急げば30分くらいでザッと把握できるはず。もしかして、マスコミの方々は一つ一つ該当資料を公安部の方に見せて、「これは本物?」と裏ドリをしているのでしょうか?
 とするならば、裏ドリに応じている捜査員が、この微妙な時期にいるということでしょうか? たとえば、「個人情報は伏せるから、そのかわり別のこの資料は本物だって認めてくれませんか」なんてやりとりがあるのかも。
 それにしても、情報はいったんネットに流出したらアウトです。今回はちょっとシャレにならないレベルの個人情報もあるので、そちらの対策を早急に講じる必要があるでしょう。
  1. 2010/11/01(月) 12:49:39|
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警視庁公安部外事3課資料流出

 最近、衛星チャンネルでよくイギリスのドラマ『MI5~イギリス機密諜報部』というのを視ます。イギリスをテロから守る大活躍メンバーが常に同じ数人だったり、しかも若くてオシャレでプライベートなことで結構ウジウジ悩んでいたりというのはご愛嬌ですが、さすがイギリスだけあって、モチーフ自体はそれなりにリアリティがあります。
 翻ってわが日本では?
 ということで、10月29日に警察の内部資料がネットに流出し、大問題になっています。全部でどれだけ漏れたのか正確なところは知りませんが、だいたいざっくり目を通してみました。警視庁公安部外事3課からの漏洩ですね。これが本物であれば、かなり問題な内容です。というか、警察が対策に動き出しているところから察するに、おそらく本物なのでしょう。
 話には聞いていたのですが、かなり本気で在日イスラム教徒の捜査をしていたようです。日本でイスラム・テロなんてほとんどリアリティがない話ですが、外3としてはそうも言ってられないのでしょう。
 資料の内容についてここでは触れませんが、ちょっと面白い(といってはマズイですよね)のは、ホーム・グローン・テロリストの予備軍として、イスラム第2世代というものに言及されている点です。なるほど、若者ですか。どうなんでしょう。たしかに感化されやすいですが、それは日本人も同様ですし、古今東西共通ですね。
 1点だけ、私の著書の内容に関わってくるので、情報を引用します。2007年出版の拙著『日本の情報機関』で、外3について下記のように記述しました。

「ここに来てまた増員され、百数十名規模に復活しているものと推定される」(同書P116)
「比較的新しい部署である第3課の陣容は、短期間でかなり急激な増減が続いてきたことからもわかるように、いまだ流動的であるようだが、推定では4個の係が配置されているようだ。おそらく第1係が庶務担当、第2係が情報分析担当、第3係と第4係が事件担当となっていて、具体的な捜査活動の内容としては、公刊情報分析、国内研究機関・専門家との接触、在京外国機関との接触、国内イスラム系社会の監視、事件捜査、米情報機関提供の通信記録に基づく監視対象の確認作業、不正送金監視などが行われている。とくに事件担当は、日本国内に居住するイスラム系の外国人を片っ端から調査しはじめている形跡がある」(同P117)

『日本の情報機関~知られざる対外インテリジェンスの全貌』(講談社刊)
(→紹介エントリー(→アマゾン

 今回漏洩した資料によれば、2008年時点で、人数はだいたい正解でしたが、係の数が違いました。まあ百数十人規模にもなれば、外1や外2くらいの陣容にはなるわけですね。全体で6係体制。1係、2係はそのとおりでしたが、作業・捜査・事件担当が3~6係の4個係体制ですね。ということで、拙著の内容をここに訂正させていただきます。
 
 また、別件ですが、さらに訂正で申し訳ありません。
 以前のエントリー「シリア世襲事情」 (09/30)で、バシャール・アサド大統領の家族関係について詳述しましたが、そこで弟のマジドについても記述しました。もともと電気技術者で、シリア国内では精神異常と言われていて、長く消息がわからなかった人物です。
 ところが、このマジド・アサドが昨年12月に死亡していました。享年43歳。いちおう「長い闘病の末の病死」とされていますが、真相はわかりません。彼は若い頃から精神的に不安定で薬物中毒であり、90年代にはロンドンで入院して治療を受けていたといいます。マジド死亡はさほどニュースにもならなかったので、見落としていました。たいへん失礼いたしました。
  1. 2010/11/01(月) 11:05:22|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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