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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

南アフリカの危険度

 ちょっと前に「南アフリカの治安は大丈夫か」というエントリーを書きましたが、最近になって「南アフリカ 治安」というキーワードで検索してアクセスしていただくことが増えています。いよいよワールドカップも近づいてきて、観戦に行かれる予定の方がいろいろ調べているのかもしれません。
 ですが、私はもう長いこと南アには行っていないので、最近の事情は知りません。なので、試しに自分でも「南アフリカ 治安」で検索してみました。
 結果は、どうも私が行った頃より、さらに状況は悪化しているようです。
「白昼のビジネス街でクビ絞め強盗に遭うも、通行人も警察官すらもビビって手出ししない」
「赤信号で停車すると強盗に遭うので、信号で停まってはいけない」
などなど、なんだか無法地帯になっちゃってます。
「昼間も出歩くな」的な体験者談が多いですが、私の頃(92年)はまだ昼間なら普通に歩いてました。以前のエントリーでも書きましたように、当時のヨハネスブルグ中心部は私の経験内だけでも屈指の危険地帯だったことは確かで、街中に強盗はいましたし、カージャック強盗もよくわりましたが、強盗だらけというわけではなかったです。必ずタクシーを使いましたが、夜も呑みに行ったりしましたし(それは事前にそれなりに情報収集し、慎重に行動しましたが)。
 現地在住経験者と思しき書き込みのいくつかが、「アパルトヘイト政策を止めたときから、この国はずっと治安崩壊状態」という指摘をしていました。91~94年のプロセスで完全な黒人国家になりましたが、その頃から警察力が低下したということなのでしょう。
 よく、「南アは白人支配だったから発展した」というような言われ方があります。対して、「資源が豊富だったから発展したのだ」との反論もあります。実際、ブラックアフリカの街の風景に比べて、南アの風景はまったく異質のものです。あそこの白人はオランダ系やイギリス系が多いのですが、雰囲気はむしろアメリカに似ているように思います。
 奴隷制度みたいな人種差別が撤廃されるべきことは当然ですが、それで無法地帯になってしまうというのも、どうなのでしょう。ただ、黒人国家になっても、国が崩壊したわけではなく、少なくともワールドカップを開催できるまでになっています。
 たいていのメディアの記事もそうですし、当ブログもそうなのですが、なるべく非日常的な見聞を選択して書かれることが多いので、そうした面ばかり強調される傾向はあります。まず慎重に行動していればそれほど心配することはないと思いますが、冒険的な単独行動は危険が伴うことをよく認識したほうがいいと思います。
 ネットでも冒険的な旅行プランを立てていた若者に、ツッコミの集中砲火が入ってたりしました。私自身は若い頃に無謀な旅を重ねてきたほうで、単に幸運だったにせよ、それが今の人生に繋がっているのは事実なので、「自重したほうがいい」なんて大人な意見は持ってはいませんが。
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  1. 2010/04/20(火) 10:46:25|
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在日米軍情報機関の日本人スタッフの実態

 前エントリー「スパイになる方法」のコメント欄に「キャンプ座間従業員」というHNの方から非常に興味深い投降をいただきました。コメント欄だと皆様に目にしていただける機会が少ないと思いますので、重複しますが、こちらでも紹介させていただきます。

(以下転載)
 キャンプ座間の日本人従業員募集について触れられていましたので、自分の知っている範囲で補足説明させていただきます。
 第441大隊の連絡事務所ですが、日本人従業員は通訳や運転手その他雑用を引き受けます。日本の官庁との連絡業務はやっているはずですが、うさんくさい情報源と接触するほどの人員はいないはずです。昔は日本側の人たちを派手に接待していた時期もあったようですが、トラブルがあり最近は自粛しているはずです。
 キャンプ座間の連絡事務所の募集は人間関係がいやになって出て行ったため、欠員が出たという噂を聞きました。
 ASDという組織に関しては、アナリストの方が翻訳者より給与の等級が一つ上になっていますが、これは英語のほかに中国語ができること、中国語文献の翻訳と分析の両方が要求されるからです。
 ASDには自衛隊OBが昔はかなりいたようです。今は一般大卒や外国籍の人も働いているようです。自衛隊OBを除き研究者と呼べるほど実力があるのかは疑問です。
 日本人従業員の給与は国家公務員と連動していて、今年は夏の賞与が減額になります。昔はいろいろあった諸手当も現在はほとんどカットされています。何年働いても実質手取りは増えないと思います。
 もともと日本人でアメリカ国籍をとり米国防省の事務官(軍属)という待遇で働いている人を何人か知っていますが、語学力以外それほど優秀ではないです。日本人従業員は契約社員のような待遇ですし、超優秀と認めるような評価評定はないと思います。アメリカの雇用体系に人材を育成していくという発想は薄いように感じます。
 441で働いている日本人もスパイという自覚はないと思いますし、せいぜいが日米安保体制に少し貢献している程度だと思います。
(以上転載)
「キャンプ座間従業員」様、コメントありがとうございました。

 441部隊の上級部隊で、近年まで座間に本部を配置していた500部隊は、主に冷戦期に、陸幕二部(調査部)などと協力して情報収集や防諜をやっていました。ソ連や中国、東南アジア、南アジアなどの軍事情勢に関する情報収集と、ソ連諜報機関に対する警戒などがメインの任務だったと思われますが、かなり広範囲に人に会ったりしていたようで、そこから『赤旗』や左系のジャーナリストのような人々に「謎の謀略機関」と書かれてきた経緯があります。
 冷戦終結後は防諜任務の切迫度が激減したはずなので、やはり東アジア、とくに中国の軍事情報の調査がメインになっているということなのでしょう。
 500部隊は以前は、おそらくCIA東京ステーションに次ぐ在日アメリカ諜報機関で(在日DIAの活動実態・規模などはまったく知られていません)、両者にコンタクトがあったことも聞いていますが、今はかなり活動規模が小さくなっているものと思われます。ただし、今も陸幕情報課とは協力関係にあるはずですが。
 それにしても、「キャンプ座間従業員」さんによると、全然ハードボイルドな感じではないですね。情報機関には違いないので(500部隊の上級部隊であるINSCOMは、アメリカ情報コミュニティのかなり重要なメンバーです)、そこで超優秀と認められれば、インテリジェンス世界でさらなる道が開かれる可能性も少しはあるかと思ったのですが、なかなかそう簡単にはいかないようです。それでも、内調や公調、警察庁警備局などと「絡める」というのは、こういう世界に興味のある人にとっては裏技みたいな道ですが(公務員試験から官庁内配属を狙うのは結構たいへんですし。もっとも、こちらは英語がそうとう出来ないとダメですが)。
 在日米軍勤務は国家公務員より手当てがかなりよかったはずですが、今やそんな状況とは知りませんでした。どんどん人が辞めてしまう可能性がありますから、今後も大々的に募集が続くかも?
  1. 2010/04/19(月) 14:18:42|
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スパイになる方法

「学べるニュース」でイギリス秘密情報部MI6の一般公募の話をやっていましたが、じつは一般の日本人が応募できる情報機関もあります。仕事内容はそんなハードボイルドではないでしょうが、そこで超優秀な人材と認められば、もしかしたらCIAにスカウトされるかもしれません。日本ではなくアメリカの機関ですが、「どこの国でもいいからインテリジェンス・オフィサーになりたい!」という方がいたら、他国の国益のために働く覚悟で応募してみてはいかがでしょうか。
 その情報機関は、米陸軍情報保全コマンド第500軍事情報旅団(ハワイ)隷下の第441軍事情報大隊といいます。米軍のための情報収集と防諜を任務としていて、本部は神奈川のキャンプ座間ですが、赤坂プレスセンター(六本木)と横浜ノースドックにも出先事務所があります。日本人スタッフの役目は、米軍のプロ情報要員の助手ですね。報道から有益な情報をピックアップしてボスに報告したりするほか、日本国内の各情報源からの情報収集もあります。自衛隊情報部門や内閣情報調査室、警察庁警備局、公安調査庁なんかとの連絡業務もあります。
 一昨年秋の六本木と横浜での公募については、すでに『軍事研究』『週刊朝日ムック』で書きましたが、その後も公募は続いています。
 たとえば、今年2~3月には、座間本部で情報要員の募集がありました。受付はすでに締め切られていますが、欠員が出ればおそらくまた公募するでしょう。

 ヒューミント(人的情報収集)とは違いますが、昨年12月~今年1月には、やはり座間の同部隊隷下アジア研究分遣隊作戦部所属で、国家航空宇宙情報センターなんてところの専属業務の募集もありました。中国空軍とミサイルの研究ということで、中国語必須とのことでした。
 1月には、やはりアジア研究分遣隊任務支援部の翻訳班の公募もありました。給与は基本給222.660円なり。前2つは236.900円だったのですが、この微妙な金額の違いの理由はよくわかりません。ただし、同じアジア研究分遣隊任務支援部の翻訳班が「定員充足まで」という募集期間で公募している別の求人票では、給与が236.900となっています。いずれにしてもあんまり高給ではないですが、在日米軍勤務はけっこう手厚い手当てがつくので、各自ご確認ください。
 その他に「定員充足まで」ということで公募されていたのが、アジア研究分遣隊任務支援部(部署非明示)と同作戦部F班です。前者(任務支援部)の求人票では、給与は207100円なりと、なぜか若干下がっています。F班ではとくに中国政治・軍事情報の研究者向けの募集が4月30日を期限に行われてもいます。

求人は随時、下記の在日米軍サイトに掲載されます。
http://www.usagj.jp.pac.army.mil/ima/sites/jeso/rp_jjobs_list_j.asp


問合せ先は以下。言うまでもないですが、私は一切関係ありません。
〒228-0000 神奈川県座間市キャンプ座間 Bldg 102 G-wing 在日米陸軍 IMPC-JA-HR-JER 日本人雇用課
  1. 2010/04/15(木) 14:26:08|
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学べるニュース

 本日午後7時放送のテレビ朝日「そうだったのか 池上彰の学べるニュース」の一部コーナーのVTR監修をしました(出演ではありません)。「中東スパイ大作戦」と題した、例のドバイでのモサド工作の話です。バラエティですが、いたってマジメな作りで、気楽にざっくりと学ぶには好番組と思います。興味のある方はぜひどうぞ。
  1. 2010/04/14(水) 18:07:56|
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肩書きについての悩み

 今回も雑談話で恐縮です。ここのところ昭和裏面史関連の仕事が続いているのですが、先日、とある仕事で自分の「肩書き」についてふと考えることがありました。肩書きのどこかに「インテリジェンス」という用語を入れたらどうかと、勧められたのです。
 しばらく軍事雑誌で仕事をさせていただいていたので、その延長でなんとなく便宜的に「軍事ジャーナリスト」を使っているのですが、自分でもしっくりきません。私はどちらかというとインテリジェンスとか旧軍特務機関などが得意分野で、兵器方面は専門外なので、他に適当な肩書きはないかなと考えてみたのですが、なかなか思い浮かびません。まあ世界各国のインテリジェンス機関というのは、もともとはほとんどが軍の一部門だったわけなので、「ミリタリー・インテリジェンス・ジャーナリスト」→「軍事情報ジャーナリスト」→略して「軍事ジャーナリスト」でも「まあいいや」という感じで今日に至っております。
 あるいは、もっと間口を広げる意味で、大雑把に「ジャーナリスト」というのはどうかなとも思ったのですが、なんだか田原総一朗氏とか立花隆氏とか故・筑紫哲也氏とかの大御所イメージがあって、なんとなく「エライ人」「正義の人」みたいな印象になるので、私ごときでは明らかに「上げ底」「誇大表示」になってしまいます(と感じます)。以前、ある国を取材中に、日本の各社特派員が勢ぞろいしているなか、知人に「ジャーナリストの黒井さんです」なんて紹介されてしまい、「知らねーなー」「誰よ?」的空気が流れたこともありましたし。
 不思議なんですが、「軍事ジャーナリスト」など「××ジャーナリスト」とすると、単なる「ジャーナリスト」よりも居心地がいいのはなぜなんでしょう? 「評論家」というのも、「××評論家」でないと座りが悪い肩書きですね。肩書きって独特の世界がありますよね。
 そういえば、「作家」という肩書きは結構人気があるようです。ジャーナリストや評論家的な人でもときおり見かけますが、「作家」というカテゴリーの幅広さもあるでしょうが、「ジャーナリスト」や「評論家」という肩書きが好きではないという場合も結構多いのではないかと邪推しています。もちろん麻生幾さんのように「フィクションを書いているので、今はジャーナリストではない」ときちんと線引きしている方もいらっしゃいますが、あまり最近は小説を書いていない方でも「作家」の方はいます。一方、逆にその語感の文化人臭が嫌いなのか、あえて「小説家」で通されている作家の方もいらっしゃいますが。
 話がずれますが、文化人枠では「映画監督」も大人気ですね。これも「映画監督が主業種」でないとホントは変ですよね。ずっと「宇宙飛行士」の方もいますが、あれはもちろんご本人の意思ではないでしょう。変わった肩書きといえば、「ライフスタイル・コーディネーター」とか「ハイパー・メディア・クリエイター」の方もいらっしゃいます。なんだかよくわかりません。

 で、自分の肩書きをいろいろ考えてみました。
▽軍事アナリスト
→ひたすらデータを分析し、将来を科学的に予測するプロフェッショナルという感じです。報告書をどこぞの機関に提出するというようなイメージですね。以前、主に海外のメディアや資料をひたすら集め、こねくり回して記事を書くということばかりしていた時期があったのですが、当時の著書には「軍事アナリスト」という肩書きを載せたことがあったと思います。いま思うと、なんか違いましたね。
▽軍事ライター
→軍事ジャーナリストよりいっきに庶民派です。「ライター」ってどうして軽いイメージなのでしょう? 例えば初対面の人に連絡するときなど、自分を「軍事ジャーナリストの黒井です」とはなかなか口に出して言えず、つい「軍事ライターの黒井です」と言ってしまう卑しい自分がいます。自分を「××ジャーナリスト」と呼ぶなんて、まるで「私は正しい人間です」「立派な人間です」と宣言しているような気がして、小心な私はどうしても「とてもとても私なんぞ」とビビってしまうのですね。「写真家」と「カメラマン」の違いも似てるかも。
 ただ、「フリーライター」となると、いかにも出版業界では最底辺な語感になります。私は営業形態からするとフリーライターそのものなのですが、なんかそれもちょっと勘弁してほしい感じです。
▽軍事リポーター→軍事ライターと似た感じですが、馴染みがないですね。日本で「リポーター」というと、どうしてもTVで事件現場から報告する人ってイメージです。

 ところで、リポーターもライターも和訳すれば「記者」でいいと思うのですが、日本で記者というと、なぜか特定メディア専属の人に限定されてます。フリー記者という肩書きを名乗っている人は、少なくとも私は聞いたことがありません。ちなみにフリーライターは税務署では「文筆家」に分類されます。10階級くらい特進ですね。
 
▽インテリジェンス・ジャーナリスト→インテリなジャーナリストって、凄すぎます。
▽インテリジェンス・ライター→インテリなライターになっちゃいますね。
▽インテリジェンス・リポーター→英米メディアの情報機関担当記者などはこう呼ばれることが多いですが、やっぱり日本では「何それ?」でしょうね。私の理想はこれに近いんですけれども。
▽インテリジェンス研究者→大学の専任講師あたりの感じですね。
▽インテリジェンス研究家→本業がしっかり別にある「趣味の人」の印象ですよね。
▽テロ研究家→危険人物ですね。
▽テロ・ライター→なんじゃそれ
▽テロ・アナリスト→インリンみたい。

 収入という観点からすると、私は「フリー編集者」と「フリーライター」が半々くらいなので、業種的には「(フリー)編集者兼ライター」といったところですが、万能対応職人型ではなく、守備範囲が狭いので、正しくは「インテリジェンス分野をメインに他にもちょこちょこ手を出している中途半端なフリーランスの編集者兼ライター」という肩書きになります。

 周囲の知人をみても、フリーの人は肩書きをいろいろ苦心している人が多いです。他に妥当な用語がなく、しかたなくて「ジャーナリスト」とか「××ジャーナリスト」という肩書きを使っていても、内心は「なんかやだなあ」と思っている人はけっこう多いと思います。実際、作家さんのように、名前だけで肩書き未記入の名刺を使っている人もいます。私は今はちょっとした工夫をしてなんとかごまかして凌いでいるのですが、以前は名刺にしっかりと「軍事ジャーナリスト」と入れていました。渡す相手は私の仕事関係ですからいいのですが、最初に印刷業者で名刺を作るとき、ちょっと恥ずかしかったです。
 結局ですね、日本では肩書きは所属組織がないとなかなか座りごこちが良くならないということかと思います。 
「××新聞記者」「××大学教授(非常勤講師だって可)」「週刊××編集長」「××研究所長」・・・あるいはせめて「××研究会副会長」「××調査会理事」「××フォーラム主任」くらいでも欲しいところです。
 思えば吹けば飛ぶような超零細メディアでしたが、それでも『ワールド・インテリジェンス編集長』をやらせていただいた時期は、肩書き的にはラクでした。現在、当ブログではタイトルに『ワールド・インテリジェンス元編集長』と便宜的にしていますが、あまりに無名の雑誌だったため、もちろん世間では通用しません。
 なので、現在はちらりとでも軍事と関係のあるネタの場合は「軍事ジャーナリスト」にしてもらっています。昭和裏面史関連などのように、まったく軍事に関係のないネタのときは、寄稿した雑誌の編集部のほうで自動的に「ジャーナリスト」にしてくれる場合が多いですね。大事なのは記事の中身であって、肩書きなどとるに足らない問題なのでしょうが、何かいいのがあればなあとは思います。

 あまり同業者のいない地元の呑み屋などでよくあるやりとり。
「おたく、仕事は何?」
「え・・・あの、ライターです」(突っ込まないでスルーしてくれ、と内心叫ぶ)
「ふーん、どんなの書いてんの?」
「ま、軍事関係とかいろいろ」
(相手の視線が、明らかに「変人」を見る目に変わる)
「へー、武器とかそういうの詳しいんだ?」
「いや、僕はちょっと違うほうなんですけど」
「ん? どういうこと?」
「あの・・・インテリジェンスとか」
「何それ?」
「つまりスパイとか国際テロとか・・・」
(ここで明らかに「ペテン師」を見る目に変わる)
「いや、だからCIAとかアルカイダとか」
(ますます胡散臭そうな視線に)
「ふーん・・・」
(なんとなくその視線に耐えられなくなる)
「いや、外交とか国際政治とかも少しは」(ああ俺はなんてダメなヤツだ、と内心うなだれる)
「ああ、そういうやつね」
(相手、納得してくれる)
  1. 2010/04/09(金) 06:50:13|
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韓国ドラマ『アイリス』

 以前、行きつけの泡盛バーで韓国ドラマ『アイリス』が話題になったことがあります。イ・ビョンホン主演で平均視聴率30%超。舞台のひとつとなった秋田県に、韓国人観光客が大挙して押しかけているという話でした。
 で、先週、衛星チャンネルをザッピングしていたら、たまたまこのドラマをやっていました。「ああ、これか」と思って何の気なしに見たところ、なかなか面白かったです。イ・ビョンホンは凄腕の韓国秘密情報部員。同僚に恋人がいて、その恋人を密かに愛する別の同僚もいたりして、韓国ドラマ独特の超甘ラブラブ・シーンも定期的に挿入されますが、ストーリー自体は骨太な国際謀略モノ。秀逸なのはスピード感で、『24』みたいな感じでした。
 私がたまたま見た回では、舞台がハンガリーになっていました。そこでイ・ビョンホンは北朝鮮要人を暗殺します。ふつう朝鮮半島モノでは、北がテロリストで南がディフェンス側なのですが、ここでは逆なのが新鮮ですね。韓国情報部の描写はなんとなく『TV版ニキータ』の「セクション1」みたいな感じで、対する北朝鮮側機関はそれこそ「CTU」みたいな感じでした。どうも『24』ばりのジェット・コースター・ストーリーが狙いっぽいので、これからまだいろいろ展開しそうですが。
 で、少し興味が出たので、ネット検索したら、今月末からTBS地上波でもやるのですね。しかも水曜9時と、かなり気合が入っているようです。日本で韓流ファンといえば、大甘メロドラマ・ファンの中高年女性層と相場が決まっていますが、はたして『24』ファン層をうまくキャッチできるのでしょうか。
 それにしても、この手のアクションをアメリカや韓国は普通に作れるのがちょっと羨ましいですね。実際に諜報戦の当事者ですから、物語が絵空事でも、その基礎にリアリティがあるわけです。その点、わが日本はそうした世界と無縁のお気楽な国ですから、スパイものはちょっと無理ですよね。平和なのはいいことなのでしょうが。
  1. 2010/04/06(火) 14:07:00|
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ロシア自爆テロ陰謀論?

 ロシアでにわかに爆弾テロが連続して発生する事態になっています。これまでの主な事件は以下のとおりです。
▽3月29日朝、通勤ラッシュで混雑するモスクワの地下鉄駅2ヵ所(ルビヤンカ駅とパルククリトゥールイ駅)で連続自爆テロ。乗客ら40人が死亡。
▽3月31日朝、ロシア南部ダゲスタン共和国キズリャルで自爆テロ2件が発生。警察幹部含む12名が死亡。警察が車両を止めたところ自爆し、15分後に現場近くで警察官の制服を着た地元出身の男が自爆したという。
▽4月4日未明、ダゲスタン共和国で、モスクワとアゼルバイジャンのバクーを結ぶ鉄道の線路で爆弾テロが発生。貨物列車8両が脱線、うち5両が横転した。
▽4月5日、ロシア南部イングーシ共和国カラブラクの警察署近くで車両による自爆テロが発生。警察官2名が死亡。

 以上のうち、モスクワ地下鉄テロについて、ロシア治安当局は自爆犯2名の身元を特定しています。1人は、昨年12月にダゲスタンでロシア治安部隊に殺害されたウマラト・マゴメドフの17歳の妻で、もう1人はダゲスタン在住の28歳の女性教師である可能性がきわめて高いということです。
 インタファクス通信によると、治安当局の捜査により、実行犯グループのアジトだったモスクワ中心部のアパートがすでに判明しているようです。当局の調べによると、自爆犯の2人の女にそれぞれ男が付き添い、遠隔操作で爆破スイッチを押したということです。
 
 以上の事件はいずれもチェチェンのイスラム武装勢力による犯行と考えられます。とくにモスクワの地下鉄テロに関しては、その最大派閥であるウマロフ派(カフカス首長国派)のドク・ウマロフ最高司令官(45歳)がインターネットのチェチェン独立派サイト「カフカス・センター」で犯行声明ビデオを公表しています。その声明によると、犯行の動機は、「2月にイングーシ共和国で連邦保安局(FSB)の作戦によって住民が多数殺害された件に対する報復」だそうです。
 では、このウマロフ司令官とはどんな人物でしょうか?
 ウマロフはもともとは、94年に当時のチェチェン・ゲリラ有力者だったルスラン・ゲラーエフ率いる「狼」部隊に参加したことでゲリラへの道に入ったという、同地の武装ゲリラとしてはかなり遅咲きの人物です。
 彼はすぐにゲラーエフと決裂しますが、それなりに指導力があったようで、96年に自派部隊を創設しています。その後、手勢を率いて当時のマスハドフ大統領の主流派に合流。自身もマスハドフ側近となっています。このマスハドフ側近となったことが、彼のゲリラ組織内部での地位向上に決定的な役割を果たしています。
 ウマロフが〝顔役〟になれたのは、97年の暫定大統領選挙においてマスハドフ陣営で働き、その論功行賞でマスハドフ暫定政権の安全保障会議書記長のポストに就いたからです。
 しかし、まもなく同ポストそのものが廃止されてしまい、それをきっかけにマスハドフと決裂しています。事情がよくわからないので一概には言えないのですが、ゲラーエフともマスハドフとも〝長続き〟できなかったというのは、もしかしたらキレやすいタイプの人間なのかもしれないですね。ちなみに、風貌もかなりふてぶてしいタイプです。
 99年から2000年にかけてグロズヌイ防衛戦に参加していますが、そこで負傷し、外国(トルコではないかといわれています)で長期治療を受けています。2003年にチェチェンに戻り、南西戦線司令官、安全保障相、副大統領を歴任しています。
 その後、チェチェン・ゲリラ内部では超強硬派として有名だったシャミル・バサエフ司令官に次ぐナンバー2のポジションとなっています。2006年6月にイスラム武装勢力の暫定大統領アブドルハリム・サドラエフが、そして同年7月にはシャミル・バサエフが戦死したのを受け、新司令官に就任しています。
 2007年からは、「カフカス首長国」と名乗って活動しています。バサエフ同様、多数のテロを指令してきたとみられています。昨年11月のモスクワ=サンクトペテルブルク間の急行列車爆破事件でも犯行声明を出しています。
 ところで、モスクワ地下鉄テロを実行したのは、いわゆる「黒い未亡人」を名乗る一派と目されています。もっとも、そういう名称の組織があるわけではなく、チェチェンのイスラム武装勢力がカッコつけのために自称している名称ですね。
「黒い未亡人」は、ロシアとの闘争で夫を亡くした未亡人をオルグしています。警戒されにくい女性を自爆テロにするきわめて卑劣なテロ作戦を行うためです。「黒い未亡人」は2000年代前半を中心に、これまで数々の自爆テロを実行してきています。
 3月30日付『コメルサント』によると、「黒い未亡人」は3月上旬にイングーシで戦死したティホミロフ司令官が主導してきたようです。すでに約30名をトルコのイスラム神学校に送り込んで洗脳を実施し、うち9名が要人襲撃などですでに自爆しているとのことです。
 また、同日付『ガゼータ』紙によると、「黒い未亡人」に徴募された女性たちには、自爆テロがいかにイスラム的に尊いものであるかを徹底的に刷り込む洗脳工作が行われ、さらには途中で翻意しないように麻薬や精神安定剤なども与えられるとのこと。さらに自爆テロ犯の遺族には3000~5000ドルが与えられるともいいます。
 このあたりの情報は、飛ばし記事が多いロシア紙のネタだけにあまり信憑性はありませんが、チェチェン・ゲリラなら多かれ少なかれ似たようなことをやっていることでしょう。
 チェチェンのイスラム武装勢力は、ときおりロシアの圧政に抵抗するレジスタンスのように報道されている部分もありますが、このようにきわめて卑劣な行為を恥とも思わない低劣な一派です。死んだバサエフもそうですが、ロシア側が安易に手出しできないだろうと踏んで小学校や病院を襲撃したりする連中です。
 チェチェンではロシア側も住民に対する拷問などをかなり広範囲で行っている形跡がありますが、少なくとも悪いことは隠れてやろうというブレーキがあります。チェチェン・ゲリラにはそういう考えすらありません。
 そもそもチェチェン・ゲリラの幹部たちというのはほとんど、麻薬密売などで一世を風靡したチェチェン・マフィアの残党です。なので、もともとモラルという感覚があまりないようです。
 というのが、私のチェチェン・ゲリラ評なのですが、ロシア国民の大方も、だいたい同じような感覚でいる人が多いのではないかと思います。ロシア国内にチェチェン同情論はほとんどありません。ロシア軍の非道な行為を糾弾するジャーナリストや人権活動家に対する暗殺事件がしばしば起きていますが、それを非難する声がさほど高まらないのは、当局に対する恐怖心だけでなく、この反チェチェン感情があるからでもあります。
 他方、日本を含め外国では、チェチェンに同情的な人も多く、まったく別の見方がされていることが多いですね。どちらが正しとかはここでは措いておきますが、少なくとも、ロシアと外国ではこの視点の違いがあるということを、まず押さえておくことが必要ではないかと思います。
 今回の地下鉄テロに関し、一部には「プーチン自作自演」説を唱える人もいるようです。かつてモスクワのアパート連続爆破事件でも、FSB自作自演というトンデモ論がありました。その急先鋒がロンドンで殺害されたリトビネンコですが、リトビネンコ暗殺にもプーチン陰謀論があります。
 こうした陰謀論の背景に、インテリジェンスの専門家の人々はしばしば、米英の情報機関による逆情報作戦の存在を指摘します。情報材料が少ないので、私には判断できませんが、そういうこともあっておかしくはないとは思います。
 もっとも、私の周囲の陰謀論者の方々をみると、逆情報があろうとなかろうと、初めから希望的確信ありきで、信念で陰謀論に突き進んでいくパターンが多いように思います。陰謀論が宗教にようになっているわけですね。
 多くのチェチェン人が今も不幸な目に遭っているという現実があります。ですが、チェチェン・ゲリラの卑劣なテロは、そうした人々をますます苦しめる結果しか生まないということを、チェチェンの世論にも浸透できないものでしょうか。未亡人を利用するような連中はやはり許せませんね。
  1. 2010/04/05(月) 21:28:16|
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戦場取材と責任論

 本日のニュースですが、ジャーナリストの常岡浩介さんがアフガニスタンで消息不明になっていて、誘拐された可能性もあるとのこと。彼はイスラム圏紛争地取材では歴戦の猛者ですから、きっと大丈夫だろうとは思いますが、ああいった場所ですので非常に心配です。
 ところで、無事帰還されることを前提にして書くのですが、今の日本の風潮ですと、こうした事件が起こると、またぞろ責任論みたいな話が出てきそうで陰鬱な気分になります。
 ちょうど安田純平さんの近著『戦場出稼ぎ労働者』を拝読したばかりなのですが、同書によれば、イラク人質経験者の彼に対しては敵意むき出しでいろいろ言ってくる人もいるらしく、たとえば今回の安田さんの取材に対しても彼のブログに「何かあったら政府に迷惑だ」とか「日本から出て行け」とかの書き込みもあったそうです。どうしても「ほっといて」くれないのですね。
 こうした自己責任論は、日本人独特のもので、他の国ではほとんど聞いたことがありません。安田さんの前出著書によると、日本政府が日本人記者のイラク入国を妨害しているフシもあるようですが、そんな国も他にまずありません。
 私の頃(80~90年代)は、少なくとも「日本政府に迷惑がかかる」などという発想は誰にもありませんでした。国によっては現地国の取材許可証を取得するのに日本大使館のレター(ジャーナリスト身分証明みたいなもの)を要求するところもあるのですが、在タイ大使館以外はどこも快く対応してくれました。タイの場合も大使館の方針というよりは、尊大な参事官サマのいじわるキャラゆえのことだったように思います。
 私より上の世代の伝説では、レバノンの日本大使館員(通信員みたいな人だったかも)には親分肌の剛の人がいて、あまりに面倒見がいいので、貧乏なフリーランスたちの溜まり場になっていたなんて話も聞いたことがあります。
 ただ、私の頃も、会社の責任論みたいなことには、どの社もかなりナーバスでした。つまり、自社の記者やアサイメント(出来高契約)記者を派遣すると、何かあったときに責任を問われるので、どの社も二の足を踏むということですね。たとえば、私は週刊Gの半アサイメント(経費全額持ちでないケース)でボスニアに行って負傷したのですが、その際、現地では「フリーランス」で通しました。G誌の特派記者ということになると、会社に迷惑がかかる可能性があるからです(でも誌面では「本誌特派記者の流血レポート!」とかのコピーがついてましたが)。
 いずれにせよ、そういう感じで、どの社も自社のアサイメントを出すことを非常に嫌がっていました。こちらとしては、現地での動きをスムーズにするため、「カネは(そんなに)出さなくていいから、コレスポンデントの証明書だけほしい」なんていう場合もあるのですが、紛争地取材だとなかなか責任者のOKはとれませんでしたね。
 湾岸戦争の取材は週刊Fの完全アサイメント(全経費会社持ち)だったのですが、あのときは会社がいわゆる戦争保険をかけてくれたようです。詳細は覚えてないですが、たしか保険料がギャラより高額だったような。こちらとしてはホンネでは「保険要らないから、そのぶんギャラください」と言いたいところなのですが。
 こうしたことは、批判に晒されやすい大手社ほど慎重です。前に当ブログで書いたこともありますが、Fテレビのボスニア取材の際、クロアチア待機中に「サラエボ入りは中止」命令が下りたこともありました。かわりに他の激戦地に行きましたが。
「大手報道機関の記者は危険地帯は自分で取材せず、そういうところだけフリーにやらせる」という批判がときおりありますが、実際には大手社の記者は、「行きたいんだけど、上がストップする」という状況にあります。
 マスコミ同業他社が責任論で批判するというのも、日本人独特の文化ですね。たとえば、かつてペルーの日本大使公邸人質占拠事件で、通信社のカメラマンが単独でゲリラ取材をやって他社の集中砲火をあびたことがありました。私も当時、週刊Gの特派で現場取材していたのですが、ああいうのは正直言って、半分以上は「嫉妬」だったように思いますね。かくいう私も羨ましかったです。私の場合は単に「すげえなあ」「いいなー」という羨望だけだったのですが。

 自ら敬虔なモスレムでもある常岡さんはもちろん親イスラムで、アンチ・イスラミストの私とはほとんど真逆の立場なのですが、彼の取材は常々「すげえなあ」と思って拝見してきました(私が編集したムックに寄稿いただいたこともあります)。無事をお祈りします。
  1. 2010/04/02(金) 17:00:41|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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