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ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

不毛地帯

 昨日よりドラマ『不毛地帯』が始まりました。で、それに合わせて発売された『山崎豊子 全小説を読み解く』(洋泉社ムック)に、「瀬島モノという新ジャンル」という記事を寄稿しました。→アマゾン 
 私はそれほど氏の小説に詳しいわけではありませんが、自称・昭和史オタクとして、『不毛地帯』のモデルとなった瀬島龍三氏のかなりディープなマニアでもあります(もともとそれがソ連でのコワレンコ取材の発端だったりします)。
 瀬島さんといえば、保阪正康氏の『瀬島龍三 参謀の昭和史』とか魚住昭さんたちの『沈黙のファイル』とか昭和史オタクの絶大な支持を集める名作がいくつもありますが(ゴルゴ13にも瀬島モデルの人物が登場する話があります)、瀬島マニアの私の原風景は映画版の仲代達矢ですね。
 ところで、面白いのは、『不毛地帯』出版の頃の瀬島氏はまだ伊藤忠の副社長だったのですね。で、作者は当時、瀬島氏ご本人も取材されているようです。実在の人物、しかも現役バリバリの人物を主人公に設定して大河フィクションを書くなんて凄いです。しかも、まさに同時代のFX商戦の裏側とか書いちゃってますし。最初は『サンデー毎日』の連載だったので、同社の記者たちが協力しているとは思うのですが、なかなか真似のできない度胸でしょう。
 瀬島さんの存在はそういうことで副社長のときに全国区になってしまったわけですが、その後、同社会長に上り詰め、中曽根政権の土光臨調の有力委員とかにもなっています。一種の財界フィクサーとしてその後も影響力を行使しますが、そういうのに『不毛地帯』などで広まった〝瀬島神話〟はどう作用していたのかということも興味深いです。自称・黒幕オタクの私は拙著『謀略の昭和裏面史』を書いたときに戦後の政財界フィクサーたちを相当調べたことがあるのですが、えてしてそうした〝神話〟はフィクサーたちの〝大物化〟に結びついています。瀬島さんのケースでもそういうことがあったのかもしれませんね。


 ところで、現在発売中の『週刊SPA』にて、「中国軍最新兵器に自衛隊は完敗する! 建国60周年軍事パレードで最新戦力が明らかに!"仮想敵国"の戦闘能力を徹底解剖」という記事に資料提供し、コメントも採用していただきました。タイトルがちょっとアレですけど、いずれにせよ中国軍の近代化はもはや侮れません。では日本はどうするかということですが・・・
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  1. 2009/10/16(金) 10:26:21|
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江畑謙介氏の凄さ

 亡くなられた江畑謙介さんは、非常に緻密な文章を書く方でした。私は編集者としてムック本に原稿を書いていただいたことがあります。マイナーな若者向けムック本であったのにも関わらず、快く引き受けていただいたのですが、その際、「文章に手を加えない」という条件を提示されました。聞くと、編集サイドに文章に勝手に手を加えられ、意味が変わってしまった経験が何度かあったのだということでした。
 実際、雑誌やムックの編集現場では、執筆者の文章を直すということが日常的に行われています。私は編集者とライターを両方やっているのですが、編集者のときには「直されないような原稿を書いてこっちにラクさせてよなー」とか思いながら直しを入れますし、ライターのときには「そんなところとっくに計算して書いてるのに、余計な手を入れないでほしいよなー」とか思いながら著者校正したりします。逆に見れば、きっとライターとしての私の文章はダメダメであり、編集者としての私の直しも「余計なこと」なのでしょう。
 で、江畑さんの原稿ですが、もう私なんぞ何も言うことのない完璧な原稿に仕上がっていました。江畑さんは豊富な知識に裏打ちされた解説者として突出した方でしたが、文筆家としても非凡な方であったと思います。
 ところで、軍事解説ブログ大手の『週刊オブイェクト』さんで、江畑さん訃報関連で某議員のブログが問題になっていることを知りました。→http://obiekt.seesaa.net/
 私から見て、江畑さんが凄かったなと思うのは、とにかく情報収集の量が半端ではなかったということです。今の時代、情報分析の観点からすると、現地体験とか特殊人脈ルートとかいうのはそれほど意味がありません。それよりも、良質の洋書あるいは海外メディアや研究者のレポート、各種資料等をどれだけ吸収し、咀嚼したかということが大きくモノを言います。
 ところが、このネット社会では、収集すべき情報が途方もない量になっています。そこで情報収集を継続していくということも、途方もない作業になります。
 たとえば、ある事象について記事や本を書いたりするとき、集中的にその分野の情報を収集し、整理するということはそれほど難しくはありません。テスト前勉強みたいなものです。
 ですが、本を一冊書き上げた後、そのモチベーションを維持して情報更新を続けていくというのは、これは気の遠くなるような労力になります。この点に関して、江畑さんはその著作をみるとよくわかるのですが、群を抜いた方であったと思います。しかも、兵器関連だけでなく、軍事戦略の分野から国家安全保障、インテリジェンス関連まで、非常に幅広くカバーされていました。これは、個人の仕事としては圧倒的なものと言っていいかと思います。
  1. 2009/10/14(水) 12:23:37|
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吉田=ハル密約

 久々の週刊誌ですが、本日発売の『週刊朝日』に「もう一つの日米密約~吉田茂が創設した自衛隊『影の部隊』」という記事を寄稿しました。自衛隊発足時、MSA協定の裏で、政権末期の吉田茂首相と当時の極東米軍司令官ジョン・ハル大将のあいだに交わされた秘密協定の話を掘り下げました。
 このところ自衛隊の「影の部隊」すなわち陸幕2部別班関連の取材が続きましたが、当時の話は非常に興味深いですね。これまでこの種の話は、主に『赤旗』などが「けしからん!」というスタンスで切り込んできていて、それがために当時の話は厳重に秘匿されてきたという経緯があるわけですが、私自身は、「冷戦構造というシビアな国際政治環境下」で国防を裏で支えた人々の、一種の〝群像劇〟として見ています。国防を担うという使命感と、組織人としての葛藤が彼らの行動の基盤にあったと思われますが、その部分をもっと知りたいと思っています。
  1. 2009/10/06(火) 10:14:46|
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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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