フランスが米英豪の新同盟AUKUS発足に激怒した背景2021年09月26日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/206926≪潜水艦の開発をめぐってフランスが激怒。バイデン大統領が謝ると言う事態があった。背景には対中国包囲網に関する「あらたな動き」が…軍事ジャーナリスト黒井文太郎が解説する≫
9月22日(米国時間)、アメリカのバイデン大統領とフランスのマクロン大統領が急遽、電話会談を行った。これはバイデン大統領がもちかけ、マクロン大統領が応じたものだ。
この会談でバイデン大統領は事実上の「謝罪」をした。
問題の発端は、9月15日に米英豪が他の同盟国にまったく事前連絡もせずに、新たな安全保障の枠組みである「AUKUS」(読み方はオーカス)の発足を発表したこと。
さらにオーストラリアが、フランス企業と進めていた潜水艦開発・建造の契約を一方的に破棄し、米英の協力で新たな潜水艦開発を目指すと決定したことだった。これにフランスは激怒し、駐米・駐豪大使をフランスに引き揚げさせるという、異例の抗議を行った。
22日の電話会談でバイデン大統領は、フランスに対する態度に過ちがあったことを認め、インド太平洋地域におけるフランスの戦略的重要性を再確認するとともに、今後は戦略的な関心事はオープンに協議することを約束した。
これを受けて、マクロン大統領は駐米大使のワシントン帰還を決定。10月には対面で首脳会談することも決まった。要するに、バイデン大統領が「謝った」ことで、なんとかマクロン大統領が機嫌を直したかたちだ。
いずれにせよ、これで駐米大使召還まで悪化していたフランスの米国への怒りは多少は鎮まり、両国は和解の方向に動き出した。両国はNATOの同盟国であり、一時的に喧嘩はしても、結局は同じ陣営の国なのだ。
ただ、潜水艦契約に関しては、フランスにも責任はあった。オーストラリアは2016年に12隻の通常動力型潜水艦の開発・建造協力でフランス企業と契約したが、フランス側の技術不足で計画がどんどん遅延されたことに加え、契約当初は約4兆円だった総額が約7兆円に跳ね上がるなど、先行きが不透明になっていたのだ。
そんななか、オーストラリアと中国の政治的な対立が激化。中国が海上戦力をどんどん強化していることへの対応として、オーストラリアはこの際、通常動力型をやめて新規に8隻の原潜を取得する決断をした。そこでイギリス経由で米国に打診し、秘密裏に交渉を進めて今回の発表となったのである。
国家を挙げてのビッグビジネスを一方的に反故にされたフランスだが、激しい怒りを見せたのは、単にカネの話だけではない。国際的な安全保障の枠組みから、自分たちが排除されたことが大きいと思われる。
今回のAUKUSは新技術開発や経済分野も包括するが、メインは軍事同盟である。もともと英米はNATOで軍事同盟関係にあり、米豪も「ANZUS」(米豪ニュージーランド安全保障条約)で結ばれているが、今回、3か国のさらなる連携が宣言されたわけである。
それが他の同盟国への事前の連絡が一切ないままに突如、発表された。NATO参加国などの同盟国は軽視されたということになる。
(以下略)
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- 2021/09/27(月) 16:35:08|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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総裁選で話題の「敵基地攻撃能力」
その有効性をリアル想定で分類してみる〜黒井文太郎レポート2021年09月22日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/2058669月10日、高市早苗前総務相がテレビ番組で、
「敵基地を一刻も早く無力化した方が勝ちだ。使えるツールは電磁波や衛星ということになる」「強い電磁波などいろいろな方法でまず相手の基地を無力化する。一歩遅れたら日本は悲惨なことになる」
などと語り、注目された。
高市氏は19日の候補者テレビ討論でも「敵基地の無力化」の重要性を指摘し、今度はそのために精密誘導ミサイルの必要性を主張している。
岸田文雄前政調会長も、13日の記者会見で、敵基地攻撃能力保有を「有力な選択肢」と評価した。
他方、河野太郎行政改革相も13日の記者会見で言及。北朝鮮ミサイルを想定した質問に対し
「敵基地攻撃は随分前の議論だ」
と指摘。
17日の記者会見では対中国軍を想定した質問の流れに
「敵基地攻撃能力は昭和の概念。抑止力は日米同盟で高めていく。短絡的な議論は避けるべきだ」
と言及。導入に慎重な姿勢を示した。
「敵基地攻撃」とは、具体的に何なのか自民党総裁選での各候補の安全保障政策に関し、なにやら「敵基地攻撃能力」の是非が論点になってきている。
これは、北朝鮮や中国のミサイルの脅威から日本を守るため、従来のミサイル防衛に加えて、敵の基地を攻撃する兵器を新たに導入・配備しようという議論だ。
日本の次のリーダーを選ぶ重要な自民党総裁選で、各候補の安全保障政策の違いが論点に上がるのは悪くない。テクニカルな分野に踏み入る分野だが、候補者たちにも正面から取り組む姿勢が見えて、それ自体は評価できる。
ただ、こうした質疑の場で、尋ねるメディアも、答える候補者側も、それぞれ想定している敵基地攻撃の状況の認識が統一されていない印象があり、見ていてしばしばチグハグなやり取りになっている。
それでは、せっかくの「議論」も迷走してしまう。敵基地攻撃能力とは具体的にはどういう状況での、どういう目的で、どういうことをやる能力を想定しているのか。リアル想定で分類してみたい。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:26:13|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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妹・金与正が語っていた「新型ミサイル発射」の本当の目的
「挑発ではない!」「党大会決定の活動だ」政治的アピールとは無関係か〜黒井文太郎レポート2021年09月18日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/205532<北朝鮮が15日、「短距離弾道ミサイル」の発射実験を行った。9月11~12日に行った「長距離巡航ミサイル」の発射実験に続くこの動きに、報道が錯綜している。軍事ジャーナリスト・黒井文太郎が、金正恩、金与正兄妹の「真意」を読み解いた。>
北朝鮮2つのミサイルの特徴は巡航ミサイルはジェット・エンジンで推進するミサイルで、速度は遅いが概して命中精度が優れている。低速なので発見できれば撃ち落とすのは比較的容易だが、通常、きわめて低い高度を進むので、目前に現れるまでレーダーに探知されにくい。
他方、弾道ミサイルはロケット推進で高速で打ち上げられ、その勢いの慣性で飛んで標的を攻撃する。高い高度まで上がるので、遠くからでもレーダーで捕捉・追尾されやすいが、速度が速いので迎撃は困難だ。
日本全土が「射程内」になった11〜12日に北朝鮮が発射した巡航ミサイルは射程1500㎞で、日本全土を狙うことができる。北朝鮮では今年1月の朝鮮労働党大会で、金正恩委員長(現・総書記)がそれまでの党の政治的成果と今後の方針を報告したのだが、軍事分野の言及の中に「中・長距離巡航ミサイルをはじめとする先端核戦術兵器も次々と開発」とあった。つまり彼らは巡航ミサイルを核ミサイルとして開発しているわけで、それが完成すれば、日本は従来の核弾道ミサイルに加えて、さらに核巡航ミサイルにも備えなければならなくなる。
ただし、これを核ミサイルにするには、数百kgレベルまで核爆弾を小型化しなければならず、おそらく北朝鮮はまだそれを実現していない。しかし、核爆弾でない通常爆弾でも、命中精度の高い巡航ミサイルなら、日本の各重要拠点をピンポイントで狙うことができる。1発あたりの威力は大きくないが、数多く使うことで成果が期待できる。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:22:25|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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過激テロ指導者もいる「組閣」でわかったタリバン政府の今後
アフガニスタンで何が起きているのか。黒井文太郎緊急レポート2021年09月10日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/2042159月7日、タリバンが暫定政権の顔ぶれをようやく発表した。8月15日に首都カブールを制圧してから、すでに3週間以上が経過している。
これまでアフガニスタン情勢に関しては、タリバン新政権が穏健路線をとるのか、あるいは過去のような国内での厳しい弾圧をともなう強圧的な路線をとるのかが、最大の注目点だった。タリバンの対外的な情報発信を担ってきたのは、もともとカタールを拠点に対米交渉を担当してきた政治部門の指導者たちであり、この3週間も、対外的にはずっと穏健路線をアピールしてきた。
しかし、①彼らの言葉は本心なのか否か、あるいは②彼らの言葉はタリバン指導部の総意なのか否か、③彼らの方針にタリバンの末端勢力は従うのか否か、が不明だった。
〝過去のタリバン″ではなく、〝現在のタリバン″の内情については情報がほとんどなかったから、世界中のメディアも、アフガニスタンの今後について、あやふやな「憶測」を報じるしかなかった。
しかし今回のタリバンの「暫定政権の人事発表」によって、〝現在のタリバン″について、いくつか「推測」が可能になった。
タリバン組閣の「意味」を読み解く▽内部で綱引きがある前述したように、新体制の発表まで3週間あまりもかかった。これは、タリバン指導部内で、さまざまな陣営の間で話し合いが長引いたためと推測できる。
タリバンはもともとパシュトゥーン人を中心にした有力な部族指導者・戦闘指揮官の集合体だが、強い指導力・影響力を持つリーダーがいれば、話は基本的には上意下達で早い。しかし、おそらく新政権の統治方針と主導権をめぐって、話し合いがかなり紛糾した可能性がきわめて高い。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:17:02|
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アフガン・カブール空港 70人超を殺害した過激派組織の「正体」
反タリバン過激派組織「ISホラサン州」とは何者か2021年08月27日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/201729<タリバンによるアフガニスタン全土制圧から2週間。他国へ逃げ出そうとする市民が殺到した空港で、恐れていた事件が起きた。今回の爆弾テロ実行犯はタリバンではない。現地情報が錯綜するなか、テロ組織を長年ウォッチする軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏が緊急レポートする。>
8月26日、アフガニスタンのカブール空港の入口付近と近傍のホテルで、爆弾テロが発生。米兵13人を含む70人以上が殺害された。
アフガニスタン情勢をめぐっては、イスラム強硬派「タリバン」が8月15日にカブールを制圧したことから、タリバンがいちやく注目されていたが、じつは、今回の犯行はタリバンではない。
事件後、「ISホラサン州」(ISKPもしくはISIS-K)というイスラム過激派組織が犯行声明の動画を発表した。もともと事件に先立って米英当局などがISホラサン州による空港テロの脅威を指摘していたが、そのとおりになった展開だ。
「ISホラサン州」とは何者か?名前のとおり、自ら「IS(イスラム国)」の「ホラサン州支部」を名乗っているグループで、IS最高指導者に忠誠を誓っている。イラクとシリアでISに勢いがあった頃、ISに共鳴した世界各地のイスラム過激派が、それぞれ自ら「ISの支部」を名乗ったが、そのアフガニスタン=パキスタン版だ。ホラサン州とは古い地域名で、現代のイラン、中央アジア、アフガニスタン、パキスタンの一部にまたがる地域を指す。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:13:13|
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「タリバンは悪玉か、穏健化したか」 世界の見方
~政権崩壊から1週間。アフガニスタンで今、なにが起きているのかー黒井文太郎レポート2021年08月22日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/200635タリバンは、はたして「怖ろしい集団」なのか。いま、世界が固唾を呑んで注視している。
アフガニスタンで8月15日、イスラム武装勢力「タリバン」が首都カブールを制圧した。以来、米CNNや英BBCなどの海外メディアは連日、アフガニスタン情勢をメインに報道し続けている。今後タリバン新政権が何をやってくるか「まだわからない」からだ。
8月19日、ドイツ国営放送「ドイチェ・ヴェレ」は、同社記者4人のアフガニスタン国内の自宅がタリバン兵士の捜索を受けたと発表した。現在はドイツで活動している記者の家族1名が殺害され、もう1名が重傷を負ったという。同社ディレクターは「アフガニスタン国内でタリバンが組織的にジャーナリストを探していることは明らかだ」としている。
タリバンという武装勢力がやってきたことタリバンは内戦が激しかった1996年に一度、政権を奪取している。多数派部族であるパシュトゥーン人が中心の組織で、イスラム法を規範としたが、実際には古くからの部族の厳しい掟を重視し、それを独自のイスラム法解釈として人々に強要した。そのため、女性の労働や教育、自由な外出を認めないとか、西洋的な娯楽を禁じるとか、四肢切断や石打ち、鞭打ちなどの残酷な刑罰、あるいは公開処刑を導入するといった人権侵害が甚だしかった。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:09:45|
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南ア「暴動」とキューバ「デモ」似て非なるそれぞれの事情
大規模な抗議行動が起きた2つの国で、人々はなにを求めているのか〜黒井文太郎レポート2021年07月18日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/194041今、2つの国で大規模なデモが起きている。南アフリカとキューバだ。南アでは、暴動に発展して、ショッピングセンターなどでの略奪行為も拡大している。死亡者もでている。
この2か国のデモは、どちらもコロナ禍による経済低迷を背景とした「一般庶民の不満爆発」という共通点はある。が、それ以上に、両国ともに社会の根底に潜んでいた問題が顕在化したという側面を持っている。一見同じに見える「コロナ禍の暴動」だが、その深層は、当然ながらそれぞれに国の事情による。
南アが抱える問題の根底には暴力の蔓延と失業が
南アフリカの状況をみてみよう。
引き金は、6月29日にズマ前大統領に禁固刑が確定し、7月7日に自ら出頭して収監されたことだった。彼は在任中の汚職容疑で調査委員会への出席を求められていたが拒否していたため、法廷侮辱罪での有罪判決だった。
すると、ズマ前大統領の支持者が反発し、抗議デモが発生。それが10日から放火などの破壊行為に発展し、さらにそれに乗じて略奪行為が拡大した。13日までに600以上の店舗で、数十億ランド(1ランド=約7.5円)が略奪されたとみられる。
南ア政府は7月12日、軍の派遣に踏み切ったが、暴動・略奪は一向に収まらない。13日までに死者は72人、逮捕者は1234人となっている。死者の多くは、略奪にともなう争いで亡くなったとみられる。
この暴動の最大の要因は、ズマ前大統領とラマポーザ現大統領の対立だ。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:02:16|
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英国研究機関の調査報告が示す「ニッポン」サイバーセキュリティの課題
軍事ジャーナリスト・黒井文太郎レポート2021年07月12日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/192770国際社会で日々更新される「サイバーセキュリティー戦略」に遅ればせながら踏み込んだ日本。その現状と課題を、海外の最新データをもとに軍事ジャーナリスト・黒井文太郎が読み解く。
7月7日、日本政府のサイバーセキュリティ戦略本部は、今後3年間の「次期サイバーセキュリティ戦略」案を策定した。日本はサイバー戦で主要国から後れをとっているといわれるが、これはそのサイバー防衛力の強化を図る戦略だ。今回、警戒する相手国として中国、ロシア、北朝鮮が名指しされた。今後、これを元にさらに議論を深め、正式な新戦略は今年9月に閣議決定する予定である。
もっとも、日本政府機関はすでにそれぞれサイバー能力の強化を模索している。防衛省では2022年度概算予算要求でサイバー部門の大幅予算増を求める予定だ。また、警察庁は2022年度にサイバー局を新設し、その傘下で約200人のサイバー直轄隊(仮称)を運用する予定である。
では、日本は現在、サイバー戦能力では世界でどれほどの位置にいるのか?
6月28日、英国の有力シンクタンク「国際戦略研究所」(IISS)が調査報告書「サイバー能力と国家パワー」を発表した。主要15か国のサイバー能力を独自の指標で算定したものだ。これはあくまで同研究所の評価だが、その内容はたいへん興味深い。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:58:35|
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特殊部隊経験者のイスラエル新首相 若手指揮官時代の「ダメ」疑惑
現地を見ていた日本人ジャーナリストのレポート2021年06月18日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/1881536月16日、5月以来停戦状態だったガザ地区で、空爆が行われた。イスラエル/パレスチナではなかなか平和は訪れない。そうした紛争が日常的なこの国で、今後のイスラエル政府の指揮をとるのは、13日に就任したばかりのナフタリ・ベネット新首相だ。
ベネットは1972年生まれの49歳で、71歳のベンヤミン・ネタニヤフ前首相から、22歳も若返る。軍人を経てIT企業家となり、その後、2006年にネタニヤフの補佐官として政界に転身。右派政党の党首になるとともに、ネタニヤフ政権で経済相や国防相を歴任した。
ベネット新政権は、反ネタニヤフで連携した8党の連立政権で、中道派から右派、アラブ政党まで含む寄り合い所帯だ。主導したのは議会第2党の中道派政党「イェシュアティド」で、ベネットは第5党の右派政党「ヤミヤ」の党首だが、連立のカギを握る立場だったことで首相の座を得た。首相の任期は4年だが、前半2年をベネットが、後半2年をイェシュアティドのヤイル・ラピド党首が担うことが合意されている。
ベネット新首相は右寄りだったネタニヤフ以上の右派強硬派だが、中道派が主導する連立政権である以上、政策的にはあまり新規の路線にはならないだろうとみられている。イスラエルで連立政権は常だが、これほどの雑多な寄り合いは初めてであり、早期の分裂を予想する声も少なくない。
イスラエルの政治指導者は軍人出身だが…さて、イスラエルは周知のように建国以来、イスラム圏の各国と敵対関係にあり、国民にも兵役を課している。政治指導者は歴代、それぞれ軍人としての実績を持つ人物が多い。
ネタニヤフ前首相も青年期に5年間、特殊部隊「サイェレット·マトカル」に所属して現場指揮官を務めており、対レバノン戦やハイジャック救出作戦など実戦経験が豊富にある。その後、第四次中東戦争でも特殊作戦を指揮した。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:54:14|
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大手メディアも伝えた「コロナ・武漢研究所流出説」の深層
情報分析の専門家が解説「メディアから流れる刺激的な仮説」の背景と読み方2021年06月13日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/186587「情報」をどう読むか。
新型コロナが世界を襲ってから、科学分野の記事を目にすることが多くなった。国内だけでなく海外の情報に触れる機会も飛躍的に増えるなか、真偽が定かでない「情報」も多くなった。海外メディアの「情報」を十分な検証、咀嚼することなく「ダダ流し」ているメディアも、残念ながら少なくない。それに踊らされることは不幸でしかない。
「インテリジェンス(情報収集・分析)」の手法に詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎が、その「読み方」を解説する。
アメリカの新聞が報じたことの正しい「意味」6月7日、米有力紙『ウォールストリート・ジャーナル』が、関係者の話として
「米国のローレンス・リバモア国立研究所が2020年5月に、新型コロナ・ウイルスが武漢研究所から流出した可能性にも説得力があるとの報告書を作成していた」
と報じた。
この記事をロイター通信などが「そのまま」伝えたため、日本のメディア各社も大きく報道したが、ひとつ注意が必要だ。
このニュースだけ見ると、あたかもそれが「事実」であるかのような印象だが、実際は、そうではない。あくまで「一研究機関が、かつてそうした報告書を作成していた」というだけの話であり、しかも何か新たな科学的発見があり、専門家の世界で認められたというような意味ではないことに留意しなければならない。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:39:38|
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スティーブン・セガールが「ロシア政界に進出」の仰天背景
俺たちのセガールは、ぜんぜん「沈黙」していない〜黒井文太郎レポート2021年06月02日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/1841255月27日、あのスティーブン·セガールが「公正ロシア」党に入党!という仰天ニュースが世界を駆け巡った。
映画『沈黙の戦艦』『沈黙の要塞』などの沈黙シリーズで知られる米国のアクション俳優、スティーブン・セガールが、ロシア・プーチン政権の支持基盤のひとつである体制内野党「公正ロシア~真実のために」に入党するというのだ。同党は、ロシア第4党にあたる有力政党で、セガールはロシアで大きな「政治的影響力」を持つことになる。
関西弁も堪能な国際派マッチョ俳優が「CIA説」もセガールはアメリカ出身の69歳。17歳のときに訪日、大阪で合気道師範をしていたという異色の経歴を持つ肉体派俳優だ。遅咲きのスターで、アジアで過ごした若き日の経歴が謎めいていたことや、映画で米軍特殊部隊員やCIA工作員の役をしばしば演じていたことから、ネットで「若い頃は本物のCIA工作員だったらしい」などという噂が飛び交ったこともあった。
もちろんフェイクニュースですらない、ただの「ネタ」だ。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:34:32|
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いま、日本に「対外情報専門機関創設」議論が必要な背景
対外情報収集の組織を作るために不可欠な条件は〜黒井文太郎レポート2021年05月06日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/178306「情報組織をしっかりと作る必要はあると思いますよ」
4月27日、安倍晋三前首相がYouTube番組「魚屋のおっチャンネル」に出演した際、日本にも情報機関が必要だと提案した。
たしかに日本の情報力が弱いということ、は日本の安全保障関係者の間ではよく言われており、その例として日本政府に情報機関が存在しないこともよく指摘される。実際、主要国で独自の情報機関を持たないのは日本だけだ。
各省庁が「情報」を独自に収集している現状安全保障のためには、情報は不可欠だ。仮想敵国の動向、あるいはテロ組織などの情報を探り、その脅威に備える必要がある。軍備と情報は安全保障の両輪のようなもので、どちらも不可欠だが、日本には自衛隊の軍事力はあるものの、情報機関がない。これは国家の安全保障の仕組みとしては、諸外国に比べると著しく不完全な状態である。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:31:02|
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震災と復興と悔しさと…10年目の福島県いわき市を歩く
黒井文太郎レポート【後編】2021年04月08日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/1732922011年3月、東日本大震災。地震、津波、そして原発事故。そんななか「すこし特殊」だった福島県いわき市の復興を支えた人を、いわき出身の軍事ジャーナリスト黒井文太郎が取材した。
いわきの「特殊な立ち位置」いわき市は被災地としては、ちょっと特殊な位置づけになる。
岩手や宮城の海岸部は、津波で凄まじい被害を受けた。福島県浜通り双葉郡の各町は、原発事故後の放射線被害で長期の避難生活を強いられた。それらに比べ、いわき市は全体的にみると、少し事情が違う。
僕は高校までいわきで育った。今は関東在住で、たまに帰省する程度だが、同級生たちとは震災当時から連絡はとっている。そうした実感からすれば、東京の人がいわきを見る感覚と、いわきの友人たちの感覚には、10年前から多少食い違いがあるのだ。
福島県外の人は、いわき市を「原発事故被災地」とみる見方が強いように思う。しかし実際には、いわき市では北部の市町境の一部地域を除き、幸いなことに放射線被害はごく軽微で済んだ。線量は低く、市内全域が避難区域の対象外に留まった。いわき市民でも原発事故への無念を語る人は多いが、それは双葉郡の被害を含めての話だ。
震災直後は原発事故の状況がよくわからず、タンクローリーや各種配送車がいわき市内へ立ち入ることを拒否したため、生活物資が枯渇し、多くの市民が市外に脱出するということもあった。だが、そうした事態は数週間で元に戻り、ほとんどの市民は静かに普通の生活に戻った。むろん現在も続く農業・漁業の風評被害は大きいが、風評被害の元凶は「風評」だ。
この風評被害について、悔しい思いを持つ知人は多い。たとえば農産物は、厳しい検査で安全性が確認されているのに、福島県産というだけで敬遠される傾向が当初はあった。実際には地域の線量は低いにもかかわらず、放射線の脅威を誇張する一部のメディア報道に対する違和感を、郷里の友人たちはしばしば伝えてきた。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:24:30|
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故郷・福島に桜の名所を作る「いわき万本桜プロジェクト」のいま
FUKUSHIMAを「被災地」ではなく「誰もが行きたい場所」にする250年計画〜黒井文太郎レポート【前編】2021年04月08日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/173002今年、3月11日に向けて「あの日」の報道が増えていった。あの日のこと、それからのこと。絶望と希望、さまざまな思いが消費されていたように見えた。
そして4月。わたしたちはすでに、忘れかけていないだろうか。
2011年東日本大震災。大きな被害が報道されるなか、福島県いわき市では、「宇宙から見える桜並木を作りたい」と、桜の苗木を植え始めた人がいた。
いわき出身の軍事ジャーナリスト・黒井文太郎が取材した。
軍事ジャーナリスト、故郷を取材する「文太郎さんはいわき市出身ですよね。取材しませんか?」
FRIDAYデジタルから、そんな誘いがあった。普段は海外ニュースの解説などを寄稿しているのだが、やはり震災で被災した故郷には思い入れがある。
「やります。やらせてください!」と即答した。
取材先は「いわき万本桜プロジェクト」という活動だ。いわき市のほぼ中心地にある平(たいら)という町の東部に位置する神谷(かべや)地区に、世界一の桜の名所を作ろうと、震災直後から植樹を続けている人々がいる。活動はもう10年になるから、すでに見事な花が咲き誇っているというという。3月の最終日曜日に一般の人たちが参加する植樹会があるので、その機会に取材しようという話だった。
当日、午前9時前に現場に着くと、すでに多くの人が集まっていた。山奥ではなく、住宅地から少し離れた、田園広がるいわゆる里山である。神谷地区には伯母が住んでいたので、子どもの頃はよく訪れた。ただ、その里の外れにある山林は初めてだった。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:21:28|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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ミャンマー国軍はなぜ市民に銃を向けるのか…驚愕の「殺戮の歴史」
ミャンマーで今、起きていることの背景には〜軍事ジャーナリスト黒井文太郎レポート2021年04月02日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/172318ミャンマーで流血の事態がエスカレートしている。2月1日にクーデターを起こした国軍に抗議する市民のデモ隊に対し、国軍と警察治安部隊が実弾で攻撃。今日までに確認されただけで、500人以上が殺害されている。現地から発信されている動画には、最初から殺害する目的で躊躇なく銃撃している場面もある。「上官から、とにかく殺せと命令された」という脱走兵士の証言もある。
一方的に人々を残虐に殺害するミャンマー国軍とは何なのか? なぜこれほど「簡単に」国民を殺戮するのか?
殺戮が「日常茶飯事」の戦闘集団ミャンマーは第2次世界大戦終結の3年後の1948年にビルマとして独立した。当時から国軍は大きな力を持っており、さらに1962年のクーデターで社会主義のネ・ウィン軍事政権が誕生すると、冷戦期を通じて長期政権を維持した。国軍はビルマ国内で君臨する特権集団であり、それゆえに軍内部の監視・統制は厳しく、結束は固かった。
ネ・ウィン独裁政権の間、国軍は、国内に20グループ以上もある少数民族各派抵抗組織との戦いを続けてきた。同国では多数派のビルマ族が約7割で、その他の3割が少数民族だ。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:17:19|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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日米会談でわかったバイデン政権「本気の対中国包囲網」戦略
日米「2+2」会談、米中「非難応酬」会談。新・冷戦の始まりに日本は?〜黒井文太郎レポート2021年03月22日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/1702563月18日(日本時間19日)、米アラスカ州アンカレジで、米中の外交当局トップ会談が行われた。参加したのは、米国側からブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、中国側からは外交トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員と王毅・国務委員兼外相だった。両国の政権中枢級の会談である。
「各2分」予定の冒頭発言が1時間を超える波乱今回の会談は、中国側の強い希望を受けて開催されため、米国が中国側を「呼びつける」かたちになった。中国側の狙いは、米国と対等の立場で対話を維持する関係性を構築・誇示するとともに、中国批判を強めるバイデン新政権を牽制、できれば懐柔することだったと思われる。
だが、結果的にその日の会談は、きわめて敵対的な雰囲気に終始した。米国側は香港や新疆ウイグル自治区の人権問題、台湾問題、サイバー攻撃問題などで中国を直接批判。中国側は猛反発し、異例の非難応酬となった。
バイデン政権はかねて気候変動問題やコロナ対策といったグローバルな問題を優先する姿勢を示しており、安全保障上の懸念である中国問題への対応の方針が注目されていたが、3月12日の日米豪印首脳電話会談(クアッド)、同16日の日米外務・防衛担当閣僚安全保障協議(2プラス2)、同18日の米韓2プラス2、そしてこの米中外交トップ会談という一連の外交活動の流れで、「国際秩序に重大な挑戦をする力を持つ唯一の国」(3月3日、ブリンケン国務長官の演説)である中国との駆け引きで、甘い顔は見せないとの意思を明確に示したといえる。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:11:30|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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領土交渉をスルーして「平和条約」 プーチン・ロシアの本当の狙い
駐日ロシア大使の会見でわかった「日本懐柔戦略」〜黒井文太郎レポート2021年03月16日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/168833「現在、日露関係はしっかりした基盤に基づいて、さらに善隣・友好・互恵的な協力のかたちで進む可能性があります。(中略)そして、日露関係を幅広く包括的に進めることによって、平和条約締結という課題を実現するために、さらに環境づくりが進められていくと期待しています」
3月10日、ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使のオンライン会見が日本記者クラブで行われたが、その注意深く言葉が選ばれた物言いから、ロシアの狙いが浮き彫りになっている。
日本が大切にしている1956年の「約束」ガルージン大使は冒頭、まずは東日本大震災の被害に対する哀悼の意を表すと、震災時や他の局面での日露間のこれまでのさまざまな協力ぶりを列挙。さらに新型コロナウイルス対策での協力の必要性に触れ、ロシア製ワクチン「スプートニクV」の日本への輸出と、技術移転による日本国内での生産を日本政府に提案したことを説明した。
その後、クリミア併合(大使の言葉では併合ではなく「再統合」)の正当化と、ロシア政府の対外政策の正当性を主張すると、再び日露関係に言及。友好関係を強調し、これまでなかなか進んでいない経済協力についても、「順調です」と肯定的に評価した。そして、善隣・友好を目的とする平和条約の締結を呼びかけてスピーチを終えた。
その後の質疑応答では、日本側記者から「2018年のシンガポール首脳会談で【日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速する】と合意されたが、その後、ロシア政府内で対日関係に対する姿勢に大きな姿勢の変化はあったのか?」との質問が出た。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:06:52|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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内部文書で次々判明・・・国際社会が注視するウイグル弾圧手法
〜軍事ジャーナリスト黒井文太郎レポート2021年02月17日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/163064「放送内容が真実かつ公平でなく、中国の国益に損害を与えた」という理由で、2月12日、中国は、英BBC国際放送の中国国内での放送を禁止した。
これはひとつには、2月4日にイギリスが、中国共産党による統制の構造などを理由に中国国営テレビ「中国環球電視台(CGTN)」のイギリス国内での放送免許を取り消したことへの対抗であろう。
だがそれと同時に、前述のようにBBCの報道内容を問題にしており、同局が「中国にとって都合が悪い内容」を放送をすることを避ける意味が大きい。
中国がとくに反発していること中国側がとくに反発していたのが、2月3日に放送されたウイグル人迫害のニュースだった。それは、強制収容所内で「女性に対して組織的なレイプが行われている」という内容だった。
中国西部の新疆ウイグル自治区において、中国当局が、イスラム教徒主体の少数民族ウイグル人への弾圧を行っているー―このことは、かねてから国際社会で問題になってきた。すでに100万人以上もの住民を「再教育」と称して強制収容し、強制労働や、拷問までを行っているとみられる。
米政府でも1月19日にポンペオ米国務長官(当時)がそれら中国当局の行為を「人道に対する罪」と断定し、「ジェノサイド(集団殺害)」にあたると非難した。バイデン新政権のブリンケン国務長官もジェノサイド認定には同意している。
中国側は否定しているが、ウイグル人への迫害は具体的な情報がいくつも洩れ伝わってきており、もはや疑うべくもない。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 15:00:08|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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反「プーチン」デモで露呈したロシア・圧政のほころび
プーチンの国内支配システムに綻びか〜軍事ジャーナリスト・黒井文太郎レポート(タイトル一部割愛)
2021年01月26日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/1588632020年8月にロシア連邦保安庁(FSB)によって毒殺されかけ、ドイツで治療を受けていたロシア人反体制活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏が1月17日、大胆にも母国ロシアに帰国。到着した空港で、即逮捕された。
これに対し、彼の釈放を求めるデモが1月23日、ロシア各地で開催された。デモは100都市以上で行われ、プーチン政権当局はこれを「未許可の不法集会」と断じ、弾圧した。集会に先立って当局は、ナワリヌイ派の活動家たちを事前に逮捕しており、デモ当日も警官隊を各地に展開させたが、人々はそれでも氷点下の街頭に繰り出し、ナワリヌイ支持を叫んだ。
参加者はモスクワだけで4万人以上。もちろんロシア全土でははるかに多い。シベリアのヤクーツクではなんと零下50度の極寒のなか、人々が集まり、抗議の声を上げた。当局に逮捕されたデモ参加者は3500人以上に達した。各地での同時多発的な数万人規模のデモは、治安当局が強力なロシアではきわめて異例のことだ。
(中略)
とはいえ、強権的なプーチン政権の統治機構は堅固なもので、これだけで政権が倒れる可能性は小さい。今回も多くの人々がすでに逮捕されているが、今後もデモ呼びかけに関与した人物などを数多く摘発していくだろう。
しかし、それでもなお、今回のデモの意味は大きい。プーチン政権の強権ぶりと腐敗ぶりがロシア国内でも広く可視化されたからだ。
プーチン政権は、反対派を弾圧するきわめて独裁色の強い体制だが、その基盤は制度的には独裁体制・権威主義体制ではなく、民主的な選挙制度にある。プーチン政権は、ナワリヌイ氏の大統領選出馬を妨害するなどもしているが、大統領も議員も国民の普通選挙で選ばれている。プーチン大統領は前述した年金制度改革などで支持率を落としてはいるが、それでもこれまで選挙で民主的に選ばれてきた。プーチン大統領を支持してきたロシア国民は多いのだ。
高い支持率を誇ったワケプーチン大統領の高い支持率は、いわゆる大衆扇動という意味でのポピュリズム的政治手法によるところが大きい。使われているのは、主にロシア民族主義・愛国主義である。欧米に対抗して国を守るプーチン大統領こそが真のリーダーだというキャンペーンだ。
また、さらに重要なのが情報統制である。プーチン大統領は2000年に権力を掌握した直後から、精力的に情報統制と世論誘導工作を進めてきた。そして選挙で権力をキープし、その権力で反対派を弾圧する。プーチン大統領の強権剛腕ぶりをスターリンに喩(たと)える言説もあるが、権力維持の手法としてはどちらかというとヒトラーのそれに似ている。
~以下、プーチン政権による愛国主義洗脳政策や情報統制・誘導工作の手法を解説
※全文は上リンクへ
- 2021/02/03(水) 14:46:29|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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大統領就任式へ厳重警戒…アメリカの極右が「内戦準備」の可能性
全米各地で流血もあり得る1月20日の「最終決戦日」〜黒井文太郎レポート2021年01月16日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/157491アメリカの民主主義が死んだ日。2021年1月6日、議事堂に暴徒が突入。死者5人を出す惨事となった。バイデン新大統領の就任式に向けて、国内では不穏な動きが見られる。軍事ジャーナリスト黒井文太郎が、国内外の情報を分析。そこには、震撼するような「計画」があった。
リークされたFBI内部文書にあった「計画」は1月13日、米議会下院は、トランプ大統領に対する弾劾訴追の決議案の採択が行われ、賛成多数で可決された。トランプ支持派はこうした民主党のトランプ降ろしを「不正義な陰謀」とみなして強い反発を示しており、再び暴力に訴えてくる可能性がある。
11日にも「全米各地でトランプ支持派の武装集団によるデモが計画されている」というFBI内部文書がリークされ、米報道各社が報じた。同文書によれば、そうしたデモは1月16日から大統領が交代する20日まで、全米50州の州議会議事堂で、ワシントンの連邦議会議事堂でも17日から20日まで計画されているという。
またこの内部文書によると、FBIはあるグループの指令に関する情報を得ており、それによると、彼らは「トランプ大統領罷免の場合には、全米各地の行政機関と裁判所を襲撃する」ことを呼びかけており、さらに1月20日に「全国で政府機関を襲撃」することを計画しているという。「バイデン新大統領やハリス新副大統領、ペロシ下院議長らへの襲撃計画」を匂わす情報もあるらしい。
1月6日の「暴動」は、アメリカ社会全体にとっては「トランプ大統領の政治的影響力の弱体化」に結びついたが、過激なトランプ“信者”の間では、「1月6日に出来たことは、またやれる」と、むしろ「プラス」に受け止められている。
陰謀論を信じる極右団体の情報を分析する連邦議事堂乱入では、身元が判明しただけでも、さまざまな団体、人々がいた。共和党員、極右過激派、白人至上主義者、元軍人などもいたが、その多くがQアノンの信奉者だったことが、1月11日付のAP通信など米メディア各社の報道から伺える。
危険な人物も目撃されている。たとえば南カリフォルニアのネオナチ組織「ライズ・アバーブ・ムーブメント」(すでに摘発されて解散)の元活動家だったビンセント・フォックスも議事堂内に侵入した。
反ユダヤ系白人至上主義グループ「グロイパー・アーミー」のメンバーも議事堂内で目撃されている。同グループのリーダーであるニック・フルエンテスの議事堂内乱入は未確認だが、集会には参加している。極右のネット・コミュニティ「アンチコム」の創設者のひとりであるゲイブ・ブラウンも、集会で目撃されている。「アンチコム」は2017年に爆弾製造マニュアルを投稿したことで知られる。
議事堂乱入そのものではなく、関連して逮捕されたなかには、あきらかに「危ないタイプ」もいた。アラバマ州から車でやってきたロニー・コフマンは、議事堂付近に乗り付けたピックアップトラックに、M4カービン銃、爆発物11個、拳銃を隠し持っていた。彼は6日夜にトラックに戻ったところを逮捕されたが、その時、拳銃2丁を所持していたという。
「これは戦争だ」ブレーキが壊れた暴走の行方コロラド州からトレーラーで来ていたクリーブランド・メレディスは、集会に遅れて乱入には参加していないが、暴行容疑で逮捕された。彼は車内に銃器類と約2500発の弾薬を持っていたが、その中には320発の自動小銃用徹甲弾も含まれていた。彼はメッセージで「今後12日以内に多くの人が死ぬ」「民主党のペロシ下院議長を襲撃する」「ワシントンのミュリエル・バウザー市長を襲撃し、ワシントンを燃やす」「これは戦争だ。いくつかの頭を切り落とす準備ができている」などと書き込んでいた。
こうした人々の多くは、特定の組織というよりは、ネット上でのコミュニティに参加していた。そこでは、1月6日にワシントンに集まること=「アメリカのための行進」活動が、かねて呼びかけられていた。しかもそこでは「議事堂の嵐」と名付けられた議事堂侵入ルートや襲撃法についての議論もされていた。「ドアや窓を破るためにバールが必要」などとの書き込みもあった。ちなみに「嵐」という用語は、Qアノン信者によく使われる言葉である。
こうしたネット上のコミュニティは現在も意気軒高で、1月20日の新大統領就任式当日に「ミリシア(民兵)100万人行進」が呼びかけられ、バットや銃の携帯が奨励されている。
~以下、有力な極右グループ、ミリシアなどの解説
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- 2021/02/03(水) 14:36:30|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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トランプ派が議事堂に乱入!米大統領選「最悪の終幕」の行方
トランプ自身の扇動で議事堂を占拠、死者を出す騒動に震撼する国際社会〜黒井文太郎緊急レポート2021年01月07日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/1561712021年1月6日(日本時間7日未明)、民主主義の国アメリカで、あり得ない「事件」が起きた。大統領自らが扇動した極右たちの暴走。この事態の可能性を昨秋に指摘していたジャーナリスト・黒井文太郎氏が、緊張感の高まるアメリカの現在を緊急レポートする。
「暴動、テロが起きる」と危惧した通り「最悪の終幕」がアメリカ大統領選前日の2020年11月3日、筆者はFRIDAYデジタルに「トランプが負けたら【アメリカ全土で暴動・テロが起きる】の深刻度~米大統領選後に警戒すべき危ない妄想系極右たち」という記事を寄稿した。
そして1月6日、同記事中で危惧していたことが、実際に発生した。ワシントンの連邦議事堂にトランプ支持者たちが乱入したのである。
その時、議事堂内では、バイデン次期大統領の当選を公式に確定する上下両院合同会議が開催されていた。トランプ支持者たちはバイデン当選を認めず、その会議を妨害しようとしたのだ。元空軍兵士でトランプ支持者の女性が議事堂に乱入、私服警察官に撃たれ死亡するなど、詳細は不明だが計4人が死亡している。
現場にはFBI部隊なども投入され、暴徒たちを議事堂から排除したが、ワシントンでは夜間外出禁止令が出され、州兵が投入された。しかし、暴徒の多くは外出禁止を無視して議事堂前に留まり続け、警官隊と睨み合っている。まるで映画のような展開である。
それだけではない。共和党全国委員会本部と民主党全国委員会本部では、それぞれパイプ爆弾が発見され、処理された。まさにテロ未遂といっていいだろう。
根拠なき陰謀論に踊らされる人々議事堂では会議が再開されたが、共和党議員を含めて議員たちからは、暴徒を非難する発言が相次いだ。共和党議員のなかには、トランプ大統領の「選挙は不正。バイデン当選は無効」という根拠なき主張に同調する議員もいるが、流れとしては、乱入を扇動したトランプ流の陰謀論に対する批判が高まっている。
今回の事件を受けて、トランプ大統領の責任を問う声が一斉に巻き起こっている。というのも、同日、まさに両院合同会議の直前に、トランプ大統領はホワイトハウス前の広場で数万人の支持者に対して演説し、バイデン当選を拒否するために連邦議事堂に向けてデモ行進するように「扇動」していたからだ。
つまり、「議事堂乱入」を直接呼びかけたわけではないが、トランプ流陰謀論の信者が暴発する種を撒いたのは、トランプ大統領自身だったのである。
こうした事態に、米国では合衆国憲法修正25条第4節の適用が浮上している。大統領が職務を遂行できない際、所定の手続きを経て、副大統領が大統領代行として権限を行使するという内容だ。トランプ大統領の任期は1月20日までとあとわずかなので、現実にそれが実行される可能性は小さいものの、トランプ政権内の一部でも検討が始まっているようだ。
暴徒乱入を受けて、連邦議事堂内でまさに両院合同会議の議長を務めていたペンス副大統領が、孤立するトランプ大統領に代わって警察や軍の当局と協議を行った。ペンス副大統領はツイッターでも、暴徒乱入を非難する声明を発信している。
他方、デモ扇動の張本人であるトランプ大統領は、動画演説でデモ参加者に自宅へ帰るように呼びかけたが、同時に「あなたがたの苦痛は理解できる。選挙は盗まれた。圧倒的な勝利だったことは誰も承知している」と、デモ参加者への「理解」を明言した。議事堂乱入を非難する言葉は一切なかった。
次々と離れていく元側近に孤立を深めるトランプあくまで自分の当選を主張するトランプ大統領の姿勢は突出しており、トランプ政権の側近たちとも距離感が出てきている。
前述したように、ペンス副大統領は議事堂乱入を批判したが、もともと彼はトランプ大統領の意向に反し、議長としてバイデン当選確定の両院合同会議を進めていた。その日、トランプ大統領はペンス副大統領に対して大統領選の結果を確定しないように要請していたが、ペンス副大統領はそれを拒否していたのだ。
~以下略
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- 2021/02/03(水) 14:29:46|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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トランプが負けたら「アメリカ全土で暴動・テロが起きる」の深刻度
米大統領選後に警戒すべき危ない妄想系極右たち2020年11月02日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/143139米大統領選が11月3日(日本時間4日)に行われる。米国での各事前調査ではバイデン候補がやや有利な情勢だ。もしこのままバイデン候補が勝利した場合、トランプ支持者の中には、それを「不正選挙だ」として認めない人々が出てきそうだ。
トランプを支持する「危ない」集団とはトランプ支持層の中には過激な集団が存在する。なかでも「Qアノン」という陰謀論を信じている人たちは、絶対に負けを認めないだろう。
Qアノンとは、Qと名乗る人物が2017年からインターネットの匿名掲示板で広げた荒唐無稽な陰謀論を指す。アノンはアノニマス、つまり匿名という意味だ。
Qアノンが展開する陰謀論にはいろいろあるが、メインはこれだ。
「米国政府は、じつは既得権益層である影の権力者たち=ディープステートに支配されている。トランプ大統領は彼らと戦う真の英雄だ」「民主党のリベラル政治エリートたちは異常な小児性愛者で、じつは裏で非道な児童売春をしている。トランプ大統領は彼らと戦う真の英雄だ」
「陰の悪者と戦う真の英雄」とは、バカバカしい陰謀論だが、恐ろしいことに米国では、トランプ支持の保守派の集会で、Qアノン支持を公言したり児童売春デマを信じて「子どもたちを救え」と叫んだりする人がいるなど、それなりの影響力を持っているのだ。
日本にも「米国のディープステートが~」などと公言する国会議員もいるので米国を嗤(わら)えないが、米国では大統領選と同時に行われる下院選で、候補者のうち少なくとも25人がQアノン支持者とみられる。そのほとんどが、当然だが共和党である。
このうち当選確実なのはジョージア州のマージョリー・グリーン氏。コロラド州のローレン・ボーバート氏も当選可能圏内にいる。どちらも銃を構えた写真をSNSでよく発信している女性だが、その姿こそトランプ支持層のコアな人々と重なる。全米ライフル協会などの銃規制反対を掲げる層である。彼らのなかから「ディープステートの陰謀による不正選挙だ」として、トランプ敗北を認めない人々がおそらく出てくるだろう。
もちろん、トランプ敗北を認めない人々が皆、武装して暴れるかといえばそういうことではない。トランプ敗北を認めない人々でも、その大勢は穏健な抗議行動に留めるだろう。
しかし、銃を持ち出して抗議行動をする人が一定数でてくる。おそらくその中心になるのは、全米やカナダに広いネットワークを持つ「プラウド・ボーイズ」などの極右グループや、「スリー・パーセンターズ」「オース・キーパーズ」などの極右ミリシア(武装した自警団)で、彼らはそこそこの動員力がある。
~以下略
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- 2021/02/03(水) 14:23:14|
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ロシアのサイバー攻撃 目的は「東京五輪全部妨害」の驚愕
【緊急レポート】サイバー攻撃「2つの理由」とロシア機関「GRU」の悪事「全リスト」2020年10月23日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/141516東京オリンピックを妨害する理由10月19日、イギリス政府は「ロシアがサイバー攻撃で東京五輪の妨害を試みていた」と発表した。大会組織委員会や物流業者、あるいはスポンサー企業などに不正にハッキングし、情報を盗もうとしていたという。同日、米当局もロシアのハッカー6人を起訴したが、彼らはロシア軍の情報機関「GRU」のサイバー部隊「74455部隊」の要員たちで、2018年の韓国・平昌五輪の妨害にも関与していたとのことだ。
ロシアがなぜ東京五輪を妨害しようとしたかは、きわめてシンプルな話だ。ロシアは国の方針としてかねてより自国の有力選手にドーピングを行っており、それが露呈して東京五輪を含む国際大会への出場を禁止されるなどの措置を受けていた。そのため、五輪自体がロシアからすれば破壊工作の標的なのだ。
日本での開催イベントをロシアが狙ったことを意外に思うかもしれないが、まったく驚くことではない。ロシアはべつにことさら日本を狙ったのではない。五輪開催国がどこでも同じで、日本開催だから気を遣って「工作を手控える」などということもない。
サイバー攻撃は立証が難しいそもそもロシアとしては、バレても否定すればいいだけの話。実際にロシア政府は否定している。
これはサイバー攻撃の「特徴」で、あくまでシラを切れば、第三者が証拠立てして攻撃を立証することがきわめて難しい。もちろん今回は米英が充分に調査しており、ロシアがやったことに100%間違いないが、ロシアが本国での裏取り調査や容疑者の引き渡しを拒否すれば、それ以上は話が進まない。
これはロシア以外の「サイバー攻撃常連国」中国やイラン、北朝鮮などでも同じだ。つまりサイバー攻撃はバレたときのリスクが小さく、やる側のハードルがきわめて低いのである。
さらにサイバー攻撃のハードルが低い要因として、コストが小さいということもある。標的の人間関係などを調査し、効果的なハッキングの手段を研究し、それなりに時間をかけて侵入していく工作はたしかにかなり手間がかかる。しかし、必要なのは「要員」くらいで、多額の「経費」はいらない。たとえば戦闘機を購入し、整備や訓練を続けていくことに比べたら、桁違いに安上がりだ。
低リスク、低コストの「簡単な」攻撃リスクもコストも小さいから、サイバー攻撃はその能力さえあれば気軽に実行できる。ロシアは今回、国家をあげて「何が何でも五輪を粉砕するのだ!」と取り組んだわけではなく、「簡単に出来るから実行した」ということだろう。
ところで、今回のサイバー攻撃の犯人と名指しされたGRUとは、どんな組織なのか?
~以下、GRUの解説と過去の破壊工作全リスト
※全文は上リンクへ
- 2021/02/03(水) 14:17:50|
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菅義偉=プーチン電話会談「国内向け発表」の欺瞞
〜ロシアは1島すら返す気がない(※タイトル一部割愛)
2020年10月03日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/1384699月29日、菅義偉首相は、ロシアのプーチン大統領と就任後初めての電話会談を行った。日本側からの要請によるこの会談で、プーチン大統領からは新首相就任を祝う言葉が贈られた。電話会談自体は、セレモニー的なものだ。
注目されたのは、菅政権の対露交渉のスタンスだが、大方の予想どおり安倍前政権の路線をそのまま継承するものだった。
安倍前政権での対露交渉は安倍前首相本人と官邸の補佐官らが主導しており、官房長官だった菅氏はあまりタッチしていなかったようだが、それでも責任者の一人である。前政権の政策を否定するような動きはしないだろう。
それはつまり、北方領土返還に「1ミリも進展がなかった」安倍前政権の対露交渉を反省的に総括することはなく、今後も進展の望めない方向を継続するということだ。
同日の外務省発表文書にはこうある。
①菅総理から、日露関係を重視している、平和条約締結問題を含め、日露関係全体を発展させていきたい旨述べるとともに、北方領土問題を次の世代に先送りすることなく終止符を打たなければならず、プーチン大統領と共にしっかりと取り組んでいきたい旨述べました。
②これに対しプーチン大統領から、菅総理の就任をお祝いする旨述べるとともに、安倍前総理との関係を高く評価しており、菅総理との間でも二国間及び国際的な課題に関して建設的に連携する用意がある、平和条約締結問題も含め、二国間のあらゆる問題に関する対話を継続していく意向である旨述べました。この文面からは、日露首脳が今後も北方領土問題の解決のために対話を継続していくことが合意されたかのような印象が強く示されている。実際、多くの報道では、日本政府からのこうした情報を基に、今後も日露間で領土交渉が前向きに続けられることを示唆する記事を大メディア各社の「政治部」が報じている。
また、菅首相自身も、会見で同様の文言で発言をしている。こうした文言は事務方が緻密に作るもので、首相にはそれと齟齬がないようなコメントが要求されるから、それは当然といえば当然だ。
しかし、これはあくまで日本政府の発表でしかない。両者が主にどんな話をしたのかは、客観的にはこれだけではわからない。
ロシア側の発表は「北方領土」にまったく触れていないそこで、ロシア側の発表をみてみると、以下のとおりだ。
「双方は、近年の日露対話の発展および政治、貿易、経済、文化、人道の分野における協力の進展を評価した。
また、新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を含む医学分野における協力についても話し合われた。
両国の国民とアジア太平洋地域全体の利益のために、すべてにおいて両国の関係を深める努力を継続していくことを確認した。流行状況の経緯をみて、様々なレベルで接触を続けることに合意した」(9月29日、ロシア大統領府発表)
これだけである。領土問題については一文もない。これは互いが、会談のどの部分を重視したかということを表している。
日本の外務省発表も、相手がある外交の問題で「嘘を書く」ことはしないだろうから、ゼロから創作したわけではまさかあるまい。しかし、ロシア側が領土問題にまったく触れていないということは、ロシア側はそれをまったく重視していないことを意味する。
おそらく20分間の電話会談のどこかの部分で、菅首相が
一言さらりと「触れただけ」という程度だったのだろう。
しかもさらに、日本政府の発表文には、
意図的なごまかしがある。
菅首相は
「北方領土問題を次の世代に先送りすることなく~」と語ったとされているが、「北方領土問題」の存在、そして「北方領土」という用語自体を、ロシア側は一切認めていない。仮に菅首相がその言葉を使ったとしたら、プーチン大統領が「あらゆる問題に関する対話を継続していく意向である」などと応えることはありえない。
ロシア側が「領土問題は存在しない」との公式な立場を表明している以上、日本側がもし、そうした文言を持ち出せば、予想外の反応を引き出す可能性がある。そのリスクを避けるため、
菅首相に対しては事前に事務方から「北方領土」「領土問題」「領土交渉」は「NGワード」だとレクされていたはずである。
こうした場合には、たいていは相手を刺激しない別の言い方にする。たとえば「北方の島をめぐる双方の立場の問題」などといった曖昧な言い方にすれば、プーチン大統領にも異論はない。そして、そういった言い方を、日本国内用には「北方領土問題と同じこと」とするわけだ。もちろん上記の文言は筆者の推測だが、なんにしても菅首相は「北方領土」という言葉をプーチン大統領に直接ぶつけてはいないだろう~以下略
※全文は上リンクへ
- 2021/02/03(水) 14:09:40|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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菅義偉政権が戦うことになる(※戦うべき)「新・悪の枢軸」7人とは
新・冷戦下で、日本はどう向き合うのか〜2020年09月30日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/137556世界は、いうまでもなくとてつもなく広く、奥深い。そして今、世界は新たな「冷戦」に突入しているといっていいだろう。
9月23日、ベラルーシのルカシェンコ大統領が、6期目の大統領就任式を行った。ルカシェンコは1994年から大統領として君臨しており、旧ソ連式の秘密警察によって国内を支配してきた「欧州最後の独裁者」と呼ばれる人物だ。
8月6日に行われた大統領選では、不透明な集計でルカシェンコ陣営が当選を発表したため、大規模な反体制デモが発生。警察・治安部隊が力で弾圧するが、デモはさらに拡大。野党陣営の指導者が拘束、追放されたりする緊張状態が続いている。
こうしたなかで、ルカシェンコ大統領は、事前予告なしに就任式を強行したかたちだが、米国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、オランダ、スウェーデン、EU、さらに多くの東欧諸国はその正統性を認めない方針だ。なかでも米、イギリス、カナダは、制裁の準備を進めている。
けれども、そんなルカシェンコ大統領の側に立つ国々もある。
大統領続投に祝電を伝えた国は、ロシア、中国、トルコ、ベネズエラ、キューバ、シリア、ベトナム、さらにアジア系旧ソ連圏の国々。トルコ以外は、旧東側の国々であり、多くはロシアの友好国だ。
国民の怒りが渦巻くベラルーシ政権をロシア・プーチンが擁護実際、デモ激化で窮地に陥ったルカシェンコ大統領は、早々にプーチン大統領に支援を要請しており、ロシアはルカシェンコ擁護に動いている。プーチン大統領もロシア国内で同じような強権的支配を強めており、近隣国の政権が民衆デモで倒れるような事態を回避したいのだ。
ルカシェンコ大統領が不透明な選挙で「当選」後、いちばん早く祝電を送ったのは、中国の習近平・国家主席だった。中国はロシアほどベラルーシとの関係が深くはないが、同じ強権支配体制の国として、欧米から強い非難を受けている。敵の敵は味方ということで、今回の大統領就任式の翌日にさっそく、ルカシェンコ大統領は駐ベラルーシ中国大使と会談している。
対立する世界で、完全に腰が引けている菅政権このように世界では今、旧西側+EU加盟東欧諸国の「民主主義陣営」と、ロシアや中国を中心とする「反民主主義陣営」の対立が、すっかり定着しているのだ。
9月21日に開始されたロシア軍の大規模軍事演習「カフカス2020」には、中国軍やイラン軍、ベラルーシ軍らが参加した。世界の対立軸は、完全に冷戦時代に逆戻りしたといっていい。
そんな新・冷戦時代に、日本はどうするのかが問われている。
日本にとっては、反民主主義陣営の勢力拡大は安全保障上も不利益であり、本来なら欧米主要国に同調して、こうした旧東側の危険な連携に立ち向かうべきところだ。が、どうもその動きは遅い。
今回のベラルーシの混乱において、日本政府は8月11日、19日、9月10日、25日に、外務省が外務報道官談話を発表しているのだが、その内容は、ルカシェンコ政権に善処を要請しているものの、選挙結果とルカシェンコ政権の認定にはついては言及なしとしており、完全に腰が引けている。G7のメンバーでルカシェンコ退陣要求の意思を表明していないのは今や日本だけだ。
日本政府が弱腰な対応なのは、主に2つの要因がある。
ひとつは、伝統的に日本外交では「政治的に敵を作らない」戦略が優先されてきたことだ。戦後日本は経済的な国益を優先し、政治的には表に出ないことが多かった。そのため、外交も他国と友好関係を作ることが重視され、批判を避ける傾向が今でもある。
そしてそれより重要なのは、北方領土問題でロシアの機嫌を損ねたくないため、ロシアに対する批判が日本政府全体で封印されていることだろう。現在の国際政治のトラブルの多くは、ロシアを中心とする反民主主義陣営が引き起こしているものなので、日本にとって「ロシア批判がタブー」なら、何も言えなくなってしまう。
また、中国に対しても、政府や与党の一部に中国との関係を重視する勢力があり、政治的な批判に対しては慎重な意見がある。
さらに、中東の反民主主義勢力の要で、「敵の敵は味方」ということでロシアや中国とも連携しているイランに対しても日本は、主要国で唯一「味方」といっていい立場で接している~以下略
※全文は上リンクへ
- 2021/02/03(水) 13:58:15|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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次の総理・菅義偉は「危険で邪悪」なプーチン政権とどう向き合うか(※どう向き合うべきか)
ロシア反体制派の毒殺未遂に使われたのは軍用神経剤「ノビチョク」2020年09月04日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/132679ロシアの著名な反体制活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が毒物を盛られて重体に陥っていた件で、9月2日、ドイツ政府は「神経剤ノビチョク系が使われた証拠がある」と発表した。
ナワリヌイ氏は8月20日、空港で紅茶を飲んだ後に搭乗した飛行機内でいきなり倒れ、重体に陥った。ロシアの病院では「毒物の痕跡なし」とされたが、仲間たちの尽力でドイツに移送され、検査・治療を受けていた。今回、ドイツの軍研究所で血液サンプルが精査され、ノビチョク系神経剤が投与された痕跡が確認されたのである。
ノビチョクは旧ソ連が開発した軍用化学兵器で、あの「サリン」より危険な神経剤だ。過去にも2018年3月に、イギリス亡命中の元ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)のセルゲイ・スクリパリ元大佐の暗殺未遂で使われたことがある。この事件は、GRU内の破壊工作班「第29155部隊」のデニス・セルゲイエフ少将率いるチームによる犯行であることが判明している。裏切り者に対する「見せしめ報復」ということだろう。
「ノビチョク」という神経剤、つまり毒物は、簡単に手に入るものではない。ナワリヌイ氏の毒殺未遂にこのノビチョクが使用されたのなら、これはロシア当局による犯行と断定していいだろう。
容疑者としては、前述のGRU第29155部隊の可能性もあるが、GRUはどちらかというと対外破壊工作を専門とする部署(最近ではアフガニスタンで米軍兵士殺害に報奨金を出していた疑惑が注目されている)だ。ロシアで反体制派の暗殺をするのは、旧KGBの流れを汲む「連邦保安庁」(FSB/プーチン大統領はこの元長官)の「特殊任務センター」(TsSN)に所属する特殊部隊「ヴィンペル」(V局)が、主に担当している。
ナワリヌイ氏に対する犯行は、このヴィンペルがまず、第一容疑者とみていいだろう。ウクライナなどロシア国外でのテロ活動では、ヴィンペルのイゴール・エゴロフ大佐を中心とするグループが暗躍していることが、イギリス拠点の民間情報調査グループ「ベリングキャット」らの調査でわかっている。が、今回は国内でのテロなので、誰が中心になって動いたかは、まだ不明だ。
取り扱いに慎重さが求められるノビチョクが使われたとなると、ヴィンペル幹部が直接現場で指揮した可能性が高いが、ヴィンペルは殺しの実行役にマフィア系の犯罪者や、親プーチン派の武闘派として知られるチェチェン共和国のカディロフ首長の手下を使うこともある。
さらには、これまでもっぱらロシア国外での破壊工作を専門にしていて、ロシア国内での非合法活動実績は知られていないものの、プーチン大統領の側近の政商で、ネット世論操作などウラの汚れ仕事を一手に引き受けているエフゲニー・プリゴジンが運営する傭兵組織「ワグナー・グループ」の存在もある。つまり、実行役として使えそうなラインは、いろいろあるのだ。
いずれにせよ、今回のナワリヌイ暗殺作戦は、ヴィンペルを第一容疑者とするプーチン政権のいずれかの特殊工作機関で立案・実行されたことは確実である。
プーチン政権による「暗殺」工作とみられる事件は、今になって始まったことではない。
前述した2018年のスクリパリ元大佐毒殺未遂以外にも、2006年にやはりイギリス亡命中のアレクサンドル・リトビネンコ元FSB中佐が放射性物質ポロニウムで毒殺された事件、同年にプーチン批判記事で知られたジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ氏がモスクワ市内の自宅アパートで射殺された事件、2015年に旧エリツィン政権で第1副首相も務めたプーチン批判派の最有力政治家だったボリス・ネムツォフ氏がモスクワ市内の橋の上で射殺された事件など、枚挙に暇がない。
こうしたプーチン政権の犯罪的行為には、G7を筆頭に国際社会も批判の声を上げているが、日本政府は、主要国では突出した親ロシア政策を続けてきた(※G7でも2018年に政権に就いた左派ポピュリスト主導のコンテ現政権は例外)。理由はもちろん、北方領土問題でプーチン政権のご機嫌を損ねないためにである。
安倍晋三首相は、在任7年半の間にプーチン大統領と通算27回も会談し、ことあるごとに親密ぶりをアピール。2019年の会談では「ウラジミール、君と僕は同じ未来を見ている。ゴールまでウラジミール、二人の力で駆けて、駆けて駆け抜けようではありませんか」と熱烈なラブコールまで送った。
2014年のロシアのクリミア侵攻に対する欧米主導の制裁には日本も参加したが、金融の制限やエネルギー関連の一部取引禁止など当該の制裁分野では、日本はもともと関与しておらず、実質的な制裁は行われずに形式だけの制裁参加に留まった。2018年のスクリパリ元大佐毒殺未遂では、G7で日本だけが、外交官退去などの外交制裁に参加していない。
それどころか、日本はプーチン政権の求めに応じ、ひたすら経済協力を拡大してきた。すべて北方領土返還を期待しての媚ロシア外交だったが、領土交渉が1ミリも進まない悲惨な結果に終わったのは周知のとおりだ~以下略
※全文は上リンクへ
- 2021/02/03(水) 13:50:55|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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日本もスパイ協定に?河野防衛相が接近するファイブ・アイズとは
~インテリジェンス激弱国・日本が期待するもの〜軍事ジャーナリスト黒井文太郎の分析2020年08月21日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/129286日本は、主要国ではおそらく突出してインテリジェンス(情報収集・分析)能力が弱い。なにせ専門の「対外情報機関」もない。
そんな日本が中国や北朝鮮の脅威に備えなければならない厳しい状況のなか、8月14日付「日本経済新聞」電子版が、河野太郎・防衛相の興味深いインタビュー記事を掲載した。
UKUSAとの連携を意識する河野防衛相。その視線の先にあるものは?
河野防衛相は、米英が主導する機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」との連携に意欲を示し、「日本も近づいて『シックス・アイズ』と言われるようになってもいい」と語ったのである。
ファイブ・アイズとは何か?米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国が共同で、安全保障にかかわる情報を共同で収集しようという協定がある。UKUSA協定という。
このUKUSA協定加盟5か国は、日本や他のNATO加盟国などとは一線を引いた深い情報共有を行っている。なにせ米英主体だから、その情報力は圧倒的だ。その5か国の情報共有の連携ぶりが、各国当局内やメディアなどでは通称で「ファイブ・アイズ」と呼ばれているのだ。
しかし、ファイブ・アイズという名称の協定はない。正式にはUKUSA協定だが、UKUSAよりはファイブ・アイズのほうが通りがいい。ちなみにこのファイブ・アイズは「5つの目で監視する」という意味ではなく、彼らがやり取りする機密情報が「5か国でのみ閲覧可」つまり5つの目にしか見せない「5アイズ・オンリー」だったことから来ているという。
5か国の意味するものでは、なぜこの5か国なのか。これらの国々は、国際政治のなかできわめて強固な同盟関係にあるからだ。5か国はいずれも英語圏、すなわちアングロサクソン系という「近さ」がまずあるが、とくに米英の同盟は、単にNATOで結びついているだけでなく、両国同士が「特別の関係」とみなすほど深い。
UKUSA協定は、もともと第2次世界大戦中の米英の対ドイツ通信傍受作戦の枠組みを、終戦後に対ソ連・東欧に振り替えたものだった。UKUSAはUK+USA、すなわち「英米」協定という意味だが、その後、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。東西冷戦が地球規模に広がり、通信傍受も地球規模で行う必要性が高まったからである。
衛星通信が発達すると、ますます地球規模の通信傍受が重要になった。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはそれぞれ地理的に傍受に役立つ場所にあったため、冷戦期を通じて徐々に役割が増した。
ちなみにこの「UKUSA」、日本では専門家含めて「ウクサ」と読む人が多いが、米国情報機関の2010年の公式文書に「読み方はユークーサ」と明記されている。ただ、海外の報道機関や専門家は「ユーケーユーエスエー」協定と呼ぶことが多い~以下略
※全文は上リンク先へ
- 2021/02/03(水) 13:39:22|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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自民党の「新提言」は北の核の脅威に対応できない可能性
軍事ジャーナリスト・黒井文太郎の緊急提言2020年08月05日(FRIDAYデジタル)
https://friday.kodansha.co.jp/article/1264918月4日、自民党の政調審議会は、同党の「ミサイル防衛のあり方に関する検討チーム」がまとめた政府への「提言」を了承。同日、政府に提出された。今後、この提言をベースに、イージス・アショア計画撤回後の日本の防衛政策の見直しが進められていくことになる。
イージス・アショアは、イージス艦が装備する弾道ミサイル防衛対応「イージス・システム」の陸上配備版。飛んでくるミサイルを撃ち落とす「受け身」の防衛手段だ。自民党内での議論は、受け身の防衛だけでなく、敵のミサイル拠点を攻撃する「攻め」の手段も持とうという話が主だった。今回の提言では、かねて話題になっていた「敵基地攻撃能力」という用語は使われず、代わりに「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」という文言が盛り込まれた。
これは、日本政府の国是である「専守防衛」からの逸脱への懸念に対する「配慮」からだろう。が、じつは北朝鮮の弾道ミサイルは、ミサイル基地からではなく非公開の地下施設に分散した移動式発射機から発射されるため、言い換えがむしろ、より現実に則したといえる。
では、それは技術的に可能なのか。結論をいえば、まず無理だろう~(以下略)
※全文は上記URLにて
- 2021/02/03(水) 13:28:46|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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