ワールド&インテリジェンス

ジャーナリスト・黒井文太郎のブログ/国際情勢、インテリジェンス関連、外交・安全保障、その他の雑感・・・(※諸般の事情により現在コメント表示は停止中です)

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反政府軍、アレッポを広範囲(85%?)に制圧

 国営シリア・アラブ通信(SANA)あたりによれば、政府軍が自由軍を各地で殲滅していることになっていますが、実際には、たとえばアレッポは、ほぼ自由軍が制圧しつつあります。
 自由軍自身は「アレッポ市内の85%を制圧した」と発表しています。当然誇張があるでしょうが、実際に現地を取材しているCNNの取材チームが、アレッポの激戦跡地を広範囲に自由軍が制圧し、市民生活が再開されてきている様子を確認しました。まあ、SANAとCNNのどちらの情報が信憑性が高いか?ということですが、考えるまでもないですね。
▽Syrian rebels begin to challenge al-Assad's command of skies(CNN)
 ただし、空爆、砲撃による無差別攻撃は、今後も激しく行われることが予想されます。自由軍は対空兵器を入手していますが、まだ質・量ともに充分とはいえません。政府軍側も「戦闘機パイロットなどの家族を人質にとって、命令に逆らえないようにしている」(亡命者証言)状況なので、まだしばらく戦闘は続くものと思われます。

 ところで、11月29日の国連安保理会合で、ブラヒミが「強力なPKFを派遣せよ」と報告しました。彼によれば、シリア問題の解決策は「アサド退陣」「反体制派の軍事的勝利」「安保理主導の停戦」の3パターンしかあり得ないとし、このままではシリアはソマリアのような破綻国家になることや、ロシアが煽る「シリア人自身による和平」は不可能であるといった判断を述べています。
 ここまでは、私もほぼ同意です。ただですね、ブラヒミがベスト・ウエイとする安保理主導の停戦が実現できるかどうか、まったく楽観する気になれません。
 ロシアが乗るかどうかという点はもちろん大きいですが(中国は、もしもロシアが乗ればそれまででしょう)、それより何よりバシャールが乗らないでしょう。
 現時点でのブラヒミのプランだと、アサド政権と反体制派の双方から構成される暫定政権をいったん樹立し、そこから民主化プロセスを行うという6月の関係国外相級会合共同声明を基盤としていますが、バシャールは安保理決議があっても実際には停戦する気はないと思います。なぜなら、停戦⇒民主化⇒失脚⇒犯罪者⇒死刑という道が待っているからです。
 免責特権を約束するという手もありそうですが、バシャール自身の脳内に「約束」という概念が欠落していますから、そんなものを信用することはないでしょう。
 結局、ブラヒミの3パターンで、実現性があるのは「反体制派の軍事的勝利」のみです。これが目前になった最終段階で他の2つをバシャールが自身の延命のために呑む可能性はありますが、実質的には「反体制派の軍事的勝利」だけでしょうね。
 もっとも、ブラヒミだの安保理だのがチンタラやっている間に、自由軍がどんどん自らの力で状況を打開しつつあるのは、冒頭に書いたとおり。実際、「シリア人自身による革命」が進行中です。

(追記)
 本日発売の『選択』をパラ読みしていたら、「シリアは喰い物にされている~米欧は格好の武器消費地として」と題する記事があって、思わず脱力してしまいました。フランスとイギリスが反体制派を支援しているのは、戦乱を故意に拡大させて武器を売り、ギリシャで損した分を稼ぐためだそうです。ネットとかにはそんな妄想もあるのかもしれませんが、ここまで来るといやはや何とも・・・(以下自粛)
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  1. 2012/12/01(土) 14:50:59|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
<<北朝鮮衛星発射は12月10~22日 | ホーム | 金正恩=張成沢が手をつけた北朝鮮軍部掌握>>

コメント

再び貴ブログにコメントを書き込ませて頂きます。不躾ながら昨今のシリア情勢についていくらか不明な点があるのでもしさしつかえなければお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?未だ貴ブログの全てを精読しておらず、以下の中に貴ブログに既出のものがありましたら申し訳ありません…

1.シャビーハのような政府系民兵組織が政府側につく理由は何なのでしょうか?私個人としては今般の内戦で生活基盤が破壊され、アサド政権側から当座の金と引き換えにシャビーハとして活動することを持ちかけられたとか、あとは元々アサド政権下で既得権益にあずかっていた連中の末端が自発的に志願したとかそのへんのことを推測しているのですが、今一つ納得できません。

2.反政府武装組織はいくつもあるようですが、その中にはイスラーム色の強い団体と、そうでない団体があるようですね。主流となっているのはシリア民主化に重きを置き、イスラーム法統治とは距離を置く団体だと考えているのですが、それで正しいのでしょうか?また、イスラーム色の強い団体はやはりサウジアラビアなどの国外から「世俗主義のアサド政権」に対する「イスラームの勝利」のために義勇兵として入ってくる連中が主流なのでしょうか?


最後に、追記に関して、米欧がもし本気で武器を売りたいなら、反政府側に武器を売るなどということをせずに直接介入するまでのことだろうと思います(秘密裏に小火器や携行火器を売るようなしょぼい取引よりも、NATO軍の使う精密誘導爆弾や艦隊のメンテナンスなど、そっちの方がはるかに短期で実入りが大きそう)。少なくとも前年のリビアの件を見る限り、現状のアサド政府軍に対する武力行使は、公の目を憚るほど後ろ暗い事案には思えないですし。
  1. URL |
  2. 2012/12/03(月) 16:43:46 |
  3. AJAX #qXOZr2Kk
  4. [ 編集]

 シャビーハは、犯罪者・愚連隊人脈から金目当てで入る人と、アラウィ派の町村からオルグされて仲間内でまとめて入ってくる人と両方います。日本の暴力団と同じで、基本は志願者ですが、大多数は成り行きで入ってしまい、抜けられなくなってしまった人々です。殺戮集団なので、同情はしませんが。
 反政府軍の大多数は、自衛のために合流した地元民です。誰もが「神さま万歳!」と言っていますが、べつにイスラム国家建設のために戦っているのではなく、アサド軍への抵抗のためにやっています。どこのグループに入るかは地元の人間関係による成り行きがほとんどですが、そのなかには地元のモスク人脈とか離脱兵の中のイスラム主義者系人脈が中心になっていて、ジハード色の非常に濃いグループもあります。各人がどこに所属するかは、だいたい成り行きです。各グループの主義主張は、幹部がたまたまどのくらいジハード色が強いかといったことに拠ります。ボスたちにもいろいろな人がいるので、本当に千差万別です。
 外国人義勇兵にも、反独裁ロマン系と、アルカイダばりのジハード主義者と両方います。これは必ずしも相反することではなく、多くの人が両方の性格を有しています。
 現在、大別すると「①ジハード主義と一線を画し、あくまでアサド打倒を掲げる自由シリア軍主流派」「②自由シリア軍打倒を掲げるものの、ジハード色の濃い自由シリア軍内の独自勢力あるいは自由シリア軍外の独自勢力」「③自由シリア軍外のジハード主義グループ」がいます。
 ③は外国人も多いですが、シリア人も多くいて、必ずしも外国人部隊ということではありません。ただ、イラク戦やチェチェン戦の経験者が戦闘能力が高いことから、現場で発言力が大きいという傾向はあるようです。
 アサド政権は③を強調して宣伝していますが、実際には①が圧倒的多数派で、次が②となり、③は少数派になります。当初、シリア人はどれもあまり区別していませんでしたが、最近は現場で軋轢も増えていて、③を批判する人が①②にも増えてきています。地元で略奪するようなのも、③に多いようです。
  1. URL |
  2. 2012/12/06(木) 16:09:15 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

書き間違えました。上記「②自由シリア軍打倒を掲げるものの、ジハード色の濃い自由シリア軍内の独自勢力あるいは自由シリア軍外の独自勢力」は、もちろん「②アサド打倒を掲げるものの~」の間違いです。
  1. URL |
  2. 2012/12/06(木) 16:15:35 |
  3. 黒井文太郎 #-
  4. [ 編集]

反政府軍、アレッポを広範囲

書き間違えました。上記「②自由シリア軍打倒を掲げるものの、ジハード色の濃い自由シリア軍内の独自勢力あるいは自由シリア軍外の独自勢力」は、もちろん「②アサド打倒を掲げるものの~」の間違いです。Thanks
  1. URL |
  2. 2013/12/15(日) 20:06:51 |
  3. Mony #7T9hqkjA
  4. [ 編集]

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プロフィール

黒井文太郎

Author:黒井文太郎
 63年生まれ。『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、現在は軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(とくにイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。

 著書『ビンラディン抹殺指令』『アルカイダの全貌』『イスラムのテロリスト』『世界のテロと組織犯罪』『インテリジェンスの極意』『北朝鮮に備える軍事学』『紛争勃発』『日本の情報機関』『日本の防衛7つの論点』、編共著・企画制作『生物兵器テロ』『自衛隊戦略白書』『インテリジェンス戦争~対テロ時代の最新動向』『公安アンダーワールド』、劇画原作『実録・陸軍中野学校』『満州特務機関』等々。

 ニューヨーク、モスクワ、カイロに居住経験あり。紛争地域を中心に約70カ国を訪問し、約30カ国を取材している。




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