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- 2009/01/30(金) 19:44:24|
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エジプトの仲介で、イスラエル、ハマス、パレスチナ自治政府の代表がエジプトで停戦協議に入ることになりました。
http://www.47news.jp/CN/200901/CN2009010801000192.html なんらかの進展があればいいのですが、とくにハマス側がきちんと停戦できるかはなかなか難しいと思われます。というのも、アラブ社会全体で「ハマスもっと頑張れ!」世論が沸騰している今、「そうは言っても、もうしんどいよ」と言って矛を収める勇気は、ハマス指導部もなかなか持ちづらい状況にあるからです。
また、仮にハマス指導部の一派が停戦を希望したとしても、前述したようにハマス指導部は軍事部門を完全に統制できていないと思われるので、なかなかうまくいきません。
それに関連して、ワシントンの中東研究機関「中東報道研究機関」(MEMRI)日本語版サイトに、アラビア語ニュース・サイトから転載した興味深い記事がありました。「ハマスはパレスチナ社会に破滅をもたらしている~著名アラブ人思想家の主張」という記事です。
http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SP217309 なかなか過激なタイトルですが、概ね私も共感できるところがあります。そして、そこにこんな一節がありました。
「(ハマスの指導者達は)メンバー特にカッサム旅団の一派を恐れているのである」
パレスチナでは、下手なことをすると自身が内ゲバに遭います。いかに共同体のなかで「裏切り者」と呼ばれないでうまく立ち回れるか・・・アラファトやアブニダルの頃から、パレスチナのリーダーたちはずっと同じような政治的サバイバル環境下にいます。
ハマスの綱領は非常に硬直したものではありますが、中には穏健派もいます。今、パレスチナではハマス強硬派への支持が非常に高まっていますが、それはたいへん危険な「ムード」であると思います。
ハマスは自治区の前回の選挙に勝利しているので、民主主義の原則でいえば現在の自治政府のほうが正統性を逸脱しているわけですが、「ハマスもっと頑張れ!」との声は結局のところ現地の人々に不幸をもたらす結果になっています。そうした現実を直視することを、もっと現地の人に浸透させることが必要なのではないでしょうか。
ところが、世界中でパレスチナに同情的な人々が「ハマス頑張れ!」というメッセージを発信しています。ハマス内部の強硬派は「世界は自分たちを支持してくれている」ということで、ますます発言力を高めることになります。イスラエルに自制を求めるのは大前提ですが、ハマスの罪も厳しく追求すべきではないでしょうか。そうでないと、ガザの人々はますます苦しい状況になってしまうと思います。
- 2009/01/08(木) 11:04:08|
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ハマスについて追記します。
古い話ですが、90年代の後半にハマスの軍事部門「イッザルディン・アル・カッサム隊」がイスラエル国内で怒涛の自爆テロ攻勢をかけた時期があって、当時、カイロに居住していた私も、ガザでハマスを取材したことがあります。もう10年ちょっと前の話であまり参考にならないかもしれませんが、ちょっと思い出しましたので、当時の様子を記してみます。
自爆テロ頻発時期でしたが、当時はイスラエル国防軍の記者証(その頃はフリーランスでもわりと簡単に取得できました)があると、イスラエル側からガザに自由に行くことができました。で、外国人記者は誰でも簡単にハマスの報道官に会うことが出来ました。当時、現地で医師として働いていたマフムード・ザッハルという人物でした。
で、この人は当時、ハマスのガザ指導部のなかで、穏健派指導者3人組の一人と目されていた人物でした。カッサム隊などの過激派は全員が地下活動なので、外国人記者が取材することは不可能でしたが(取材謝礼狙いの偽カッサム隊はいっぱいいましたが)、ザッハルに関しては、イスラエル側も「あいつなら、まあいいだろう」ということだったのだと思います。
で、当時、私は彼とどういう話をしたかというと「自爆テロはよくないよねえ」「カッサム隊には困ったもんだよねえ」というような話でした。カッサム隊はハマスでもほぼ完全に過激路線のヨルダン支部の指揮下にあり、ザッハルら地元組とは違うラインで動いていたことを、そのときザッハルはちょっと愚痴りながら教えてくれました。つまり、当時はハマスでもザッハルら地元組は現実的な穏健路線が多く、国外をベースとする過激派を持て余していたのです。
で、当時ハマスのヨルダン支部の中心人物だったのが、現在シリア在住のハリド・メシャルでした。過激派はメシャルだけということではなくて、他にもいましたが、97年にヨルダンでモサドに暗殺されかかったことなどで、過激派のなかで発言力をかなり高めました。
パレスチナではその後、ハマスの最高幹部が相次いで殺害され、今ではザッハルが最高幹部になっています。ザッハルに関しては、「もともと強硬派だったが、後に穏健派に転向した」というような情報もありますけれども、以上のようなわけで、ハマスのなかではもともとは穏健派(あくまで「ハマスの中では」の話ですが)に入る人物です。
ですが、実際のところ、ハマスは強力なリーダーシップの下に統制された組織ではないので、現在もザッハルは軍事部門を押さえていないと思います。強硬派の主流派でもっとも影響力があるのは(完全にハマス民兵のすべてをコントロールできているわけではないと思いますが)メシャルで、それゆえメシャルに影響力を持つシリアが重要になるわけです。
- 2009/01/06(火) 04:05:16|
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シリアの首都ダマスカスの各病院に、ハマス戦闘員の負傷者が続々と運ばれているとの情報が入りました。ガザから運び出すとしたらエジプト・ルートの可能性が高いですが、どうやってシリアまで運び込んでいるのか不可解です。また、逆に言えば、エジプトやヨルダンなどがハマス負傷兵を引き受けていない(けれども通過は認める?)ということになります。
いずれにせよ、ハマスの聖域といえば、今はもうシリアしかありません。ハマスにもいろいろ派閥はありますが、主流派(最強硬派)はハリド・メシャルという人物を中心とする一派で、メシャルはその昔、ヨルダンでモサドに暗殺されかかってから、ずっとシリアに庇護されています。エジプトやヨルダンなどからすると、ハマスはもはや迷惑なだけの存在で、後ろ盾はもうシリアしかありません。
ハマスは武器や資金をイランからだいぶもらっているようですが、アラブ人(とくにスンニ派。ちなみにパレスチナ人の大多数はスンニ派)からするとイラン人というのは所詮はガイジンなので、スポンサーではあっても同志という意識はあまりありません。ですので、ハマスの行動を抑えられるのは、言い換えれば、今回の紛争の調停ができるのは、シリアしかないと思います。
ところが、フランスのサルコジ大統領あたりが調停に動いてますが、パレスチナ自治政府(つまりファタハ)がけっこう前面に出てきています。ガザを追い出されているファタハにハマスを抑える力はありませんから、直接は停戦に役立ちませんが、この機に自らの存在感を高めようという意図もあるように見えます。
ところで、麻生総理は今月3日、パレスチナ自治政府のアッバス議長に対し、ガザ地区の人道支援に1000万ドルの援助を行うことを表明しましたが、少し心配なのは、その援助の一部をまさかパレスチナ自治政府に委ねる気では??ということです。
外務省の担当者は当然よくご存知と思いますが、ハマスはカネを受け取れば武器を買ってしまいますし、アメリカがテロ組織としていますので、まさか日本政府がカネを渡すわけにはいかないでしょう。ということで、日本国民の大事な税金を自治政府に渡すのかもしれませんが、あの人たちに渡すと、ほぼ全額が自治政府幹部のポケットに入ってしまうと思います。ファタハ(つまり、かつてのアラファト派)とはそういう人たちであり、それゆえに腐敗度の低いハマスのほうが地元でも人気が高いわけです。ガザはかなりひどい状況になっているようですので、人道支援は大いに結構ですが、ちゃんとガザ市民のために使われるようにしていただきたいものです。
ところで、今回のイスラエル軍のやりすぎ攻撃に対しては、世界のメディアは概ね批判的です。「ハマスが悪い」「ハマスが声明を受け入れるはずはない」と安保理声明を妨害したブッシュ米政権にも批判殺到ですが、「イスラエル軍は即刻引き揚げよ」だけでは、ハマスが調子に乗ってますます悪さをするというのも事実だと思います。
絶対強者のイスラエルに軍事行動停止を求めるのは当然として、それプラス、「ハマスをどうにかする」という視点がなければ、あまり意味がないのではないでしょうか。ということで、ハマスを抑える(表面的な停戦交渉でなく、実際に武闘派グループに攻撃をやめさせる)ためには、やはりシリアに働きかけるしかないと思うのですが……。
ところで、今回、イスラエルがハマス潰しに本気になっている背景には、イランの核開発があるのかもしれません。今年はイランがいよいよ核爆弾1発分の高濃縮ウランを入手する懸念があります。イスラエルはそれは絶対阻止に動きますから、戦争の可能性がマジであるわけです。日本のメディア解説を読むと、イスラエル政局の影響を重視する視点が多いようですが、それだけでもないような気がします。いずれにせよ、今年は中東で大規模な紛争が起こる可能性があります。
[ハマスに影響力を持つのはシリアだけ]の続きを読む
- 2009/01/06(火) 01:17:10|
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